2019年10月21日月曜日

アビイ・ロード2019リミックスはどうだった?

9月27日発売のアビイ・ロード2019リミックス、みなさんはもう聴かれましたか?
えっ?2009リマスターを買ったから必要ない?
うーん、それはそれでいいけど。リミックスはリマスターと全く別物(1)ですよ。

音楽誌で特集が組まれ、評論家の方が解説してると思うので参考にして下さい。


Amazonのレビューを見てみると、思ったとおり賛否両論である。(2)

思ったとおりというのは、クリアーで迫力のある音に新鮮な感動を覚えたという人
と、リアルタイムで聴いた人たちの多くは否定的(中域に固まった音こそビートルズ
2009リマスターの方がいい)と票が分かれるのは予想できたからだ。







<リアルタイムで聴いたビートルズ世代にとってのリミックス>

僕は最後のビートルズ世代である。アビイ・ロードもリアルタイムで聴いた。
しかし、たいしたオーディオ機器で聴いていたわけではない。
カセット・レコーダー(デッキでさえない)で聴くことも多かった。

だから当時の音にこだわりがない。というか正直、よく分かっていなかった。
ただヤマハの視聴会とか、いいオーディオで聴くとぜんぜん違って聴こえるもの
だなあ、とは思っていた。

大人になって中程度のコンポを揃えて、英国盤LPを大人買いした。
それでも思春期に聴いた印象とさほど変わらない。






1986-1987年の初CD化で、ずいぶんクリアーに聴こえるようになったと思った。
(CD創世記のリリースだから今聴くと音痩せしてガサツに思えてしまうが)


本当にいい音だと感じたのは2009年のリマスターである。
1st.プレスの英国盤を高級オーディオで聴くとこんな感じだったんだろうなー、と。
マスタリング技術向上で、庶民でも手軽にCDでHi-Fiを楽しめる時代になったのだ。






一方で大胆なリミックスのイエロー・サブマリン・ソングブック(1999)、素肌だが
継ぎ接ぎ整形美人と揶揄されたネイキッド(2003)、マッシュアップのラヴ(2006)、
も(往年のファンには冒涜と言う人もいるが)僕は大歓迎だった。

音がクリアー(3)今まで気づかなかった音が聴こえる、というのは新鮮である。
新しい解釈による楽器やボーカルの定位も嬉しい



1960年代のオリジナル盤のステレオ・ミックスは不自然であまり好きではない。
たとえば名盤ラバー・ソウルが左右泣き別れ、しかもボーカルが方チャンネルだけ
というのはジョージ・マーティン卿の失策と個人的には思う。
他にもドラムが左右どちらかに偏ってたり、左右を動き回ったり入れ替わったり、
特にヘッドホンで聴くと違和感ありありだ。

長年聴いてきたビートルズだからこそ、リミックスは新鮮に感じる人もいれば、
慣れ親しんできた音のイメージを壊してほしくない人もいる
前者には2019リミックスはお薦めする。後者ならやめておいた方がいい。




↑このオバハンは通りがかりか?スタイリストには見えない。あんたたち誰?みたいな。




<アビイ・ロード2019リミックス 個人的な感想ーサウンド>

まず今回のリミックスで一番得をしたのはリンゴだな、と思った。
得をした、という言い方は変かもしれない。

ドラムの音の大きさ、左右に広がる響き、迫力にのっけから圧倒された。
バスドラの強いアタック感。そしてハイハット、シンバルのキレの良さ。
スネア、フロアタム、バスタムの巧みな使い方。

リンゴってすごい!と改めて思った人も多いだろう。





それはアビイ・ロードだからこそ。コンソールによるところが大である。

このアルバムは唯一EMIスタジオの新型コンソール(4)で録音された。
真空管からトランジスタ式に変更された直後だったのだ。
クリーンでブライトでパンチのある、リッチな(しかし硬質な)音になった。

新型コンソールは8トラック・レコーダーに対応すべく入力は24系統。
ドラムのレコーディングがより複雑でモダンな形でできるようになった。
写真でも分かるようにリンゴのドラムには5本のマイクがセットされている。


ミキシングしながら1〜2トラックに録音したか、数トラックに分けて後から
リダクションしたのだろう。(後者の可能性が強い曲も確認できた)
リミックスではリダクション前の元トラックの音を拾い直すことができる
だから立体的で奥行きがある、臨場感のあるドラムの音が録れたのだ。



次に目を引く、じゃなくくて耳を惹くのはポールのブンブンうなるベースだ。
カム・トゥゲザー、サムシングなどもともとベースの存在感が大きい曲では、
ここまでやるか!というくらい攻めている。






