2020年1月5日日曜日

クリーム解散直前の全米ツアー、ロンドン公演が発売!

年末に友人が教えてくれた。

2020年代のスタートを飾る貴重な発掘音源が2月に発売されるらしい。
1968年クリームが解散宣言後に行った10月の全米ツアーから3公演、
11月26日のロンドン公演を全曲収録した4CDセットである。



Disc1~3に収録される全米ツアー3公演はオリジナル・テープより新たにリマ
スターされた最高音質で収録、とのことだ。

全35曲中、最後のアルバム「Goodbye Cream(1969)」に収録された3曲、
後にリリースされた「Live Cream Volume II(1972)」に収録された3曲、
クラプトンの自伝映画「Life In 12 Bars(2018)」OST盤収録の1曲以外は
すべて初登場の音源だ。

Disc4はロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールでの最終公演をオリジナル
・マスターよりトランスファーされた初音源。
BBCテレビで放送され後に映像作品化ものより格段に高音質だろう。





↑Sunshine Of Your Love (Live At Oakland Coliseum)が公開されている。

音はかなりいい。ボーカルは二人ともセンター。
クラプトンのギターは右寄り、ジャック・ブルースのベースは左寄り。
ベースもリードのような唸る演奏をしてるのでこの定位は聴きやすい。
ジンジャー・ベイカーの4タム、2バスドラ、スネア、ハイハット〜ライド〜
クラッシュ・シンバルの強烈なアタック音が左右に広がり迫力満点だ。



以下が収録曲である。

DISC 1 – 1968/10/4 オークランド・コロシアム (USツアー初日)
White Room*
Politician*
Crossroads 
Sunshine Of Your Love 
Spoonful 
Deserted Cities Of The Heart*
Passing The Time 
I'm So Glad 

*は「Live Cream Volume II(1972)」に収録。


DISC 2 – 1968/10/19 LAフォーラム
White Room 
Politician*
I'm So Glad*
Sitting On Top Of The World*
Crossroads 
Sunshine Of Your Love 
Traintime 
Toad 
Spoonful**

*は「Goodbye Cream(1969)」に収録。
**は「Life In 12 Bars(2018)」OST盤収録。


DISC 3 – 1968/10/20 サンディエゴ・スポーツ・アリーナ(全曲未発表)

White Room 
Politician 
I'm So Glad 
Sitting On Top Of The World 
Sunshine Of Your Love 
Crossroads 
Traintime 
Toad 
Spoonful 


DISC 4 – 1968/11/26 ロンドン ロイヤル・アルバート・ホール(初CD化)

White Room 
Politician 
I'm So Glad 
Sitting On Top Of The World 
Crossroads 
Toad 
Spoonful 
Sunshine Of Your Love 
Steppin' Out 



↑このツアーでクラプトンはギブソンのファイアバードとES-335を使用。
ジャック・ブルースはギブソンEB-3、アンプは二人ともマーシャル。
ジンジャー・ベイカーはラディックのシルバースパークル2バス・セット。
(シンバルはジルジャン)



多少の違いこそあるものの、Disc1~4のソングリストはほぼ同じ。
長尺の曲の演奏の出来を聴き比べるのは、けっこう根気が要りそうだ。

それとこのツアーがクリームのインタープレイ(1)の頂点か?と問われると、
うーん、どうなんでしょうねー。



個人的には以下2枚のライヴ盤がクリームの真骨頂ではないかと思う。
いずれも1968/3/10 サンフランシスコ・ウィンターランドでの録音。
クラプトンによる解散宣言が7月10日だから、その4ヶ月前のライヴだ。





Wheels of Fire(1968 クリームの素晴らしき世界)
2枚目(2)に収録のLive at the Fillmoreからの4曲。

Crossroads 
Spoonful 
Traintime 
Toad 


Live Cream(1970)

N.S.U. 
Sleepy Time Time 
Sweet Wine 
Rollin' and Tumblin' 
Lawdy Mama *1967年のスタジオ録音。Strange Blueと演奏は同じ。(3)




Live Creamの方はデビュー・アルバムのFresh Cream収録曲でのみで、
後のヒット曲は入ってないものの、緊張感がありながらよく制御された
4人のインタープレイが堪能できる。

