<ビートルズ完コピ願望> 高校に入ってギターを始めた。最初はFやE♭が難関だ(よね?) なんてったってビートルズを弾きたい! 新興楽譜出版の「ビートルズ80」という楽譜集を買ってみた。 歌メロの譜面にコードダイアグラムが記載されてあるタイプのだ。 しかしその通り弾いてもビートルズっぽくならない。歌メロは合っているのに。 おそらく音大出の人とかに原曲を聴かせて、歌メロに合ったコードをアサイン しているのだろう。 曲によってはキーも違う。これも日本人でも歌いやすくという配慮か。 いやいや、ビートルズはそういうふうに弾いてないでしょ! 彼らはセオリー通りのコードを選んでるのではなく、自分たちの好きな和音の響き、 多少強引でも斬新なコード進行、思いがけない効果を狙ってるのだから。 そして耳コピを始めた。最初はなかなか分からなかった。 映画を見て、そんなことをやってたのか!と目から鱗だったことも多い。 やってるうちにジョン、ポール、ジョージの手癖も分かってくる。 いわゆる「ビートル・コード」という押さえ方があるのだ。 You've Got To Hide Your Love Away(Lennon-McCartney)を例に挙げよう。
出だしのローコードのGで2弦開放のBではなく3フレットを押さえてDにしている点、 その後Dsus4→F9→C→Gと常に1弦3フレットのGを8小節までキープし続けている点 に注目していただきたい。 9〜10小節のD→D on C→D on B→D on Aとルート音がクリシェで下降するのも、 ジョンの得意技だ。 この曲はジョンのコード使いの妙、ストローク感さえ覚えれば、ほとんどの人が オリジナルキーのままで歌える。 ギター一本でもサマになるし、カヴァーしやすいナンバーと言えるだろう。
1990年代後半は機材の恩恵で、だいぶビートルズに近いオケができるようになった。 しかーし、ボーカルで一気にクオリティが落ちてしまう⤵︎のだ。 そもそも歌唱力がトホホだし。 近年は多重録音でそこそこの演奏に下手な歌を乗せて台無しにするのはもう諦め、 1音下げたギター一本で鼻歌ビートルズで楽しんでいる。 それでもBlackbird、Mother’s Nature’s Son、Her Majesty、I Wll、 I Me Mine、 Across The Universe、I’m Only Sleeping、Cry Baby Cry、 Revolution No.1… どれも完コピしたギターで、気分だけビートルズで歌う。
<ビートルズを違う解釈で弾き語り〜の☆☆☆例> ビートルズに関してはコンサヴァでオリジナルに勝るカヴァーなしと思ってる僕だが、 中にはこの弾き語りはクールだなー、こういう解釈もあるのか、と感心する例もある。 その3つの例をご紹介しよう。 僕も実際にそのカヴァーをコピーして譜面にしてみた。キーも無理なく歌える。 それぞれコード進行も一部歌詞も変えて、自分流ビートルズに仕立て直しているところ がうまいと思う。 僕の一押しはベン・テイラーの I Will だ。 ベンはジェイムス・テイラーとカーリー・サイモンの息子である。 地味な存在だが、ジェイムス・テイラー直系の声質や歌い方、ギターの弾き方を受け 継ぐユニークなシンガー&ソングライターだ。 この I Wll は1995年に映画「Bye Bye, Love」挿入歌として録音され、同映画のOST 盤に収録されている。彼のソロ・アルバムには入っていない。 ベンはまだ18歳で初々しい。なかなかのイケメンである。(近年はそうでもない)
