2026年8月1日土曜日

待ちに待った「ラバーソウル」2026リミックスがやっと発売。



<アンソロジー優先で一年遅れとなったラバー・ソウル>

心待ちにしてた「ラバー・ソウル」リミックス盤の発売(10月2日)が発表された。
オリジナル盤は1965年。本来なら昨年、60周年記念盤として発売されるべきだ。

ところがアンソロジー30周年が優先されて立ち消えになったらしい。
ビートルズの歴史を総括し、未発表音源を初お披露目という企画だったわけだが、
そのアンソロジーから既に30年経過してる、という事実に改めて驚く。


1995年にアンソロジー企画の目玉として、ジョンの遺作のデモテープを生存してた
3人が完成させ3つの新曲を発表することになっていた。
Free As A BirdとReal Love2曲はうまく行ったが、残りの1曲Now And Then
は頓挫しお蔵入りになる。

1995年の技術では分離できなかったカセットテープのジョンの声が現在のAIデミッ
クス(1)を使えば可能だ。
であればFree As A BirdとReal Loveもやり直せる、断念したNow And Then
なんとか完成させたいポールの執念もあり、アンソロジー企画優先に働いたという
事情もあるだろう。


↑1965年当時のLP出荷前の最終確認


アンソロジーとラバー・ソウルが同年発売だったとしても、買う人は両方買う。
しかし、アップルとユニバーサル・ミュージックの市場分析と意思決定は違った。

「ラバー・ソウル」リミックス2025はどうなる?延期か?無くなるのか?
CDの新譜がほとんどなくなった昨今、今までのようなパッケージ販売は無理か?
多くのファンが心配していたはずだ。2ヶ月後に発売の朗報が入りホッとしている。




<ビートルズ中期の名盤「ラバー・ソウル」の重要性>

「ラバー・ソウル」はビートルズの進化における転換点となった重要な作品だ。
楽曲制作、使用楽器、レコーディング技法において、従来のポップミュージックの
慣習を超え、冒険的なアプローチを試みた野心作といえるだろう。

1曲1曲の完成度が高いだけでなく、アルバム全体として統一された色に彩られた
芸術性の高い、見方によっては長編作品でもあり、後にコンセプト・アルバムと
称される形式の作品の先駆けとなり、高く評価されている。





ブライアン・ウィルソンは「ラバー・ソウル」に触発されて「ペット・サウンズ」
を制作し、ビーチボーイズの新しい音楽性を開拓した。(2)

「ラバー・ソウル」はさらに革新的な次作「リボルバー」への起点となった。(3)
そして世界中を驚かせた「サージェント・ペパーズ」へと続く。


「ラバー・ソウル」は1965年10〜11月の2ヶ月間で制作されている。
2〜5月に映画「ヘルプ!」の撮影、その合間を縫ってアルバム「ヘルプ!」の制作、
8月には全米ツアー、と4人は忙殺されていた。

ヒットメーカーのレノン=マッカートニーもさすがに曲作りの時間が取れない。
アルバム14曲分を揃えるのは難しかった。
そのためジョン曰く「穴埋め」的なやっつけの曲(4)や「ヘルプ!」でボツにした
(5)の再利用でなんとか体裁を整えている。





それでもアルバムを通して聴くと完成度が高いと感じるのは、名曲が多いのと
平均点以下でもいい曲に仕上げてしまう4人のアレンジ・演奏力、つまり時代を
制したビートル・マジックなのかもしれない。


1曲目のDrive My Carのど迫力、グルーヴ感でまず圧倒されるだろう。
Michelle、Girlはとことん美しく切ない
Norwegian Wood、In My Life、Nowhere Man、と内省的な名曲が多い。
I'm Looking Through Youはポールの軽快なカントリー・ロック。
If I Needed Someoneはジョージの代表曲の1つとなった。






<「ラバー・ソウル」では使用楽器も新たに追加される>

ポールはリッケンバッカー4001Sベースを使用するようになる。
Michelleではルート外しのベースラインを披露。ベースの新境地を開く。
この曲ではアコギ(エピフォンFT-19Nテキサン)も弾いている。



↑エピフォンFT-19Nテキサンの5フレットにカポ。
Michelleを弾いてると思われる。



↑リッケンバッカー4001Sを弾くポール。5フレットにカポを付けている。
VOXのアンプに立てかけてあるのは、ジョンのフラマス12弦ギター。


ジョージは初めてNorwegian Woodでシタールを弾く。
お馴染みのグレッチ、リッケンバッカーの12弦に加え、ストラトキャスター、
エピフォン・カジノ、ギブソンES-345TDと音のバリエーションが増える。

ジョンは愛器ギブソンJ-160Eと前作「ヘルプ!」でも使用したフラマスの12
弦ギターを弾いている。

リンゴはラディックのドラムセットだが「フォー・セール」からバスドラム
の口径が22インチと大型化している。



↑アビイロード第2スタジオ。ラバーソウルで使用した楽器が並んでいる。




<「ラバー・ソウル」リミックス切望の理由>

「ラバー・ソウル」は最もリミックスが期待されるアルバムと言っていい。
オリジナルのステレオミックスは左チャンネルに演奏、右チャンネルにボーカル、
極端な左右泣き別れで、とても不自然だった。