僕はヤマハの輸入盤セールでこのLive Creamを買って聴き込んだ。
ジャケットもいい。(ジャケ写は10月の全米ツアー時のものと思われる)
N.S.U.が特に好きでバンドでもやった。(僕はベース担当だった)


Live Creamの好評でLive Cream Volume II(1972)も発売された。

Deserted Cities of the Heart 
White Room 
Politician 
Tales of Brave Ulysses** 
Sunshine of Your Love* 
Steppin' Out**

*は1968/3/9 サンフランシスコ・ウィンターランドで収録。
**1968/3/10 サンフランシスコ・ウィンターランドで収録。




前半の3曲は1968/10/4日 オークランド・コロシアム・アリーナで収録。
(つまり今回のDISC 1収録と同じテイクということになる)

クリームの代表曲が網羅された美味しい内容にもかかわらず、なんかバラ
け感があるし、ボーカルもインプロビゼーションもイマイチと感じた。


Goodbye Cream(1969)収録の3曲(今回のDISC 2と同じ)は好きだ。







DISC 1~3の全米ツアー3公演をリマスターされた音で通して聴くと、
今まで抱いていた解散前のライヴの印象が変わるかもしれない。







ロイヤル・アルバート・ホール最終公演は、映像とセットでHi-Fiとは言い難い
音(会場の残響音のせいか?)というマイナスイメージが残っていた。

映像自体も暗く、カメラワークが落ち着きがなかった。
当時の演出なのかズームイン・アウトを繰り返し揺らしたり、カット割りが早
すぎて演奏してる姿が楽しめない。見ていて消化不良気味になる。



↑クラプトンは1964年製チェリーレッドのギブソンES-335を使用。
それに合わせたのか?赤いウエスタンシャツがカッコよかった。
ジーンズは映像から推測すると、リーバイス517ではないかと思う。


とはいえ当時、動いてるクリームは初めてなので見入ってしまった。
解散から数年後、NHKのヤング・ミュージックショー(4)という恥ずかしい
名前の番組で放送したのだ。


合間にクラプトンのインタビューとデモ演奏が入っているのも貴重だった。
サイケデリック・ペイントを施したギブソンSGを弾いてみせながら、
音色の作り方、フレーズの使い方、ビブラートのかけ方を説明している。

高校生だった僕はそれを見て、ベンディング(チョーキング)+ビブラート
を練習したものだ。



↑クリームの1968解散コンサートの映像が観られます。

17’00”からクラプトンのインタビュー&デモ演奏(字幕入り)が入る。
服装、髪型と髭、サイケSGを弾いてることから、このインタビューだけは
解散コンサート以前に撮られたものと思われる。



今回のDISC 4のロイヤル・アルバート・ホールでの最終公演はおそらく
残響音も処理され、DISC 1~3同様クリアーな音に一新されてるはずだ。



クリームは1966年にデビューして、わずか2年で解散してしまった。
しかし卓越したテクニックを持つ3人によるミニマムなユニットで、ブルース
ロックにジャズのインタープレイを取り入れた新しいスタイルを確立。

解散から50年以上経った今でもスーパーバンドとして語り草になっているし、
彼らの鬼気迫るせめぎ合いの演奏は時代を超えてすごい!と思わせる。


そういう点で、この4CDセットはクリーム最後の貴重な音源である。
クリームのコアなファンだけでなく、次世代にも聴いてもらいたいと思う。





ジンジャー・ベイカーが昨年10月6日、80歳で他界した。
この数年、肺疾患、心臓疾患など健康面で様々な問題を抱えていたそうだ。

この4CDセット発売前に亡くなったのは残念である。
聴いたら「俺たちはやっぱり凄かった!」と誇らしげに言っだろう。



クラプトンは2020年2月17日ロンドンのハマースミス・アポロで盟友ジンジャー
・ベイカーの功績を讃える一夜限りのトリビュート・コンサートを行うことを
発表した。出演するゲストは今後発表される予定だ。

収益はベイカー家と近しいレナード・チェシャー(世界中の障害者が自立した
生活を送れるように支援する健康と福祉の慈善団体)に寄付される。


せっかくなので、次回もクリーム。
クリーム結成の経緯、3人の奏法、楽器、機材、再結成について掘り下げます。
乞うご期待!


