2019年2月18日月曜日

憧れのピアニスト、アリス=紗良・オット。

1月によくツイートされてた#newyearsresolutionも2月にはほとんど姿を消した。
ジムもフィットネスも1月は混んでるけど2月は閑散。そんなものだ。

さて、僕の今年の抱負(New Year’s resolutionというよりMy goal for this year?)。
それは憧れのピアニスト、アリス=紗良・オットの公演に行くこと。





アリス=紗良・オットは7歳よりヨーロッパの数々のピアノコンクールで優勝。
10代半ばでデビュー。2006年から世界中でコンサートを行う。


2008年、19歳で名門ドイツ・グラモフォンと専属契約を結ぶ。
リスト:超絶技巧練習曲、ショパン:ワルツ集など次々と作品を発表。

クラシック・エコー・アワード2010ヤング・アーティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。
来日し各地で公演を行ない、テレビにも出演している。



↑インタビュー、ショパンのノクターン、リストのラ・カンパネラを視聴できます。



父親がドイツ人、母親が日本人。日本語、ドイツ語、英語を流暢に話せる。
彼女自身、自分はドイツ人なのか?日本人なのか?悩んだ時期があるという。

国籍は?と訊かれるとアリスは「音楽人」と答える。
国を越えて人々を繋げるのが音楽。音楽が始まれば国籍なんて関係ない
音楽は言葉以上に気持ちを伝える力がある。


祖母が危篤の時に、日本に帰れないので電話口でショパンのワルツ イ短調(遺作)
を弾いた(1)、というエピソードがある。
ショパンは晩年、結核のため隔離された部屋でこの遺作を書いた。

アリス=紗良・オットの魅力は凛とした美しさにある。
超絶技法の正確さフォルテシモのダイナミズム。狂気がかった目。
弾き終えた時さっと鍵盤から手を離し指揮者やオーケストラを見る瞬間もカッコいい。



↑リストのラ・カンパネラを視聴できます。




↑ベートーベンのピアノ協奏曲第1番が視聴できます。



反対に恍惚とした表情で弾くピアニッシモの繊細さ
清冽な泉が音で揺れ波紋が広がるようだ。


聴いてても見てても美しい。
特に彼女は鼻筋が通っている(欧米の血のせいか)ため、横顔がきれいだ。

クールな美人である一方、タレ目のせいかファニーフェイスでもある。
演奏を終えて、胸に手を当てて観客に笑顔で応える表情はかわいい。



そしてアリスはクラシック演奏家の型にはまらず、颯爽としていてカッコいい
ジーンズやレザーパンツを履きこなす。自由で素直な人だと思う。

リハーサルの時はよくステージやピアノの上であぐらをかいて客席を眺めている。
それがアリス流のリラックスで、本番に向けてイメージを膨らましているのだろう。



↑サン=サーンスの「サムソンとデリラ Act2:あなたの声に心は開く」。
チェロ奏者は巨匠ミッシャ・マイスキー!



アリス=紗良・オットには7つのルール(2)があるそうだ。

1. 本番前はルービックキューブ。
2. ステージの上では裸足。
3. 家でクラシックは聴かない。
4. 買い物はインターネットで。
5. ウイスキーはストレート。
6. 待ち時間は極力作らない。
7. 練習するより経験する。


1. →ルービックキューブは本番前、手を温めるのに一番いいらしい。
でもしょっちゅう無くすので、 Amazonで何度も買い直している。


2. →演奏する時はドレス姿に裸足。家でも裸足でいることが多いそうだ。
レザーパンツやパンタロンで颯爽とステージに登場することもある。



「コンサートは音楽を通してお客さまと時間と空間を分かち合えるのだから、一番
リラックスできる状態で弾きたい。裸足だとペダルの感触が直に伝わるのもいい。
お客さまにもリラックスした格好で聴いて欲しい。
こういう服装でこういう姿勢で聴かないといけないというルールはない。
その日着て行きたいと思う洋服、カジュアルであってもかまわない。
リラックスして文字どおり音を楽しんでもらえることが大切だと思う」
(アリス=紗良・オット)



3. →家ではピンクフロイドやツェッペリンをよく聴く
一番のお気に入りは「The Wall」。あとサザンオールスターズも聴くそうだ。
吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」も好きなんだって(?)


