2021年7月27日火曜日

ロックのレジェンドに学ぶ服飾術(2)エリック・クラプトン-3


1992年10月NYマディソンスクエア・ガーデンで行われたボブ・ディラン30
周年記念コンサートに出演。ブッカー・T&ザ・MG'sをバックに演奏。
個人的にはクラプトンのベストパフォーマンスの1つである。
クリックするとDon't Think Twice, It's All Rightが聴けます。

初めて短髪を披露。アルマーニのラウンド型メタルフレームの眼鏡。
アルマーニのネイビーのスーツ。インナーは黒のバンドカラーのシャツ。



<迷ったら原点回帰、ブルースに戻る>

1994年発表のアルバムFrom the Cradleは全曲ブルースのカバー
アンプラグドでの成功後「原点回帰」を念頭に製作されたアルバムである。
ほぼ全曲が一発録りで制作された。(2曲のみオーバーダブしている)


From the Cradle発売に合わせて1994~1995年にかけNothing But The 
Bluesツアーを行う。演奏したのは全曲ブルースのカバーだった。


マーティン・スコセッシ監督が1994年11月フィルモアでのコンサートを撮影
したドキュメンタリー作品Nothing But The Bluesはお薦めだ。



Nothing But The Bluesツアーのポスター。クラプトンの愛犬たち。
クリックするとNothing But The Bluesが観れます(字幕付き)



僕は1995年10月武道館公演をアリーナ2列目正面で見ることができた。
ストラトにプラグインするカシャッという音、オフマイクでのメンバー間の
やりとりまで聴こえる。汗まで見えた。
クラプトンは通算9回生で見たが、この日のステージが最高だった。




このツアーでは白のストラト、後半1964年製チェリーレッドのES-335(また
ES-335 1959リシュー)を使用。

アコースティック・セットでは1939年製マーティン000-42にビル・ローレンス
の着脱式マグネット・ピックアップをサウンドホールに装着し、立ちマイクで
拾った生音とブレンドしていた。
(クラプトンはブラッキー、000-42に手を加えるのを嫌がった、とエンジニア
は証言している。この後マーティンが000-28と00-42のシグネチャー・モデル
を作るが、ピエゾ・ピックアップ内蔵だった。新品は気にしないらしい)




↑某セレクトショップの役員に「クラプトン、黒いTシャツでしたね」と言った
ら「アルマーニの3枚パックですよ。間違いない」とのこと。




1996年9月クラプトンはプリンストラスト・コンサートのトリを務める。
ハイドパークの野外ステージで15万人の観衆を前にクリーム時代から1970年代、
1980年代のクラプトン・クラシックスというべき代表曲のオンパレード。
From the Cradleに収録されているブルースのカヴァー曲も多かった。

これもクラプトンのベストパフォーマンスの一つ。(DVD化されている
スティーヴ・ガッド(ds)がクラプトン・バンドに加わった。



↑クリックするとHave You Loved A Womanが観れます。
VネックのTシャツ、リーバイス501にレザーのテイラードジャケット。
チェリーレッドのES-335が映える。



1997年サイモン・クライミーと共同のT.D.F.名義でRetail Therapyを発表。
ブルースとは真逆の打ち込みを駆使したハウス系アンビエント
クラプトンと恋仲だったシェリル・クロウの声もサンプリングされている。

アルマーニのファッションショーで使われる音楽を想定して作られたそうで、
クラプトンがブランドものを買い漁っていたことからRetail Therapy
(ショッピング療法)という皮肉めいたタイトルがつけられた。



↑クラプトンとアルマーニ。服は当然アルマーニでしょ。(写真:gettyimages)



2002年に結婚するメリア・マッケナリー(31歳年下)はアルマーニのセールス
エグゼクティブだった。彼女ともアルマーニのパーティーで知り合ったそうだ。
(写真:gettyimages)




<アルマーニから裏原ブランドへ>

1998年サイモン・クライミーと共同プロデュースでアルバムPilgrimを発表。
今までと毛色が違うソリッドなサウンドだが時々聴きたくなる。
以降サイモン・クライミーによるプロデュース作品が続く。


1999年Pilgrimツアーの一環で14回目の来日。
横浜アリーナでのコンサートをNHKが収録しBSで放送した。
登場シーン、手元や足元のアップなどファンの見たい所をうまく撮っている。