<脚注>

2019年12月25日水曜日

チェット・アトキンスのクリスマスCD完全盤が出た!

チェット・アトキンスのクリスマスCD☃が発売された。
また?と思われる方もいるかもしれない。が、今回は決定版と言ってもいいだろう。

Chet Atkins - 
The Complete RCA Victor & Columbia Christmas Recordings




RCAビクター時代のアルバム、Christmas With Chet Atkins(1961)と
コロムビア移籍後のEast Tennessee Christmas(1983)。
この2枚はチェットのファンなら既に持ってるだろう。


今回のアルバムはその2枚に加え、アルバムには収録されていないシングル曲、
未発表曲、他アルバム収録のクリスマス関連曲、さらに1976年に再発された
Christmas With Chet Atkinsの新たに録り直された9曲まで網羅されているのだ。

しかも極上のリマスターが施されている。今までで一番音がいいと感じた。
レーベルはReal Gone Music。
RCAビクター、コロムビアの音源を使用した正規盤である。


↓RCA、Columbiaレーベルのピクチャー・ディスクが心憎い。
このRCAのニッパー犬に惹かれてつい買ってしまった(^^v)




装丁は薄型2枚組プラケースで表裏にディスクが収納されていて出しにくい。
ブックレットは28pカラーで当時のジャケ写、曲の解説(英文)がぎっしり。



さっそくディスク1の収録曲を解説。




1. The Bells Of St. Mary'sは1953年のシングル(B面Country Gentleman)
2. Jingle Bells / 3. Christmas Carolsは1955年のシングル。

4.Sleigh Bells, Reindeer and Snowはチェットによるオリジナル曲。
タイトルを訳すと「そりの鈴、トナカイと雪」。
チェットのギターと当時6才の愛娘マール(1)の歌が微笑ましい作品。

家族のために自宅スタジオ録音したもので未発表曲。(2)
長年アトキンス家の棚に保管されていたらしい。



5. Greensleevesは名盤の誉れ高いChet Atkins In Hollywood(1959)より。

このアルバムは全編映画音楽で、タイトル通りハリウッドで録音された。
オーケストラをバックに控えめなギターが美しい。


↓夜景+チェットの愛器6122 Country Gentlemanのジャケットも人気だ。





6122 Country Gentlemanはグレッチ社とチェットの共同開発で1957年に発売。
チェットのトレードマークとも言えるシグネチャー・モデルのも代表格だ。

長年チェットのバックを務めたポール・ヤンデルによると、1959年製が最も
完成度が高いらしい。
後にジョージ・ハリソンが1962年製ダブルカッタウェイを愛用し、Country 
Gentlemanは世界中のギター・ファンに知られることになる。



6〜19.の14曲はRCAビクター時代のChristmas With Chet Atkins(1961)。
アニタ・カー・シンガーズの美しいコーラスとの掛け合いがすばらしい。


↓雪景色+チェットの愛器6120 Nashvilleのジャケットにファンは萌えてしまう。


↑クリックするとJinglebell Rock(1961)が聴けます。



6120 Nashvilleもまたチェット名義のグレッチ社の名器である。(1955年発売)
当初はディアルモンドのシングルコイルP.U.を搭載していたが、1957年後半から
フィルタートロンP.U.が搭載に変更された。(3)
ギブソンのハムバッキングほどファットでもなく、フェンダーのシングルほど
非力でもないこのピックアップは、グレッチのホローボディと相性がいい。

ブレーシングが強化された時期があるが、それが除かれホローボディーの鳴りを
取り戻した1959年製は6120 Nashvilleの黄金期と言える。

Country GentlemanとNashvilleは使用している木材(メイプル)、フィルター
トロンのピックアップ、ビグズビーのトレモロアーム搭載など類似している。
違いはボディーの大きさ。

6120 Nashvilleはボディに厚みがあり、甘い箱鳴りの響きが得られる。
エディー・コクラン、デュアン・エディー・ブライアン・セッツァーが愛用し、
ロカビリー好きに人気がある。

一方Country GentlemanはNashvilleより幅広だがボディー厚が薄い。
そのためカラッとした、きらびやかなサウンドが特徴だ。



僕の推測では、ジャケ写は雪景色に映えるオレンジ色の6120 Nashvilleを使用
した (4)が、レコーディングは主にCountry Gentlemanを弾いてると思う。
後半はソロでクラシック・ギターを弾いてるが、使用器は不明。