エレキギターの音も艶が出た。
ジ・エンドのバッキング、各自のソロではすぐ近くで弾いてるような臨場感だ。

アイ・ウォント・ユーではバンド・サウンド、ビリー・プレストンによるオル
ガンの黒っぽさ、ジョンが周囲の反対を押し切って入れたシンセの爆音ノイズ
もほどよい厚みに聴こえる。



アコギに関してはこのアルバムでは以外と出番が少ない。
ヒア・カムズ・ザ・サン、ポリシーン・パン〜シー・ケイム・イン・スルー〜
ハー・マジェスティの4曲。いずれもクリアーな音になった。


ボーカルの艶が増しブライトになったが、曲によってやや硬質な印象も。






↑写真をクリックするとオー・ダーリン!の2019リミックスが聴けます。


オー・ダーリン!のポールのシャウトはますます力強くなったし、サビのダブル
トラッキングの処理もいい。
ポールのボーカルの陰に埋もれていたコーラスが浮かび上がって美しい
こんなふうに歌ってたのか〜と感動した。

ヒア・カムズ・ザ・サンのジョージのボーカルも張りが出てよくなったと思う。




<アビイ・ロード2019リミックス 個人的な感想ー定位と音量バランス>

カム・トゥゲザーは大きな定位の変化はない。
が、右寄りに固まっていたドラムが左右に広がり、存在感が増した
ベースはセンターのまま。うなり音が大きすぎてボーカルを邪魔してる気がする。

間奏、アウトローのジョージのギターが以前より艶っぽく聴こえる
テレキャスターのフロントPUの音だろうか。歪みはなく甘さがあっていい。
アウトローのCome together,Yeahの合間にジョンの別な声が聞けるのが嬉しい。







サムシングも大きな定位の変化はない。
初っ端のドラムのダダダダンがオリジナルはモコッと聴こえたのが、リミックス
では奥の方からズドドドと鳴り響き圧倒される
she movesの後のタムの響き方もだいぶ印象が違う。
ベースは以前よりやや中央寄りの右で存在感大。ボーカルの邪魔にはならない。
I don’t wanna leave nowで入るオルガンが左右から聴こえる(こういうの好き)

サビのハイハット連打は右、タム連打は中央、4拍目のスネアは左と以前にはない
ステレオ感がめいっぱい楽しめる。
ジョージの声もオリジナルより前に出ている。
サビではセンターと右のダブルトラッキングでステレオ感が出て盛り上がる。
I don’t knowの2回目のI〜の上はポールも歌っているような。

間奏のギターソロは以前かかっていたコンプが外されたのではないか。
コンプ特有の音の頭が潰れがなくなった。
以前よりまろやかに聴こえ、レスポールなのかテレなのかますます分からない(笑)
ま、ジミー・ペイジもレスポールとテレは似てるんだよ、と言ってたしね。
スライド奏法はないだろう(本人もビートルズでスライドはやってないと証言)
ベンディングのダウンが巧みだからそう聴こえるのだ。


マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマーは左右泣き別れが解消され聴きやすい。
左だったベースがセンターへ。右だったドラムはセンターやや右よりへ。
ギターのオブリとハンマーはどセンターからやや右よりへ。
ハンマーの音が小さくなって耳障り感が解消された。
中盤から入るアコギはセンターから右へ。
Maxwell,Maxwell,free、Do-do-do-doはセンターから左右に広がり美しい


オー・ダーリン!は左のピアノはそのまま。センターだったベースが右よりへ。
ドラムが左に配された。ボーカルを際立たせる処理だろう。
Oooh…Ahhhのコーラスが左右に広がる。美しい。これにはかなり感動。
最後のヴァースでのコーラスのバリエーションもよく分かる。







オクトパス・ガーデンは真ん中に固まっていたのだが大きな変化はない。
ドラムがやや右へ。Ooohは左右で同じ。ピアノの音はマイルドになった。
左だったジョンのスリーフィンガーが左〜センターへと広がるようになった。
ジョージのギター・ソロの間、左右に移動していたトレモロを効かしたAhhhは
センターで固定。一緒に動いていたブクブクの泡音は左右から聴こえる。
この曲を聴くと金属的という評価は?むしろ以前よりメロウになったと思う。