↑クリックすると1999年の武道館コンサートが観れます。


この映像でも分かるが、クラプトンのファッションの傾向が変わった
リーバイス501(シルエットが太いのは体型のせいでサイズアップした?
1960年代のヴィンテージだから?)、スケーター愛用のステューシーの
シャツなどカジュアル路線へ



↑レッドウィングのブーツ。
来日の際も渋谷店で購入している。
スーパーソール#204はFrom The Cradleの内ジャケにも写ってる。




↑珍しい?後ろ姿。デニムジャケットはリーバイス506。
針なしシンチバックとプリーツは1946〜1953年の戦後モデルの特徴。
(写真:mushroom)





クラプトンは藤原ヒロシ(1)と懇意になり裏原ブランドを好むようになる。
藤原氏の紹介で中村ヒロキが手がけるヴィズヴィム(2)のシューズやウェア、
原宿のインディアンアクセサリーの老舗ゴローズ(goro's)(3)のブレスレット
やネックレス、藤原氏プロデュースのヘッドポーターのバッグを愛用。










公演以外プライベートでも来日している。原宿にマンションまで購入。
一時は日本の某女優を愛人に。。。おっと、やめておこう(笑)

とんかつ福よしのチキンカツは大のお気に入りで、来日の際は必ず行くという。
「世界で最も美味しい食べ物の一つ」とクラプトンは言っている。



↑福よしの前で。クラプトンさんもちゃんと並んで入店してるそうだ。
ジャケットと靴はヴィズヴィム。バッグはヘッド・ポーター。




↑お買い上げはすべてヴィズヴィム。


Riding with the King(2000年)はB.B.キングと競演。再度ブルース回帰。


2001年のReptileはアルバム・タイトル曲のインストゥルメンタルが秀逸。
他はカバー曲が多くよく言えば多様で楽しめるが、悪く言えば散漫な印象。
(以降のアルバムもこんな感じ)

2001年のツアーではReptile、Somewhere Over The Rainbowの2曲で
1948年製ギブソンL-5Pを弾いている。
(音的にも絵的にもストラトとうまい使い分けだ)
ビリー・プレストンのハモンドオルガンもブルージー。

翌年One More Car One More RiderとしてCDとDVDが発売された。
(NHKが収録した2001年の武道館の方がいい絵が撮れてたが)



↑クリックするとReptileが観れます。(2001年のツアー)



2004年3月リリースのMe and Mr. Johnsonは再々度ブルース回帰
しかも全曲、敬愛するロバート・ジョンソンのカバーである。

同年12月に付随企画で映像版のSessions for Robert J が発売された。
ロンドン、ロサンジェルス、ダラスで収録されたMe and Mr. Johnsonの
レコーディング・セッション2004年ツアーに向けたリハーサルの模様
を収録したDVD+CDだ。

スティーヴ・ガッド、ネーザン・イースト、ビリー・プレストン、ドイル・
ブラムホールIIといった実力派を従え、クラプトンが奏で歌うブルースは
どっしり安定感があり、温かみがある。それを(目と耳で)堪能できる。


最後のダラス・ホテルは1937年にロバート・ジョンソンがレコーディング
を行った場所で、クラプトンにとっては感慨深い聖地巡礼となった。
その歴史的な部屋でドイル・ブラムホールIIのスライド・ギターとクラプトン
の2人のセッション、クラプトンのソロで旅は終わる。これは買いですよ!


↑クリックするとThey're Red Hotのリハーサルが観れます。


この企画はクラプトンが藤原ヒロシに依頼し実現したものだ。
藤原氏は最初、映像作品を手がけた経験がないため断ったが、クラプトンの
「これはヒロシにやってもらいたい」という熱意に押され承諾したという。

ありきたりの音楽ドキュメンタリーとは別格の、すばらしい出来である。
クラプトンのロバート・ジョンソン愛を理解してるからこそできたのだろう。





2004年6月クロスロード・ギター・フェスティバルの記念すべき第1回を開催。
クラプトンがアンティグア島に設立したアルコール中毒患者救済施設、クロス
ロード・センターを支援するためのコンサートで、多くのギタリストが参加。