20. I Heard The Bells On Christmas DayはRCAのアーティストたちに
よるコンピレーション・アルバムNashville Christmas Party ‎(1962)に収録。
これはレアだ!初めて聴いた。

チェットはゴスペル曲集アルバムPlays Back Home Hymns(1962)のレコーデ
ィング期間中にこの曲を録音したらしい。
Plays Back Home Hymnsに収録されててもしっくり来そうな曲だ。

このアルバムはスキーター・デイヴィス、エディー・アーノルド、アニタ・
カー・シンガーズ、ハンク・スノウ、フロイド・クレイマーも参加(未CD化)



↑クリックすると I Heard The Bells On Christmas Dayが聴けます。


21. Winter Walkin’はアルバムGuitar Country(1964)に収録されている。
ジェリー・リードの曲でチェットはTVショーやライブでも弾いている。

22. Ave MariaはアルバムClass Guitar(1967)収録曲。
このアルバムはこの曲も含め全てクラシック・ギターで演奏されている。




続いてディスク2収録曲の解説。




1. GreensleevesはChet Atkins In Hollywood(1961)より。
あれ?ディスク1の5曲目にあったはず、と気づかれた方も多いと思う。

チェットは1959年に発売したこのアルバムを1961年に再録しているのだ。
オケは前回のを流用。
ナッシュビルの自宅スタジオでギターのみ全曲分、録り直したそうだ。

どちらもあまりに完成度の高い演奏なので、言われないと気づかないが、
よく注意して聴き比べるとフレーズが違ってるのに気づく。
またミックスダウンをやり直したらしく、オケの定位が1959年盤と異なる。


↓ジャケットも1961年盤は女の子+ギターに変わった。




ギターはグレッチの6125 Anniversaryのように見える。
薄型のフル・アコースティック(センター・ブロックがない)モデルだ。
1958年発売で6120と同じメイプル材でフィルタートロンP.U.搭載。

しかし6120のような6弦側フレットボードにポジション・マークではなく、
ギブソンJ-200のようなクラウン・インレイである点、コントロール・ノブ
の位置、ピックアップもディアルモンド社のシングルコイルに見える、と
通常の6125と相違点も見られる。これが何か?わかる方、教えてください。


このギターを撮影に使用したのは色調が合ったからではないかと思う。
実際のレコーディングでは別なギターを使用している可能性がある。
心なしか、In Hollywoodの1961年再録盤はハムバッカーよりも細い音の
ような気がするが、イコライジングのせいかもしれない。

あるいは1959年に6120 Nashville の廉価版として開発されたチェットの
シグネチャーモデルの6119 Tennessean (5)を弾いてるかもしれない。


TennesseanのハイロートロンP.U.はフィルタートロン(ハムバッカー)の
片側コイルからポールピースを抜き取って音を拾わないようにし、もう片方
のシングルコイルからのみ音を拾うように改造したもの。
これによってノイズを除去するハムバッカーの役割は残しつつ、サウンドは
シングルコイルの立ち上がりが早い高域が冴えた音となる。



2曲目のBells Of Saint Mary'sはアルバムSuperpickers(1973)収録曲。


3〜11曲はChristmas With Chet Atkins(1961)を1976年に再発する
にあたって、チェットがギターのみ録り直した9曲。
(バックの演奏、コーラスは1961年のものを流用。)

ギターの音色、弾き方の違いは慎重に聴き比べないと分からない。

The First Noel、Silent Nightは1961年盤でクラシック・ギターを弾いている
が、1976年再録盤はエルベッキオのリゾネーターを使用している。

クラシックギターはハスカル・ヘイルかマヌエル・ベラスケスではないか。
Little Drummer Boyではクラシックギターの音がやや硬い印象。
ピエソP.U.を通した音と生音をミックスしているのかもしれない。(6)


