2024年4月1日月曜日

フェンダー・スクワイヤーを買ってみた。(使用5ヶ月レポート)



昨年10月にフェンダー・スクワイヤーのギターを2台購入した。

1台はスクワイヤー・ソニック・ムスタング(左)
もう1台はスクワイヤー・ミニ・ストラトキャスター(右)



<フェンダー・ムスタングとは>

ムスタングは1964年にフェンダーが発売したステューデント・モデル
小さめのボディにショートスケール・ネック(22.5または24インチ)は1956年に
発売されたミュージックマスターやデュオソニックと同じだが、独自のトレモロ
・ユニット「ダイナミック・ヴィブラート」を搭載している。






軽い力でアーム操作が可能だが、このユニットが仇となりサウンドもチューニング
も乱れる。「暴れ馬(=Mustang)の名のとおり使いこなすのが難しい



ジャガー、ブロンコもそうだが、ムスタングは車から拝借したネーミングである。

余談だがレオ・フェンダーは大のクルマ好きで、デュポン社の車用塗装料(ニトロ
セルロース系ラッカー)を自社製品に使用していたそうだ。
クラプトン・モデルのストラトにもメルセデスブルーという色があるくらいだ。



もう一つの特徴は、ピックアップのセレクターがスライドスイッチである点。
ON/OFF/逆位相のON、と3ポジション。
ややこしいので説明は省略するが(本当は理解しきれていない)




2基のシングルコイル・ピックアップは磁極とコイルの巻き方が逆。
配線はシリーズ(直列)。
両方を同じ位相でONにすると、疑似ハムバッカー的な太いサウンドが得られる。

初心者向きというより、マニアックなプレイヤー受けするギターだ。



しかしショートスケール、軽量なポプラ材を使用した小振りで薄いボディー
日本人にも抱えやすく弾きやすい。このサイズ感は何者にも代えがたい。
レトロな見た目も魅力的だ。




日本ではChar氏が愛用していることで有名。ムスタングを広めた第一人者である。
ストラトが盗難に遭い、米軍基地のバザーで安いムスタングを見つけたのだとか。
1980年代アメリカでマイナーだったムスタングに日本からの注文が殺到し、フェン
ダー社を驚かせだという。


1990年代にはニルヴァーナのカート・コバーンが愛用したことで人気に火がつく。
2000年代にはノラ・ジョーンズもよくライヴで使用している。







<スクワイヤー・ソニック・ムスタング>

スクワイヤー(Squier)はフェンダーの下位ブランド。
1982年発足時は日本のフジゲンが製造し、国内のみで販売されていた。

現在は製造コストを抑えた低価格モデル本家フェンダーにはない独自モデル
復刻モデルを中国・インドネシアで製造し全世界に供給している。

スクワイヤーは複数のシリーズ展開を行なっている。
中でも最上級のClassic Vibeシリーズ(中国製)はフェンダー・メキシコを凌駕
する出来と評判がよい。




購入したムスタングはエントリークラスのSonicシリーズ(Bulletの後継機種)。
設計はUSフェンダーだが、製造はインドネシア。価格が抑えられている。

クオリティーはそれなり。木材とパーツのグレードが低い。フィニッシュも雑。
しかし演奏に支障はなく音もなかなか。十分だ。つまりコスパがいい。




26,400円だった。これ、定価ですよ。信じられない。。。
売れてるらしく品薄。昨年10月時点で値引き販売してる店はなかった。
Amazonのマケプレで石橋楽器から購入。

オクターブ調整と弦高チェックは購入時にお願いしておいたおかげで、非常に
いいコンディションの個体が届いた。
ネックはまっすぐで弦高はかなり低い
密閉式チューナーも滑らかで精度が高く、狂いが出ない。かなり優秀。






心配していたフレット縁のバリもなく、運指はスムーズである。
ハイポジションでフレットにビビりが出る箇所があったが、弦を張って2週間
ほどでテンションが加わったせいか解消した。


肝心の音だが(本家のムスタングを所有したことがないので比較できないが)
フェンダーらしさもあり、ストラトより中域に集まったコシのある音
けっこう好みの音だ。(アンプはBlackstarを使用している)



↓スクワイヤー・ソニック・ムスタングのデモ動画が見れます。
https://youtu.be/sTi1ZA1-6lc?si=ALLIsa8k2eaHrVfW
https://youtu.be/X74ufuYO-eA?si=80H7EyDohYHKVhNK




ソニック・マスタングはオリジナルに大胆な仕様変更が加えられている。

トレモロ・ユニットは廃され、6サドルハードテイルブリッジへ。
弦高とイントネーションを個別に調整でき、チューニングも安定している。




分かりにくいピックアップのスライドスイッチが廃され、3ポジションのトグル
・スイッチが採用された。(演奏中に右手がスイッチに触れ動いてしまうのが


2基のセラミック・ピックアップはパラレル(並列)配線に変更されている。
シリーズ(直列)と比べるとレンジが広くパリッとしたサウンド。
スイッチをセンターにして2基のピックアップをミックスさせると、ストラトの
ようにマイルドでややこもったようなハーフトーンが得られる

