2024年4月1日月曜日

フェンダー・スクワイヤーを買ってみた。(使用5ヶ月レポート)



昨年10月にフェンダー・スクワイヤーのギターを2台購入した。

1台はスクワイヤー・ソニック・ムスタング(左)
もう1台はスクワイヤー・ミニ・ストラトキャスター(右)



<フェンダー・ムスタングとは>

ムスタングは1964年にフェンダーが発売したステューデント・モデル。
小さめのボディにショートスケール・ネック(22.5または24インチ)は1956年に
発売されたミュージックマスターやデュオソニックと同じだが、独自のトレモロ
・ユニット「ダイナミック・ヴィブラート」を搭載している。






軽い力でアーム操作が可能だが、このユニットが仇となりサウンドもチューニング
も乱れる。「暴れ馬(=Mustang)」の名のとおり使いこなすのが難しい。



ジャガー、ブロンコもそうだが、ムスタングは車から拝借したネーミングである。

余談だがレオ・フェンダーは大のクルマ好きで、デュポン社の車用塗装料(ニトロ
セルロース系ラッカー)を自社製品に使用していたそうだ。
クラプトン・モデルのストラトにもメルセデスブルーという色があるくらいだ。



もう一つの特徴は、ピックアップのセレクターがスライドスイッチである点。
ON/OFF/逆位相のON、と3ポジション。
ややこしいので説明は省略するが(本当は理解しきれていない)




2基のシングルコイル・ピックアップは磁極とコイルの巻き方が逆。
配線はシリーズ(直列)。
両方を同じ位相でONにすると、疑似ハムバッカー的な太いサウンドが得られる。

初心者向きというより、マニアックなプレイヤー受けするギターだ。



しかしショートスケール、軽量なポプラ材を使用した小振りで薄いボディーは
日本人にも抱えやすく弾きやすい。このサイズ感は何者にも代えがたい。
レトロな見た目も魅力的だ。




日本ではChar氏が愛用していることで有名。ムスタングを広めた第一人者である。
ストラトが盗難に遭い、米軍基地のバザーで安いムスタングを見つけたのだとか。
1980年代アメリカでマイナーだったムスタングに日本からの注文が殺到し、フェン
ダー社を驚かせだという。


1990年代にはニルヴァーナのカート・コバーンが愛用したことで人気に火がつく。
2000年代にはノラ・ジョーンズもよくライヴで使用している。







<スクワイヤー・ソニック・ムスタング>

スクワイヤー(Squier)はフェンダーの下位ブランド。
1982年発足時は日本のフジゲンが製造し、国内のみで販売されていた。

現在は製造コストを抑えた低価格モデル、本家フェンダーにはない独自モデル、
復刻モデルを中国・インドネシアで製造し全世界に供給している。

スクワイヤーは複数のシリーズ展開を行なっている。
中でも最上級のClassic Vibeシリーズ(中国製)はフェンダー・メキシコを凌駕
する出来と評判がよい。




購入したムスタングはエントリークラスのSonicシリーズ(Bulletの後継機種)。
設計はUSフェンダーだが、製造はインドネシア。価格が抑えられている。

クオリティーはそれなり。木材とパーツのグレードが低い。フィニッシュも雑。
しかし演奏に支障はなく音もなかなか。十分だ。つまりコスパがいい。




26,400円だった。これ、定価ですよ。信じられない。。。
売れてるらしく品薄。昨年10月時点で値引き販売してる店はなかった。
Amazonのマケプレで石橋楽器から購入。

オクターブ調整と弦高チェックは購入時にお願いしておいたおかげで、非常に
いいコンディションの個体が届いた。
ネックはまっすぐで弦高はかなり低い。
密閉式チューナーも滑らかで精度が高く、狂いが出ない。かなり優秀。






心配していたフレット縁のバリもなく、運指はスムーズである。
ハイポジションでフレットにビビりが出る箇所があったが、弦を張って2週間
ほどでテンションが加わったせいか解消した。


肝心の音だが(本家のムスタングを所有したことがないので比較できないが)
フェンダーらしさもあり、ストラトより中域に集まったコシのある音。
けっこう好みの音だ。(アンプはBlackstarを使用している)



↓スクワイヤー・ソニック・ムスタングのデモ動画が見れます。
https://youtu.be/sTi1ZA1-6lc?si=ALLIsa8k2eaHrVfW
https://youtu.be/X74ufuYO-eA?si=80H7EyDohYHKVhNK




ソニック・マスタングはオリジナルに大胆な仕様変更が加えられている。

トレモロ・ユニットは廃され、6サドルハードテイルブリッジへ。
弦高とイントネーションを個別に調整でき、チューニングも安定している。




分かりにくいピックアップのスライドスイッチが廃され、3ポジションのトグル
・スイッチが採用された。(演奏中に右手がスイッチに触れ動いてしまうのが難)


