これも中学生の頃から気になってた。
ゲット・バックのシングル・ヴァーションでブレイクの後、また始まりポールが
アドリブでしゃべっている。何と言ってるのだろう?
↑ゲット・バックのシングル盤、ブレイク後のアドリブ・ボーカルが聴けます。
こう言ってるらしい。
Ooow
Get back, Loretta
Your mommy's waiting for you
Wearing her high-heel shoes
And her low-neck sweater
Get back home, Loretta
何のことはない。本編の歌詞と同じ内容である。
咄嗟にトーキング・ブルース調にしてしまうのがポールならではだ。
そして最後のこぶしの効いた黒っぽいシャウトがこれまたカッコいい。
Get back, get back, get back to where you once belonged......
このシングル・ヴァーションはグリン・ジョンズがミックスを行った。
2つのテイクをつなぎ合わせている。
ブレイク前(Ooowまで)は1月27日に録音されたテイク。
これは後にフィル・スペクターの手でアルバム、レット・イット・ビーに収録
されたヴァージョンと同じだ。
ブレイク後(ドラムのフィルイン以降)は翌1月28日に録音されたテイク。
2つのテイクをつなげたは思えないくらい、2つのテイクはテンポも正確だ。
一発録りでオーヴァーダブはされていない。言わばスタジオ・ライブである。
1月27、28日は集中してゲット・バックを仕上げるべくテイクを重ねた。
ビートルズとビリー・プレストンは納得がいくまで何度も繰り返す。
ビートルズが集中すると、テンポも一定に保たれるのだ。
まだドンカマ(リズムマシン)がない時代。それをモニターしながらという
わけでもないのに。(メンバーたちはモニター用ヘッドホンをしてない)
素人のぽんこつバンドだとどんどん早くなったり途中で狂うものだが(笑)
ブレイク後のポールのアドリブ・ボーカルの後フェイドアウトする。
本当はこのテイクは続きがあってお遊びになって行くのだ。
その部分は発売中止となったアルバムGET BACK with Don't Let Me Down
and Other Songsの最後にGet Back (Reprise)として収録されるはずだった。
↑シングル・ヴァージョンの続き、Get Back (Reprise)が聴けます。
この部分は映画「レット・イット・ビー」の最後に使われていた。
ジョンの挨拶の後、静止画像になりクレジットが入る箇所から流れる。
ここでは、こう言ってるようだ。
Get back, get together, Get back home
Oh, we gotta get together, Ooh, ooh, huhuhu, hahahaha(laughing)
(John) Get back, yeah, yeah
Mama's waiting for you Loretta
Get back and put on your high heel sweater, yeah
<ゲット・バック(アルバム)でジョンとポールが言ってること>
次にアルバム「レット・イット・ビー」に収録されたゲット・バック。
1月27日の録音でシングルと同じテイクを使用している。
↑クリックするとアルバム・ヴァージョンのゲット・バックが聴けます。
シングルで聴かれる1月28日に録音されたテイクは使用されていない。
Ooowで終わってしまうためか、シングルと比べると物足りない感がする。
曲の前後には屋上でのSEとジョンとポールのおしゃべりが加えられた。
曲が始まる前。楽器のチューニング音に会話が重なる。
(Paul) Rosetta...
