2020年6月1日月曜日

ジェフ・ベック徹底研究(奏法と使用ギター、機材)

ロック・ギタリストには2種類しかいない。ジェフ・ベックとジェフベック以外だ。
 – ポール・ロジャース

名言です。


既存の枠にとらわれす、常に新しいギター・サウンドを追求し挑戦し続ける姿。
他に類を見ない独特の奏法、繊細かつ豪快なサウンド、冒険的で常に進化している、
自由奔放で個性的。だから「孤高のギタリスト」と呼ばれるのだろう。

ギターを鳴らすのではない。ギターで歌いあげることができるギタリストなのだ。





<ジェフ・ベック奏法>

ジェフ・ベックのルーツは6歳の時にラジオで聴いたレス・ポールの演奏だという。
18歳の頃からバンドを結成し、ジーン・ヴィンセントやエディ・コクランなどロカビリ
ー、ロックンロールをカヴァーしていた。カントリーの影響も受けていると思える。

それに加えレス・ポールのジャズ・ギター的アプローチ、早弾きを取り入れてるようだ。
フィードバック奏法などトリッキーな演奏もレス・ポールの影響が大きいだろう。


クラプトン、ペイジほどブルースへの傾倒は少なく、ブルーノート・スケールよりは
ペンタトニックが主体で、むしろ音の選び方、紡ぎ方のセンスに長けている。
ふつうのギタリストではありえない、ギターとは思えない突拍子もない音を出すのだ。

以前飼っていた我が家の愛犬はベックのCDをかけると首をかしげていた。
鳥の声とか、不思議な音に聴こえるのだろう。


ジミ・ヘンドリックスの派手なフィードバック奏法や大胆なアーム奏法、ピック・スク
ラッチはジェフ・ベックの演奏を見て取り入れたという。
当のベックはジミの演奏に衝撃を受け、ギターをやめようかと悩んだらしい(笑)
(クラプトンも「ソウルフルという点でジミには全く敵わない」と認めていた)

一方ジミー・ペイジはベックを「ギタリストの教科書」と言っている。




↑ヤードバーズ時代のベックとジミー・ペイジ(ペイジはベースを弾いている)。


ジェフ・ベックの音楽はどんどん進化し続けている。
ロカビリーから始まり、ジャズ、ロック、ブルース、ファンク、テクノ、シンセサイザー、
ドラムンベース、世界の民族音楽などあらゆるエッセンスを吸収して変化する。

弾き方も独特だが、それも進化している。

左手でメロディーを弾く場合でも、毎回同じ弾き方ではない
ベンディング(チョーキング)、グリッサンド、ハンマリング〜プリングオフなどの
指技やリズムのアレンジを駆使し、表情に変化をつけている

その際、左指でのヴィブラートを組み合わせることで音を揺らし、サステインを得ると
当時に音に余韻やふくらみを持たせる。ネックを揺らしてかけることもある。
そのタイミングやかけ具合(深さ)はその時々で違う。それが本当に絶妙なのだ。


ベックは「何度も同じことをしない」ことを身上にしているらしい。
それを端的に証明しているのが、名演の誉れ高いCause We've Ended As Lovers
(悲しみの恋人たち)だ。
コンパクトなモチーフの繰り返しのメロディーだが、ベックは全て違う弾き方をする。

単音をフェイドインする箇所はボリュームペダルではなく、ボリュームノブを右手の
小指で操作しながら、ピックで弾くという高度な技を用いている。
ボリュームノブとトーンノブを頻繁に調整し、ピックアップの切り替えもよく行う。




↑クリックするとレッスン・プロによる動画(かなり忠実に再現)が見れます。



第二期ジェフ・ベック・グループ後期からストラトを使用するようになるが、トレモロ
アームで低音弦のピッチ(音程)をギューンと一気に下げるグリッサンド奏法を行う。


これが顕著になったのは、フュージョン期に入ってから。
Freeway Jumなどの曲で効果的に使われている。
後にベックのストラトはアームを上げるとピッチが上がる機能も加え、アーム操作だけ
音程を変えてフレーズを作ることもできるになった。(後述)