2基のセラミック・ピックアップはパラレル(並列)配線に変更されている。
シリーズ(直列)と比べるとレンジが広くパリッとしたサウンド。
スイッチをセンターにして2基のピックアップをミックスさせると、ストラトの
ようにマイルドでややこもったようなハーフトーンが得られる。

擬似ハムバッキング効果が欲しいなら、シリーズ(直列)配線に変えればいい。
フェンダー製品はピックガードを外せば、電気系統が修理できるのが利点だ。



ボディーは軽量なポプラ材で、総重量は3kg強。抱えても負担に感じない。
ストラトのようなコンター加工(体に当たる部分を削り落とす加工)は施されて
いないが、ボディー厚は薄くボディー幅も狭いので支障はないと思う。

ムスタングはストラトと比べるとブリッジが前の方にあり、その分ボトムが
長いのだが、抱えてみると違和感はない。




カラーは2色展開。タバコ・サンバースト(2トーン・サンバースト)を選んだ。
ポプラ材は思ってたより、木目がきれいに出ていい感じである。
白いピックガードに配された黒いセラミック・ピックアップ、金属プレート+黒の
ラジオ型コントロールノブのレイアウトもカッコいい。


トリノ・レッドもいい色で黒いピックアップやノブとのコントラストがきれい。
ボディーの塗装はウレタンのグロス・フィニッシュ。




ネックはメイプル材のCシェイプでハイポジションまでグリップしやすい。
塗装はネックも指板もウレタンのサテン・フィニッシュ。
メイプル指板のツルツルした感触は苦手だが、これはとても弾きやすい。


ネック幅(ナット側)は42mmと標準サイズに変更(オリジナルは極狭ネック)
フレット数は22。

弦長はオリジナルと同じショートスケールの24インチ (610 mm)。
弦は09-42(アーニーボールのスーパースリンキーと同ゲージ)が張ってあるが、
ぜんぜん緩いとは感じない。ほどよいテンションだ。
快適だ。もうストラトやテレキャスの25.5インチ (648mm)には戻れない。






<スクワイヤー・ミニ・ストラトキャスター>

ミニ・ストラトはストラトキャスターをそのまま3/4サイズにダウンサイジング
したかわいいヤツ。スクワイヤーだからこできた遊び心いっぱいのモデルだ。
が、決してお子様用ギターではない。
100%フェンダー設計で通常の使用に耐えられるモデルである。

ミニは独立したシリーズだが、ソニックと同等の低価格ラインと思われる。
製造はインドネシア。仕上げは雑で、品質のバラツキはある。




薄く軽量なポプラ材ボディに22.75インチ (578mm)の超ショートスケール。
Cシェイプの細ネックは何時間でも弾いてられそう。ウソみたいに楽ちんだ。
初心者、小柄な人、女性、体力が衰えた中高年にも寄り添ってくれるギターだ。





どんなコードフォームでも難なく押さえられる。速いパッセージも弾きやすい。
ジミヘンみたいにバカでかい手の人はこんな感じでワシッと掴んでるのだろう。


弦は09-42でテンションは緩い。10に上げてもいいが、ネックの順反りが心配。
ハードテイルブリッジ採用。トレモロユニットは付いていない。
そのためストラト特有のトレモロユニット用キャビティが裏側にない。




ネック幅(ナット側)は1.6インチ (40.6 mm)。これはさすがに細すぎ。
ローコードを押さえると指がぶつかる。
フレット数は20。まあ、よほどハイポジションじゃない限り弾ける。




サウンドは「あ〜ストラトだな」と思える。十分ではないか。
定価36,520円でこの出来だ。実売価格25,000〜28,000円で手に入る。

↓スクワイヤー・ミニ・ストラトキャスターのデモ動画が見れます。
https://youtu.be/aSgNhPKwnW4?si=H48NF--V09vOoH2a
https://youtu.be/kvNRK-o-SxE?si=BZ2J64iB6engHaWc







ミニ・ストラトはブラック、ダコタレッド、シェルピンク、の3色展開。
ウレタンのグロス・フィニッシュである。

指板はインディアンローレルという近年ローズウッドの代替で使われる木材。
ローズウッドより色が浅く、やや乾いたカサッとした感触。
ネックも指板もメイプル。ウレタンのサテン・フィニッシュで感触がいい。




アメリカではこの他、3トーンサンバースト、限定でダフネブルー(淡い水色)
、オレンジ、サーフグリーンがあった(日本では取扱なし)




どうしてもサーフグリーンが欲しい!