(John) Sweet Loretta Fart she thought she was a cleaner,
But she was a frying pan
(Paul) Sweet Rosetta Martin... Rosetta
(John) The picker, the picker, picture the fingers burning
(Paul) Oh
(John) Okay
ジョンが即興で言ってるのは歌詞のパロディ。
「かわいいロレッタ・ファート(おなら)は自分を掃除機だと思ってたけど、
実はフライパンだった」というジョンお得意のナンセンス・ギャグ。
これは別な日にスタジオで録音されたもの。
楽器のチューニング音やThe picker(ギター弾き)picture the fingers
burning(指がしもやけなの想像してくれよ)、Okayというジョンの声は
屋上でのアイヴ・ガッタ・フィーリングの前に入ってた音。
曲が終了後。
(Paul) Thanks, Mo
(John) I'd like to say thank you on behalf of the group and ourselves,
I hope we passed the audition.…
ポールは拍手してくれたリンゴの妻、モーリンでお礼を言っている。
ビートルズの妻たちはできるだけ目立たないようにしながら見ていのだ。
ファンが見たいのはFAB4、自分たちは映らないように、と控えめだった。
ただ一人、ヨーコだけはジョージの横の特等席にどうどうと座ってたが。
ジョンは「バンドを代表して皆様にお礼申し上げます。オーディションに
受かるといいんだけど」と言って周りを笑わせている。
デビュー前レコード会社のオーディションになかなか受からなかった下積み
時代を自虐的に言ってるのだろう。
このポールとジョンの挨拶は、屋上で最後に演奏したゲット・バック終了後
に言われたもの。
フィル・スペクターは1月27日に録音されたテイクに屋上での会話を入れ、
ライブのように仕立てたゲット・バックをアルバムの最後に配して、上述の
ジョンの挨拶で締めくくろうとしたようだ。(映画と連動するためか?)
<屋上で最後に演奏したゲット・バックでは何を言ってるか?>
1968年1月30日、屋上でゲット・バックは3回演奏されている。
その3回目が、屋上コンサートのラスト・ナンバーとなり、ビートルズとして
演奏する最後のゲット・バックとなった。
↑4人が屋上ライブで最後に演奏したゲット・バックが聴けます。
(アンソロジー3に収録された)
警察が屋上まで上がって来たため、ローディーのマル・エヴァンスが焦り
ジョンとジョージのアンプの電源を落とした。
しばらくはリンゴ、ポール、ビリー・プレストンのみの演奏になっている。
しかしジョージが反抗的にアンプのスイッチをまたオンにする。
荒削なジョンのギターも加わりまた演奏され出した。
ポールは警察を挑発するような即興トークを披露しながら演奏している。
Come on, come on, ah come on, go home.
Your mama's waiting in her high heeled shoes
and her low neck sweater.
Get back to her, yeah.
Yeah, get back.
You've been out too long, Loretta.
You've been playing on the roofs again and that's no good.
And you know your Momma's doesn't like it.
She'll get angry.
She's gonna have you arrested!
後半の大意は。。。。
お出かけが長すぎるね、ロレッタ。
また屋上でやるさ、いけないことだけど
君のママは嫌がるって分かってるだろ
怒るだろうな
君を逮捕させちゃうよ
最後にポールがGet Backと言って曲が終わる。
その後にアルバム・ヴァージョンで使われたポールとジョンの言葉が入る。
本当は屋上で最後に演奏したこのテイクの後に言ってるのだ。
Paul) Thanks, Mo
(John) I'd like to say thank you on behalf of the group and ourselves,
I hope we passed the audition.…
<アルバム「レット・イット・ビー」でジョンはDigを連発している>
トゥ・オブ・アスの前に入るジョンのナンセンス・ギャグ。
別な日に録音されたジョンのデタラメな言葉遊びを曲の頭に付け足したもの。
I Dig a Pygmy', by Charles Hawtrey and the Deaf Aids...
Phase One, in which Doris gets her oats!