4. →買い物は面倒だからすべてインターネットで済ます。荷物が届くと大喜びする。


5. →ウイスキーをストレートで飲むのは何かを薄めたりするのが好きじゃないから。
好き嫌い、イエスノーがハッキリしている。

以前のアリスのインスタグラムのプロフィールには「ウイスキーとミルクチョコレー
トに目がないの。あとピアノというレアな楽器にもね」と書いてあった。






6. →待ち時間が嫌いだから公演当日はメイクを済ますのも本番18分前。
控室に向かったかと思えば忘れ物をしたと戻り、準備が整うのは本番45秒前とか。

大事なのは想像力で、世界が開けるのは舞台に足を踏み入れた瞬間でいい。
そう話すアリスは本番直前まで飾らない彼女のままだ。


7. →「私は1日10時間ピアノに座って練習するタイプじゃない。
音楽はマニュアル通りの練習だけじゃなく、普通の人生の経験も大事だと思う」

インスタで練習動画を公開しているが、なんともユニークだ。
ヨガのポーズで弾いてたり、生麦生米生卵・・・とつぶやきながら速いフレーズを
指に覚えこませていたり。。。。



↑足に挟んだタンバリンを叩きながらピアノを弾く。何が楽しいんだか(^^)



2月15日、アリス=紗良・オットは自身のサイト、SNSで多発性硬化症(3)と診断された
ことを明らかにした。
体調を崩しコンサート活動にも影響を及ぼしたため検査を受けた結果、今年の1月15日
に多発性硬化症と診断されたそうだ。

「昨年、初めて医師から多発性硬化症の疑いがあると言われた時は、私の世界は崩れ、
次から次へと続く検査の間、恐怖、パニック、そして、絶望感に襲われ続けました」
と彼女は綴った。


病気について調べ、医師の助言も受けてきたという。
「多発性硬化症は中枢性脱髄疾患の一つ。人によって違う症状が現れる自己免疫疾患。
現在は治癒は不可能な病気ですが、ここ何年の医学の進歩によりこの病気を発症した
多くの人がほとんど支障なく日常生活を送ることが可能になりました」

「私の現状を自分自身でより詳しく把握できるまで少し時間がかかると思います」と
しながらも「予定されているシーズンのコンサート活動へ意欲を持って臨みます」と
ポイジティブな姿勢を伺わせた。




●アリス=紗良・オットは7月に来日予定が決まっている。
エリアフ・インバル(指揮)、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団との共演。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467、マーラー:交響曲第5番ハ短調。

→モーツァルトは好きではない。が、モーツァルトなら間違いないというのも確か。
アリスのピアノも堪能できるし、交響楽団とのコンビネーションも見ものだ。
マーラーの交響曲は重厚すぎ。おそらくアリスの出番はないだろう。
前半の30分に16000円(S席)は躊躇してしまう。(個人的感想)


●9月には日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会にも出演するらしい。
曲目は伊福部昭:日本組曲、リスト:死の狂詩曲、ハンガリー狂詩曲第2番(管弦楽)。

→伊福部昭はゴジラなど東宝怪獣映画でお馴染みの雅楽+クラシック。
舞踏も入るようだが見たいと思わない。
ハンガリー狂詩曲はトムとジェリーを思い出して笑ってしまう。(個人的感想)


できれば交響楽団との共演じゃなくて、昨年のナイトフォール・ツアーのようにソロ
でもう少し小さい小屋でじっくりアリスの演奏だけを聴きたかった。





それよりアリスの病気の方が心配だ。
自分に合う治療法方が見つかり、うまく病気と付き合いながら本人が「音楽を楽しめ
る」生活を送れるようになって欲しい。リラックスして欲しい。

今年の抱負ではあったけど、今年でなくてもいい。
アリス=紗良・オットが元気な姿を再びステージで見せてくれ、素敵な演奏で観客を
魅了してくれる日を気長に待つとしよう。



最後に僕のアリス=紗良・オット愛聴盤を3枚紹介したいと思う。


ショパン:ワルツ集(2009年)

ショパンの本質はワルツにある、とアリス=紗良・オットは語っている。
ショパンは39歳で他界したが、晩年は結核のため家族にも会えず隔離された部屋で
を書き続けた。本作には遺作のワルツが収録されている。
このCDを録音した時、アリスは弱冠19歳。
命に寄り添ううようにゆっくりとワルツのリズムを刻みメロディーを紡いでいる。
内省的で浮遊感のある演奏で、特に弱音の繊細さはすばらしい

日本盤のみノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作がボーナストラックで入っている
これが絶品なので日本盤を買うべし!