2001年からニューヨークのグラフィック・アーティストCrashによるストリート
アートっぽいペイントが施されたストラト(3種類)をメインで使い始める。
これはフェンダーが新たに開発したノイズレス・ピックアップを搭載したクラプ
トンのシグネチャーモデルで、他にメルセデス・ブルー、ミッドナイト・ブルー、
ブラックが作られ現在もクラプトンは愛用している。






2005年5月クリームの再結成ライブがロンドンのロイヤル・アルバート・ホール
で行われた。これもクラプトンのベスト・パフォーマンスの1つだ。



↑クリックするとクリーム再結成のI'm So Glad が観れます。
ロックマウントのウエスタンシャツ、ジーンズはシルエットから察するにリー
バイス501XXまたはヴィズヴィム、靴もヴィズヴィム、
眼鏡はサヴィルロウのリムレス。


アンプラグド後、眼鏡はアルマーニのボストン型メタルフレーム、横長リムレス、
エルメスの黒セルフレーム、シルバーのオーバル型、ペルソールのセルフレーム、
を経て、1999年以降しばらくサヴィル・ロウ(Alga Works)のリムレスを愛用。
2014年のツアー以降はウェリントン型のブラウンのセルフレームをかけている。






時計はロレックスのコレクションが多数。パテック・フィリップも好みらしい。(4)

クラプトンは世界有数のスーパーカー・コレクターとしても知られている。
10台以上のフェラーリとランボルギーニ、ポルシェ、メルセデスを所有している。(5)



↑クラプトンの愛車、4億円(!)の特注フェラーリSP12EC。


2003年に藤原ヒロシがマーティン社にオールブラックとオールホワイトの000-42
を特注し、クラプトンにプレゼントした。
喜んだクラプトンはエルメスにこのギター用にクロコダイルのケースを特注。
Back Home(2005年)のジャケットに写っている。成金の悪趣味〜(汗)



↑2002年に結婚したメリア・マッケナリーとの間に子供もでき、クラプトンは
幸せいっぱい。なんか夫婦というより親子と孫って感じですな。
(写真:gettyimages)



2006年には敬愛する故JJ・ケイルとThe Road to Escondidoを発表。
ひさしぶりでレイドバックしたクラプトンが帰ってきた
僕はこのアルバムが大好きで夏になるとよく聴く。461の次に好きかな。



↑Two dirty old menだけどやっぱカッコいい。こんな格好してても。


2007年3月JJ・ケイルが特別出演したサンディエゴ公演は白眉の出来だ。
個人的にはクラプトン史上最高のパフォーマンスではないかと思う。

なにしろ前半のJ.J.の入らないセットではTell The Truth、Key To The 
Highway、Got To Get Better In A Little While、Little Wing、Anyday、
Laylaとデレク&ザ・ドミノス時代の曲のオンパレードなのだ。

デュアン・オールマンのスライド奏法を継承しそれ以上のテクを持つデレク・
トラックス(6)の参加がこれらの曲の再現に大きく貢献している。



↑クリックするとTell The Truthが観れます。(2016年にCD・DVD化)



クラプトンは2019年春までに通算22回も来日。
日本武道館公演は外国人アーティストとしては最多の96回である。

2014年発売のPlanes, Trains And Ericはクラプトン来日時のライブ映像
交えながら、関係者のインタビューや移動の様子などを撮影したドキュメンタリ
作品で、オフステージのクラプトンが見れてなかなかおもしろかった。
(がっつりフル・コンサートを堪能したいという人には不向きだと思うが)
クラプトンはもうツアーをやめると言ってるが周囲は誰も信じてないとか。






2017年には気管支炎のためLA公演を中止し車椅子で帰国する様子が報じられた。
2018年クラプトンは末梢神経障害のため聴覚障害、背中や足の痛み、指が動かず
以前のようにはギターが弾けないいことを明かした。

2016年の来日時はデニムのウエスタンシャツの下にアディダスのジャージ姿。
新しいファッションなのか?と驚いたが、足の疼痛のためらしい。




2018年にはこの人が何で?と思うまさかのクリスマス・アルバムを発表。
あいかわらずのクラプトン節ではあるが。
子供も3人でき、幸せな毎日なのだろう。クラプトンも後期高齢者である。
それでも2021年は全米ツアー、来日を予定してるという。