ステレオ盤をモノラルのプレーヤーで再生した時にバランスよく聴こえるように、
とジョージ・マーティンが判断したためらしい。(6)
また一体型のコンソールで左右のスピーカーがあまり離れていないステレオシステム
でも、左右泣き別れの方がステレオ感を味える、という判断もあったのではないか。





1986年に初CD化された際、ジョージ・マーティンによってやや中央よりのミック
スに修正。それでも不自然な左右泣き別れは踏襲されている。
LP時代との違和感がないように、という配慮だったのだろう。

2009年にビートルズ全アルバムがリマスターされるが、「ラバー・ソウル」は
1986ミックス、1965当時のミックスの両方が収録(以前として不自然)。



今回の2026リミックスについては、プロデューサーのジャイルズ・マーティン
とエンジニアのサム・オケルによって、マスタリング以前の音源まで遡り、AI
デミックス(1)も駆使し新しいステレオミックスが行われた。


The Beatles - Rubber Soul (Pre Order Ad)




 

<「ラバー・ソウル」への思い入れ>

「ラバー・ソウル」は初めて買ったビートルズのLPだった。

中学生のお小遣い事情では、なかなか2000円のLPをポンと買うことができない。
僕たちはシングル、コンパクト盤の収集から始め、持ち回りで「まだ聴いてない
LP」を買ってはカセットテープに録音して聴いていた。

僕が買った「ラバー・ソウル」は国内盤だった。
東芝音楽工業(後の東芝EMI)から発売されたものでレーベルはオデオン。(7)





解説書には「ラバー・ソウルは若者の移ろいやすい心、ゴムのようなはずむ心」
を表している」と書いてあった。大嘘だった。

1965年当時、ローリングストーンズのことを黒人のブルースマンが「プラスチッ
クソウル」と揶揄したのをポールが気に入ってよく口にしていた。
「ラバー・ソウル」はそれをもじったものだ。


収録曲の邦題を見て、どの曲か分からず一瞬迷う。今は英題がスタンダードだ。
「嘘つき女」って何だ?「君はいずこへ」ってどれのこと?


Side A 
ドライヴ・マイ・カー  Drive My Car
ノルウェーの森  Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
ユー・ウォント・シー・ミー  You Won't See Me
ひとりぼっちのあいつ  Nowhere Man
嘘つき女  Think For Yourself
愛の言葉   The Word 
ミッシェル  Michelle

Side B 
消えた恋 What Goes on
ガール   Girl
君はいずこへ I'm Looking Through You
イン・マイ・ライフ  In My Life
ウェイト  Wait
恋をするなら If I Needed Someone
浮気娘 Run For Your Life






「ノルウェーの森」はすばらしい邦題だが、実は誤訳(8)

森なら複数形のWoodsのはずだ。
Norwegian Woodは内装や家具に使う安価なノルウェイ産の松材のこと。
当時ロンドンでは、労働階級のアパートに使われる安い木材だったらしい。

でも「ノルウェーの森」というタイトルは(たとえ誤訳でも)、「鬱蒼とした
北欧の森」をイメージさせ、なんだか意味深でいいですね。




<「ラバー・ソウル」2026の発売形態>

1CD デジスリーヴ入り+20ページのブックレット付き

スペシャル・エディション 2CD  
Disc2は未発表のセッション録音やデモ音源、シングル 16曲



スペシャル・デラックス・コレクション 4CD
88ページのハードカバーブック付き
Disc2は未発表のセッション録音やデモ音源、シングル 23曲
Disc3はオリジナル・モノ・マスター
Disc4はオリジナル・キャピトルUS盤(収録曲が英国盤と違う)(9)



Blu-ray(スペシャル・エディション)
2026アトモス・ミックス
2026ステレオ・ミックス 96kHz/24bit PCM
デイ・トリッパー/恋を抱きしめよう ビデオ各2ヴァージョン

ヴィニール盤は5LP+7インチシングル2LPLPで発売。
カラーLP(オレンジ)もHMV、タワーレコード限定で発売。






<未発表のセッション録音やデモ音源>

スペシャル・エディション(2CD)の16曲で充分かな。
バッキングの演奏がほとんどで、あまり目玉はないように思う。

1. Day Tripper (Songwriting work tape)
2. Day Tripper (2023 mix)
3. We Can Work It Out (Paul’s demo)
4. We Can Work It Out (2023 Mix)

5. Wait (Take3 instrumental backing track)
6. Run For Your Life (Takes1-5 instrumental backing)
7. Norwegian Wood (This Bird Has Flown)(2nd.ver.Take2)
8. Drive My Car (Takes1&2 instrumental backing track)
9. If I Needed Someone (Take1 instrumental backing)
10. In My Life (Take1)
11. Nowhere Man (2nd.version Take5 inst. backing)
12. Michelle (Take1)
13. What Goes On (Take1 instrumental backing track)
14. I’m Looking Through You (2nd.version Take3)
15. The Word (Takes 1&2 instrumental backing track)
16. Girl (Take2 instrumental backing track)





Day Tripperのワークテープ?は何だろう(ワクワク!)
We Can Work It Outのポールのデモはブートで出回っていた。
Norwegian Wood Take2は最終形に近いが、キーが低く怠い雰囲気。

In My Life (Take1)はアンソロジー4に収録済み

Nowhere Manの演奏とコーラスも、アンソロジー4に収録済み
I’m Looking Through You Take3は初音源?

