2015年2月25日水曜日

イムジン河は世界中にある。

フォーククルセダーズは2002年の再結成コンサートで、長年封印していた 
「イムジン河」を日本語とハングル語で歌った。 

イムジン河を渡って南に飛んでいく鳥を見て、なぜ南の故郷へ帰れないのか、 
誰が祖国を分断したのか嘆き、故郷への想いを募らせる歌である。 

曲の冒頭で、北山修はこう言っていた。

「イムジン河は朝鮮半島の国境を流れる川で北と南を二つに分断しています。 
しかし今日(こんにち)、イムジン河は日本と朝鮮半島の間にも存在します。 
世界のどこにでも。私たち一人一人の間にも。」 





余談だが、YouTubeの動画で加藤和彦が弾いてるのはMartin 00-28G。
Martin では珍しいガット弦(ナイロン弦)用ギターである。
この頃既に加藤氏がこんなマニアックなギターを持っていたことに驚く。

00-28Gはクラシックギターとしての豊かな鳴りは期待できないが、歌伴や
フォークには向いてると思う。
何よりも14フレットジョイントのフラットトップ00-18のボディーにガット
弦というスタイルがいい。

00-28Gは1938年から1962年まで1531本制作されている。
1962〜1969年はひょうたん型の00-28C、1969年以降はクラシックギター
のデザインに近いN-20(ウイィリー・ネルソンで有名)に継承された。

(写真:左から00-28G、00-28C、N-20)

2015年2月21日土曜日

甘いショコラ握って眠る。


中学の時、明治チョコレート、デラの包み紙を送るとタイガースのピクチャー
レコードがもらえる!というキャンペーンをやっていた。

明治製菓提供のラジオ番組「歌え!タイガース」の中で詩を募集し、応募作品
の中からタイガース(と審査員)が選んだ詩に、村井邦彦、すぎやまこういち、 
加瀬邦彦、宮川泰が曲をつけて、タイガースが歌い、そのレコードをプレゼント
する、という今考えてもすばらしい企画だった。 

チョコを食べ始めたら僕の顔はニキビが吹き出て真っ赤になった。 
クラスの女の子が「これ使いなさい」と洗顔薬を持ってきてくれ、それで顔を
洗ったら あっさりニキビは治った。 

でも、もうチョコを食べるわけにはいかない。 
女の子たちが代わりにデラの包み紙を集めてくれた。 (みんなやさしかった) 

おかげで僕は無事応募できた。忘れかけた頃レコードが届いた。
僕がもらったのは「タイガースの子守唄」「夢のファンタジア」の2枚。



























↑このジャケット(ダンボール紙)に直接、送り先が書かれていた。 
12cmくらいのレコードが裸のまま入ってる、という簡素な作りだった。 


うれしくて、何度も何度も繰り返し聴いたものだ。 
盤質がよくないせいかすぐにスクラッチノイズが入ってしまった。 

今はCDを持っているがあのジリジ懐かしい音まで聴こえるような気がする。 


<タイガースの子守唄> 作詞:藤本泰子/なかにし礼 作曲:村井邦彦

オヤスミ 世界の子供たち オヤスミ 夢見る恋人たちよ
オヤスミ 可愛いぼくの恋人 サヨナラ 知らない天使殿 

少女はいつも忘れっぽいのさ 夢見ることで忙しいから
唄ってあげようあなたの耳に 朝には忘れる子守唄

甘いショコラ握って眠る 夢のつづきを追いかけながら
唄ってあげようあなたの耳に 朝には忘れる子守唄


※写真をクリックするとamazonで試聴できます。(DISC1の8曲目)

2015年2月16日月曜日

大空の広さを風は知らない。


「風は知らない」はタイガースのシングル盤「美しき愛の掟」(1969年4月)の
B面に収められているどちらかと言うと地味な、でも僕が一番好きな素曲だ。

A面の「美しき愛の掟」は重厚感のあるロック色の強いミデイアムスロー曲で、
GSからロックバンドへの移行、沢田研二+バックバンドとしてのタイガース
(渡辺晋社長の方針)を感じさせる作品だった。

対してB面の「風は知らない」は牧歌的な美しいフォークロック調の曲である。
(作詞:岩谷時子/作曲:村井邦彦)
こちらもいち早くフォーク・ブームを取り入れた感がある。




※ジャケット写真をクリックするとiTunesの試聴ページに飛びます。
(「風は知らない」はDISC2の2曲目)


レコード発売前に加橋かつみが脱退し岸部シローが加入という騒動があった。
そのためジャケットは加橋の顔をぼかす処理がされている。

「美しき愛の掟」は岸部シローで後半入るコーラスを録り直しした。
しかし「風は知らない」では加橋かつみのコーラスがそのまま採用された。

つまり「風は知らない」は加橋かつみの声が聴ける最後の作品なのである。

僕は加橋かつみのビブラートのかかった繊細な高音がタイガースには欠かせない
と思っているので、これ以降のタイガースはつまらなくなった。
ビジュアル的にも加橋かつみを含むあの5人はとてもバランスが良く、魅力的で
もあった。

当時メンバーが失踪した加橋かつみにラジオで呼びかけていたのを思い出す。


風は飛ぶ 枯草の上を 空にある幸せさがしながら
風は泣く 大空の胸を 淋しさに夜更けもめざめながら 

きれいな虹にめぐりあう日を ただ夢みて 雲の波間をさまよう 

昨日鳴る鐘も明日はない 大空の広さを 風は知らない

2015年2月11日水曜日

ハードロック+ファンク=?

