2021年12月24日金曜日

2021映画「ゲット・バック」の見どころ・アップルスタジオ篇

マジック・アレック設計のスアップル社のスタジオは使い物にならないと判明。
グリン・ジョンズはジョージ・マーティンに助けを求める。

急遽EMIから機材を借りることになった。
(マーティンは既に退社し自身のスタジオを計画していたが、古巣のEMIでは顔
が効くから彼の口利きとビートルズの録音ならお堅いEMIも融通してくれる)


4トラックのREDD37と51の2台の4トラック・ミキシングコンソール(ビートルズ
の黄金期に使われた)を2台つなげて8トラックのボードが完成。
アルテックのコンプレッサー、EMIのプレゼンスボックス(イコライザー)も設置。




8トラックレコーダーはジョージ所有3MのM23を使用し録音されることになった。
EMIスタジオで前年ホワイト・アルバムの途中から使われたのと同型機である。
(ジョージの要望でトゥイッケナムにも搬入されたがミキシングコンソールが不備
だったため、使われることなくジョージ脱退宣言の後、撤去されていた)



↓8トラックのテープって思ってたより幅が狭い。1インチだろう。
左のピザが入っていそうな箱に入ってる。




<DAY 11>

20日(月)、ジョージが復帰しリハーサル開始。スタジオは完成してない。
撮影は許可されなかった。



<DAY 12>




21日(火)レコーディング開始。4人は居心地がよさそうだ。
TVショーは中止になったが撮影は続行。ライヴ・ショーについては棚上げ状態。
彼らはまだオーヴァーダブなしの一発録りという方針は貫く気でいた





ジョージ・マーティンが毎日スタジオに来て立ち会うようになった。
エグゼクティブ・プロデューサーみたいな立場か。
マーティン卿は「グリンで始めたから彼で終えたい」と録音は任せている。

早速PAの聴こえ方が悪いと4人から文句。ジョンズはマーティン卿に相談。
位置を変える。(PAはトゥッケナムと同じフェンダーのSOLID STATE)




新スタジオは壁の一部がドア式で開くとアルミのような金属性の素材でライヴ
な音響が、閉じるとクロス張りでデッドな音響が得られる。


ボーカル用マイクは丸型のもの、ドラム、アコースティック・ギター、ピアノ、
アンプにはノイマンのコンデンサーマイクがセットされている。
あいからず映画用に会話と演奏を録音する無指向製集音マイクも見られる。



ジョンのストライプのシャツはEMIでのヘイ・ジュードのリハーサル時と同じ。
他3人もホワイト・アルバムのフォト・セッションで見覚えのある服を着てる。




4人は録音を開始したいが、グリン・ジョンズの準備ができていない。
録音は午後から。メンバーたちは思いついくままジャムを始める。





この日の午後からジョージはフェンダーのオールローズ・テレキャスターを使用。
前年12月フェンダー社から手渡されたプロトタイプ。↓

                         (写真はDAY16 1月25日)


このギターの開発者は映画館でジョージが弾いてるのを見て狂喜したそうだ。
同じモデルをもらったエルヴィスは彼のバンドのジェームズ・バートンにあげた)

テレキャスターは通常メイプル・ネック、アッシュかアルダーのボディーである。
このモデルはネックもボディーもすべてローズウッド。
ボディーにチェンバー(空洞)を設け軽量化されてるがレスポール並みに重そうだ。




↑ポールのヘフナーにはアンプに貼ってあったBASS MANステッカーが貼ってある。


ディグ・ア・ポニーの録音開始
4人はコントロール・ルームでモニター。真剣な顔で演奏を聴いてみる。
音質にも演奏にも満足したようでごきげん。



↑こんな形のモニタースピーカー、初めて見た。
追記:1963年EMIのモニタールームにいるビートルズの写真で見られる。
1969年EMIはコンソールをソリッドステートに一新したから、型落ちした機材
を貸してくれたのかもしれない。


続けてディグ・ア・ポニーのテイクを重ねる。
イントロ、曲間のリフでのリンゴのフィルは既に出完成しているが、ジョンは
さらに強弱をつけるよう具体的な指示をしている。
アイヴ・ガッタ・フィーリング、ドント・レット・ミー・ダウンも録音




