2016年12月24日土曜日

2000年以降のメリー・ホプキンの作品。

◎機会があったらぜひ聴くべし △悪くはない  △コアなファン向け
(すべて独断と偏見によるお薦め度です)


メリー・ホプキンはMorgan Hopkin Music(後にMary Hopkin Music)を設立。
2005年から未発表音源や新作をリリースするようになった。
当初は自社のサイトでのダイレクト販売だったが現在はAmazonでも入手できる。


第一弾は1972年英国のロイヤル・フェスティバル・ホールでのコンサート音源
突然のリリースに、こんな音源があったのか!と驚き喜んだものだ。

シンガー&ソングライターのラルフ・マクテル(1)、ブライアン・ウィロビー(gt)、
ダニー・トンプソン(b)といった英国トラッド・フォークの実力派、そして夫トニ
ー・ヴィスコンティ(2)がバックを固めている。

アコースティック・ギター中心の小編成フォーク・バンドだ。
曲によってポップ・アーツ・ストリング・クェアルテットが控えめに加わる。
メリーは喉の調子が万全ではないようで咳払いをしているが、あいかわらず美声。





Live at the Royal Festival Hall 1972  (2005年リリース) 

1. Once I Had a Sweetheart (Trad. Arr.)
2. Introductions
3. Ocean Song (Liz Thorsen)
4. Streets of London (Ralph McTell)
5. Sparrow (Benny Gallagher/Graham Lyle)
6. Aderyn Pur (Trad. Arr.)
7. If I Fell (John Lennon/Paul McCartney)
8. Silver Dagger (Trad. Arr.)
9. Donna Donna (Sholom Secunda/Aaron Zeithlin)
10. Those Were the Days (Gene Raskin)
11. Earth Song (Liz Thorsen)
12. Morning Has Broken (Trad./Eleanor Farjeon)
13. Both Sides Now (Joni Mitchell)
14. International (Benny Gallagher/Graham Lyle)



「Ocean Song」「Earth Song」「International」「Streets of London」
の4曲は1971年の2nd.アルバム「Earth Song / Ocean Song」から。

「International」はメリーへの作品提供が多いギャラガー&ライル(3)の作品。
「Streets of London」はラルフ・マクテルの代表作で、街角に佇む年老いたホーム
レスを描いた味わい深い歌。


「Sparrow」もギャラガー&ライルで「Goodbye」のB面だった。
レノン&マッカートニーの「If I Fell」はトニー・ヴィスコンティとのデュエット。

「Morning Has Broken」はキャット・スティーヴンスもカヴァーしたトラッド。
ジョニ・ミッチェルの「Both Sides Now」はメリーが一番好きな曲だという。
1970年の大阪万博コンサートでも歌われた。


「Donna Donna」も同じく万博で歌われたフォークの定番曲。
「Aderyn Pur」はトラッドで、メリーはウェールズ語で歌っている。
「Those Were the Days」は弦楽四重奏だけの静かなアレンジ。

全編メリー・ホプキンの本領発揮の選曲で構成された好ライヴ盤だ。



↑クリックするとメリーが歌う「Streets of Londonr」が聴けます。



(同2005年ドリー・パートンのアルバム「Those Were the Days」に参加。
タイトル曲を一緒に歌っているがほとんど存在感がない。×




Valentine (2007年リリース) 

1972年〜1980年のレコーディングでお蔵入りになっていた音源を編集したもの。
メリー自身による3曲を含む10曲が収められている。

ほとんどの曲が「Earth Song/Ocean Song」と同じミュージシャンたち(ラルフ・
マクテル、ダニー・トンプソンなど)によって演奏されている。
カヴァー・アートワークはメリーが数年前に描いたヴァレンタイン・カードらしい。





Recollections (2007年リリース) 

アーカイヴ・コレクション第2弾。
1970〜1986年にトニー・ヴィスコンティのプロデュースで録音された11曲。
長い間、倉庫で眠っていた音源をリミックス、デジタル・リマスターしたそうだ。

ウェールズ出身のバンド、エイメン・コーナーにいたブルー・ウィーヴァー(p)、
英国のフォークロック・バンド、フェアポート・コンヴェンションのデイヴ・マタ
ックス(p、b、ds)、元ジェスロ・タルのジェリー・コンウェイ (ds)、キャット
・スティーヴンスやリチャード・トンプソンのバックを務めたブルース・リンチ(b)
が参加している。

これもカヴァー・アートワークのイラストはメリーが描いている。




Christmas Songs EP (2008年リリース) 

1972年に発売されたシングル「Mary Had A Baby / Cherry Tree」と2006年に
ダウンロードのみでリリースした彼女の新作「Snowed Under」を加えたEP盤。

