近いうちに新しいアルバムが発売される、という記事がミュージックライフに掲載。 タイトルはGet Back with Don’t Let Me Down and 9 other songsだとか。 デビュー・アルバムPlease Please Me with….のパロディとは気づかなかった。 もちろんPlease Please Me with….と同じ場所で撮影され、同じレイアウトのジャケ ットが用意されている、ということも少なくとも日本では誰も知らなかっただろう。
前回ベン・テイラーの I Wll を紹介したが、今回は本家本元、父親のジェイムス・ テイラー節のビートルズ弾き語りを2つ紹介しよう。 最初のは JTが1970年にBBCスタジオ・ライブで披露した一曲。 With A Little Help From My Friends だ。
↑JTのWith A Little Help From My Friends (1970)が視聴できます。 JTはワーナーブラザーズからデビューした直後、まだ22歳という若さだ。 当時、恋仲であったジョニ・ミッチェルがプローションのため渡英してBBCに 出演するのに、一緒にくっついてきてしまったのだ。 BBCと観客、そして視聴者/聴取者にとっては嬉しいサプライズだっただろう。 理由は分からないが、TVではJT、ジョニそれぞれ単独出演として放送された。 (スタジオのセットは同じでピアノも置かれたままなので同日収録と思われる) FMではジョニのソロ、JTのソロ、共演パートとしオンエアされている。
TVとFMでは収録曲も違う。 FMでのJTの演奏曲はRainy Day Man、Steamroller。 後半、Carolina In My Mind、California、For Free、The Circle Game、 You Can Close Your Eyesでジョニと共演している。 一方、TV版ではWith A Little Help From My Friends、Fire And Rain、 Rainy Day Man、Steamroller、Greensleeves、Carolina In My Mind、 Long Ago And Far Away、Riding On A Railroad、You Can Close Your Eyes とたっぷりJTの弾き語りを堪能できる。 (Rainy Day Man、Steamrollerの2曲はFMと同じテイクである) 長髪に無精髭、ニットのベストの上に無造作に羽織ったローゲージカーディガン。 後のカート・コヴァーンにも通ずるカッコよさ、元祖グランジと言える。 ゴールデンボイスと言われたハリのあるいい声、ギブソンJ-50の押し殺したような 迫力のある鳴り(この頃はけっこうピッキングも強いのだろう)。 ギター一本で聴き手をこれだけ魅了してしまうのはすごい。 さて、そのTV版一発目のWith A Little Help From My Friends 。 まずビートルズのオリジナルのコード進行を見てみよう。キーはEだ。 リンゴに歌わせるためキーはビートルズの中では低め。 Verse E→B→F#m→F#m→B→E (repeat) Chorus D→A→E→D→A→E→A→E Bridge(Do you need….) C#m→F#→E→D→A (repeat) 次にJT版With A Little Help From My Friends 。 1音下げてチューニング、1フレットにカポでDを弾いている。(つまりキーはD♭) なぜこんなことをしているのかというと、前回述べたような1960年代ギブソンの ネックの細さゆえのローコードの弾きにくさ、クルーソンのチューナーの固さ、 緩んだチューニング+カポによる低音弦の増幅感のため、と思われる。
まずイントロ。ここはもろにSweet Baby Jamesを流用している。 Verse D→A→C add9→G→Em7→A7sus4→D (repeat) Chorus C add9→G→D→C add9→G→D→C add9→G→D Bridge(Do you need….) Bm→E→E7 sus4→A→D→C add9→G (repeat) →G on E ビートルズより1音〜1音半低くなるので歌に余裕が出る。 注目したいのはヴァースの2小節目、本来ならEmの部分にC add9→Gを入れている点。 さらにコーラス、ブリッジでもC add9というテンションコードを多用することで、 独特のぼかし感を醸し出している。 自分の声質、歌い方、世界感に合ったコード選びは見習うべし。 そもそもオリジナルをコピーせずに、最初から自分流で完成させてるのだろう。 以下はTAB譜の一部。参考までに。
もう一つ。やはりJTだが比較的最近の演奏。 2010年にBBCで放映されたジョン・レノン没後30年ドキュメンタリー番組でJTが 披露した In My Life。 これも見事にJT流に昇華している。 ギターがOlsonのため、40年前のJ-50の時と違ってソフトなタッチで芳醇な音色 を奏でている。
↑ジェイムス・テイラーのIn My Life (2010)が視聴できます。 まずビートルズのオリジナルのコード進行を見てみよう。キーはA。 Intro A→D→A→D Verse A→F#m→E→A on G→D→Dm→A (repeat) Bridge F#m→D→G→A→F#m→B→Dm→A ジョンのIn My Lifeはヴァース2小節目のE→A on Gのアクセント。 D→Dmの一時転調で哀愁をそそる。 ブリッジの3小節目のBもサプライズ・コード。続くDmの哀愁。 この曲はメロディーの美しさとコード使いの妙が肝なのだ。 JT版 In My LifeはキーがD 。 Intro D→A→D→A Verse D→D on C→Bm7→Am7 add11→G add9→C9→D→(A add9) Bridge Bm→F# on B→Bm7→E7→C→G→D→A7 on F# Bm→F# on B→Bm7→E7→C9→D