チャールズ・ホートリーとデフ・エイズによる「ピグミーのカマを掘る」。
第1章、ドリスがエッチします。
Digは「掘る」という意味。
〜が好き、〜を理解する、という意味でも使われる。
DJが「楽しんでる?」という時にも、Hey, you dig it?と言ったりする。
スラングでは〜(異性)をものにする、といった使われ方もする。
Deaf Aids(補聴器)はビートルズが愛用していたVOXアンプの愛称
get her oatsは英国のスラングで「セックスする」の意味。
I Dig a Pygmy'はピグミーが好きというより卑猥な意味ではないかと思う。
Digもともと黒人が使っていた表現。
ジョンはこの時期、Digがお気に入りだったようだ。
ディグ・イットとレット・イット・ビーの間でもジョンのDigが登場する。
これもトゥイッケナム映画スタジオで録音された会話から流用された。
That was “Can You Dig It?” by Georgie Wood.,
And now we'd like to do 'Hark, the Angels Come
(ジョージー・ウッドの Can You Dig It? でした。
次は「ほら、天使がやってくる」をやります。
※Can you dig it?は慣用句で「分かった?」という意味。
ディグ・ア・ポニー、ディグ・イットはまんまDigを使った曲である。
ディグ・ア・ポニーのponyはpussy cat(子猫)同様に小柄な女性のこと。
You can celebrate anything you want(君は思いのまま何でも祝える)、
All I want is you(欲しいのは君だけ)と歌ってるこから、ヨーコへ捧げる
曲と考えられる。
I Roll A Stoney, Well, You can imitate everyone you know(石を転がす、
知っているものを何でも真似してもいいよ)は当時ビートルズの後追いで
真似をしていたストーンズに対する皮肉。
(サージェント・ペパーズのジャケットで右端の女の子の人形のTシャツに
Welcom The Rolling Stonesという字が見られるがそれも同様。
ストーンズは挑発に乗ってサタニック・マジェスティーを発表した)
レット・イット・ビーに収録されたディグ・ア・ポニーは屋上での演奏。
演奏終了後ジョンが、Thank you brothers! Put me hands getting too
cold to record.(ありがとう、ブラザー、寒くてコードが弾けない)と言う。
brotherは黒人が親しい仲間に呼びかける時に使う。
真冬で厳寒のロンドンのビルの屋上。風も強かった。
あまりの寒さにジョンとリンゴは妻のコートを借りたくらいだ。
演奏の合間、ジョンが右手に息をかけて温めようとするシーンもある。
ディグ・イットはアップル・スタジオでの即興的なセッション。
この曲でのDig It は〜が好き、〜を楽しむ、という意味。
<屋上コンサートで曲の合間にジョンが口ずさんだのは何?>
レット・イット・ビーに収録されたワン・アフター909も屋上での演奏。
演奏終了後ジョンがダニー・ボーイ(アイルランド民謡、ロンドンデリー
の歌)の替え歌を口ずさむ。
Oh, Danny Boy, The altar men are calling.
(ああ、私のダニーよ 聖堂の人が呼んでいるよ)
※altar boy=ミサの侍者、altar call =〈米〉祭壇からの招き
原曲は、Oh, Danny boy, the pipes, the pipes are calling。
(ああ、私のダニー、バグパイプの音が呼んでいるよ)
レット・イット・ビー収録のアイヴ・ガッタ・フィーリングも屋上での演奏。
演奏後にジョンが「Oh, My soul …Oh, soul」と口ずさむ。
ジョンはビートルズが大規模なツアーをやってた頃から、ラララ〜♪とかムムム
ムム♪(ハミング)とか関係ない歌を口ずさんだり、ステージで意味不明なこと
を口走ったり、おどけて踊る真似したりすることが多かった。
またポールが、The next song, we hope you joining, clap your hands and
step your feet(次の曲はみんなも一緒に手拍子や足を踏みならしてください)
と言うと、ジョンは横で障害者の真似をしながら手拍子、足踏みをすることも
あった。(障害者を出汁にビートルズに近づこうとする者たちへの皮肉らしい)
レット・イット・ビー....ネイキッドではこうした会話の部分がすべてカット
されエンディングの音もすぐ消えてしまうため、素っ気ない印象が残る。
コロナ渦で来年に延期されそうなリミックスも、どういう形になるか分から
ないが、会話も含めたアウトテイク、屋上コンサート、グリン・ジョンズが
手がけた幻のアルバム、ゲット・バック(会話が多い)を聴きたいものだ。
<参考資料:THE BEATLES RECORDING SESSIONS、Wikipedia、
ビートルズ録音年表、ゲット・バック・セッションの音源と映像、LyricFind、
Genius Lyrics、YouTube、他>
0 件のコメント:
コメントを投稿