↑クリックするとBen Taylor - I Willが聴けます。 ※プロモーション・ビデオ版はOSTとギターの弾き方がところどころ違う。 また最後のFOもプロモーション・ビデオ編の方が長い。 コード進行を独自の解釈で変えてしまっているところが耳新しく感じる。 ビートルズ版 I Will はキーがF。 Verse F→Dm→Gm→C7→F→Dm→Am→F7→B♭→Am→Dm→Gm→C7→F→(F7) Bridge B♭→Am→Dm→Gm→C7→Fmaj7→B♭→Am→Dm→G→C7 ※Chorus部のFmaj7とGはポールならではの隠し味(エンデイング近くのD♭7も) 上記の実音表記を度数表記(ディグリーネーム)にしてみよう。 キーのトニック(この場合はF)からの度数、役割、コード進行が理解しやすい。 別なキーに転調されていても、応用が利くというメリットがある。 Verse I→VIm→IIm→V7→I→ VIm→IIIm→I7→IV♭→IIIm→VIm→IIm→V7→I→(I7) Bridge IV♭→IIIm→VIm→IIm→V7→I maj7→IV♭→IIIm→IVm→II→V7 ベン・テイラー版の I Will 。キーはB。2フレットにカポでAを弾く。 ※PVではギブソン・ハミングバードの4フレットにカポをして弾いている。 これは以下の理由からだと思われる。 1) クルーソンのチューナーが固く周りにくいため上がりきらない→1音下げた。 2) 緩めに合わせると低音弦の振幅が大きくなる。さらにカポをすると音が締まり、 低音弦がよく響く(ドノヴァンもJ-45でこの方法を取っている) 3) 1960年代のギブソンはネックが細く2〜5フレットでカポをした方が弾きやすい。 ベンは父親譲りのMark Whitebook、Olsonの他、数多くのギターを所有しているが、 ギブソンのヴィンテージがお気に入りらしい。J-50も愛用している。
さて実際に弾いてるコードポジションのAをキーとしてコード進行を見てみよう。 Verse A add9→F#m7→Gmaj7→Em7→A add9→F#m7→Gmaj7→A7→D→E7 →A add on F#→D→E7→A(A7) Bridge D→E7→A add9 on F#→D→E7→A maj7→D→E7→A add9 on F#→F#m7 →B7→E7 度数表記(ディグリーネーム)にしてみると。。。。 Verse I→VIm7→VII♭maj7→Vm7→I→ VIm7→VII♭maj7 on E→I 7→IV→V7→I add9 on VI→IV→V7→I(I 7) Bridge IV→V7→I add9 on VI→IV→V7→I maj7→IV→V7→I add9 on VI→IV→VIm7→II 7→V7
ビートルズの I Will とはかなり違うことが分かる。 オリジナルのヴァースの最初はF→Dm→Gm→C7(I→VIm→IIm→V7)。 循環コードの王道だ。 ベン・テイラーの方はA add9→F#m7→Gmaj7→Em7(I→VIm7→VII♭maj7→Vm7)。 循環コードなら3小節目でBm7→E7に行くはずだが、いきなりGmaj7で意表をつく。 長年ビートルズで慣れ親しんだ耳には斬新、まさに耳からじゃなかった、目から鱗だ。 ビートルズ版サビはB♭→Am→Dm→Gm→C7→Fmaj7と哀愁の下降コード。 (Fmaj7はポールらしい味付け、2回目のGmをGに変え展開を見せる裏技も最高) 対してベン・テイラーはD→E7→Aを繰り返し、F#m7→B7→E7でヴァースのAに 帰結させるドライな展開になっている。 以下TAB譜の一部を載せるので参考にしてください。
歌い方もベン・テイラーは父親譲りのJT節というか、ややぶっきら棒な歌い回し。 歌詞も一部、変えている。 最後のヴァース、And When I at last I find you は And when I finally find youに。 エンディングもビートルズ版ではポールの美しいファルセット二重唱。 Mm mm mm…..Da da da da…..で終わる(ここが高くて出ないんだよね) ベン・テイラー版はI Willを繰り返しながらFO。(PVはOSTより長い) そりゃビートルズの I Will は美しいけどベン・テイラー版もクールでしょ?