「アメリカングラフィティ」にこういう色のアメ車が出て来そうだ。
実際に「Surf Green」はGM社が1957年にシボレーの塗装に使っていた色。





1960年前後のミュージックマスターかデュオソニックにサーフグリーンが
あったかどうか定かでないが。。。ありそうな色だ。

3/4サイズのミニ・ストラトは、ほぼステューデント・モデルのサイズ。
このサイズだからこそサーフグリーンが似合う。




ミニ・ストラトは3ピックアップで5ウェイ・トグルスイッチ付きであるが、
コントロールノブは2個。見た目がステューデント・モデルっぽい。

チューナーは精度のいい密閉式だが、表から見るとクルーソンのビーン型。
小ぶりのボディーによくマッチしている。





アメリカのAmazonにテキサス州オースティンの楽器店がサーフグリーンの
ミニ・ストラトを出品してるのを発見。
円安が140円を超えた頃だったが、ポチった。

配送が大幅に遅れAmazonがペナルティとして配送料を負担してくれたので、
国内で定価で買うより安いくらいで収まった。


ギターは発送連絡後、数日で無事届いた。


弦高はすべてのポジションで指板から1.5mmくらいで低すぎるくらい低い。
何箇所かベンディングやヴィブラートをかけるとフレットがガサガサ鳴る。
(アンプからの音出しの際はフレットのガサガサは影響しない)




ネックの側面はフレットの縁が少し手に当たる。仕上げが雑だ。
フレットを磨くという工程を省いているのだろう。

それ以外は本当によくできたギターだと思う。
6万円でそこそこのギターが2台買えちゃう。スクワイヤー、コスパ良すぎ!



<メンテナンス、5ヶ月間の使用感>

気になったベンディング時、ヴィブラート時のフレットのガサガサ音だが。
ムスタングは弦を張って数日経ったら、テンションで弦高が上がったせいか、
音がしなくなった。

ミニ・ストラトは元の弦高が低すぎたので、弦を張りっぱなしでもまだ低い。
フレットのガサガサ音はそのまま。


こういう低価格ギターはフレットを磨いてないのが原因らしい。
弦を外して指板をマスキングしてフレットにコンパウンドをかけるといいと
書いてあるが、そんなの面倒だ。不器用だから失敗する。
かといって、ギターショップに持ち込むのも面倒。。。




一番簡単かつ短時間でできるフレットの磨き方として紹介されていた「フレ
ットバター」を試してみることにした。




薬剤(甘い匂いがする)が染み込んだベトベトしたクロスが入っている。
それでフレットと指板の汚れをまとめてごそっと拭き取る、というもの。
試してみたが、効果は感じられなかった。




使用前にフェンダーのカスタマーサポートにフレットバターを使用していいか
質問したら「かまわないがメイプル指板はフレットの汚れが移り黒ずんでしまう
場合がある」とのことだった。

また「フレットバター使用後は、フィンガーボード・レメディ(指板メンテナ
ンス剤)やレモンオイルで保湿を」とのアドヴァイスをもらった。

レモンオイルは以前からアコギの指板やブリッジに使用しているが、匂いが強い
ので家族にはあまり評判がよくない(笑)




フィンガーボード・レメディを買って使ってみた。
柑橘類と蜜蝋のワックスで指板の汚れを除去し、光沢と潤いを与えてくれる。
レモンオイルよりも保湿効果は高く、持続する。
サテンフィニッシュのメイプル指板にもローズ指板にも使える。

この冬、3回このフィンガーボード・レメディで指板を磨いた。
ボディーは高級車用の艶出しワックス(アメリカの楽器店推奨)で磨く。


弦は張りっぱなしにしてあったが、先月チェックしたらムスタングの方は弦高
が少し上がって来て(まだ許容範囲だが)ネックはわずかに順反り傾向。

冬場は乾燥するので順反り、夏場は湿度が高いため逆反りしやすい。
弦を少し緩めて放置したら、ネックは復って来た。




ミニ・ストラトの方も弦高が少し高くなり、ちょうどいいくらいになった。
フレットのガサガサ音はほとんど気にならなくなったが、最近ローポジション
の1〜2弦がビビるようになった。
ネックは高音弦側だけやや順反り。それでヘッド側だけ弦高が下がったらしい。

「ネックのねじれ」だと思われる。
USフェンダーのストラトでも起きるので、メイプルネックの宿命だろう。
数ヶ月で変化が出るのは、やはり使用してる木材のグレードのせいか。



考えてみると、トーカイやフェンジャパ(フジゲン)のストラトは弦張りっ
ぱなしでもネックが反ったりねじれたり、という経験がない。
やはり日本国内で十分に寝かせた木材だと季節の影響を受けにくいのだろう。

