ジョンは新発足の会社アップルからの初シングルはRevolution(革命)が相応しい と考えていたが、スローテンポでシングル向きではないと判断される。 (シングル向きじゃないストロベリー・フィールズ・フォエヴァーをA面としたこと で、初めて全英チャートNo.1を逃したのをジョージ・マーティンは後悔していた) そこでジョンは7月10〜11日、テンポアップしてハードなナンバーにリメイク。 タイトルを#なしのレボリューションとし、シングルA面で発売することを強く主張。 が、ポールのヘイ・ジュードの方がヒット性が高いのは誰が聴いても明らか。 レボリューションはヘイ・ジュードのB面(一応、形は両A面)扱いとなった。 こうした不満からジョンはポールへの反発、嫌悪感を募らせていったのかな? レボリューション1の2009リマスターを聴いてみよう。 ベーシックトラックとして録音されたジョンのボーカルとアコースティックギター、 ジョージの6弦ベース、ポールのピアノ、リンゴのドラムはまとめてセンターに。 ジョンが重ねたボーカル、ポールとジョージのshooby do bop, shooby do wop もYou say you'll change the constitutionのハモりもセンター。 なんかもったいないなあ。 左はイントロで入るジョージのディストーションをかけたリードギター。 もう1台のリードギターはセンター。 But when you talk about destructionで右にブラスが入る。 You say you got a real solutionは左右でブラスが執拗に低音のAを繰り返す。 3’15”のDon't you know it's gonna beの受けのリードギターは左右交互で鳴る。 フェードアウト前にジョンの喘ぎ声、All rightが一旦、左にパンして右に流れる。 入れ替わりに左だったジョージのリードがいきなり右に行って左に移動して行く。 2018リミックスではアコギ、6弦ベース、ピアノがセンターなのは同じだが、 ドラムはセンター基調でスネアが右から強く響くようなった。 ジョンのダブルトラックのボーカルは、軽く左右に振り分けられ揺れ感が出た。 リードギターも左から始まり、もう1台は右から入る。 Count me outの後の歪んだコードは左とセンターから。 But when you talk about destructionでブラスが左右に広がる。 その直前、change the worldで右から薄くオルガンが鳴るのが初めて確認できた。 Shooby do bop, shooby do wopもYou say you'll change the constitution のハモりも左右いっぱいに広がりジョンの両脇で歌ってる感が出ている。 2’24”のYou say you'll change the constitutionの前に入るピアノは左。 3’15”のDon't you know it's gonna beのリードギターは左右交互なのは同じ。 3’25”でアコギと同じリフのリードギターは左からやや右よりに変わった。 フェードアウト前のジョンの喘ぎ声、All rightとジョージのリードが左右で追いか けっこしながら消えていくのは同じ。 2018リミックスの方がステレオの広がり感があり聴いてて違和感がない。
サボイ・トラッフルはホワイト・アルバム・セッション最後に録音された曲。 ハニー・パイと同時期にトライデント・スタジオで録音開始。 10月3日。ジョン不在。3人でギター、ドラム、ベースのベーシックトラックを作成。 この曲もハニー・パイと同じやり方をしたらしくテイク1のみ残されている。 10月5日。ポールのベースとジョージのヴォーカルをオーバーダブ。 10月11日。アビーロード第2スタジオでブラス(サックス6人)をオーバーダブ。 ホーンセクションのアレンジはクリス・トーマスが任された。 このセッションに参加した外部ミュージシャンは6人。(サックス6人) エンジニアとケン・スコットはかなりうまく録れたと自負しジョージに聴かせる。 が。ジョージはブラスにディストーションをかけ音を歪ませることを提案。 「せっかくの演奏をこんな音に加工してしまって申し訳ない。でもこれが僕の欲しい 音なんだ」と6人のミュージシャンたちに謝ったそうだ。 10月14日。アビイ・ロード第2スタジオ。リンゴは休暇を取りイタリア旅行で不在。 オルガン、タンバリン、ボンゴ、リードギターなどをオーバーダブして完成した。 ジョージ・マーティンから「音が明るすぎる」という指摘を受けるも、ジョージは 「でもこの方が好きなんだ(Yeah,but I like it)」と譲らなかった。 