右手は早いパッセージをピックで正確なオルタネイトピッキングで弾いていた。
時にはピックを持ったまま、中指と薬指でフィンガーピッキングを行うこともある。

指弾きに切り替える場合は、ステージ上でピックをポイ捨てする場面も見られた。
アーミング、ボリューム奏法、とベックの右手は超多忙だ。


スムーズな運指の秘密は、Johnson&Johnsonのベビーパウダーだそうだ。
真っ白になるほど両手にふりかけ、ローズ指板でもお構いなしにネックに撒く。
潤滑効果は抜群で驚くほどスルスルになるが、ピックが使えなくなる。


そのせいもあってか、1980年代中頃からフィンガー・ピッキングに転向している。
単メロはほとんど親指の腹と爪で弾くようになった。
これによってピックより微妙な音の変化が出せ、繊細な表現が可能になった
弾きながらのアーミングやボリューム奏法もやりやすくなったはずだ。

早いパッセージは人指し指の爪でオルタネイトピッキングをしている。
ストラミング(コードストローク)もやはり人指し指の爪でのピッキングだ。
タッピング奏法も行う。





ボトルネック( スライドバー)を使用する場合はオープンチューニングではなく、スタ
ンダードチューニングのまま単音または2音を弾き、すぐ通常のピッキングに戻る。

驚異的なのはネックのハイポジションの右側、つまりピックアップがある辺りの弦
まで手の感覚と勘だけで正確なピッチの音が出せるということだ。
ジャコ・パストリアスが得意なハーモニクス奏法も効果的に曲中に使われている。


そしてベックの演奏で特徴的なのは、フレーズ間の「間」の取り方が上手い点だ。
音の余韻に充分に浸らせてくれ、聴くものの心を捉えて離さないグリップ力がある。
冒頭に述べた「ギターで歌いあげることができる」とはそういうことだ。






<ジェフ・ベックの使用ギター>

突然ですが、クイズです。
ジェフ・ベックが最初に入手したエレキ・ギターは何でしょう?

ベニヤ板の手造りギターを弾く12歳のジェフを見て母親が買い与えたのは、25ポンド
のグヤトーン(1)だったそうです。
以下はプロになってからのベックが愛用した代表的なギター。



●1954年製フェンダー・エスクワイア
1965年ヤードバーズのツアー中に入手。初期のベックを支えた伝説的なギター。
ウォーカー・ブラザーズのジョン・マウスから譲り受けたと言われる。
エルボー部分が大きく削られ、全身キズだらけの貫禄ある逸品。

エスクワイアを入手したことで、それまで使用していたテレキャスターを同じヤード
バーズに在籍していたジミー・ペイジに譲る。
(ペイジはツェッペリン1の全曲、ツェッペリン2でもこのテレキャスターを使用)

ベックのエスクワイアは1974年にセイモア・ダンカンの改造テレギブと交換された。
(後述)
※2006年にフェンダー・カスタムショップのトリビュート・シリーズからベックの
エスクワイアの精巧なレプリカが限定発売された。




↑The Jeff Beck Group - Live on Air 1967よりStone Cold Crazyが聴けます。
1967年3月と7月にBBCサタデイ・ナイト・クラブに出演した時の演奏。
DJはブライアン・マシューだと思われる。
個人的にはこのジャケットが好き。手前に愛器の1954年製エスクワイヤが見える。
かわいいアフガンドッグはベックの愛犬だろうか。



●フェンダー・ストラトキャスター ナチュラル風(フランケン・ストラト)

第二期ジェフ・ベック・グループからヤン・ハマー・グループとのジョイントツアー
で使用していたストラト。1957~1959年製のアルダー・ボディと思われる。
メイプル指板はかなり使い込まれた感がある。
ナチュラル風というのはフェンダーのナチュラル仕様ではないからである。
色合いはもっとダークで、よく見ると塗装を剥がしたようなムラが見え、剥き出し
のようなマットな感じ。ラッカー・フィニッシュもしていない
(かつて自動車整備工をし技術も工具もあるベック本人が作業したのかもしれない)