アイ・ウォント・ユーは定位というより音色の印象がだいぶ変わった。
まず前半のヒスノイズが無くなったジョンの声も艶やかで膨らみが出た
イントロのジョンのアルペジオは以前はカリカリしてたがファットな音になった。
本来のエピフォン・カジノの音はこれだと思う。
ジョージのテレキャスターが左から右へディレイがかかり絡んでくる
ベースのやや右は変わらず。ギターとの対比もちょうどいいと思う。
ドラムは左からややセンターよりへ、フロアタムは右と広がりを見せる。
ビリー・プレストンのハモンドオルガンの音がブルージーで実にいい。
後半のシンセがかぶる音の厚みは格段に増した。
その代わり、シンセによる爆風ノイズは控えめでマイルドになった印象だ。




↑写真をクリックするとアイ・ウォント・ユーの2019リミックスが聴けます。




ヒア・カムズ・ザ・サンはイントロのアコギが左端からややセンターよりへ。
シンセが重なるがが双方の音がそれぞれクリアなので気持ち良い。
ジョージの声は艶が増した。
Here comes the sun, du du…のコーラスが左右に広がり美しく響く
ベースはセンター、ドラムはセンターから左へ、という定位は変わっていない。
が、Sun sun…の手拍子と共に入るタムのドコドコドコが右よりに広がった。
後半の音の厚み、エンディングのアコギの響きの美しさはすばらしい

Amazonのレビューでヒア・カムズ・ザ・サンの12弦ギターの音が美しいという
レビューがあったが、あれはグラマーのジャンボサイズのギターだと思う。
(バングラディッシュ・コンサートで使用したメイプル・ボディーのもの)



↑写真をクリックするとヒア・カムズ・ザ・サンの2019リミックスが聴けます。



ビコーズは左のマーティン卿のハプシコード、右のジョンのギターがやや中央
によせられた。ギターの音色の印象が変わった。ふくよかさが出たというか。
ポールのベースはセンターのまま。
大きく違うのは三声のハーモニーだ。センターで固まっていたのが左右に広がる。
3人が各パートを3回歌ったそうだ。元トラックをマルチミックスしたのだろう。
サビのブラスはマイルドになった。
エンディング近くで入るシンセも冷たさがが消えやさしい音になった


ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネーの定位は出だしはほぼ同じ。
左右の定位がやや中央によせられ聴きやすくなった。
が、Out of collegeからは一転。右から聴こえたポールのボーカルはセンターへ
ベースはど真ん中でブンブンうなる。ドラムは右からやや中央よりになった。
All the magic feelingで入るギターが艶やかに。
このギターが途中からセンターに動くのが気になってたのが解消された
Ah…のコーラスは左右に広がり美しい

One sweet dreamからの左、中央、右のギターが何をやってるかよく分かる
On two three four…のコーラスが左右に動くのも不自然だと思っていたが、
2019リミックスでは中央から左右に広がり固定
この間入るやや音数が多すぎのオブリは音量が抑えられやや右へ。

ウィンドチャイムとコオロギのSEも美しく広がり次のサン・キングにつながる。





写真をクリックするとサン・キングの2019リミックスが聴けます。




サン・キングギターの音が鮮明になった。左右に移動するのは同じ。
左のベース、右のドラムはややセンターよりで聴きやすくなった。
さて、この後の三声ハーモニーが大きく変わった
センターの奥から聴こえてたのが、前面に出て左右にふわっと広がる
ジョンのダブルトラックのパートもわずかに左右にずれていい感じだ。


ミーン・ミスター・マスタードは左にファズベース、右にドラム。
ギター、オルガン、ボーカルは塊でセンターというミックスが変わった。
左にファズベース、オルガン、タンバリン(涼やかになった)。
右にギター、ドラム。
ジョンのボーカルはセンター、ポールのハモりは左右に広がる。


ポリシーン・パンの定位はほとんど変化なし。
イントロのD→A→Eのアコギがセンターでガツンと鳴り、ストラミングに入ると
左に引っ込むのだが、その極端なレベル差が解消された
左でジョンがかき鳴らしてるのが聴こえる。
このアタック感は12弦ではなく、J-200ではないかと思う。
右のジョージのギターの表情もよく分かる。
ベースはセンター、ドラムもセンターから左右に立体的に聴こえるようになった。
ジョンのボーカルはセンター、ハモりは左右に広がる。


シー・ケイム・イン・スルー〜は前の曲と続けて録音されており定位も同じ。
この曲もボーカル(ポール)はセンター、ハモりは左右に広がる
Ah…Ohhhのメロディラインが際立つ。ジョンのアコギ(左)も勢いがある。