マーティン卿は第2スタジオを後にし、他のスタジオの様子を見に行ったとか。 ジャイルズ・マーティンに言わせると「それは父に出て行けと言ってるのと同じ。 そこがビートルズのすごいところ」とのこと。 2009リマスターは左からドタドタとスネアの連打で始まるリンゴのドラム。 センターに歪ませたエレピ(ジョージが弾いてるのだろう)、ポールのベース。 右にジョージのボーカル。 左にCreme tangerineと同じメロのギター。 montelimarからのコード弾きはセンターよりやや左。音は控えめ。 But you'll have to have them allのカッティングでボリュームが上がる。 歪ませたブラスは両側で煽る感じ。 2回目のBut you'll have to have them allで右に鋭角的なギターが入る。 またYou might not feel it nowからセンターにオルガンが入る。 1’28”〜の歪ませたリードギターの間奏は右のセンター寄り。 エンディングのタンバリンは右。 2018リマスターでは一新された。 リンゴのドラム、Creme tangerineで入るギターは左のセンター寄り。 エレピ、ベース、そしてジョージのボーカルもセンターに(こうじゃないとね) But you'll have to have them allでジョージのボーカルがやや左右にずれる。 2回目のAfter the Savoy truffleはジョージがワイルドに歌ってるのが分かる。 右に入る簡単なフレーズの鋭角的なギターは同じ。 センターのオルガンの響きが美しく響くようになった。 ブラスが左右なのは同じだが、以前ほどギスギスした音じゃなくで低音部もしっか り出ている。(当時のジョージの意図と違うにしても、この方が聴きやすい) 1’28”〜の歪ませたリードギターの間奏は右センター寄りで少し抑えめになった。 エンディングで右から聴こえるタンバリンも目立たなくなった。
↑クリックするとサボイ・トラッフル 2018リミックスが聴けます。 この曲もアウトテイク集にはテイク1の演奏のみのバッキングトラックが収録。 クライ・ベイビー・クライの録音開始は1968年7月15日。アビーロード第2スタジオ。 ジョンがオルガンを弾きながら歌い、ポールのベース、リンゴのドラム、ジョージの エレクトリックギター、という編成でリハーサルを重ねながら録音。 翌16日、前日までのテイクを破棄。 ジョージがアコースティックギターを弾き、ジョンはヴォーカルに専念。 ポールのベース、リンゴのドラムというシンプルな編成で10テイクを録音。 最終テイクをリダクション後エレクトリックピアノ、ピアノのオブリ、オルガン、 タンバリン、ジョージのエレキギターによるオブリをオーバーダブ。 第12テイクにジョンのピアノとジョージ・マーティンのハーモニウムをオーバーダブ。 7月18日。ジョンのボーカル、ポールのコーラス、SE、ハーモニウムを追加し完成。 後にアイ・ウィルのセッション(9月16日)でポールが即興でアコギで弾き語りした 「Can you take me back where I came from,can you take back」の一部が エンディングにつなげられている。(これが妙にしっくり来るから不思議だ) まず2009リマスター。 ジョンのボーカルが左から始まりThe King of Marigoldでセンターへ移動。 歌い出しのハーモニウムはセンター。 アコギは右。ベースはセンターよりやや右。 歪ませたエレピとピアノのオブリはセンター。 Cry baby cryでジョンの声は再び左へ。ドラム、タンバリンがセンターに入る。 次のThe King wasでまたジョンの声はセンターへ。ベースは左端に。 ドラムがやや右に移動。クラッシュシンバルはセンターで鳴る。 この辺になるとアコギの音はだいぶ後退。1’17”のエレキギターはセンター。 2回目以降のCry baby cryもジョンの声は左。 ポールとジョージのShe's old enough to know better(1’34”)はセンター。 2’34”〜Can you take me back where I came fromはポールの声がセンター。 かなりリバーブが深い。 右にアコギ。左にパーカッション。 2018リミックスでは主役のジョンのボーカルは曲を通してセンターで動かず。 アコギは右、ハーモニウムとリンゴのブラシ演奏、ベースは左、オルガンやや右寄り。 調子っぱずれなピアノは左。 Cry baby cryでジョンのダブルトラックのボーカルはセンターと左にずれる。 ピーター・コビン方式(1)のディレイ効果だ。 リンゴのドラムは左から鳴っているが、2回目のSo cry baby cryのロールから右にも 入りドスンバタンと迫力が増す。 1’17”のエレキギターはやや左になった。 She's old enough to know better(1’34”)のハモりはセンター。 2’34”〜Can you take me back where I came fromは2009リマスターとほぼ同じ。 ボンゴとマラカス、アコギの音が鮮明になった。