ピックガードはネジ穴の位置が変わる前の1960~1962年製。
丸く空けられた穴は何かスイッチを付けた跡なのか?角部分のカットも謎。
ボリュームノブは1965年頃のジャズマスターのものが付けられ、2つのトーンノブ
も色が違う。
ピックアップはフロントだけショートG(3弦のボビンが低く4弦のボビンが高い)
ので、1954~1955年製のを取り付けたのかもしれない。
第二期ジェフ・ベック・グループの頃はメイプル指板、スモールヘッドのネック
で、ヘッドのフェンダー・ロゴは削られている。




↑第二期ジェフ・ベック・グループでのフランケン・ストラト。
写真をクリックするとDefinitely Maybeの演奏が視聴できます。
ベックのボトルネック奏法、コージー・パウエル(ds)マックス・ミドルトン(kb)も注目。



ヤン・ハマーとのツアーの時は、1974~1975年製ラージヘッドで2ストリングス・
ガイド、ローズ指板、ラージ・フェンダー・ロゴのネックに交換されている。
1970年代のストラトは手抜きでネックを3点留めしてあるが、無理矢理4点留め
ジョイントにしてある。

この時代はまだヴィンテージという概念がなくUsedとして安価で売買されていた。
ベックもポーンショップでタダ同然で手に入れたストラトや他のパーツを組合わせ、
自作ギターを作っていたのだろう。





※クラプトンのブラッキーだってナッシュビルで1本$100のヴィンテージ・ストラト
を6本買って、3本を分解していいとこ取りして作られたという。
(残り3本はジョージ、ピート・タウンゼント、スティーヴ・ウィンウッドに譲る)




●1954年製レスポール・オックスブラッド

来日直前の1973年にメンフィスの楽器店で見つけたという1954年製レスポール
名盤ブロウ・バイ・ブロウ(Blow by Blow 1975)のジャケットにも登場している。
ゴールドトップのボディを塗り替えてあり、ボディの深い茶色が角度によっては
オックスブラッド(牛の血の色のような濃い赤)に見えることからオックスブラッド
・レスポールと呼ばれている。
P-90ピックアップをハムバッカーに交換、1954年製の太ネックをスリムにシェイプ、
チューナーをシャーラーに交換してある。
BBA時代からブロウ・バイ・ブロウ(Blow by Blow 1975)まで主に使用された。





尚ベックはヤードバーズ時代にもクラプトンが演奏したレスポールのサウンドに
魅了され、1959年製ダブルホワイツPAFのチェリーサンバーストを購入。
後に塗装を剥ぎ取ったナチュラルフィニッシュとして使用している。
第一期ジェフ・ベックグループを結成した1968年頃にはリック・ニールセン(後に
チープトリックを結成)よりサンバーストの1959年製レスポールを購入している。
あいにくそのレスポールは盗難に遭ってしまったようだ。



●1959年製テレキャスター改造 Tele-Gib(テレギブ

テレキャスターにギブソンのピックアップを搭載してるためテレギブと呼ばれる。
1970年代にフェンダーの修理部門で働いていたセイモア・ダンカンが、1959年製
テレキャスターを改造したもの。海外でもTele-Gibと呼ばれている。
ギブソンのPAFピックアップを2基搭載しHH配列(2)にしている。
ヴィンテージ・ピックアップのコイルをダンカン氏が巻きなおしたという。
ローズ指板のネックはメイプル1Pネックに交換されている。

ベックの大ファンだったダンカンはBBAが2nd.アルバム制作中だったCBSスタジオ
を訪れ(当時フェンダーはCBSに買収されていた)ベックにこれをプレゼントした。





ベックはこのギターを気に入り、愛器エスクワイア(ダンカンの希望で)と交換した。
(ベックはヤードバーズ時代の愛器を手放したことを後悔したらしい。しかしテレ
キャスターとギブソンのいいとこ取りのこのモデルを気に入ってるそうだ)


テレギブは名アルバム、ブロウ・バイ・ブロウ (Blow by Blow 1975)内でも最高傑作
言われるCause We've Ended As Lovers(悲しみの恋人たち)のレコーディン
使用された。

また1981年ロンドンで行われたシークレット・ポリスマンズ・コンサートでクラプトン
と共演した際も、Cause We've Ended As Lovers、Further On Up The Roadをこの
テレギブで弾いている。