↑ショパン:ワルツ集のトレーラーが視聴できます。



ナイトフォール(2018年)

タイトルの(夕暮れ)は、夜の帳が降りてゆく昼と夜の狭間。
移ろいゆく群青のグラデーション、夢と現(うつつ)、光と闇、相反する心象風景を表現。
ドビュッシーの「夢想」「月の光」、サティの「ジムノペディ」「グノシエンヌ」
ラベルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」なメジャーな選曲だが、アリス=紗良・オッ
トのしなやかなタッチは格別部屋を優しい響きで包んでくれる。
ドビュッシーはロジェ、ペロフを、サティはバルビエ、ロジェを聴いてきたが、アリス
の演奏の方が好きだ。
昨年のツアーはこのナイトフォールがテーマでソロ・コンサート。行きたかった。。。



↑ナイトフォールのプロモ・ビデオ、アリスのインタビューが視聴できます。


ショパン・プロジェクト(2015年)

ポスト・クラシカルの作曲・演奏家オーラヴル・アルナルズとの共演作。
ショパンの新しい解釈に挑んだ意欲作。繊細で静謐な静寂が心地よく広がる。
クラッシック・ファンの評判が良くないが、ニューエイジ、チルアウト、アンビエント
に近いネオ・クラシックとして完成度の高い作品でアリス新境地ともいえると思う。
ニルス・フラームを好む人にもお薦めだ。
このCDはグラモフォンではなくマーキュリー・クラシックから出ている。
音作りも低音を強調したり、静かな遠雷や雨音が入ったりアンビエント色が濃い。



↑オーラヴル・アルナルズとアリスのライヴ「Reminiscence」が視聴できます。


<脚注>


(1)ショパンのワルツ イ短調(遺作)
ショパンは晩年、結核のため家族にも会えず隔離された部屋でこの遺作を書いた。
そして39歳で亡くなった。


(2)7つのルール
2017年5月放送の「セブンルール」(関西テレビ)で紹介された。


(3)多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は脳や脊髄、視神経に病巣ができ視力障害、感覚障害、運動麻痺
などさまざまな神経症状を発症させる病気。
MSでは脳の情報を伝える働きをする軸索を覆うミエリンが何らかの原因で障害を受け、
脱髄状態の神経で情報がスムーズに伝わらず、以下のような様々な症状が現れる。

痛みや温度の感覚の鈍化、逆に過敏になることもある。
しびれ感、ひりひり感、顔や手足に、しびれや痛みが発作的に起こることもある。
手足に力が入りにくい、体の片側が動きにくい、ふらついて歩きにくい、など運動や
歩行に支障をきたす。
頻尿、排尿困難、残尿感、便秘など排泄の障害。
視力低下、視野欠損、霧がかかったようで見えにくい、眼を動かすと眼の奥が痛い。
理解力の低下、忘れっぽくなる、気分が高揚したり逆に鬱っぽくなる。
疲れやすい、発熱、入浴、運動などで体温が上がると、症状が出たり重くなる。

多くの場合、症状が出る「再発」と症状が治まる「寛解」を繰り返す。
厚生労働省が指定する難病のひとつ。詳細な原因は分かっていない。

寛解期には再発や進行を抑えるための治療を行う。
・インターフェロンβ製剤、ペプチド医薬品(いずれも免疫調節作用がある皮下注射)
・リンパ球に作用しMS再発を防ぐ飲み薬、酸化や炎症を抑えるMS再発を防ぐ飲み薬
・抗体製剤(リンパ球が脳や脊髄の中に入るのを防ぐ作用)の点滴

再発期
・ステロイドパルス療法(ステロイド剤を点滴注射する)
・血漿浄化療法(血液を体外に取り出し、血中のMS関与物質を取り除く)


<参考資料:日テレ「恋するクラシック」、MBS「情熱大陸 」、@niftyニュース、
OZmall、DMG MORI JAPAN、harrisonparrot、多発性硬化症jp、Wikipedia、他>

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