Michelle (Take1)が公開された。既に美しい。ほぼ最終形。



スペシャル・デラックス・コレクション(4CD)のDisc2に収録される
ジョンのデモ「Little Girl」は初登場音源のようだ。
興味があるが、たぶん数回聴けば納得〜という程度ではないかと思う。
Run For Your Life の原型の可能性もある。





<脚注>


(1)AIデミックス
映画「ゲット・バック」のためにピーター・ジャクソン監督の音響チームが開発し
た新技術で、AIに4人の声を学習させることで楽器や騒音に埋もれた会話から各自
の声を鮮明に抜き出す、というもの。

ジャイルズ・マーティンは「リボルバー」2022リミックスで、ジャクソン監督に頼
んでこの新技術を使わせてもらった。
ローリングストーン誌のインタビューで、ジャイルズはデミックスについてこう説
明している。
「たとえばもらったケーキを小麦粉、卵、砂糖と元の材料に戻して1時間後に戻っ
てくるようなものなんだ。
その材料にはケーキの痕跡、他と混ざっているものは残っていない」


(2)ブライアン・ウィルソンの「ペットサウンズ」と「ラバー・ソウル」

<関連記事>をご参照ください。
 ↓
ブライアン・ウィルソンが聴いたラバーソウルはUK盤?US盤?どっち?


(3)「ラバーソウル」と「リボルバー」
ラバーソウルとリボルバーは僕的には兄弟みたいな作品だ(ジョージ・ハリソン)
ラバーソウルとリボルバーはどっちにどの曲か憶えたないな(ジョン・レノン)
確かに2つのアルバムは延長線上にある。
ラバーソウルで始まった実験的な試みが、リボルバーではより進化して革新的に
なり、集大成としてのサージェント・ペパーズに繋がった。

2枚のアルバムの決定的な違いはサウンドにあるのではないか。
ラバーソウルのミキシング・エンジニアはノーマン・スミス、リボルバーからは
ジェフ・エメリックが就任し、4人の音へのこだわり、要求を次々と実現させた。
ラバーソウルで音が豊かになったが、リボルバーではさらに低域の迫力が増し、
奥行き感、深みを感じられるようになった。


(4)「穴埋め」的なやっつけの曲
Run For Your Life エルヴィスみたいな曲ともジョンは発言してる。

(5)「ヘルプ!」でボツにした
Wait タンバリンなどパーカッションを加えラバーソウルに合うよう仕上げた。
未発表セッション音源のWait (Take3 instrumental)は、もしかしたらパーカッ
ションを加える前の「ヘルプ!」時の音源かもしれない。


(6)ステレオ盤をモノラルのプレーヤーで再生した時のバランス
1965年当時、英国のステレオ再生装置の普及はアメリカや日本より遅れていた。
一部のマニア層以外はモノラル・プレーヤーが主流であった。
アメリカはハイファイコンポーネント文化が成熟しつつあり、日本でもリビングの
ステイタスシンボルとして「家具調ステレオ」人気が上昇し出した時期である。
(出典:Google Memini、日本ラジオ博物館)



(7)レーベルはオデオン。
ビートルズの所属レーベルは英国ではEMI傘下のパーロフォン(Parlophone)。
当時の日本の発売元であった東芝音楽工業は、本国の系列レーベルからイメージ
に合うものを独自に選択することができた。
担当ディレクターだった高嶋弘之氏らは、新しいポップスにふさわしい響きや
デザインを持つオデオン・レコードを選ぶ。
さらに日本独自の「O」の文字をレコード溝に見立てたデザインを採用した。
ちなみに米国では販売元のキャピトル(Capitol)レコードが使用されていた。
1968年にビートルズがアップル・レコードを設立したことで、日本でも順次
アップル・レーベルへと切り替わって行く。
(出典:Google Memini)




(8)「ノルウェーの森」

<関連記事>をご参照ください。
 ↓
「ノルウェイの森」に隠された意味とは?



(9)キャピトルUS盤(収録曲が英国盤と違う)

Side A
1.I've Just Seen a Face *
2.Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
3.You Won't See Me
4.Think for Yourself
5.The Word
6.Michelle

Side B
1.It's Only Love *
2.Girl
3.I'm Looking Through You
4.In My Life
5.Wait
6.Run for Your Life

Drive My Carではなくカントリー風のI've Just Seen a Faceが1曲目。
B面の1曲目もアコースティック・ナンバーのIt's Only Love。
フォークロック色が強く、英国盤ラバー・ソウルとだいぶ印象が異なる。

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