<写真:gettyimages>
シークレット・ポリスマンズ・コンサートでクラプトンとの共演が視聴できます。
(Cause We've Ended As Lovers、Further On Up The Road)

●1963年製フェンダー・ストラトキャスター オリンピックホワイト

1963年製のストラトキャスター(ローズ指板、オリンピックホワイト)はジョン・
マクラフリンからプレゼントされたもの。
ジェフ・ベックのお気に入りで、彼のトレードマークとなっている。
フェンダーのネックはいろいろ変わるが、これが一番ベックんフィットするそうだ。
ワイアード(Wired)のレコーディングにも使用したそうだ。

以前に受け取ったギターが盗難に遭ったため、このストラトはワイアード(Wired)の
ジャケット写真撮影後、ベックのスタジオで大切に保管されているそうだ。
このギターが1990年代に発表されたシグネイチャーモデルのベースになっている。






●1961年製フェンダー・ストラトキャスター ホワイト+黒ピックガード

1978年にスタンリー・クラークと一緒に来日した時に使用していたことで有名。
1961年製オリンピックホワイトのストラトで、スラブ・ローズ・ネック。(3)
ブラック・アナダイズド・ピックガードにマウントされたアッセンブリをセイモア
・ダンカンによって、シェクター製ピックアップ500Nに交換されている。
パーツを交換した改造型、いわゆるコンポーネント・ストラトの走りである。
コントロール・ノブは3個から2個に、トグルスイッチが1個から3個変更されている。
チューナーはオリジナルのクルーソンのまま、ストリングガイド、トレモロアーム、
ブリッジも変更は加えられてないようだ。フレットとナットは交換されている。






●その他のストラトキャスター
メイプルネック、タバコサンバーストの1954年製ストラトキャスターは初期のもの。
スタジオである人からプレゼントされたものだそうだ。
バディー・ホリーが同じようなストラトを弾いていたので嬉しかったとか。



<写真:©MScoenPhoto.com>


1986年6月軽井沢プリンスホテル野外特設会場で行われたサントリー提供コンサート
で、ヤン・ハマー、サンタナ、スティーヴ・ルカサーとも共演した時の鮮やかな
イエローのストラトもファンの記憶には強く残っているだろう。
スモールヘッド、ローズ指板のこのストラトは美品に見えるのでヴィンンテージでは
なく、当時フェンダー再生で生産し始めた1962リイシューのカスタムモデルだろう。







これとは別にベックはイエローのシグネチャー・モデルのストラトを持っていた。
レースセンサー・ピックアップ(4)が搭載されナット、サドル、アーム、チューナー
もカスタム仕様になっている。
このイエローのストラトはベックが1980年代後半に来日した際、ウドー音楽事務所
に寄贈され、乃木坂にあった青山チケットエージェンシーにディスプレイされていた。
(クラプトンの1957年製ストラト、リッチーのストラトも一緒に置いてあった)

フェンダー社が1989年に発売したジェフ・ベックのシグネチャーモデル、サーフ
グリーン・フィニッシュの通称リトル・リチャードも有名だ。

1970年代のトラスロッドが飛び出た(いわゆる出べそ)ラージヘッドの白いストラト、
ローズ指板を弾く写真もある。いったいストラトだけで何本持ってるんでしょう?







●フェンダー・ストラトキャスター ジェフ・ベック・シグネチャー

現在のジェフ・ベックは、フェンダー・カスタムショップのマスタービルダーが作っ
たストラトキャスターを使用している。
(フェンダーUSA、カスタムショップ両方から市販されてるが基本仕様はほぼ同じ)
※カラーはホワイトとサーフグリーンの2色。

ベースとなっているのは上述の1963年製オリンピックホワイトのストラトであるが、
ヴィンテージ・スタイルではなく機能性を追求した現代仕様のモデルになっている。

高性能高出力のHOT Noiselessピックアップ搭載(セラミック磁石を使用)(5)
22フレット、ミディアムジャンボフレット採用、LSRローラーナット
ハイポジションの演奏性を高めるヒールカット仕様
シュパーゼル社製トリムロック式チューナー
ステンレス製サドル&二点支持シンクロナイズド・トレモロユニット