1985年の夏、1ヶ月ほどLAにいたことがある。
街は広大だが道は東西南北に走っているので覚えてしまえば簡単だ。
片道5車線のフリーウェイにも慣れた。

カーラジオからヘビーローテーションで流れてたのは、ポール・ヤングの
の「Everytime You Go Away」、ビリー・オーシャンの「Suddenly」、そして
パワー・ステーションの「Get It On」(T・レックスのカバー)だった。





パワー・ステーションは前回書いたデュラン・デュランのジョン・テイラー
(ギター)とアンディ・テイラー(ベース)による派生プロジェクトだ。

渋みのあるソウルフルなボーカルはロバート・パーマー。
シックのトニー・トンプソンがドラムに。
同じくベーシストのバーナード・エドワーズをプロデューサーに迎えることで、
強力なリズム隊ができた。

特にトニー・トンプソンはジョン・ボーナムのような白人ハードロック・ドラ
マーのパワー感と黒人のファンキーなグルーヴ感を持ち合わせたドラマーで、
バスドラムのキックが強力でボディブローのようにドスンドスンと響くのだ。

アンディがデュラン・デュランで当初やりたかった「ハードロックとファンク
の融合」がこれで実現した。


僕はシックもロバート・パーマーも好きだったから夢のようなバンドだった。
しかしアルバム一枚でこのプロジェクトは解散。
1996年に再結成したが、その後バーナード・エドワーズ、ロバート・パーマー、
トニー・トンプソンの3人は他界。
再結成が望めないバンドの一つになってしまった。

2015年2月7日土曜日

MTV時代の申し子。


1980年代前半ニューロマンティックと呼ばれた英国ロックの最も成功した
バンドがデュラン・デュランだ。

重厚かつ派手で切れのいいエレクトリック・ダンスミュージック。

メンバーがヴジュアル系だったことに加え、MTVブームを先取りした斬新な
PV(プロモーションビデオ)で一躍人気が出た。

僕は初来日の時、武道館に見に行ったのだが周りは黒い服の女の子たちが
キャーキャー騒いでて、なんか場違いな思いをしたものだ。

PVの映像を手がけたのはラッセル・マルケイ監督。
アーティスティックな映像美、動きの速いカメラワーク、クレーンの多用、
分割画面、早いカット割り、などそれまでにない手法で独自の映像作品を
生み出しMTVアワードを受賞している。

当時はビデオデッキが一般家庭にも普及し始め、26インチの大型ブラウン管
モニターやレーザーディスク、β Hi-Fi、VHS Hi-Fiも出た頃である。
つまり音楽を目と耳で楽しむ環境ができあがりつつあったということだ。

カフェバー、家電量販店の店頭、街頭ビジョン、展示会などでは見栄えが
よく人を惹き付けるデュラン・デュランのPVが流れた。


いったい何回見ただろう?
コーラス部のリフレインの「Please Please Tell Me Now」で憶えてる人が
多いけど、本当の曲名は「Is There Something I Should Know?」。



ライブの映像も徹底した後撮りで丁寧な編集がされている。
ステージではカメラの存在がオーディエンスにとっては邪魔になるため、
決まったアングルの絵しか撮れない舞台後方のドラムやキーボードなどは
本番とは別に寄りのカットを撮ってそれを加え臨場感ある作品にしている。
画面を斜めにはめ込む合成技術も当時としてはかなり高度であった。

2015年2月3日火曜日

アメリカの空、駆け抜ける夏の記憶。




ジャズ・ベーシストのマーク・ジョンソンのアルバム「The Sound Of Sumer
Running」の日本盤の帯に書いてあるコピーだ。


「アメリカの空、駆け抜ける夏の記憶」


パット・メセニー、ビル・フリーゼルの二大ギタリストが共演している。
全体的にはパット・メセニーの初期の作品を彷彿させるような、抜け感のある
爽やかなサウンド。
そこにビル・フリーゼルのちょっと土臭い枯れたギターがからむ。

ドラムはロン・カーターとの共演でも知られるジョーイ・バーロン。





アルバムの中で僕の一番のお気に入りは「Ding Dong Day」という曲。
リズムはベンチャーズやゴーゴーズにも通ずるような明るく元気な8ビート。

が、単純にそれだけでは終わらない。
曲の後半から不意打ちを食らわせるように何度も転調して行くのだ。

ふつうはヴァースの変わり目に転調するものだが、この曲は小節の真ん中とか
とんでもない所でどんどんキーが上がる。
(かなり高度な演奏テクニックが要るはずだ)

聴いてるとあれ?と足元をすくわれたような不思議な感覚を何度も味わう。
それがまた快感でもあったりして(笑)