2015年7月15日水曜日

ソフト&メロウよりもブルージーなギター。


先日「ヨルタモリ」に加山雄三さんがゲスト出演していた。
ギターの話になると若大将は「自分が上手いと思われてるのは映画のせい、
上手いヤツは本当に上手いからね」と謙遜しながら、ジョージ・ベンソンと
逢った時に間近で演奏を見てえらく感心したことを話していた。

実は僕もジョージ・ベンソンに会ったことがある。1981年の夏だった。
目の前で愛器、Ibanez(彼はアイバネズと呼んでいた)GB10を弾いてもらい、
そのギターに僕も触らせてもらった。



もちろんぜんぜん弾けなかった(笑)それに僕が弾いても鳴らないのだ。
GB10はPUをフロートさせてあるためサステインが得られない。

これはGB10設計段階でのジョージからのリクエストだったそうだ。
彼の正確無比かつ流麗なフレージング、ウェス・モンゴメリーのオクターヴ奏法
の発展形であるオクターヴ+5度奏法、ギターのフレージングとスキャットをシン
クロさせる奏法にはその方がいいのだろう。


他にジョージ・ベンソンがGB10に求めたのは落としても壊れないこと、小ぶり
なフルアコであることだったという。

会ってみて意外だったのだが、ジョージ・ベンソンはかなり小柄だった。
彼の体型ではギブソンのJony Smithは音は良くても大きすぎたのかもしれない。


もう一つ意外だったのは、彼が譜面を読めないということである。
しかしまったく問題ないことがすぐに分った。

ジョージはツアーのリハーサルを見に来ないか、と僕を誘ってくれた。
ハリウッドにあるスタジオというよりは大きな体育館のような場所だった。

彼はテナーサックスやキーボードにどういうフレーズを弾いて欲しいか、スキャ
ットで歌ってみせるのだがこれがまた正確である。
譜面がなくても成立するのだ。


ジョージ・ベンソンといえばトミー・リピューマがプロデュースして一躍フュー
ジョンの火付け役にもなった「Breezin' 」(1976年)が代表作だろうか。
このアルバムはソフト&メロウと賞賛されジャズ部門で異例のヒットとなった。

クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えブラック・コンテンポラリー色
を強めた「Give Me the Night」(1980年)も完成度が高い。


でも個人的には「Blue Besnon」というアルバムがお気に入りでよく聴いた。
これはヴァーヴ時代のジョージ・ベンソンの最高傑作と言われる「Giblet Gravy」
(1968年)など数枚の作品から寄せ集めたポリドールのコンピレーションなの
だが、選曲がなかなかいいのだ。(今は入手困難らしい)


        ↓写真をクリックするとアルバム全曲、試聴できます。


1曲目の「Billie's Bounce」からグルーブ感たっぷりの円熟した演奏が聴ける。
ロン・カーターのベースが絡む。ハービー・ハンコックの珍しいバップスタイル
のピアノ。途中から入るビリー・コブハムのドラムもいい。

曲はチャーリー・ パーカーでいろいろな人がカバーしているが、ジョージ・ベン
ソンのこのヴァージョンはオリジナルを凌駕するくらい素晴らしい。

2 件のコメント:

  1. こんにちは。

    興味深い話でとても面白いです。

    それにとても貴重な体験をされましたね。

    私はジャズギタリストはもっと古い人が好きなので、
    ジョージ・ベンソンに関しては殆ど無知なんですが、
    この分野の人としては異例なくらい人気ギタリストになった
    事くらいは知ってます。


    ピックアップがフロートしてるとはどういう事なんでしょう。
    ボディに密着していないだろう事は分かりますが、その固定方法
    はどうなっていたんでしょう。

    因みにギターに触らせてもらった時、弦の太さはどうだったか
    覚えてますか。

    返信削除
    返信
    1. >proviaさん

      ありがとうございます。
      仕事だったのですが本当にいい体験をさせてもらいました。

      GB10のピックアップはボディーにマウントされているのではなく
      ピックガードに固定されボディーからは浮いてました。
      ボディーの共振音を拾うのを避けるためだそうです。
      弦とボディーの箱鳴りのみをピックアップで拾うのが狙いでしょうね。
      その結果アンプを通してもサステインが効かないせいか僕が弾いても
      あまりいい音に聴こえませんでした。
      ロック系の弾き方じゃ鳴らないギターですね。

      ジョージ・ベンソンは黒人のジャズ/ブルース・ギタリストに多く
      見られる逆アングルのピッキング(弦に当る際ピックの先が上向きで
      ピックのノイズを抑え芯のある太い音が出せます)で高速で多音の
      パッセージを強く弾くのを得意としています。
      なので倍音やサステインを極力抑えた方がコントロールしやすいので
      はないかと思われます。
      オクターヴ+5度奏法にもこの方が向いているでしょう。

      弦はフラットワウンドの太いタイプ(たぶん1弦が011)で3弦が巻き
      弦だったと思います。

      ジョージ・ベンソンはフュージョン路線の「Breezin' 」から聴きだし
      たのですが、ヴァーヴ時代のジャズ・ギタリストとしての方が魅力が
      ありますね。

      削除