※トレモロユニットはアメスタではなくアメデラ、アームも一回り太い。
トレモロスプリングは5本中、3本を逆V字に張ってるらしい。





大胆なベンディング(チョーキング)やアーミングを多用するベックだからこそ、
チューニングの安定度を最大限に高めた仕様になっている。

Charが言ってたが、ストラトのアームは下に押すとピッチが下がるのだが、ベック
のはそれだけではなく反対に上に引き上げるとピッチが上がるらしい。
しかもアーミングによる急激なグリッサンドの後でもチューニングが狂わない。

完璧主義者で進化を求め続けるジェフ・ベックらしいモデルだ。



●おまけ

近年はフェンダー・カスタムショップのノーキャスター(6)もお気に入りらしい。
ヘッドが逆さ(チューナーが下)の白のストラト?を弾いてる姿も見かける。
ヴァレーアーツ製のピンクのストラトもどき?も持っているようだ。

2010年故レス・ポールのトリビュートライブではギブソンのES-175、チェリー
サンバーストのレスポールを(久しぶりでピックを使って)弾いている。
ES-175はスコッティ・ムーア(7)の音が出したくて借りたところ、貸主がそのまま
プレゼントしてくれたのこと。ベックの原点はロカビリーだからね。




↑写真をクリック。ベック本人が解説するギター・コレクションが観られます(訳付)

グレッチのランチャーは三角のサウンドホールが気に入って買ったと言っている。

Truth収録のGreensleevesの硬いアコギの音はこれを弾いてるのかもしれない
グレッチのデュオジェットはジーン・ヴィンセントのカヴァー集、クレイジー・レッ
グス(Crazy Legs 1993)で使用し、ジャケットにも登場している。
ジョージ・ハリソンの愛器は1957年製だがベックのは最初期1953年製と思われる。
<仕様弦>

アーニーボールのスーパー・スリンキー(09-42)を使用していると言われてるが、
09-011-016、ここまでは確かにその通り。
しかし4-6弦は28-38-52と太いゲージを組み合わせて使っているらしい。
弦高は高めにセットしてるらしい。それでよくあんなに早弾きできるなあ。
ボトルネックやジャカ弾きでビビるのを抑えるためか。






<アンプとエフェクター>

ヤードバーズ時代はビートルズも愛用したVOX AC-30
(リッチー・ブラックモアもレコーディングはVOX AC-30を使用していた)

第一期ジェフ・ベック・グループではマーシャル200Wアンプと4つのスピーカー
・キャビネットを組み合わせている。
第二期ジェフ・ベック・グループではレスリーの回転スピーカーを使用してドップラー
効果を得るという試みが行われた。(ビートルズでジョージも行っている)


BBA時代はレスポールをSunnのコロシアム・ヘッドアンプ+ユニヴォックス社製
6x 12スピーカーキャビネットを使用していた。
フェンダーのPrinceton Reverbをリバーブ・アンプにしていたらしい。



<写真:gettyimages>


1975年のBlow by Blow発売時、Guitar Player誌のインタビューによると。
フェンダーの200Wのスピーカーキャビネット2台とマーシャルのアンプヘッド2台
スピーカーはフェンダーの方がマーシャルのものよりも頼もしいが、アンプヘッドは
マーシャルの方が求めている勇ましい感じの音が出る。
以前はSunnのアンプを使用していたが、少しきれいすぎるそうだ。

近年のインタビューではこう語っている。
マーシャルがメインでたまにフェンダー。
最近ではマーシャルがメインでマグナトーン社のアンプを併用している。
低音は好きじゃないのでどのアンプを使用する時も必ずBassは全カットらしい。
(低音をカットしても大型キャビネットの箱鳴りで十分低音が鳴る、とジミー・ペイジ
も言っていた)


使用しているエフェクターはColorsound OverdriverCrybaby(ワウペダル)、
Magic Bag Talkbox(トーキング・モジュレーター)。
プロコのRAT(ディストーション)を使っていた時期もあるらしい。

ブースターはプリアンプでパワーと抑制、そしてディストーションが即時にできる。
Air Blowerではオクターバー・ユニットが使用されている。

トーキング・モジュレーターはギターを弾くとチューブを通って口の中に届く。
そして自分の口の動きに合わせて出したい音が出せる。


<脚注>


(1)グヤトーン
グヤトーンといえば日本のエレキ・ブームを作ったパイオニア的存在のメーカー。
戦後のハワイアン・ブームを支えた日本初のエレキギター・メーカー。
日本でソリッド型エレキが知られるようになるのは1965年ベンチャーズ来日公演後
のことで、それまではホロウボディのギターを製造していたと思われる。
つまりベックが最初に買ってもらったグヤトーンもそういうギターだったのだろう。
英国にまで輸出されてたとは!