バースデイは9月18日に録音された。 この日の夜BBCで映画「女はそれを我慢できない(The Girl Can't Help It)」を 放映するため、4人はいつもより早めにセッションを開始。(1) ポールは夕方までにリフと歌詞を完成させ、ベーシックトラックを20テイク録音。 夜8時半に全員でポールの家に行き映画を鑑賞。けっこう仲良くやってたんだ(^^) 映画終了後メンバーたちはスタジオに戻り、オーバーダブを行い明け方までに完成。 2009リマスターはリンゴのドラム、ポールのベース、ジョンのリフ、オクターブ上の ジョージのリフ、オルガン、タンバリンがセンターでまとめて鳴る。 ポールのダブルトラックのボーカル、ブリッジのYes we're going to a party party のジョンのボーカル、Birthday♪のコーラス(パティ・ボイド、ヨーコ)、手拍子が 左右から聴こえる。 演奏はセンターで塊り。 ボーカルとコーラスを左右泣き別れにしてステレオ感を出すというミックスだ。 2018リミックスは大胆に変えられた。 リンゴのドラム、ポールのベース、ボーカルはセンターという王道ミックス。 ジョンのリフは左、ジョージのオクターブ上のリフは右に振り分けられ、センターで オクターブ下の同じラインを弾くポールのベース、とそれぞれの音色がクリア。 ステレオ感いっぱいで迫力満点だ。 主メロの今までポールだけだと思っていたのだが、新ミックスを聴いてみてポール( ADTによるダブルトラック)+下のハモりはジョンのような気がしてきた。 8小節のドラムソロの間、ポールの雄叫びのカウントがカッコいい。 0’45”でタンバリンがセンターから一瞬左に振れるのは何か意図があってのことか? ブリッジのYes we're going to a party partyではジョン(ADTのダブルトラック) はセンターで、ハモり(ポールとジョージ)はわずかに左右にずれ、左から入る手拍子 とともに一気に広がりを見せる。 サビのI would like you to dance, Take a cha-cha-cha-chanceはポールがセンター。 下のハモり(ジョンとジョージ?)はやや左右に。 その外側からパティとヨーコのBirthday♪が聴こえパノラマ感がいっぱいだ。 サビの終わり、ポールのDance yeahのシャウトだけ左に流れる。これも心憎い。 オルガンが左で鳴りこれもいい感じだ。 続くリフで入るエレピ(フェンダー・ローズ?)はセンターに配された。 エンディングで中途半端に鳴るタンバリン(2’38”)は今回だいぶ奥に引っ込んだ。 この曲は2018リミックスの圧勝!
↑クリックするとバースデイ2018リミックスが聴けます。 アウトテイク集にはベーシックトラック(演奏のみ)のテイク2が収録された。 ベース、ギター2台、ドラムのタイトなバンド・サウンドで既に完成形に近い。 左ch.のジョンがサビのI would like you to danceで小気味いいプレイをしてる。 最終ミックスではオルガンと喧嘩するからカットされたのだろうがもったいない。 ヤー・ブルースは8月13日に録音。 セクシー・セディの再リメイク(テイク100〜107)を終えてから、4人は第2スタジオ のコントロール・ルームに隣接する小さなストックルームに楽器、機材を持ちこんだ。 ポールによると、狭いガレージで演奏することでバンドの一体感が出たそうだ。 ジョンのガイドボーカルと演奏でベーシックトラックを14テイクを録音。 リダクション(バウンス)を行った後、2つのテイクを編集で切り貼りしている。 (3’17”ギターソロの直後から変わるのでつなぎ目が分かる) 翌14日、ジョンのボーカルを録音。 2009リマスターではリンゴのカウント、ドラムが左に入る。 ジョンのボーカル、ポールのタイトなベースはセンター。 ジョンのワイルドなリフとジョージのオブリが塊りで右から聴こえる。 The eagle picks my eyeで左からジョンのボーカルやシャウトがやや遅れて聴こえる。 間奏は右。