擬似ハムバッキング効果が欲しいなら、シリーズ(直列)配線に変えればいい。
フェンダー製品はピックガードを外せば、電気系統が修理できるのが利点だ。



ボディーは軽量なポプラ材で、総重量は3kg強。抱えても負担に感じない。
ストラトのようなコンター加工(体に当たる部分を削り落とす加工)は施されて
いないが、ボディー厚は薄くボディー幅も狭いので支障はないと思う。

ムスタングはストラトと比べるとブリッジが前の方にあり、その分ボトムが
長いのだが、抱えてみると違和感はない。




カラーは2色展開。タバコ・サンバースト(2トーン・サンバースト)を選んだ。
ポプラ材は思ってたより、木目がきれいに出ていい感じである。
白いピックガードに配された黒いセラミック・ピックアップ、金属プレート+黒の
ラジオ型コントロールノブのレイアウトもカッコいい。


トリノ・レッドもいい色で黒いピックアップやノブとのコントラストがきれい。
ボディーの塗装はウレタンのグロス・フィニッシュ




ネックはメイプル材のCシェイプでハイポジションまでグリップしやすい。
塗装はネックも指板もウレタンのサテン・フィニッシュ
メイプル指板のツルツルした感触は苦手だが、これはとても弾きやすい。


ネック幅(ナット側)は42mmと標準サイズに変更(オリジナルは極狭ネック)
フレット数は22。

弦長はオリジナルと同じショートスケールの24インチ (610 mm)。
弦は09-42(アーニーボールのスーパースリンキーと同ゲージ)が張ってあるが、
ぜんぜん緩いとは感じない。ほどよいテンションだ。
快適だ。もうストラトやテレキャスの25.5インチ (648mm)には戻れない。






<スクワイヤー・ミニ・ストラトキャスター>

ミニ・ストラトはストラトキャスターをそのまま3/4サイズにダウンサイジング
したかわいいヤツ。スクワイヤーだからこできた遊び心いっぱいのモデルだ。
が、決してお子様用ギターではない。
100%フェンダー設計で通常の使用に耐えられるモデルである。

ミニは独立したシリーズだが、ソニックと同等の低価格ラインと思われる。
製造はインドネシア。仕上げは雑で、品質のバラツキはある。




薄く軽量なポプラ材ボディ22.75インチ (578mm)の超ショートスケール
Cシェイプの細ネックは何時間でも弾いてられそう。ウソみたいに楽ちんだ。
初心者、小柄な人、女性、体力が衰えた中高年にも寄り添ってくれるギターだ。





どんなコードフォームでも難なく押さえられる。速いパッセージも弾きやすい。
ジミヘンみたいにバカでかい手の人はこんな感じでワシッと掴んでるのだろう。


弦は09-42でテンションは緩い。10に上げてもいいが、ネックの順反りが心配。
ハードテイルブリッジ採用。トレモロユニットは付いていない
そのためストラト特有のトレモロユニット用キャビティが裏側にない。




ネック幅(ナット側)は1.6インチ (40.6 mm)。これはさすがに細すぎ。
ローコードを押さえると指がぶつかる。
フレット数は20。まあ、よほどハイポジションじゃない限り弾ける。




サウンドは「あ〜ストラトだな」と思える。十分ではないか。
定価36,520円でこの出来だ。実売価格25,000〜28,000円で手に入る。

↓スクワイヤー・ミニ・ストラトキャスターのデモ動画が見れます。
https://youtu.be/aSgNhPKwnW4?si=H48NF--V09vOoH2a
https://youtu.be/kvNRK-o-SxE?si=BZ2J64iB6engHaWc







ミニ・ストラトはブラック、ダコタレッド、シェルピンク、の3色展開。
ウレタンのグロス・フィニッシュである。

指板はインディアンローレルという近年ローズウッドの代替で使われる木材。
ローズウッドより色が浅く、やや乾いたカサッとした感触。
ネックも指板もメイプルウレタンのサテン・フィニッシュで感触がいい。




アメリカではこの他、3トーンサンバースト、限定でダフネブルー(淡い水色)
、オレンジ、サーフグリーンがあった(日本では取扱なし)




どうしてもサーフグリーンが欲しい!