その他、Winter Wonderland、White Christmasで弾き方が違う。
また再録盤はミックスダウンでアニタ・カー・シンガーズのコーラスが少し
抑え気味で、曲によってはコーラスの定位も変わっている。(7)



以前チェットはインタビューで完成した自分の作品は聴かないと言っていた。
聴くと、やり直したくなってしまうから、とのこと。
あんなに完璧なのに。こうやった方が、と思ってしまうのだろうか。

またチェットは部分的に弾いて差し替えたりせず、必ず一曲丸ごと頭から
終わりまで通して弾くそうだ。
だからIn HollywoodにもChristmas Withもテイク違いとして聴けるのだ。



12〜23.はコロムビア移籍後2枚目のEast Tennessee Christmas(1983)。





1981年に完成した世界初ソリッド・ボディーのエレガット、ギブソンの
Chet Atkins CE (CEC) Classicalが使用されている。(8)


チェットはグレッチ社にソリッド・ボディーのナイロン弦ギターの構想を
持ちかけていたが、そんなの売れるわけないと拒まれていた。
(そこに至るまでポール・マクギルに依頼して試作品製作を重ねている)

グレッチ社は何度か経営不振に陥り、1980年にギターの製造を中止。
その1年前の1979年にチェットとのエンドースメントも解消していた。

そこでチェットはソリッド・ボディーのエレガットの企画をギブソン社に
持ちかけ、ギター・ビルダーのカーク・サンドとの共同開発で完成させた。




トップはスプルース、マホガニーのソリッドボディー。
サドル下にピエゾP.U.を配するのではなく、6弦独立のサドル自体がL.R.
Baggs製のピエゾP.U.という画期的な構造で、弦の振動を効率良く伝達。



East Tennessee Christmas冒頭のJingle Bell Rock、White Christmas
Let It Snow, Let It Snow, Let It Snowの3曲はエレクトリック・ギター
を使用しているが、まろやかだけれど音が細く、どちらかと言えばフェンダー
系のシングルコイルP.U.のソリッドボディーの音に聴こえる。

おそらくギブソンがチェットのために製作したCGP Phasorだろう。






ストラトを角ばらせたようなボルドー色のボディ、上にチューナーを一列に
配したビグズビー式のヘッド、リア寄りにシングルコイルP.U.を2基搭載。

チェットが使用したこのモデルにはフェイザーが取り付けられていた。
アルバムではWhite Christmasでそのフェイザーをかけた音が聴ける。 (9)




↑クリックするとWhite Christmas(1983)が聴けます。




East Tennessee Christmasでは、セミホロウ・ボディーでハムバッカーの
ギターのように聴こえる曲もある。グレッチを使用したのか?
ギブソン版Country Gentlemanの発売は1987年だが、この時点で既に
プロトタイプが作られ使用されていたのかもしれない。
I'll Be Home for Christmasはエルベッキオのリゾネーターの音だ。


24. Ave MariaはアルバムAlmost Alone(1996)収録曲。
ギブソンから独立したカーク・サンドが製作した新しいエレガット一本
でのソロ演奏で2枚組は幕を閉じる。




以上だが、補足。実はチェットにはもう一枚、クリスマスCDがある。
チェットがギターを弾き、女優のエイミー・グラントが朗読する童話だ。

Chet Atkins, Amy Grant ‎– 
The Story Of The Gingham Dog And The Calico Cat
Rabbit Ears Musicレーベルから1999年に限定発売。現在は入手困難だ。




ギター+童話が20分程度でその後、チェットの演奏だけのトラックを収録。
全曲アコースティックで、チェットは多重録音で2台弾いている。
珍しくスチール弦のフラットトップ・ギター(ギブソン)も使用している。

同じモチーフを少しずつアレンジを変え演奏しているが、その1つはアルバム
Almost Alone(1996)収録のWaiting For Susie B.(10)である。

もう1つはチェット最後のアルバムとなったトミー。エマニエルとの共演盤
The Day Finger Pickers Took Over The World(1997)収録の
Smokey Mountain Lullaby。