ジョンの暴力的なリフレインからジョージの鋭角的なソロに入れ替わる。 が、左で薄めに別なソロが聴こえてくる。 3’17”ギターソロの直後、ドラムのフィルインから始まる演奏は別テイクを繋ぎ合わせ たもので、ジョンの声が小さいのはガイドボーカルだからである。 2018ではリンゴのカウント、ドラム(フロアタムは左)、ボーカルがセンター。 The eagle picks my eyeで左から遅れて聴こえていたジョンの声はなくなった。 3回目のBlue mist round my soulで少し左に声が入る。 Girl, you know the reason whyでのポールのハモりは小さめだがよく聴こえる。 ポールのベースもセンターで音の輪郭がくっきりし、存在感を増した。 ギターはジョンもジョージも右。ジョージのオブリの音量が大きくなった。 ジョージの間奏は右からややセンター寄りに移動。もう1つの隠れ間奏は左。 間奏の間ジョンが何をやっているか、右ch.を注意深く聴くと分かるようになった。 アウトテイク集にはベーシックトラックのテイク5が収録された。 既に完成形に近い。ジョンのガイドボーカルが小さく入っている。
↑クリックするとマザー・ネイチャーズ・サン2018リミックスが聴けます。 アンソロジー3にテイク2が収録。 今回アウトテイク集に収められたテイク15は弾き方がラフで、歌い回しも完成版と は異なる。いきなり終わり、コントロール・ルームにアドバイスを求めている。 エブリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド ・マイ・モンキー(舌を噛みそう)は6月26日にリハーサルを開始。 翌27日に6テイク録音し、最後のテイクをリダクション(バウンス)。 チョカルホ(円筒形のマラカス、シーズ・ア・ウーマンで使用した)やハンドベルを オーバーダブした。 7月1日にポールのベースとジョンのボーカルをオーバーダブ。 7月23日にジョンのボーカルを録り直し、手拍子などを加えた。 2009リマスターは右から歪みを効かした鋭角的なギターのイントロ。左にも回る。 ジョンのボーカル(センター)が始まるとギター(ジョージ)は右でリフを弾く。 ジョンが刻むリズムギターも小さめで同じく右に配されている。 ドラム、ベース、騒々しいハンドベルは左。 Me and my monkeyの後、スネアの音が右にも入る。(0’36”) 左端とセンター奥でジョンとポールのシャウトが時々、聴こえる。 Come on come on…の後(2’03”)ベースソロが左に加え右にも入る。 ポールがオーバーダブした箇所だろう。 続くスライドさせながらのコード弾きは両サイドから。(ここが一番ツボ!) Come on come on…は左〜右に縦横無尽に入りフェードアウト。
2018リミックスも2009リマスターをほぼ踏襲。 リンゴのドラムはややセンター寄りに修整されイントロでバスドラが重く響く。 ポールのベースはセンターになった。 ジョンのコードカッティングが左に配され、ちゃんと聴こえるようになった。 最後のカッコいい所(2’03”〜)、ベースはセンターと右、スライドのコード弾きが 両サイドと大きな変化はないが、音がクリアーでベースがブンブン唸っている。 左〜右に入るCome on come on…は前よりいろいろな声が聴こえるようになった。 アウトテイク集には演奏のみのリハーサルが収録された。 ジョンのリズムギター、ジョージのリード、ポールがベース、リンゴがドラム。
セクシー・セディーは7月19日から着手。 ジョン(アコギ)、ポール(オルガン)、ジョージ(エレキ)、リンゴ(ドラム) の編成でベーシックトラックを21テイク録音。 テンポを変えたり試行錯誤しながらテイクを重ねたため完奏ヴァージョンは少ない。 7月24日、前回までのテイクを破棄してテイク25からリメイクを開始。 テープを3本使って23テイク録音し、テイク47をベストとしたがジョンはまだ不服。 1968年8月13日。また前回までのテイクを破棄。 ポールはオルガンからピアノに変更。テイク100から107まで録音。 テイク107のリダクションを行う。 この日はここまでで。この後ヤー・ブルースのセッションに移る。 1968年8月21日。アビイ・ロード第2スタジオ。 テイク107のリダクションを繰り返し、ボーカル、ベース、コーラス、タンバリンを オーバーダブし、テイク117でやっと完成した。 アンソロジー3にテイク6が、今回のアウトテイク集にはテイク3が収録された。 まず2009リマスターを聴いてみよう。 イントロで入るポールのピアノはやや右よりだが、ADT処理のせいか揺れてセンター 〜左まで広がる。