「Mary Had A Baby」「Cherry Tree」の2曲はオリジナルの音源に新たに人工的
なコーラス(シンセだろう)が加えられ、やや残念な出来になってしまった。
それさえなければ文句無しになんだけど。

カヴァー・アートワークのイラストはメリー本人の作。






Now and Then (2009年リリース) 

アーカイヴ・コレクション第3弾。
1970〜1988年にトニー・ヴィスコンティのプロデュースで録音された13曲。
14曲目の「Happy Birthday」は新作とはいえ、ご愛嬌程度のアカペラ。

1976年リリースの3曲「If You Love Me」「Wrap Me In Your Arms」
「Tell Me Now」がめでたく収録された。


バート・ヤンシュ作の「Crazy for my Sweetheart」も味わい深い。
「One Less Set Of Footsteps」はジム・クロウチの作品だが、これに関しては
オリジナルの方がはるかにいい。

カヴァー・アートワークはメリー本人のイラスト。絵心もある人らしい。






↑こんな写真も発見!1980年代後半かな?仲直りしてたんだね。よかった〜(^^)
クリックするとメリーの「Tell Me Now」が聴けます。




You Look Familiar (2010年リリース) 

メリーの息子、モーガン・ヴィスコンティとの共作。
全曲メリーの作品で、モーガンがアレンジと演奏(プログラミング)を担当。
モーガン、娘のジェシカがコーラスで参加。家内制手工業の作品という感じ。

打ち込みのビシバシ感とエレクトリック音が安っぽく耳障りである。
往年のメリーのファンは少なからずがっかりすると思う。××






Spirit (2011年リリース) 

1989年にリリースされた賛美歌・鎮魂歌集アルバム。
廃盤になり長らく入手困難で、アナログ落としの海賊盤CDしかなかった。


アップル時代からメリーに曲を提供してきたギャラガー&ライルのベニー・ギャ
ラガーのプロデュース。
ダイアー・ストレイツのキーボード奏者、アラン・クラークがアレンジを担当し、
シューベルトの「Ave Maria」では演奏もしている。

オリジナルの音源に手は加えられていないが、アートワークは近年のメリーの顔
を描いたデッサンに変更された。





Painting by Numberst (2013年リリース) 

すべて自作の新曲。メリー本人によるギターで自宅において録音された。
静かなアコースティック・サウンドに帰り聴きやすい。が、曲は退屈。

「Love Belongs Right Here」はブライアン・ウィロビー(元ストローブスのギタ
リスト)との共作。
ウィロビーのアルバム「Black&White」(1999)で歌ったが再録された。
ウィロビーがギターで参加。このアルバム一番(唯一?)の聴きどころだと思う。

「Love, Long Distance」はベニー・ギャラガーとの共作で彼がギターで参加。
記載はないが、カヴァー・アートワークのイラストはメリーだと思う。





2013年にメリーが再録した「Love Belongs Right Here」が聴けます。



◆Y Caneuon Cynnar - The Early Songs (1996年リリース)

最後にメジャー・デビュー前にメリーが地元ウェールズのカンブリアン・レコード
からEP盤でリリースした音源を編集したアルバムを紹介したい。

ウェールズ音楽専門のセイン・レコードからCD化されており現在も入手可能だ。
全編ウェールズ語で歌うこのアルバムはメリー・ホプキンの原風景である。






↑メリーがウェールズ語で歌う「Tro, Tro, Tro (Turn,Turn, Turn)」が聴けます。



<脚注>

(1)ラルフ・マクテル
'70年代に活躍した英国トラディショナル・フォークのシンガー&ソングライター。
'60〜'70年代にかけて英国では伝統的なフォークソングをベースに、アメリカには
ない新しい音楽を生み出そうというムーヴメントが起こった。
フェアポート・コンヴェンション、ペンタングル、アル・ステュアート、ドノヴァン
、キャット・スティーヴンス、マーティン・カーシー、バート・ヤンシュなど。
その中でラルフ・マクテルは癖が少なく適度にポップで、ソフトなヴォーカルとシ
ンプルなギター奏法で聴きやすいアーティストである。


(2)トニー・ヴィスコンティ
ニューヨーク出身の音楽プロデューサー・編曲家。1968年にロンドンに移住。
T・レックスやデヴィッド・ボウイの作品を手がけた。


(3)ギャラガー&ライル
ベニー・ギャラガーとグラハム・ライルの2人組のソングライティング・チーム。
アップル・レコードと契約してメリー・ホプキンに何曲か作品を提供している。
1970年代にはデュオで活動しアルバムも何枚か発表している。


<参考資料:Mary Hopkin Music、Wikipedia他>

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