どちらもチェットらしい美しい曲である。

<脚注>

2019年11月1日金曜日

アビイ・ロード2019、アウトテイクスのレビュー。

<デラックス・エディションDisc 2>

アビイ・ロード全曲の別テイクがオリジナル順に収録されている。






カム・トゥゲザー(テイク5)
ジョン復帰後の7月21日、このセッションで初めてジョンの曲が取り上げた。
(従来はアルバム・セッションの最初はジョンの曲でスタートが慣例だったが、
ジョンが交通事故で入院してたこともあり、他の曲が先行していた)
ジョンはやる気満々で他のメンバーをぐいぐい引っ張る様子が伝わってくる。
テイク1(アンソロジー3収録)で試みた最後の3連はやめたようだ。
テイク5は演奏は既に完成されている。リードギターとオルガンは入っていない。
ジョンは中断。I’m losing my cool(頭にきちゃうな)と言っている。
この次のテイク6が採用された。


サムシング (スタジオ・デモ)
2月25日(26歳の誕生日)ジョージは一人でスタジオでデモを録音。
アンソロジー3でギターとボーカルだけのヴァージョンが収録されたが、今回は
ピアノも加えられている。





マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー(テイク12)
7月9日のセッション。ジョンはスタジオ内にいたが参加していない。
ポール(vo,p)ジョージ(b)リンゴ(ds)の編成で録音されている。
ポールがリンゴにフィルインを、ジョージにベースラインを指示している。
アンソロジー3にはテイク5が収録されたが、今回はテイク12が収録された。
コントロール・ルームから出来を訊かれたポールは、One more,It was good
enough but a bit yet(もう一回、良かったけどあともう少し)と返事。
完璧主義のポールらしい。
(テイク21がOKになり、翌日ギター、オルガン、コーラス、ハンマーを録音)


オー!ダーリン(テイク4)
4月20日に26テイク録音されたうち、初期のテイク4。既に完成型に近い。
ポールがピアノを弾きながらまだラフなボーカルを。リンゴのドラム。
ベースはジョージでギターがジョンか?
ジョージがギターでベースはポールが後からオーヴァーダブしたのか?
薄く入るオルガンがジョンか?
(アンソロジー3収録のこの曲はゲット・バック・セッションでジョンと一緒に
歌っているラフなヴァージョンである)



オクトパス・ガーデン(テイク9)
4月26日に32テイクを録音。テイク9が収録された。
リンゴ(vo,ds)ポール(b)ジョン(g)ジョージ(g)の編成。
ジョンはドノヴァン直伝のスリーフィンガー。
ジョージの正規テイクとは違うカントリー・フレーヴァーのギターが楽しめる。
リンゴのピッチが甘く、サビで間違えてAメロを歌ってしまい中断。
和気あいあいの楽しそうな雰囲気が伝わる。
(アンソロジー 3にはテイク2が収録された)


アイ・ウォント・ユー(トライデント・レコーディング・セッション)
1月31日のゲット・バック・セッション終了から3週間後、2月22日に行われた。
3週間の中断は、ビリー・プレストン(kb)とグリン・ジョーンズ(エンジニア)
の不在、ジョージが扁桃腺手術で入院していたためである。
まだアビイ・ロード構想はなくゲット・バック・セッションの延長だったようだ。
これはEMIではなくトライデント・スタジオで行われたセッションである。

どのテイクがいいかジョンが尋ね、マーティン卿はテイク4がいいと答えている。
グリン・ジョンズがジョンに住人から騒音への苦情が出ていると告げる。
ジョンは「こんな夜の遅く、そいつらは通りで何をやっているんだ?」と言う。
それから「あと一回でかい音でやろう。その後は静かにやるとしよう。大きい音を
出すのはこれが最後のチャンスだ」とジョンは言いカウントをとる。
このテイクではラウドなバンド・サウンドが聴ける。(1)
後半She’s soの後は延々とリフが続き、ビリー・プレストンのオルガンが絡む。
ジョージはその間トレブリーなファズ・ギターを弾いてるが採用されなかった。





↑アイ・ウォント・ユー(トライデント・セッション)が聴けます。
この写真は2月22日トライデント・スタジオで撮られたもの。
ジョージがレスポール、ジョンがエピフォン・カジノを弾いてることが判明。