(歌が始まってからはやや右で固定) 続くタンバリン、ドラム、ジョンのボーカルはセンター。 メロディアスなポールのベースが左、エレキギター(ジョージ)は右。 Wah,wah,wah…で入るコーラス(ポールとジョージ)は右。 これもADT処理がされてるようで、Sexy Sadie〜♪でフランジャー効果が顕著。 One sunny day〜のギター・リフは右のセンター寄りで広がる(ADT処理?)。 Sexy Sadie, the greatest of them allの掛け合いコーラス右。 終盤2’15”から繰り返すジョージのリフもやや右でADT処理。 2’56”で別はギターが右から聴こえる。 ポールのピアノはよく聴こえる箇所と後退してあまり聴こえなくなる箇所と交互。 最後は右端にパンされてフェードアウト。 このように2009リマスターでは各楽器の定位、音量レベルが細かく変化している。 ADT処理したトラックが多くごちゃ混ぜにならないよう、どこで何を優先させるか、 何を後退させるか、フェーダーとパンを動かしながらミックスダウンしたのだろう。 続いて2018リミックス。この曲も一新された。 まずポールのピアノが左に移され、センターまでディレイ効果で広がる。 タンバリンはセンター。ドラムもセンターだがフロアタムは左に触れ立体感が出た。 ジョンのボーカルがセンターなのは同じ。 Wah,wah,wah…のコーラスが左右から聴こえてきて気持ちいい。 One sunny day〜のギター・リフは以前より奥に引っ込んだ感じ。 今まで聴こえなかったが、センターでオルガンが鳴ってるのが確認できる。 How did you knowで左からポールが高い音を連打してるのが分かる。 が、次のYou'll get yours yetではセンターから聴こえる。 さらにWe gave her everything we owned just to sit at her tableではセンター でオルガンが鳴ってるのが分かるようになった。 2’15”〜で登場する、この曲の肝とも言えるジョージのリフは左右から聴こえ、 存在感が増した。 一方でその間、右でアルペジオに近いリフを弾いてるのも確認できる。 最後に右から入る別なリフもより鮮明で、前よりも長く聴けるようになった。 これだけ重ねた音が喧嘩せず、それぞれクリアーに聴こえるのはすごい。 ということでこの曲も2018に軍配が上がる。
翌日の10日にオーバーダブが行われて終了。 最後のシンバルのクラッシュの後、リンゴがテイク18の直後に叫んだ「指にマメが できちゃったよ(I got blisters on my fingers !)が付け加えられた。(4) 2009リマスターを聴いてみよう。 センターやや左寄りにワイルドなエレキギターのイントロ。(たぶんジョン) ポールのボーカルはセンター。 リンゴのスネアが右から煽る。曲中はかなり激しいドラミングが聴ける・ 左端は(おそらくジョージ弾いてる)フェンダー6弦ベース。 Helter Skelter…のメロをなぞるジョージのオブリは左端。 6弦ベースがオクターブ下で同じラインを弾く。 コーラスのAh…はセンター奥。Da da da…でやや右に移動。 2回目のHelter Skelter…でジョージのオブリは左からやや右に移る。 Look out, 'cause here she comesのオルガン、続くギターのリフはセンター。 Well do you, don't you want me to make youのオブリはやや右。 この辺りでドラムがもう1台、左に入る。 Ah…Da da da…のコーラスは右。 最後のShe's coming down fastのオブリもやや右。 Yes, she isの後に入るスライドギターはセンターから左へ流れる。 ジョンのギターがセンターで暴力的にコードをかき鳴らす。 サックス、トランペットやノイズが左に入り一旦フェードアウトしてイン。 リンゴが左右で大奮闘(笑) I got blisters on my fingers !の叫び声が右に入り幕を閉じる。 Helter Skelterの日本盤翻訳が「しっちゃかめっちゃか」だったように、演奏 も乱暴だがミックスも左右に変化し、まさにしっちゃかめっちゃかだった。 2018リミックスはこのカオス(5)状態がきちんと整理整頓された感じだ。 出だしは同じ。やや左寄りからギターのノイジーなイントロ。 ポールのボーカルがセンター。右からリンゴのドラムが追い上げてくる。 スネア、フロアタムの音ははセンターにも響く。 最初のHelter Skelter…からスネアが左にも別に入る。 