この日、スタジオにフェンダー・ローズが入った。
ストーンズのイアン・ステュアートやニッキー・ホプキンスのようなキーボード
奏者が要るのでは、という話になる。



↑ジョンは早速フェンダー・ローズを弾き、シー・ケイム・イン・スルー・ザ・
バスルーム・ウィンドウのコードをポールに教えてもらう。
コーラス部を3声で歌っているのが新鮮。

やっとレコーディングが軌道に乗ってきたことに4人は満足し帰宅した。



<DAY 13>

22日(水)。
この日もディグ・ア・ポニー、アイヴ・ガッタ・フィーリングの録音後、
モニターしながら改善点を積極的に話し合う。


ジョージに誘われたビリー・プレストンがスタジオに遊びに来る
ビートルズのハンブルグ時代、ビリーはリトル・リチャードのバンドにいて、
旧知の仲であった。
4人は大歓迎。ア・テイスト・オブ・ハニーを歌ってビリーを喜ばせる。
(ハンブルグ時代、ビリーがよくビートルズにリクエストした曲)

ジョンはビリーにセッションへの参加を要請。







↑ジョージ・マーティンにもビリーを紹介。


一気にグルーヴ感が増す
何日も行き詰まっていたのに、ビリーのおかげだ、と4人は喜ぶ。


この日のドント・レット・ミー・ダウン、ディグ・ア・ポニー、アイヴ・ガッタ
・フィーリングはグリン・ジョンズ版「ゲット・バック」に収録された。
映画を見てその意図がやっと理解できた。
ビリーが加わった日のヴァイブをジョンズは聴かせたかったのだろう。

しかし伝わらない。完成度の低いリハーサルに聴こえてしまう。
ジョンズがミックスした音は遠くで鳴ってるような感じで迫力がなく、この映画
で映像とともに聴く臨場感とはほど遠い。
それがグリン・ジョンズの「とても残念な音創りの傾向」である。



↑クリックするとドント・レット・ミー・ダウンが見れます。


ドント・レット・ミー・ダウンが終わった後、ジョンは「声が出ない、昨日の声
に今日の演奏が欲しい、昨日はスウィングしてた」と言っている。
(My voice is choking. I just wish I had yesterday's voice but today's 
backing. I was swinging yesterday)

勢いを大事にするジョンは、ディグ・ア・ポニーから一気に続けてアイヴ・ガッタ
・フィーリングを続けて録ろうと提案するが、ジョンズからテープ交換するから
待つよう言われ悪態(Piss on your boots)をつく。




3曲はほぼ固まったとジョンは自信を見せる。



<DAY 14>

23日(金)。またしても不快なヨーコの絶叫で幕を開ける。

撮影開始時からマイケル・リンゼイ=ホッグはスタジオだけでは盛り上がらない
ので、リビアのサブラタ円形劇場遺跡でのコンサートを執拗に薦めてた。
使用許可、機材の運搬、告知、集客方法、など時間がない中、無計画すぎる。




豪華客船をチャーター、アラブでやる案も出たが、旅行嫌いのリンゴが却下。
ジョージはライヴ自体が嫌。トゥイッケナムにセットを組みライヴの案も出た。

監督は最新案で1週間後ロンドン郊外の緑地プリムローズヒルでのライヴを打診。
今ならみんながまとまり順調。勢いでやれると4人は週末返上の練習を検討。




↑ジョンとポールは悪ふざけばかりしている。



昼食後、オー!ダーリンを軽く演った後、ゲット・バックの録音に入る。
ジョージは曲の構成を確認。

ジョンのソロは2回、ブレイク後はビリーにソロを弾いてもらうことにした。
ビリーにはブレイク時のブルージーはメロディも考えてもらった。





↓ジョージはフォートップスのリーチアウトみたいなテンポにしようと提案。



その後リンゴがあの独特のトットコトットコ♬のリズム・パターンに変わる。
ポールはジョンにGet Backのリフレインで下にハモるよう頼む。
意見を出し合って曲を仕上げていく時のビートルズの底力はやはりすごい。

ゲット・バックはほとんどジョージがカウントをとっている。
ジョンは出だしのコードは手のひらで叩き抑えめにスタートしている。
ジョージのコードの刻み方はアップ・ダウンのメリハリが効いていて上手い。



↑録音したゲット・バックをモニターして4人は満足する。
ジョージはゲット・バックをすぐにシングル・リリースしようと乗り気。
シングルを頻繁に出していた昔に戻った(Get Back)みたいと嬉しそう。
(ジョージに笑顔が戻って本当に良かった)