ヒア・カムズ・ザ・サン(テイク9)
7月7日、交通事故で入院中のジョンを除く3ビートルズで録音された。
ジョージのガイドボーカルとギター、ポールのベース、リンゴのドラムという
シンプルな演奏だが、充分聴きごたえがある。
収録されたテイク9も完成度が高い。(採用されたのはテイク13)
ボーカルとギターがセンターに配されベースはやや右、ドラムはやや左。
ジョージの生々しいボーカルとアコースティック・ギターを堪能できる。





↑ヒア・カムズ・ザ・サン(テイク9)が聴けます。



ビコーズ(テイク1 インストゥルメンタル)
8月1日に録音されたバッキング・トラックの録音。
リンゴのカウントに導かれ、ジョージ・マーティンによるエレクトリック・ハープ
シコード、ポールのベース、ジョンのギターだけで演奏される。
各自がモニター・ヘッドフォンに流されたリンゴのガイド(手と膝を叩いてるようだ)
を聴きながら弾いている。今回収録されたのはテイク1。(OKテイクは16)


ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー(テイク36)
5月6日、オリンピック・サウンド・スタジオでの録音。
ポール(p,vo)リンゴ(ds)ジョン(g)ジョージ(g)の編成で36テイクを録音。
これは最後のテイク36。(採用されたのはテイク30)
始まる前のポールのしゃべりも面白い。You never give me your coffeeだって(^^)
歌い込みすぎたのか、ポールの声が枯れ気味で歌いまわしもところどころ異なる。
ジョージのオブリの入り方も違うので聴き比べてみてほしい。


サン・キング(テイク20)
次のミーン・ミスター・マスタードとメドレーで35テイクを録音。(7月24日)
最後のテイクが採用されたが、これはテイク20。ゆったり演奏している。
曲に入る前ジョンは上機嫌だ。リンゴのゴングに導かれ曲が始まる。
ジョンのエピフォン・カジノはコンソールでフランジャーをかけたようだ。
ジョージはオールローズのテレキャスターだと思う。
薄めにジョンがガイド・ボーカルを入れている。


ミーン・ミスター・マスタード(テイク20)
サン・キングとのメドレーだが、テンポが遅くジョンもゆるい感じで歌ってる。
ジョンがYes,she does、Yes,it isと合いの手を口ずさんでるのがおもしろい。
Takes him out to look at the QueenではGod save the queenとジョンらしい。
楽器編成はサン・キングと同じだがベースにファズがかけられている。


ポリシーン・パン(テイク27)
翌7月25日にシー・ケイム・イン・スルー〜とメドレーで39テイク録音された。
(採用されたのは最後のテイク39)
テイク27ではポールが出だしのD→A→Eとドラムのフィルのタイミングを確認。
ジョンがSounds like Dave Clark(デイヴ・クラーク・ファイヴみたい)と笑う。
ワイルドなジョンのカウントでエネルギッシュな演奏が展開される。
ジョンはアコギとガイド・ボーカル、ジョージがエレキ、ポールがベース、
リンゴのタム、スネア連打がすごい。





↑ポリシーン・パン(テイク27)が聴けます。



シー・ケイム・イン・スルー・バスルーム・ウィンドウ(テイク27)
ポリシーン・パンとのメドレーで演奏されたテイク27。楽器編成も同じ。
ガイド・ボーカルはポール。



ゴールデン・スランバー/キャリー・ザット・ウェイト(テイク1‐3)
7月2日、次の曲であるキャリー・ザット・ウェイトと併せて録音。
ポール(p,vo)ジョージ(b)リンゴ(ds)の3人で15テイク演奏された。
(ジョンは交通事故で入院中)
ジョージがYeah,these are a couple on the album been like that(もともと
この2曲はアルバム用の組曲なんだ)とコントロール・ルームに説明してる。
テイク1はフール・オン・ザ・ヒルを歌い出す。
テイク2はキャリー・ザット・ウェイトで中断。
テイク3はヴァースの後Golden…でリンゴとタイミングが合わず中断。
(最終的にはテイク13とテイク15が編集され翌日、3人のコーラスとジョージ
とポールのギターをオーヴァーダブした)