昔のようには弾けないから、レジェンドを見にくるつもりで来てくれ、と
クラプトンは言ってる。



多くのミュージシャンが加齢で残念な感じになっていく中、クラプトンは
歳をとっても渋く、カッコいいジジイであり続けた




クラプトンみたいに・・・は無理だけど、彼のセンスを少しだけ取り入れ、
歳に抗うことなく自分なりの工夫をしてみたいものだ。


<脚注>


(1)藤原ヒロシ

藤原氏はハウス、ヒップホップのストリートカルチャーをファッションに融合
させたプロデューサーで、裏原系のカリスマ的存在。
様々なブランドとのコラボを成功させ、その影響力は大きい。
ヘッドポーターも藤原氏と吉田カバンのコラボでプレミアがつく人気だ。



(2)中村ヒロキのヴィズヴィム
ヴィズヴィム(visvim)は中村ヒロキが手掛けるブランドで、ハンドメイドの
優しく包み込むようなモカシンシューズやスニーカーなど、ファッション性
と機能性の高さから日本のみならず海外でも人気を博している。
2003年からジャケットやデニムなどウェアの販売も行う。
クラプトンは懇意にしてる藤原ヒロシから中村ヒロキを紹介してもらった。
特にヴィズヴィムのモカシンシューズやデッキシューズ、ワークブーツ、
スニーカーは大のお気に入り。



(3)ゴローズ
ゴローズ(goro’s)は1966年創業の高橋吾郎氏のアクセサリーブランド。
1970年代前半には表参道に今と同じ店を構えていた。
(原宿で変わってないのはここだけかもしれない)
美しい銀細工やターコイズ、レザーのインディアンジュエリーは唯一無二。
ヴィズヴィムのインディアン・モカシンシューズにもよく似合う。


↑2013年に他界した
高橋吾郎氏トリビュートとしてマーティンはコアウッド
の000-42Kを作り、高橋氏の遺族とクラプトンに寄贈した。


(4)クラプトンの時計コレクション
ロレックス プレジデント・デイデイト プラチナム。デイデイト
ロレックス レッド・サブマリーナ 1680
ロレックス オイスター・アルビノ デイトナ 6263
ロレックス コスモポリタン ポール・ニューマン デイトナ
ロレックス GMTマスターII ブラックダイアル
ロレックス ミルガウス ドームド(ベゼル グリーンクリスタル)
パテック・フィリップ 5790 パーペチュアル カレンダー クロノグラフ
パテック・フィリップ 3970G







(5)クラプトンの車のコレクション
10台以上のフェラーリの中にはジョージからプレゼントされた車、フェラー
リに4億円で)特注オーダーしたワンオフ(世界で1台)のSP12EC(ベースは458)
、599GTBフィオラノF1などが含まれる。
ランボルギーニ ガヤルドLP 570-4スーパーレッジェーラ、ポルシェ 356カレラ 
1500クーペも所有。
メルセデスベンツC36AMGの色が気に入っていて、フェンダー社にシグネチ
ャーモデルを製造してもらう際、そのメルセデスブルーを指定している。
(こうしたコレクションのいくつかは近年オークションで売却したそうだ)



↑クラプトンのフェラーリ599GTB。


(6)デレク・トラックス
オールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー、ブッチ・トラックス(2017年1月
に拳銃自殺)の甥に当たる。
叔父の影響もあり幼少のころから音楽に親しみ、9歳でギターを始める。
デレクのスライド奏法はデュアン・オールマンの演奏スタイルを受け継いでいる。
エネルギッシュかつ熱く、それでいて驚異的なくらい音が正確である。
そしてブルースを基調としたフレーズのバリエーションが豊かだ。
デュアン・オールマンの再来、デュアンを超えたとも評される。
2007年Rolling Stone誌の「現代の3大ギタリスト」の一人にも選ばれた。


<参考資料: Free&Easy、NME Japan、RollingStone、BRITISH MADE、
洋楽ga好き!、RINKAN ヴィズヴィムの歴史、goro's connect、e-Begin、
The Warch Club、おとなの腕時計、ITALIAN WATCH SPOTTER、
WHERE'S ERIC、mushroom、MotorTrend、gettyimages、Wikipedia
Denim Celler、エコスタイル、GENROO Web、レコードコレクターズ、他>

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