4月中旬、湿度が安定してきたらムスタングもまた弦を張りっぱなしにして、
いつでも手に取って弾けるようにしよう。


安値のギターは使い倒せばいい、という気楽さがいい。



<参考資料:FENDER.COM、エレキギター博士、Wikipedia、YouTube、
楽器屋店員yoshguitarブログ、とらべるらいと スクワイヤーってどうなの?
、Guitar Hacks、デジマート、Killer Guitars、iB MUSIC STUDIO、
島村楽器、THE ONE、Pinterest、他>

2024年3月12日火曜日

高騰し続ける来日公演チケット代(3)なぜチケ代は高いのか?




<ポール・マッカートニーの武道館10万円は高額だったのか?>


2002年 (東京ドーム)S席 1.4万円、A席 1.2万円
12年前の初来日の2倍になっていた。あまり気にしてなかったけど。

2013年(東京ドーム)S席 16500円、A席 15500円、B席 14500円

2014年 (国立競技場)→中止

2015年 ビートルズ来日以来の武道館公演と高額チケット代が話題に。
(東京ドーム)S席 1.8万円、A席 1.6万円、B席 1.4万円、参加席 10500円
(日本武道館)SS席 10万円、S席 8万円、A席 6万円、B席 4万円

初のチケ代10万円!
武道館のキャパ1万人、東京ドームのキャパ5.5万人を考えると妥当か。


↑ビートルズ来日公演のデザインを踏襲。チケぴより味があっていい。



2017年(東京ドーム) S席 1.8万円、A席 1.6万円、B席 1.4万円

2018年(東京ドーム)S席 18500円、A席 16500円、 B席 14500円

武道館以外は高騰していない。2024年来日は実現するのか?




<2010年代の主なビッグ・アーティスト(ざっくり)来日チケット代>


2010年 ホイットニー・ヒューストン(さいたまスーパーアリーナ)
VIP席 2.4万円、S席 1.4万円 13年ぶりの来日。2年後に死去した。

2011年 テイラー・スウィフト(武道館)S席 8500円、A席 7500円
武道館で1万円以下で見れた!まだホイットニーよりもだいぶ格下だったのだ。

2014年 ローリング・ストーンズ(東京ドーム)
GC席 8万円、S席 1.8万円、A席 1.6万円、B席 1.4万円

2016年 クイーン+アダム・ランバート(武道館)
SS席 4万円、S席 16500円、A席 14500円、 B席 12500円





2017年 コールドプレイ(東京ドーム)
VIP席 3万円、SS席 1.8万円、S席 1.2万円、A席 9000円、B席 8000円

2019年 テイラー・スウィフト(東京ドーム)VIP SS席 10万円、
VIP S席 3.8万円、アリーナS席 14800円、スタンドS席 12800円
スタンドA席 10800円、スタンドB席 9800円 





<日本とアメリカのチケット代格差>

1990年代初頭のバブル崩壊から日本は物価も賃金も30年間上がっていない。
賃金はアメリカの半分以下。(韓国と比べても日本の賃金は低い)
アメリカのGDPは日本の4倍にまで膨れ上がる。





※名目賃金=支払われた額、実質賃金=名目賃金に物価上昇率を加味した額



好景気に沸くアメリカではビッグネームのチケット代$300超えが当たり前
のようになって行く。

2000年代に入って大物アーティストのチケット代が高騰していると言われるが、
それでも日本は割安に価格設定されている。円安にもかかわらず。
日本だけが物価上昇にチケット代の値上げが追いついていないのだ。


たとえば2013年、2015年のポール・マッカートニーは北米の70〜80%だった。
テイラー・スウィフトの2024日本公演の平均チケット代は25,000円だったが、
全米平均は37400円。日本はアメリカの70%以下の価格に抑えられている。
しかもアメリカでは転売が多く、40万円〜518万円の値が付いているという。

アメリカでは転売や座席の不公平感を是正するために、座席ごとに価格差を
付けて販売してるコンサートが多い。
そのため、かぶりつきのいい席は最初から高額になる。


2024年のジェイムス・テイラーはS席 2万円だが、ハワイの正面席は40万円。




イーグルス(グレン・フライのいない)のフェアウェル・ツアー、フロリダの
VIP席は110万円だそうだ。




金持ちが超高額で特権を獲得するという文化はアメリカでは当たり前だ。
NFLスーパーボウル2022の観戦チケットは最高額615万円である。
最低価格でも(NFL公式と再販会社の平均)86万円というから驚きだ。