ジ・エンド(テイク3)
7月23日にベーシック・トラックを7テイク録音。最後のがベストとされた。
ギターソロ、ボーカルはなく演奏のみ。And in the end…のフィナーレもない。
テイク3ではジョンがOkay,let's hear it! (さあ、聴かせてくれ)とみんな(特に
リンゴ)を鼓舞させ、ポールのカウントで威勢よく始まる。
リンゴのドラム・ソロも異なる。左のギターがジョン、右がジョージだろう。
ベースを弾きながらポールが叫んでいる。テンポアップして終える。





↑セッション中いい写真をいっぱい撮っておいてくれたリンダに感謝。
本人は一緒に映らないようにしてる控えめな性格が誰かさんとは正反対だね。



<その他のアウトテイク>
スーパー・デラックス・エディションのみ収録で聴く価値ありの音源。

グッドバイ (ホーム・デモ)
メリー・ホプキンの2枚目のシングル用にポールが書いた曲。
1969年2月に自宅で録音されたらしい。マーティンD-28での弾き語りだ。
ブートで出回った音源ではあるが、音質ははるかにいい。


カム・アンド・ゲット・イット(スタジオ・デモ)
7月24日はサン・キング、ミーン・ミスター・マスタードが録音されているが、
この日もポールは早めにスタジオ入り。
一人でアイヴィーズ(バッド・カンパニー)用の曲のデモ・テイクを作成。
ピアノ、ドラム、ベース、マラカス、ボーカルを多重録音で1時間で仕上げた。
最後にポールがOkay,gives on the headphone and track it(よし、ヘッド
フォンで音を聴きながら重ねよう)と言ってるのが聴こえる。 
(アンソロジー3に収録されたが、ステレオ・ミックスは今回が初めて)







ジョンとヨーコのバラード (テイク7)
4月14日ジョンとポールが2人で1日で仕上げ、5月30日にシングル発売した曲。(2)
テイク7はジョンのアコギ弾き語りで、ドラムはポールが叩いているが上手い。
ジョンがMal, turn string I make a put mow(弦が指がからまる)と言ってる。(3)
有名なジョンのWe gotta get faster Ringo!(リンゴ、もっとテンポをあげよう)、
ポールのOkay, George!(了解、ジョージ)の掛け合いも入っている。


オールド・ブラウン・シュー (テイク2)
4月16日にベーシック・トラックを4テイク録音。(テイク4がベストとされる)
このテイク2も既に完成形に近い演奏で、ボーカルも大きな違いはない。
ポール(p)リンゴ(p)ジョージ(vo)だが、ギターはどっちだろう?
オブリや後にオーヴァーダブするベースと同じフレーズを弾きながら歌うのは無理。
ジョージが弾いたと思えるが、ジョンは何をしてたんだろう?


ザ・ロング・ワン(トライアル・エディット&ミックス)
アビイ・ロード制作も終盤の7月30日、B面メドレーを仮編集作業が行なわれた。
この音源はThe Long One/Huge Medleyと呼ばれていた仮ミックスである。
当初ミーン・ミスター・マスタードとポリシーン・パンの間に入っていたハー・
マジェスティが、そのままの形で聴ける。
ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネーも最終的にカットされたコーラス入り。
次のサン・キングへのつなぎもウィンドチャイムとコオロギのSEではなくオルガン。
ポリシーン・パンではカウベルとジョンの台詞が入る。
ゴールデン・スランバーはポールの歌いまわしが異なり、ストリングスとブラスも
まだ入っていない。途中のジョージのギターも加えられていない。
ジ・エンドはギター・ソロ回しもボーカルも入っていない。





↑ザ・ロング・ワン(トライアル・エディット&ミックス)が聴けます。
写真はアビイ・ロード録音終了2日後、ビートルズ最後のフォト・セッション(4)



アビイ・ロード完成後、ジョンは次のアルバムの可能性について話している。(5)
しかしアビイ・ロード発売直前の9月20日、ジョンは一転して脱退宣言(6)を行う。

その1週間前の9月13日トロントで開催されたロックンロール・リバイバル・ショー
にジョンはプラスティック・オノ・バンドで出演していた。
これを機にビートルズを捨て、ヨーコとの流動的なバンドの道を選んだのだろう。

1970年1月3日アイ・ミー・マインを録音するために、ジョン脱退後の3人はアビイ
・ロード・スタジオに集まる。ビートルズとしての最終のレコーディングとなった。


<脚注>