ゴールデン・スランバーも定位は同じ。左右はそれぞれセンターよりになった。
右からポールのピアノ、センターにポールのボーカルとベース(ジョージが弾く
フェンダー・ジャズベースだろう)、左からリンゴのドラムが入る。
この曲については、ベースはむしろ抑えられた気がする。


続けて録音されたキャリー・ザット・ウェイトも定位は同じ。
でも最初のドラムのフィルインは力強い。
右からオーヴァーダブしたと思われるスネアの音が聴こえる。
Boy, You’re gonna…のユニゾンもI never give your…のリフレインもセンター。


ジ・エンド前半の主役はリンゴ左から右へ縦横無尽に力強いドラムが聴ける
そのためかギター2台もベースもセンターで団子状態だったのだが、ギターはやや
左右に振られ、ベースは真ん中でくっきり。聴き分けやすくなった。
Love you….は以前は左右に動いて不自然だったが、センターから広がるような
定位に固定された



写真をクリックするとジ・エンドの2019リミックスが聴けます。
このギターは何でしょう?ジ・エンドで弾いてるのはレスポールだと思うけど。



例の3人のギター・ソロは以前はすべて真ん中だったが、2019ミックスではポール
(やや左)→ジョージ(やや右)→ジョン(センター)とソロを回してる臨場感
が出るようになった
その間のLove you….も以前は左に移動してたが、センターから広がる定位のまま

And in the end…もハモりが左右に広がり美しくなった
ストリングスも厚みが出ている。ドラムは最後まで左右で力強く響く


ハー・マジェスティは音が大きくなった以外、ほとんど変化なし。
右から左へ流れるのも同じ。ポールはマーティンD-28を弾いている。
じっくり聴きたい人はアウトテイクで、ということで。


(次回はアウトテイク集についてレビューします)

※5.1chサラウンドとドルビーアトモスについては、再生可能なオーディオ環境では
なく、Blue-Ray Audio付きスーパー・デラックスじゃないので分かりません。



↑VW社は自社の車が路肩に乗り上げ違法駐車してることに心を痛めていたとか。
それでわざわざこんな写真を撮ったそうな(^^v)


<脚注>


(1)リミックスはリマスターと全く別物。
蛇足かもしれないけど一応、知らない人のために。
当時ジョージ・マーティンがステレオ・ミックスを行った当時のマスターテープ
を使い、ノイズ除去やローエンドの整音の上、最良な状態にするのがリマスター。
基本的にオリジナル・マスターの楽器や歌手の定位、音質には手を加えない。

これに対してリミックスはオリジナルの8トラックのマルチテープに遡り、新たに
ミックスダウンをやり直し、ステレオ用2chマスターを作るということ。

ビートルズの多くの作品は4トラックのレコーダーで録音されており、オーヴァー
ダブの際はリダクション(バウンス)して空きトラックを作ったり、2台のレコーダ
ーをシンクロさせる、という離れ技も行っていた。
どうしても最初の方に録音したベーシックトラックは奥に埋もれがち。

4トラックにしても8トラックにしても、ミックスダウンされる前の各トラックの
音を蘇らせ、新たなミックスダウンを施せばクリアな音が得られる。
それがリミックスの大きな魅力だ。

1960年代のステレオ・ミックスは今聴くと古く、不自然さも否めない。
英国ではステレオの普及が遅れ、ホワイト・アルバムまではビートルズ側もモノ
ラル・ミックスを重視しステレオ・ミックスは後回しだった。
ステレオ・ミックスだけになったのはアビイ・ロードが初めてである。

リミックス作業は故ジョージ・マーティンの息子ジャイルズとチーフ・ミキサー、
サム・オケールの二人によって、最新のデジタル編集技術と当時のEMIスタジオの
機材を駆使して行われた。
2017サージェント・ペパーズ、2018ホワイト・アルバムに続き今回が3度目のリミ
ックスとなる。


(2)Amazonのレビューの抜粋(2CDデラックス盤 2019年10月12日現在)

<高評価>

音楽としては素晴らしいのに、当時の録音機材の時代背景もあり音として鑑賞する
には物足りなさを感じてきた。そのモヤモヤが払拭されるリミックスに変化した。
ビートルズの意図を再現するという意義としては、マニアからきびしい指摘を受け
るかもしれないが、名盤を現代の音楽感覚で楽しめることを素直に喜びたい。

新たな発見やゾクゾク感は無かったが、細かいこと抜きにしてクリアな良い音質で
また聴けるだけで是とします。

思っていた以上にギターの音が艶やかで、B面の音の広がりも良かった。
馴染みのあるアビーロードではないけど、企画を考えれば楽しめる。
なにより、新たな気持ちで聴く機会が持てたのは収穫でした。