スーパーボウルのチケット代はゆっくりと、しかし着実に上昇してきた。
1988年にサンディエゴで観戦した時は3万円程度である。


(NFL総売り上げ推移)




直接的な関連はないにしても、アメリカの国民的イベントのスーパーボウルの
チケット獲得戦が、音楽イベントにも波及した可能性はあると思う。


こうした文化は日本には馴染みにくいかもしれない。
歌舞伎の桟敷席、相撲の升席や溜席の例はあるが、そこまで高額ではない。
しかし徐々に変わりつつある。

ボクシングの井上尚弥のタイトルマッチは187,000円、165,000円、110,000円、
77,000円と高額だが、誰も文句は言わないだろう。
価格に見合う体験ができると思う人が買えばいい。割り切りが必要だ。




<なぜチケット代は高騰しているのか?>

まず世界(主にアメリカ)の経済に準じている。
日本では高額だが、アメリカでは適正価格だということだ。

そしてビッグネームのチケット代が高額になっている。
そのアーティストのブランドバリュー、価格プレミアムを付けても売れる、
満席にできる(観に行きたい人が多い)という需給バランスである。

かつての女王マドンナも、テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュ
のチケット代には及ばないだろう。



昔はライブはCDを売るためのプロモーションという要素が強かった
ライブで利益を出さなくても、CDやグッズでアーティスト側は潤った。

しかし音楽はサブスクなどの配信が主流になり、印税だけでは十分な利益を
得られない。ライブ自体を収益化ないとやっていけないという事情もある。








コンサートが派手で大掛かりになり、経費が嵩むこともチケ代高騰の要因だ。
ドームツアーならスタッフ400~500人ということも珍しくない。

近年はホテル代、会場利用、電気代、移動費、ケータリング、人件費なども
上がっており、チケット代への価格転嫁せざるを得ない事情もある。

原油価格の上昇で飛行機の運賃は跳ね上がっていることも痛手だ。
メンバーやスタッフの座席はもちろん、機材の輸送費も嵩むようになっている。




        (日本経済新聞 2014年)※この後、高騰してる。
         東京ドーム定員は現在55000人とされている。




 (さいたまスーパーアリーナでのライヴ費用内訳 国内アーティストの例)




そのため近年の来日公演は中国、韓国、東南アジア、オーストラリアなどを周る
ツアーを組んでコストを抑えるが定石だ。

日本国内で移動する日程を取れないため、東京のみでの公演という例も多い。
アーティストは動けないので、地方の方は東京まで来てね〜ということだ。


会場もドームなど収容人数が大きい方がガバッと一度にたくさん呼び込める。
ドームを満席にするアーティストが武道館でやるとなると、そのチケット代は
どうしても5倍くらいに跳ね上がる。





<2022年の主なビッグ・アーティスト来日チケット代>


ビリー・アイリッシュ(有明アリーナ) SS席 2.5万円、S席1.9万円、A席1.5万円





レディ・ガガ(ベルーナドーム)S席1万8000円、A席(立ち見)1万円

KISS(東京ドーム)SS席2.5万円、S席2万円、A席1.5万円





ノラ・ジョーンズ(武道館)S席 10000円、A席9000円
フレンドリーな価格。でもこの人はもっと小さい小屋で見たいな。

ガンズ&ローゼズ(さいたまスーパーアリーナ)SS席1.9万円、S席1.5万円

マルーン5(東京ドーム) VIP-SS席 10万円、VIP S席 3800円、
SS席15800円、S席12800円、A席10800円、B席9800円




<2023年の主なビッグ・アーティスト来日チケット代>


レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(東京ドーム)
プラチナ席 5万円、バルコニー席 2.5万円、S席 2万円、A席 18500円





スティング(有明アリーナ)SS席 2.5万円、S席 2万円、A席 1.9万円

ディープ・パープル(武道館)S席 1.7万円、A席 1.6万円

ボブ・ディラン(東京ガーデンシアター)
GOLD席 5.1万円、S席 2.6万円、A席 2.1万円

エリック・クラプトン(武道館)S席 2万円、A席と2F立見席 1.9万円

ドゥービー・ブラザーズ(武道館)S席 1.7万円、A席 1.6万円





コールドプレイ(東京ドーム)
GOLD席 5万円、バルコニー席 2.5万円、S席 2万円、A席 1.6万円








<2024年の主なビッグ・アーティスト来日チケット代>


ボズ・スキャッグス(東京ドームシティ)S席 1.6万円、A席 1.5万円、立見 1.5万円

ロッド・ステュアート(有明アリーナ)GOLD 3.5万円、S席 2万円、A席 1.9万円

ジェイムス・テイラー(東京ガーデンシアター)S席 2万円、A席 1.9万円

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(東京ドーム)
VIP SS席 12.8万円(完売)、VIP S席 48800円、バルコニー席 29800円、
SS席 22800円(完売)、S席 14800円、A席 10800円、B席 9800円(完売)