<DAY 15>

24日(金)。




グリン・ジョンズから他のベースに交換したら?と言われ、ポールは足元
に置いてあった1965年製リッケンバッカー4001Sに持ち換える。
(マジカル・ミステリー・ツアー時の赤白のサイケ・ペイントのまま)
しかし弦がずれるのでリペアに出すことになった)





次はトゥ・オブ・アスをアコースティックギターのアレンジで演ること。
ポールは1966年製マーティンD-28、ジョンはギブソンJ-200(ジョージの)。
ベースはなし。ボトムがなくてスリムなのもいい、というポールが提案だ。




↑この日からスポンジを被せた小さいマイクがボーカル用に使われる。

アコギ、ピアノ、ドラム、アンプの集音はノイマンのコンデンサーマイク。



トゥ・オブ・アスのアコースティック・ヴァージョンはうまく行った。
リンゴのトコトコというスネア連打も軽快さが出ている
いい感じだ、あんなに苦しんだ曲とは思えない、とジョージも満足。




↑「
よし、聴いてみよう」「さあ、重ねよう。ストリングスを入れよう」
Track itはジョンの口癖。オーヴァーダブなしの約束が反故になってしまう。
※日本語字幕は「バイオリンを置いて」になってるが誤訳。


ジョンのポリシーン・パン、ポールのハー・マジェスティのデモの後、
アコギの編成のままポールの新曲テディ・ボーイを録音
このラフな演奏がグリン・ジョンズの「ゲット・バック」に収録された。
ジョンズはトゥ・オブ・アスもこの日のリハーサルっぽいテイクを選ぶ





マギー・メイもこの流れでテキトーだがジョンとポールは楽しんでる。
この日はクリス・トーマス(ホワイト・アルバムの後半をプロデュース)
がコントロールルームで見学していた。


ディグ・イットのリハーサル中、パティーがやって来て少しジョージと
言葉を交わしてすぐ帰ってしまった。パティーが現れたのはこの日だけ。



↑モデル出身だけあってオシャレ。何を話してたのでしょう?

パティ「マトリのガサ入れがあるみたい。例のブツどこに隠せばいい?』
ジョージ「猫のトイレ砂に埋めようか。麻薬探知犬もごまかせるよ」




<DAY 16>

25日(土)、休日返上で4人はスタジオに入る。ビリーはTV局の仕事。
↓テープ・オペレーター兼エンジニアとしてアラン・パーソンズが参加。





前日に続きジョンとポールはアコギの編成。
アクト・ナチュラリー、バイ・バイ・ラブを軽く歌う。
(エヴァリー・ブラザーズはどちらが主旋律か分からないハモりの元祖。
ジョンとポールは参考にしていた)
ウォーミングアップ後、トゥ・オブ・アスのレコーディング。







ポールはサビの最後のハモりを求め、ジョンは練習。
↓二人ともスコット訛りで歌ったり悪ふざけが止まらない。楽しそうだが。




この日に録音したトゥ・オブ・アスはいい出来でみんな満足そう。





次はフォー・ユー・ブルー
ジョージがJ-200を弾きながらボーカル、ジョンはラップスティール、
ポールがピアノ、リンゴのドラム、という編成。


ジョージはピアノを古くて悪いホンキートンク風の音にしたいと要求。
グリン・ジョンズにはアイディアがなく、ジョージ・マーティンの出番。

ブリュートナーらしくない音にと、鉄線の間に新聞紙を挟んでミュート
させトイピアノのようにしてくれた。


スムーズに進行し数テイク録音。この日のみで完成した。





ライヴ・ショーについて4人はまだ態度を決めあぐねていた。
ジョンはライヴに意欲的になる。ポールも何らかの盛り上がりは望んでた。
とはいえ、この段階で会場を手配するのは不可能だ。