ドラムが活き活きした。リアルな音でリンゴも納得しているのでは。
カム・トゥゲザーのバスドラはアタックの効いた音になった。
ボーカルもコーラスとかの処理も現在流。オーダーリンも良いね。
ピアノは響板に向かい頭を突っ込みましたみたいな感じに変わってます
ヒア・カムズ・ザ・サンの12弦のギターの音がたまりません。コーラスもいい。
アイ・ウオント・ユーのオルガンの擦れる音とかも感じれて良いです。

オリジナル盤の左右アンバランスな音圧、ノイズ、音の固まりが解消されて聴き
やすくなっている。
この楽器はこんな鳴り方だったのか、コーラスはこんなに聴きやすかったか、など
一曲ごとに新たな発見(突っ込みどころ)があります。

全曲の別テイクをオリジナルの順に収めたDisc 2 は聞き応えがあります。
余計なアレンジを排したビートルズのラフな魅力もあってなかなかいい。
ぎりぎりリアルタイムでビートルズを聞けた世代としては、50年前ラジオにかじり
ついて聞いたことを思い出しつつ、このような形で聞けることを素直に喜んでいます。


<低評価>

ベースがやたらとブンブンうなるギターアルバムになった。
音がただデカくてクリアになったからって音楽的な快感や感動が増すわけじゃない。
音の厚みが増したのは良いけど、ビートルズのサウンドってもっと中域に集めて、
音圧を高めていたわけで。躍動感と曲の勢いを殺してしまった感が否めない。

音は格段に良くなってる。音圧、音の広がり、各楽器の音、すべて申し分ない。
でもそれは全て今風の音。
特にポールのベース!こんなにブンブン重低音をうならせなくてもいい。
アビイ・ロードでのベースはギターと対等の旋律楽器の役割をはたしていて、もっと
引き締まった音でアルバム全体に音的な統一感をもたらしていたのに。
カム・トゥゲザー、サムシング、アイ・ウオント・ユーでのあの個性的でブルージー
なギターも、もっとまろやかでやわらかい。

全体に迫力あるけど、いささか金属的で刺激的。
僕の好きなアビイロードの音はもっとやわらかで、落ち着いた品のある音でした

2009年のリマスターは素晴らしかったんだけど、あちらはコンテンポラリーかな。
今回はそれに比べると「うるさく」なったとも言えるかも。ロック感が強いというか。

アビイ・ロードはコンテンポラリーの魁という印象だった。
そういう意味あいが少し消えたかもしれない。


(3)音がクリアー
2016年のライブ盤エイト・デイズ・ア・ウィークはクリアーなのはいいが、ライブ
の臨場感が失われてしまった。
1977年にジョージ・マーティンがミキシングした1964〜1965年のライヴ盤のリマ
スターであるが、1977年盤ではエコーをかけて会場の臨場感を伝えた。
それに対しジャイルズは各楽器のクリアーさ、定位を優先したため、エコーは薄め
で結果として以前の「音が回るような」臨場感が無くなってしまった。

ライヴ・アット・ザ・BBCも1994年発売時は温かみのある音質だったが、2013年の
第2弾の発売に合わせて一緒にリマスターされ、ソリッドな音になってしまった。
必ずしもクリアーがいいわけではない。聴いてて疲れる、心地よくない場合もある。


(4)EMIの新型コンソール
アビイ・ロードの録音の前、1968年11月EMIアビイ・ロード第2スタジオのミキ
シング・コンソールが新しいソリッドステート型TG12345に変更された。
つまり真空管から半導体トランジスタ製に置き換わったということだ。

前年のホワイト・アルバム録音の後半(1968年7月)EMIにやっと8トラック・
レコーダーが導入されたが、従来のミキシング・コンソールREDD .3、REDD .51
では対応能力に限界があったようだ。
TG12345はEMIのエンジニアが開発した最新型のコンソールで、マイク入力
24系統、出力8系統、エコー4系統を有し、すべての入力チャンネルにイコライ
ザー、コンプレッサー/リミッターをかけることができた。

小型の半導体搭載により、より高密度の回路が実現しスペックが向上した。
EMIは新型のTG12345について、これまでのREDD .3、REDD .51に比べると、
よりクリーンでブライトでパンチのある音、より深く、ふっくらした、リッチ
な音が得られる、と説明している。
(が、真空管に比べ硬質で温かみがない、冷たい感じを受ける人も多いはず)

<参考資料:ユニヴァーサル・ミュージック、Amazon、YouTube>

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