21世紀も1/4が過ぎ、レジェンドがそろそろ一線を退こうとする中、(衰えてる
とはいえ)見られる最後のチャンスかもしれない。

2023年のドゥービー・ブラザーズのようにパフォーマンス力が落ちていない
バンドもある。




エリック・クラプトンは78歳の今もそれなりにカッコいい。
2万円なら安いではないか。


2023年にはジャクソン・ブラウン、クリストファー・クロス、ネッド・ドヒニー、
カーラ・ボノフ&リヴィングストン・テイラー、ラリー・カールトン、シャカタク
、リー・リトナー&デイヴ・グルーシンなども来日していた。
ブルーノート東京やビルボードライブ東京などの観やすい会場で、1〜1.5万円程度
で見られる。
そういうのを狙うのもアリだ。



<参考資料:Real Sound、ロイター、甲虫楽団ブログ、日刊サイゾー、
U discovermusic.jp、内閣府、厚生労働省、カオナビ、OECD、MONOist、
ORICON NEWS、Rollingstone Japan、日経エンタテインメント、
マネーポストWEB、東洋経済オンライン、SECOND EFFORT、他>

2024年3月3日日曜日

高騰し続ける来日公演チケット代(2)1970〜2000年の推移



↑1971年7月17日グランドファンク・レイルロード(GFR)初来日公演。
伝説となった雨の後楽園球場。3万5000人の観客が熱狂に包まれた。

同年8月6日には初来日したピンクフロイドが箱根アフロディーテの
屋外ライヴに出演。




9月23・24日にはレッド・ツェッペリンが初来日公演を行う。
衝撃のライブ演奏力、滞在中の破天荒な狼藉ぶりも話題となった。




3つのバンドは伝説として語り継がれ、1971年は日本のロック元年と
も言われる。

特にツェッペリンの日本滞在は黒船来航のような騒ぎだった。
ビートルズ来日以来の事件だろう。



↑皇居前で撮影中のプラントとペイジ。嬉しそうなボンゾも左にいる。


1971年6月シカゴ来日公演こそ日本のロック元年とする音楽関係者も
いる。(コンサートの模様は全国でTV放送された)
しかし、日本のロック・シーンに与えた影響力、後々まで語り草に
なっているか否かを鑑みると、シカゴは除外していいと思う。




<1970年代の大物アーティスト来日公演・チケット代>

It was 50 years Today. 昔々の大昔、50年も前の1970年代の話。
英米の大物ロックバンドの来日公演が2000〜3000円で観れるという、
嘘みたいな時代があった。



1971年GFR初来日(後楽園)A席 2300円、B席 1700円、C席 1000円





1971年ピンクフロイド初来日 (箱根アフロディーテ)自由席2000円







↓ピンクフロイドの初来日公演「箱根アフロディーテ1971」映像。
https://youtu.be/3jPv_0X6YVg?si=-0O8PaK0-JncWIBy




1971年 レッド・ツェッペリン初来日(武道館)S席 2700円、
A席 2300円、B席 2000円、C席 1500円







↓レッド・ツェッペリン1971年9月23日、初日公演が観れます。
https://youtu.be/NSUvCr0U7eY?si=9fySGp82_l_3hhsZ



1972年 レッド・ツェッペリン(武道館)S席 3000円、A席 2500円、
B席 2000円、C席 1500円






1972年 ディープパープル初来日(武道館)S席 2700円、A席 2200円、
B席 1600円




↓ディープパープル初来日公演(大阪厚生年金会館)が観れます。
ライヴ盤として発売され名盤の誉れ高い。
https://youtu.be/7zKAS7XOWaQ?si=QNRUGnGjI1TG0EoF




1973年 ディープパープル(武道館)S席 3000円、A席 2500円、
B席 1900円、C席 1500円



↑アンコールなしの不満から暴動へ。翌日の公演は中止となった。
日本公演後イアン・ギランはリッチーとの不仲により脱退。




1972年 ELP初来日(後楽園球場)A席 2300円、B席 1700円、C席 1000円

1973年 BB&A初来日(武道館)S席 3000円、A席 2500円、B席 2000円、
C席 1500円



↑BB&Aの知名度が低かったせいかジェフ・ベック・グループと記載。
大阪厚生年金会館での公演はライヴ盤になった。



1974年 サンタナ初来日(武道館)S席 3000円、A席 2600円、B席 2100円、
C席 1600円

1975年 クイーン初来日(武道館)QS席 3500円、S席 3000円、A席 2700円、
B席 2300円、C席 1600円



↑東京プリンスホテルの庭園にて。



1976年 ドゥービー・ブラザーズ初来日(武道館)S席 3000円、A席 2500円
B席 2500円、C席 2000円

1976年 イーグルス初来(武道館)S席 2700円、1F自由席 1700円(!)
(Hotel California前。ドゥービーより格下だったのか?)