マイケル・リンゼイ=ホッグとグリン・ジョンズから画期的な案が出た。
もっとも手頃な場所で最終ライヴを行う。つまりアップル社の屋上だ。

話を聞いたポールの顔が「その手があったか」というように明るくなる。
ここなら動かなくていいし、少なくとも終わったら家に帰れる。


↓屋上を下見して監督たちと具体的な撮影方法について打ち合わせ。
この時点で下はむき出しのコンクリート。







この日はレット・イット・ビーを録音。何度も演奏し改善させて行く。




屋上でのライヴは29日(水)に決定。
レコーディングも31日(金)までに終了させる必要がある。
グリン・ジョンズは次の仕事、リンゴは映画の撮影に入るからだ。

4人は休みなしで日曜日も仕事を続けることにした。



<DAY 17>

26日(日)、先にスタジオ入りしたのはリンゴとジョージ。
リンゴはピアノを弾き新曲オクトパス・ガーデンをジョージに披露
最初のヴァースしかできていない。

ジョージが J-200を弾きながら一緒にサビの展開を探ろうとする。
ジョージ・マーティンもピアノの側で見守りながら声でオブリを入れる。




登場したジョンが何をやればいいか尋ね、リンゴは「ドラム」と即答。
ジョンは「ポールなら喜んでやる」と笑いながらも初のドラムに挑戦。

そこへポールがリンダ、先娘のヘザーを伴い入ってくる。
(1970年の映画ではポールは「ひどい。これからだ」と言い、楽しかった
ムードを一変させるが今回はカットされた。←空気読めよな、ポール)



このシーンに限らず、ピーター・ジャクソン監督は以前の映画と違う
カメラ・アングルの映像や、初めて見るシーンを多用している。

ヘザーがスタジオ内で遊んでるシーンも多い。
レット・イット・ビーではリンゴの側でハイハットを一緒に叩く。





面白いのはポールがリンゴにチチチチと16拍のハイハットを入れるよう
指示している点。
後にフィル・スペクターがハイハットにエコー処理した音と近い





ポールがお得意のドラム、ジョンが6弦ベースでまたヨーコが絶叫。
子供はちゃんと見ていてすぐ真似するからすごい。

↓ヘザーがマイクを持ちア〜。ジョンは6弦ベースをコード弾き。
ジャムはトゥイスト&シャウトから12分に及ぶディグ・イットに発展。





ピーター・ジャクソン監督は4分半にまとめたと言っている。
「マニアはブートでさんざん聴いているだろうから」という割り切りだ。
他も曲はぶつ切りで、4人がどんな会話をしてるかに重点が置かれている


ビートルズとビリーはしばしロックンロール・メドレーで楽しむ。
ヘザーがくるくる回って踊るのもこのシーン。


続いてロング・アンド・ワインディング・ロードの録音に入る。
ポールはジョンに6弦ベースの音数を少なくするよう頼む。





ジョージのJ-200の音が小さすぎる、とジョージ・マーティンが指摘。
コンタクト型のピックアップを付けることにした。

(映画では触れられていないが、マーティンのアイディアはマイクで
拾った生音とピックアップからレズリーの回転スピーカーを通した音
を左右に振り分ければステレオ効果が出る、というものだった)

コンタクト型ピックアップが珍しかったようで、ジョージはを喉に当てて
歌ってみる。ジョージ・マーティンも苦笑。



録音したテイクはグリン・ジョンズ版「ゲット・バック」、フィル・スペク
ター版「レット・イット・ビー」双方に収録された

グリン・ジョンズはこのままミックスしたいと申し出るが、ジョージはもう
少し整理した方がいいと考えている。
ピアノとエレピが同じことを弾いていて、自分のレズリーを通したギターも
重なっている点が引っかかっている。

ポールも何かすべきだということは理解していた。
リンゴがその何かを明快に「Cleaning」と口にする。ポールも同意。




マーティン卿は「ポールはストリングスは入れるだろう」と言う。
ジョージが「ストリングス入れるの?」と尋ねると、ポールは「Dunno
(どうかな)」とはっきりしない。
よく分からないが、レイ・チャールズ・バンド風にしたいと言う。
それならブラスを入れたらどうかとジョージが提案。


マーティンは「ビートルズっぽくない」と意見を言う。
ポールは「何曲かでは少しブラスとストリングスを加える」と発言。

この時点でオーヴァーダブなしの一発録音のコンセプトがぐらついている

ポール自身、この曲はいい出来だけどちょっと地味、ストリングスやブラス
を加えた方がよくなるのでは、と内心思っていたのではないだろうか。

そうすると自身が出したコンセプトと矛盾する。葛藤があったはずだ。


ジョンも演奏が終わって「Okay, Let's truck it(さあ、重ねよう)」と口にし、
ハッと気づいて「You bounder, you cheat!(この嘘つき)」と言っている。