★訂正:ジャケットの印刷の質は高い。レーベルは初期3枚が抹茶色、 Walking Man 以降がバーバンクのパームツリー・レーベルでした。
今回はワーナーブラザーズのライセンスの下RHINOレーベルからのリリースだ。 またしてもRHINO、いい仕事をしてます。 内容は1970〜1976年にワーナーブラザーズよりリリースされたJTのオリジナル・ アルバム6枚、JTの黄金期の名盤が最新のリマスターで聴ける。 Sweet Baby James (1970) ビートルズのアップル社からデビューしたものの不発に終わり、失意のもと 帰国したJTが心機一転、ワーナーブラザーズと契約し発表した再デビュー盤。 フォーク、カントリー、ブルース色が濃いがどこか洗練されているのが魅力。 プロデューサーはピーター・アッシャー。(1) 旧友のダニー・コーチマー(g)、以降JTのバックを務めるラス・カンケル(ds)、 キャロル・キング(p)、ランディー・マイズナー(b)が参加している。 Mud Slide Slim And The Blue Horizon (1971) 2枚目も同じ路線を踏襲。You've Got a Friendのヒットで不動の地位を得た。 プロデューサーは同じくピーター・アッシャー。 ダニー・コーチマー(g)、ラス・カンケル(ds)、ルーランド・スクラー(b)と 後にザ・セクションのメンバーとなる3人が揃った。 キャロル・キング(p)、ジョニ・ミッチェル(cho)が参加している。
One Man Dog (1972) クレイグ・ドージ(p)が加わり初めてザ・セクション(2)というバンド名となる。 ジョン・マクラフリン(g)、ブレッカー・ブラザーズの参加により音楽的にも 深みが出ている。 マクラフリンが使用しているマーク・ホワイトブックのギターをJTは気に入り、 自分と妻となるカーリー・サイモンのためにオーダーしている。 キャロル・キング、リンダ・ロンシュタット、カーリー・サイモン、そして アレックス、ヒュー。ケイトとJTの3人の兄弟たちがコーラスで参加。 プロデューサーはピーター・アッシャー。 スクイブノケットにあるJTの別荘の納屋に作られたスタジオで録音された。 Walking Man (1974) 前作から2年を経て心機一転、NYCでレコーディングを行う。 セッション・ギタリストのデヴィッド・スピノザ(3)をプロデューサーに起用。 スピノザ(g)、ヒュー・マックラケン(g)、ドン・グロルニック(p)、リック・ マロッタ(ds)などNY勢で固め、今までのR&B、カントリー色は退行し都会的で 洗練されたサウンドとなった。 ジャケットのモノクロ写真はリチャード・アヴェドンによるもの。 Gorilla (1975) 再びLAに戻りレコーディング。 NYCで得たソリッドなエッセンスと西海岸の解放的な明るい空気感が融合。 ウエストコースト・ロックの立役者、ラス・タイトルマン(4)、レニー・ワロッカ (5)がプロデュースを担当し、ワーナーのバーバンク・スタジオで録音された。 ダニー・コーチマー(g)、ラス・カンケル(ds)、ルーランド・スクラー(b)の常連、 アル・パーキンス(ps)、デヴィッド・グリスマン(m)、ローウェル・ジョージ(g)、 ジム・ケルトナー(ds)、ウィリー・ウィークス(b)、デヴィッド・サンボーン(s)、 ニック・デカロ(ac)、クラレンス・マクドナルド(p)と豪華な顔ぶれ。 特筆すべきは、デヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、カーリー・サイ モン、ヴァレリー・カーターによる美しい透明感のあるコーラスだ。 ジャケットの写真は数々のアーティストを手がけたノーマン・シーフが撮影。
In The Pocket (1976) ワーナーでの最後のアルバム。プロデューサーも前作と同じで続編的な内容。 ザ・セクションの4人がまた集結。 ワディ・ワクテル(g)、アーニー・ワッツ(s)、マイケル・ブレッカー(s)の他、 スティービー・ワンダーが1曲ハーモニカで参加している。 アート・ガーファンクルとのデュエットも聴きもの。 ジャケ写は引き続きノーマン・シーフ。 裏ジャケットでスーツの中に前作GorillaのTシャツと洒落が効いている。
以上6枚のオリジナル・アルバムが収められている。 アウトテイク、未発表曲、デモ音源などのボーナス・トラックは一切なし。 近年の傾向としてアルバムはリリース時と同じ形態で、ボーナス・ディスクで レアな音源をというのが主流だが、そのボーナス・ディスクもない。 JTはコロムビアに移籍する前に、ワーナーからGreatest Hitsを出している。 その中でアップル・デビュー時の作品、Something in the Way She Moves、 Carolina in My Mindを1976年に新たに録音している。
またこのベスト・アルバムにはSteamrollerのライブ音源が収録されている。 今回この3曲は残念ながら聴けない。 さらに言わせてもらうと、One Man Dog (1972) とWalking Man (1974)の 間が空いたため、ワーナーはライブ盤を出そうとしていた。 1972年オークランドで収録された音源だ。当然、公式録音なので音質は良い。 どうせならこの未発表ライブ盤も目玉として付けて欲しかった。