1978年 ジェフ・ベック&スタンリー・クラーク(武道館)S席 3800円、
A席 3000円、B席 2500円、C席 2000円
2人の息の合ったバトル? 圧倒的されるくらい凄い演奏だった。






1979年 ドゥービー・ブラザーズ(武道館)S席 3000円、A席 2800円、
B席 2500円、C席 1800円
バクスター、マクドナルド加入直後の一番おいしい時期。最高だった。





↓1979年 ドゥービー・ブラザーズ公演(武道館)が観れます(画質低)
https://youtu.be/ZycfeQiGtKk?si=zIvAgY900ZD57z3R




1979年 リンダ・ロンシュタット(武道館)S席 3000円、A席 2500円
最前列で見た。まさしくロックの女王!





1979年  イーグルス(武道館)S席 3800円、A席 3000円
Hotel Californiaで開幕。メンバーの不仲でまとまりが悪かった。


この頃からB席とC席がなくなり、S席とA席だけになった。




<1980年代の大物アーティスト来日公演・チケット代>





1980年 ウィングス公演(武道館)S席 4500円 ポール逮捕で中止。 
ウィングス4500円は今思えば安い。払い戻しになった(涙




↑ポールの腕を掴んでる右側の刑事の方がよっぽどヤバそう(笑



1982年 サイモン&ガーファンクル再結成(後楽園)S席 5000円
ソニーの冠提供のためこれでもチケット代は少し抑えられている。


1984年 デュラン・デュラン(武道館)S席 3900円
チケットが入手できなかったが、某局のおかげでいい席で観られた。


1987年マドンナ初来日(後楽園球場)S席6500円、A席5000円



↑大阪
球場のチケット。後楽園球場は緑色だった。





↓1987年マドンナ後楽園球場コンサートが観れます。
(マドンナは絶頂期。思ってた以上にいいパフォーマンスだった)
https://youtu.be/XH0ZuGreoZk?si=YcD6tAsnSza-J8VP



1987年マイケル・ジャクソン初来日(後楽園)S席6500円、A席5000円



6500円を付けたのはマドンナ、マイケル・ジャクソンが最初だった。



1988年 ホイットニー・ヒューストン(武道館) S席6500円

ホイットニーは2枚のアルバムが全米1位を獲得していたが、伝説のスーパ
ーボウル国歌斉唱や「ボディーガード」でグラミー賞を獲得する前。
武道館のステージも大したことない。高すぎだったと思う。でも満席。



※この頃からチケットぴあ(1984年開始)の味気ない発券になる。




<1990年代、1万円台になった来日公演・チケット代>

1990年早々、2月にローリングストーンズ、3月にポール・マッカートニー
の初来日と超大物が立て続けに来日した。






ローリングストーンズ(東京ドーム)S席 10000円。
ついにチケ代1万円の大台に乗った。
来日が実現しただけで奇跡。バブルの勢いもあって高額とは感じなかった。
ステージも大がかりで価格に見合うコンサートだったと思う。





↓1990年ストーンズ初来日、東京ドーム公演が観れます。
https://youtu.be/i2r_ab4eck4?si=GseHZJ4qh2b4IWKh




翌月のポール・マッカートニー(東京ドーム)S席 7000円 A席 5000円 
実はストーンズよりもだいぶ安い価格設定だったのだ。
アリーナ中央、前から8列目でポールを観れたのは感動ものだった。





チケ代「1万超え」時代の先例をつけたのはストーンズである。
世界的にみても、最前列を超高額設定にしたりオークションでの高額転売と
いう悪しき慣習を最初に作ったのはマドンナとストーンズと言われている。
(本人たちの望むところではなかっただろうが)

裏を返せば、当時のマドンナやマイケルがいかにスーパースターだったか
ということがよく分かる。


ストーンズについては「レジェンドを見る」ことが目的で、曲を知らない、
CDも買ったことがない人まで「乗り遅れたくない」と群がった。
女性をくどくためにチケットを押さえる輩まで現れた。これもバブルか。





ヴァージン・レコードのA&Rがストーンズはコンサートは争奪戦になるが、
CDの売り上げに結びつかないと嘆いていた。





<エリック・クラプトンの来日公演・チケット代推移>

違った観点から、一人のアーティストの来日公演のチケット代の推移を
追ってみよう。

50年間で23回も来日しているエリック・クラプトンだ。
ECにとっても、日本武道館は特別な思い入れがあるという。


1974年(武道館)S席 3500円、A席 3000円、B席 2500円、C席 2000円
パティ夫人とともに初来日。泥酔して会場入りしたらしい。
ギターの神様を期待したファンはレイドバックしたECに失望したとか。




↑ブロックごとにチケットが色分けされていた。



1975年(武道館)S席 3000円、A席 2700円、B席 2300円、C席 1800円
少し値下げしたのはなぜだろう?