Da da da…のコーラス、Helter Skelter…に呼応するギター・リフは左右から 聴こえてきて音の洪水のようになる。 Look out, 'cause here she comesのオルガンはセンターだが左右に揺れる。 続くギターのリフは左右から攻めてくる。 1’56”のAnd I get to the bottom and I see you againの後ポールに呼応する yeah, yeahのコーラスの3度のハモりが大きく聴こえ新鮮。 3’00”の激しくかき鳴らすギターはセンター、スライドは左から聴こえる。 終盤のサックス、トランペットは右に変えられた。 この後はリンゴのドラムは左右で大暴れ。 エンディングI got blisters on my fingers !は右のまま。以前より抑えめ。 今まで聴こえなかった笛のような高いビブラート音が左に入ってる。 Helter Skelter(しっちゃかめっちゃか)感は従来のミックスの方が出てる。 これに慣れ親しんだ人は新リミックスは綺麗にまとまり過ぎで馴染めないかも。 個人的には楽器が右や左に動くのはあまり好きじゃない。 2018リミックスの方が今の自分が聴くにはいい。そこは好みが分かれる所だ。
↑ヘルタースケルターのテイク17、ベーシックトラックが聴けます。 アンソロジー3にはブルージーなテイク2が4’38”に編集され収録された。(モノラル) 今回は同じテイク2が収録されているが12’54”(本当はもっと長い)のステレオ。 またテンポアップされたテイク17のベーシックトラックも収録された。 だいぶ完成形に近い。ポールのカウント、歌い方がワイルドすぎてゾクゾクする。 これを聴く限りベーシックトラックはポールはボーカルのみで、ジョンのディストー ションを効かせたギター、ジョージの6弦ベース、ドラムの編成だったようだ。 最後にポールが「今のは録っておいて(Keep that one)」と言ってる。
<レコーディング過程1 アコースティック・ヴァージョン> セッション開始から2ヶ月、7月25日にやっとジョージの曲が取り上げられる。 この日のホワイル・マイ・ギター〜はジョージの弾き語りによるデモ。 静かな美しいアコースティック・バラードに仕上がっている。 アコースティックギター一本での弾き語りでエンディングをかき鳴らすテイクと、 後半にオルガンがオーバーダブされフェイドアウトで終わるテイクが録音された。 (アンソロジー3に収録されたのは後者の方) 最後のヴァースが、I look from the wings at the play you are staging(君が 演じる劇を舞台袖から見ているよ)As I’m sitting here doing nothing but aging (ここに座って歳だけとりながら)という歌詞になっている。 今回アウトテイク集に収録されたアコースティック・ヴァージョン テイク2 (1968年7月25日録音)ではポールが全編通してハーモニウムを弾いている。 この日はジョージ一の単独作業と思われていたが、ポールも手伝っていたのだ。 ポールは弾きながら曲の構成とコードを覚えているような感じだ 最初のヴァースを歌った後ジョージが、たぶん彼にもマイクを1本立てた方がいいよ (Yeah, maybe you’ll have to give him his own mic)と誰かに指示している。
さて、クラプトンは一発であのソロを弾いたというのは本当なのだろうか? もし別テイクがあるとしたら、今回のアウトテイク集で明らかにされるのでは?とい うのが最大の関心事であった。 やっぱり・・・あったのだ。 アウトテイク集には前述のアコースティック・ヴァージョンの他に3rd.ヴァージョン、 テイク27が収録されている。 ジョージのアコースティック・ギターとボーカル、ポールのピアノ、ジョンのオルガン、 リンゴのドラム、それにクラプトンがレスポールで奏でるオブリ&ソロという編成だ。 ジャム・セッションでラフではあるが、だいぶ完成形に近い。 最後はジョージがスモーキー・ロビンソン風のファルセットを出し切れず中断。 ジョージは「スモーキーみたいに歌ってみたけどスモーキーになれないってことだね (It’s okey , I sang I tried to do Smokie, and I just ain’t Smokie)と言っている。 オブリと間奏はいかにもクリーム時代のクラプトンっぽくてカッコいい。 前述のようなADT処理はされてないが、クラプトンならではの演奏が味わえる。 ヴァースでのハモりはポールがやっているがこれも張りがあってカッコいい。