(2)HH配列
ギターのピックアップは配線を変えることでまったく別なサウンドになる。
シングルコイル、ハムバッッカー、それぞれ配列の組合わせは多数ある。
僕はこの辺の電気系統に疎いのでさっぱり分からないが。
HH配列(2H配列)=ツーハム配列とは、レスポールに代表されるハムバッカー2基の
ピックアップの配線方法である。

HH配列のギターではハムバッカーの持ち味であるファット感(音の太さ)を活かしつつ
、ブライト感・音抜け感をキープするのが重要。
そのためフロントにローパワーなビンテージ系ピックアップ、リアにハイパワーなモダン
系ピックアップを組み合わせることが推奨されている。
パワーとブライトさはある程度反比例する。この間でバランスを取るのがポイント。
フロントはリードプレイ時の音抜け、クリーントーン・クランチトーンがこもらないよう
ブライトなピックアップを、リアは硬くなりすぎないハイゲインサウンドのピックアップ
を選べば、幅広いジャンルに対応できる。


(3)スラブ・ローズ・ネック
ローズウッド指板の誕生当初はスラブボードと呼ばれるラミネイト(厚板)方法だった。
メイプルネックに対して指板の接地面がフラットに貼られる。
その仕様が1962年中頃からラウンド貼り指板(メイプルネックとローズウッド指板の
接地面が滑らかなRを描いている)に変更されている。
木部の収縮率の違いに対応し、接地面の剛性を高める目的だったと言われる。


(4)レースセンサー・ピックアップ
1985〜1996年にフェンダーがストラトキャスターに採用していたピックアップ。
通常のシングルコイルとは違い、アルニコ・マグネットではなく複数のバータイプ
のゴム磁石(バリウム・フェライト・マグネット)が使われている。
また従来のピックアップのボビン部がレース・マイクロ・コームというレース社の
特許技術によるパーツにでできているため、表面にボビン(ネジ)が見えない。
通常のマグネットピックアップよりも広い範囲から音を拾う構造になっている。
またシングルコイルの弱点を解消し、ローノイズで高出力を実現している。
クリートーンでは甘めの音だが、ブースターをかますとストラトとは思えない図太い
サウンドで、リードを弾くには最適。
(クラプトン・モデルにはブースターのコントロール・ノブが付いている)
立ち上がりで少しコンプがかった様な音のクセは好みが分かれるところ。
従来のスングルコイルとは別の、レースセンサーの音と考えたほうがいいだろう。


(5)HOT Noiselessピックアップ
2001年にシグネチャー。モデルがアップデートされ、ピックアップがレースセンサー
からセラミック磁石の高出力のものに変更された。


(6)ノーキャスタ
フェンダー社がテレキャスターという商品名に変わる前の短期間に製造していたモデル。
商標の都合でブロードキャスターという名称が使えず、モデル名を消して販売していた。
テレキャスターの原点ともいえる。
現在カスタムショップのみでリイシューが制作されており高価だが人気が高い。


(7)スコッティ・ムーア
アメリカのグタリスト、センッション・ミュージシャン。
ジャンルはロカビリー、ロックンロール、カントリー。
エルヴィスがデビューした1954〜1958年、専属バンドのギタリストとなる。
エルヴィスの除隊後も1968年まで彼のバックを務める。


<参考資料:Strat-Crazy、Jeff Beck Fan、ZZ STYLE SOUND BLOG、Player、
ロックの歴史を追いかける、Guitar Player、エレキギター博士、イシバシ楽器店、
Wikipedia、GitaFan、st.moritz studio、JEFF BECK COPY BAND “WIRED”、
YouTube、gettyimages、他>

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