<DAY 18>

27日((月))
またロックンロール・メドレーから始まる。




ジョージは昨晩書いたばかりというオールド・ブラウン・シューを披露。
ピアノを弾きながら「このコードは何?」とビリーに質問。

それはE with a C、それはF# Diminished、とビリーは教える。
(この辺、日本語字幕ではコードネームが省略されてる)




「ピアノはすごい。こういうのはギターじゃできない」とジョージは感心。



↑ジョージの紫のフリル付きシャツはホワイト・アルバムの頃から着用。
白地に赤と青のピンストライプのスーツ(裏地はピンク)も派手でいい。



ポールはドラムを叩く。途中でリンゴに交代。叩き方が違う。
これでオールド・ブラウン・シューのドラムはポール説はガセと判明。





バンドはレット・イット・ビーに取り組む。
ビリーのエレピ演奏を聴いたポールは「英国の北部出身にソウルは難しい、
分かるだろ?」と笑う。





ロング・アンド・ワインディング・ロードではポールが珍しく行き詰まる。





↑ジョージのJ-200用コンタクト型ピックアップで遊ぶリンゴとジョン。



4人は自分の出してる音が聴こえないこと、ハウリングに文句を言う。
ジョージ・マーティンが「マイクの向きがバラバラでスピーカーが近いから
反応してしまっている」と説明。PAのセットはマーティンに任せることに。

VOXのPAスピーカーは上向きに角度調整され、フェンダーのPAスピーカー
も斜めになるよう壁に立てかけられた。


グリン・ジョンズは音響的なことは疎くマーティンに頼っている
この日もクリス・トーマスがコントロール・ルームにいた。





オー・ダーリンの演奏終了後、ジョンがヨーコの離婚成立を報告。
嬉しさからオー・ダーリンのメロディーに乗せ「I'm free」と即興で歌う。



ドント・レット・ミー・ダウンのヴァースの歌詞を歌いやすいように、
ジョンはポールに相談しながら書き直す
こういうシーンを見るとソングライティング・チームだなと嬉しくなる。




午後のセッション。
ポールはストローベリー・フィールド・フォーエヴァーをピアノで歌う。


再びゲット・バックの録音
いい出来だとジョージ・マーティンからお墨付きをもらう。
アラン・パーソンズはテープ・オペレーターとして働いている。





グリン・ジョンズは充分いい録音が得られたので、別な曲に行きたい。
同じ曲を繰り返すと駄目になって行くというのが彼の主張。

ビートルズとジョージ・マーティンは同じ曲でテイクを重ね完成度を上げる
という今までのやり方を選ぶ。
この日録ったゲット・バッはシングル盤、アルバムに収録された。






続いてアイヴ・ガッタ・フィーリングを録音
ポールはどの曲も納得が行くまで録音を続ける、と言っている。





<DAY 19>

悪天候のため29日の屋上コンサートは30日に延期された。

28日(火)。4人は休みなしで8日間レコーディングを行っている。


↓写真を撮りに来たリンダは「軍隊みたい」と言っていた。




屋上で演る曲をリストアップする。
ディグ・ア・ポニー、アイヴ・ガッタ・フィーリング、ドント・レット・
ミー・ダウン、ゲット・バックは何度も演ったので充分。
レット・イット・ビーはピアノを使うので屋上は不向きと判断された。


録音を続けアルバムを作るか?ライヴ用に練習する曲数を増やすか?
バンドは岐路に立つ。ジョージは何曲かライヴで、他は録音しようと言う。
ジョンはまとまっていない曲、ジョージの新曲を覚えようと提案。




サムシングのリハーサル開始。歌詞が完成していない。
ジョージは続きをどうすればいいかポールに助言を求め、ジョンが「頭に
浮かんだ言葉を入れときゃいい、カリフラワーみたいにとか」と返答。
ジョージは「半年考えてるけど出ない。ザクロにするか」と歌ってみる。



↑クリックすると「サムシング」のリハーサルが見られます。



ラヴ・ミー・ドゥーの歌詞はよかったという話になり4人は演奏し出す。
スローでルーズな感じにするとR&B色が出て、また別な味わいがある。




午後ポールは会合で外出。
残った3人でアイヴ・ガッタ・フィーリングを練習。

ジョージはストラトのトレモロアームを使った指弾きを試みる。
ロビー・ロバートソンの影響だと思われる。
(前年にジョージは渡米しザ・バンドと過ごしスワンプに傾倒していた)