1977年(武道館)S席 3000円、A席 2800円、B席 2300円、C席 1800円






1979年(武道館)S席 3800円、A席 3000円、B席 2500円、C席 2000円
枯れたストラト・サウンドで観客を魅了。4度目の来日にして最高の出来。
ライヴ盤「Just One Night」として発売された。





1981年(武道館)S席 3900円、A席 3000円、B席 2500円

1985年(国立代々木競技場)S席 4500円、A席 3500円



↑ハムバッカー搭載のテレキャスターを弾いてる珍しい写真。
でも当日は黒のストラト(ブラッキー)だった。
10/6は午後3時開演。オリンピックプールは外光が入り客席が明るすぎ。
ステージに対して奥行きがあり、後方席は見えなかったらしい。


1987年(武道館)S席 5000円、A席 4500円 前座はロバート・クレイ

1988年(東京ドーム)S席 7000円、A席 5000円
エルトン・ジョン、マーク・ノップラーと共演。


1990年(武道館)S席 6500円 Journey Man Tour


↑黒のストラトはレースセンサーPUのECシグネチャーモデル。
ストラップはJ.P.ゴルチェ。



1991年(東京ドーム)S席 9000円、A席 8000円、B席 7000円
(横浜アリーナはS席 10000円)ジョージ・ハリソンと一緒に来日。
横浜アリーナの方がいい席が取れたし見やすかった。





1993年(武道館)S席 8000円、A席 6500円 前半Unpluggedセット
↑アリーナ中央5列目で観た!

1995年(武道館)S席 8000円、A席 6500円 Nothing But The Blues Tour
全曲ブルースの渋いセットリスト。ドラムはスティーヴ・ガット。
↑アリーナ中央2列目で観た!プラグインの音や会話まで聴こえる。
ちなみにクラプトンの黒Tシャツはアルマーニの3枚パックらしい。





Unplugged、Tears In Heavenのヒットで女性ファンが増える。
この頃からいい席が確保できなくなった。。。


1997年(武道館)S席 8500円、A席 7500円 Change The World Tour

1999年(武道館)S席 9000円、A席 8000円



2001年(武道館)S席 9000円 A席 8000円




↓2001年12月4日、クラプトンの武道館での演奏が観られます。
https://youtu.be/3FE70D5mRp0?si=MMlTS8556KXLj9NM



2003年(武道館)S席 9000円 A席 8000円

2006年(武道館)S席 9450円 A席 8400円

2009年(武道館)S席 11000円、A席 10000円、 B席 9000円
(さいたまスーパーアリーナはS席17000円、ジェフベックと共演)
クラプトンもついに1万円台に!




2011年(武道館)S席 12000円、 A席 11000円 
スティーヴ・ウィンウッドと共演


2014年(武道館)S席 12000円、A席 11000円 来日40周年

2016年(武道館)S席 13500円、A席 12,000円

2019年(武道館)S席 15000円 A席:14000円





2023年(武道館)S席 20000円、A席(2F後方)19000円、 
ステージサイド(斜め後方)と2F立見席 19000円
武道館でのライヴは通算102回に到達。チケット代は2万円になった。





クラプトンはステージは大袈裟な仕掛けも演出もない。いい演奏だけ。
ウドーの努力もあってチケット代はいままで極力、抑えられてきた。

そんなチケット代の優等生ともいえるクラプトン(笑
S席3000〜3500円から始まり半世紀を経て2万円台に。なんか感慨深い。

ワールドツアーをやめた後、78歳になっても日本には来てくれる。
レジェンドを2万円で観れる我々は幸せな国民かもしれない。

(続く)


<参考資料:MUSIC LIFE CLUB、TAP the POP、ウドー音楽事務所、
芽瑠璃堂 犬伏功のAnother Tricky Day、otonano 日本武道館列伝、
ニッポン放送NEWS ONLINE、昭和画報 20年間の来日公演年表1965-1985、
Remy's Cafe♪ ロック黄金期 初来日リスト、報知新聞、時事通信社、他>