「アメリカングラフィティ」にこういう色のアメ車が出て来そうだ。
実際に「Surf Green」はGM社が1957年にシボレーの塗装に使っていた色。





1960年前後のミュージックマスターかデュオソニックにサーフグリーンが
あったかどうか定かでないが。。。ありそうな色だ。

3/4サイズのミニ・ストラトは、ほぼステューデント・モデルのサイズ
このサイズだからこそサーフグリーンが似合う。




ミニ・ストラトは3ピックアップで5ウェイ・トグルスイッチ付きであるが、
コントロールノブは2個。見た目がステューデント・モデルっぽい。

チューナーは精度のいい密閉式だが、表から見るとクルーソンのビーン型。
小ぶりのボディーによくマッチしている。





アメリカのAmazonにテキサス州オースティンの楽器店がサーフグリーンの
ミニ・ストラトを出品してるのを発見。
円安が140円を超えた頃だったが、ポチった。

配送が大幅に遅れAmazonがペナルティとして配送料を負担してくれたので、
国内で定価で買うより安いくらいで収まった。


ギターは発送連絡後、数日で無事届いた。


弦高はすべてのポジションで指板から1.5mmくらいで低すぎるくらい低い。
何箇所かベンディングやヴィブラートをかけるとフレットがガサガサ鳴る
(アンプからの音出しの際はフレットのガサガサは影響しない)




ネックの側面はフレットの縁が少し手に当たる。仕上げが雑だ。
フレットを磨くという工程を省いているのだろう。

それ以外は本当によくできたギターだと思う。
6万円でそこそこのギターが2台買えちゃう。スクワイヤー、コスパ良すぎ!



<メンテナンス、5ヶ月間の使用感>

気になったベンディング時、ヴィブラート時のフレットのガサガサ音だが。
ムスタングは弦を張って数日経ったら、テンションで弦高が上がったせいか、
音がしなくなった。

ミニ・ストラトは元の弦高が低すぎたので、弦を張りっぱなしでもまだ低い。
フレットのガサガサ音はそのまま。


こういう低価格ギターはフレットを磨いてないのが原因らしい。
弦を外して指板をマスキングしてフレットにコンパウンドをかけるといいと
書いてあるが、そんなの面倒だ。不器用だから失敗する。
かといって、ギターショップに持ち込むのも面倒。。。




一番簡単かつ短時間でできるフレットの磨き方として紹介されていた「フレ
ットバター」を試してみることにした。




薬剤(甘い匂いがする)が染み込んだベトベトしたクロスが入っている。
それでフレットと指板の汚れをまとめてごそっと拭き取る、というもの。
試してみたが、効果は感じられなかった。




使用前にフェンダーのカスタマーサポートにフレットバターを使用していいか
質問したら「かまわないがメイプル指板はフレットの汚れが移り黒ずんでしまう
場合がある」とのことだった。

また「フレットバター使用後は、フィンガーボード・レメディ(指板メンテナ
ンス剤)やレモンオイルで保湿を」とのアドヴァイスをもらった。

レモンオイルは以前からアコギの指板やブリッジに使用しているが、匂いが強い
ので家族にはあまり評判がよくない(笑)




フィンガーボード・レメディを買って使ってみた。
柑橘類と蜜蝋のワックスで指板の汚れを除去し、光沢と潤いを与えてくれる
レモンオイルよりも保湿効果は高く、持続する。
サテンフィニッシュのメイプル指板にもローズ指板にも使える。

この冬、3回このフィンガーボード・レメディで指板を磨いた。
ボディーは高級車用の艶出しワックス(アメリカの楽器店推奨)で磨く。


弦は張りっぱなしにしてあったが、先月チェックしたらムスタングの方は弦高
が少し上がって来て(まだ許容範囲だが)ネックはわずかに順反り傾向。

冬場は乾燥するので順反り、夏場は湿度が高いため逆反りしやすい
弦を少し緩めて放置したら、ネックは復って来た。




ミニ・ストラトの方も弦高が少し高くなり、ちょうどいいくらいになった。
フレットのガサガサ音はほとんど気にならなくなったが、最近ローポジション
の1〜2弦がビビるようになった。
ネックは高音弦側だけやや順反り。それでヘッド側だけ弦高が下がったらしい。

ネックのねじれ」だと思われる。
USフェンダーのストラトでも起きるので、メイプルネックの宿命だろう。
数ヶ月で変化が出るのは、やはり使用してる木材のグレードのせいか。



考えてみると、トーカイやフェンジャパ(フジゲン)のストラトは弦張りっ
ぱなしでもネックが反ったりねじれたり、という経験がない。
やはり日本国内で十分に寝かせた木材だと季節の影響を受けにくいのだろう。

4月中旬、湿度が安定してきたらムスタングもまた弦を張りっぱなしにして、
いつでも手に取って弾けるようにしよう。


安値のギターは使い倒せばいい、という気楽さがいい



<参考資料:FENDER.COM、エレキギター博士、Wikipedia、YouTube、
楽器屋店員yoshguitarブログ、とらべるらいと スクワイヤーってどうなの?
、Guitar Hacks、デジマート、Killer Guitars、iB MUSIC STUDIO、
島村楽器、THE ONE、Pinterest、他>

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