ジョンが昨晩アラン・クレインと会って心酔してるとジョージに話す。
(その後の経緯を知ってるから、目を覚ませジョン!と言いたくなる)

ジョージはジョンに曲を書きためたのでソロ・アルバムで出す考えを言う。
ジョンは「バンド結束が必要な時に、鬱憤晴らしか」と冷ややか。
ヨーコはいいアイディアだと賛成する。

(翌年ジョージはアルバム、オール・シングズ・マスト・パスを発表。
3枚組と聞いたジョンは「あいつは頭がおかしくなったのか」と言った。
が、記録的なセールスを達成。ジョージの代表作になる)




オールド・ブラウン・シューのセッション
リンゴのハイハット裏打ちのドラミングが既に完成型になっている。




ポールが戻ってからドント・レット・ミー・ダウンの録音
この日のテイクがベストとされシングルB面になった。

ジョージは屋上ではテレキャスターを弾いてるが、シングルB面のこの
テイクではレスポールと言われていたが、それは違うと判明。
オールローズのテレキャスターを弾いているのを確認できる。


Don't Let Me Downの箇所は屋上ではジョージも歌う3声であるが、
シングルB面ではポールだけ上にハモっている。
4月にジョンとポールがボーカルを録り直したから説は本当だった。
レコーディング時はジョージが下を歌う3声である。


ジョンのアイ・ウォント・ユーのデモ。 She's so heavyの部分はない。
アラン・クレインが来社。ビートルズと初顔合わせ。



<DAY 20>

29日(水)、屋上コンサートの前日。
グリン・ジョンズは「アラン・クレインは頭が切れるが詐欺師」と
ジョンに忠告する。ジョンは聞く耳を持たない。

(ポールはミック・ジャガーからクレインについて忠告を受けていた)



↑後で「この野郎、騙したな」ということになるのに。。。





レット・イット・ビーの録音を行う。


明日の屋上コンサートについて4人はまだ決めかねていた
一番ライヴを望んでいたボールは「練習も重ねた。でも屋上は無謀だ。
全部覚えるには時間が足りない」とアルバム作りに専念したい意向。

監督は「スタジオの録音風景はいっぱい撮ったがストーリーがない。
エンディングが欲しい」とライヴを推す。

ジョンは「今までの6曲でいいからやってみよう」と言う。
ジョージ・マーティンも「この出来ならライヴはできる」と太鼓判。
ジョージは「本当は屋上は嫌だけど、やらなきゃならないならやる」。
リンゴは「僕は屋上でやりたい」。ジョンも「やろう」と言う。




ポールもポジティブになり、どの曲ができそう?と尋ねる。
ジョージ・マーティンが用意した曲のリストをポールは読み上げる。

アイヴ・ガッタ・フィーリング、ドント・レット・ミー・ダウン、
ゲット・バック、オールド・ブラウン・シュー(も候補だった!)
ロング・アンド・ワインディング・ロード、レット・イット・ビー、
フォー・ユー・ブルー、トゥ・オブ・アス、ディグ・ア・ポニー、
アクロス・ザ・ユニヴァース、ワン・アフター・909、ディグ・イット、
マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー、テディー・ボーイ、
バスルーム・ウィンドウ、オール・シングズ・マスト・パス。

※曲名を出だしの歌詞で言ってる時もある。(屋上でも言ってた)
ドント・レット・ミー・ダウン
→ アイム・イン・ラヴ・フォー・ザ・ファースト・タイム
ディグ・ア・ポニー → オール・アイ・ウォント・イズ・ユー
オール・シングズ・マスト・パス → サンライズ
フォー・ユー・ブルー → ビコーズ・ユー・スイート


15曲も候補に挙がった!これならライヴ盤も作れる
全曲を見直そう、コードを覚える、とポールは意欲的になるが。。。




関係ないお遊びセッションばかり。前日だというのに。
ディグ・イット、未完成のアイ・ウォント・ユー、ジョンとポールが
歯を噛んだまま歌うトゥ・オブ・アスとか。だいじょうぶなのか。。。
(1970年の映画で見られたベサメ・ムーチョもこの日の演奏)

<続く> 次回はルーフトップ・コンザート!