2020年12月3日木曜日

ジョニ・ミッチェルのフォーク時代(2)JTとの出会い、名盤Blue。



 <ジェイムス・テイラーとの蜜月時代>

1970年4月にLadies of the Canyonを発表後、ジョニはジェイムス・テイラー
と恋仲になる。
同年10月にジョニはツアーとプロモーションのために渡英するが、ジェイムス
もくっついて行ってしまい、期せずしてロンドンでは二人の共演が実現した。



↑ロンドンの空港に到着した二人。ジェイムスはこの服装でBBCに出演。


BBCテレビではジョニ、ジェイムスそれぞれのスタジオ・ライブを収録
Joni Mitchell In Concert、James Taylor In Concertとして放送された。
いずれも二人の共演部分はない。

(収録しなかったのか、収録したが権利などの問題でカットされたのか不明)
※後に紹介するジョニのCalifornia、For Freeの映像はこの時のものである。





10月28日にロイヤルアルバート・ホールで行われたジョニのコンサートに
ジェイムスがゲストとして出演。
翌29日はパレスシアターでの二人の共演がBBCにより収録された。

この音源はBBCラジオが約1時間の番組として放送した。
このBBCコンサートは後にFM東京でも放送された。海賊盤も出回っている。

(10月28日にロイヤルアルバート・ホールでのコンサートと表記しているもの
もあるが誤りで、29日のパレスシアターでのBBCライブである)




↑10/28アルバートホールまたは10/29パレスシアターでの公演の様子。
左でコーラスをつけてる3人は誰だろう?



二人の仲睦まじい会話、和気藹々のデュエットが聴ける。
演奏はジェイムスのギブソンJ-50、ジョニのマーティンD-28、ダルシマー、
ピアノによるアコースティック・ライブ。素晴らしい内容だ。



↑ジョニ&JTのThe Circle Gameが聴けます。(1970年BBCコンサート)
写真は前日のアルバートホールか29日のパレスシアターか不明。



1992年にイタリアのLiving Legendレーベルから高音質でCD化された。
2008年にWoodstock Tapesレーベルから公式盤CDが発売されている。
Joni Mitchell & James Taylor - The Circle Game





同年10月17日にバンクーバーのパシフィック・コロシアムでも二人は共演。
アラスカのアムチトカ島での地下核実験・反対集会コンサートの模様である。
2009年にCD化された。(Amchitka - The 1970 Concert




二人のデュエットでMr. Tambourine Manが聴けるが、The Circle Game
がなぜか途中でフェードアウトしてしまうのが残念。



<名盤Blue>

4枚目のアルバムBlueはこの後に録音され翌1971年6月に発売された。
スティーヴン・スティルス、ジェイムス・テイラー、ラス・カンケル、
フライングブリトー・ブラザーズのメンバーが参加している。





ジョニ自身のギターとピアノが伴奏という点は前3枚と変わらないが、
All I WantCaliforniaCareyA Case of Youの4曲で前年のライブ
から使い始めたダルシマーを取り入れている点が斬新だ。



↑ダルシマーを弾きながらCaliforniaを歌うジョニが観れます。
(1970年BBCコンサート)


何曲かジェイムスがギターで参加している。(歌ってはいない)
All I want、California、A Case of YouではBBCライブと同じくジョニの
ダルシマーとジェイムス・テイラーのギターの二重奏。




↑ジョニとジェイムスのレコーディング風景。
Blueでジェイムスは歌っていない。
ジェイムスのLong Ago And Faraway録音時(1971年1-2月)と思われる。



Careyは変則チューニングのギターにスティーヴン・スティルスのベース、
パーカッションが加わり、CS&Nを彷彿させる曲に仕上がっている。



↑写真をクリックするとBlue収録のCareyが聴けます。


名曲と評されるピアノの弾き語りBlueRiverは個人的にはイマイチだ。


ざっくり印象を言うと、3枚のフォーク・アルバムの路線を踏襲しつつも
さらに高度な独自の世界観に昇華させた作品という感じ。

それはダルシマーのやパーカッションの導入で無国籍の民族音楽的な要素
が加わった成果でもあるし、ジェイムス・テイラーの影響もあるだろう。



↑1970年BBCコンサートでFor Freeを歌うジョニが観られます。


当時ジェイムスはヘロイン中毒で精神的にも問題を抱えていたが、ジョニ
は伴侶となれる相手を見つけたと感じていた。

皮肉なことにBlueが発売される3ヶ月前にYou've Got a Friendのヒット
でジェイムスの名声は高まり、ジョニとの間に摩擦が生じ破局を迎える。

ジェイムスはキャロル・キングと急接近し、半年後には1年後に結婚する
ことになるカーリー・サイモンとくっついていた。(ったくもう〜)
ジェイムスとの別れはジョニにはかなりの痛手だったようだ。




以降ジョニは崇高でやや難解な作風に変化し、ジャズに傾倒して行く。




<ジョニ・ミッチェルの1968-1979年をまとめて聴ける決定盤>

今まで断片的にしか聴いていなかったジョニの初期フォーク時代の3枚を
聴きたくて調べてたら、1968-1979年の10枚がパッケージで超お得価格
で出ていることが分かった。

Joni Mitchell the Studio Albums 1968-1979



欲しい3枚それぞれ安く買うより、このセットの方が安い。安すぎる。
これでいいのか?と思うくらいだ。

よくある5 Classic Albumsシリーズとは一線を画す内容と断言できる。

まずリマスターの音がいい
見開き紙ジャケ仕様の装丁の出来も緻密で素晴らしい

ジョニ・ミッチェルのアルバムは自ら描いた絵を使用するなど、アート
ワークが美しいのだが、それを忠実に再現しミニチュア化してある。
ピクチャーディスクも4枚目まではリプリーズ、5枚目以降はアサイラム
のディスクレーベルを再現してあり、徹底してこだわっている。


さすが信頼のRHINOレーベル!
買おうと思っていた3枚以下の価格で、 Blueもそれ以降の6作品もまとめ
て聴け、それ以降のジョニの音楽の変遷が楽しめてしまう。

ジョニ・ミッチェル入門者にもお薦めだし、マニアも納得のお得感満載
の充実のボックスセットだ。

5〜10枚目のアルバムを簡単に紹介しておく。○△Xは個人的好みです。


For the Roses(1972年)
5枚目のアルバムで、アサイラム移籍後初のリリース。
過渡期の作品でやや散漫な印象はある。

従来のパーソネル+ウィルトン・フェルダー、トム・スコットとジャズ
系の人、かと思えばジェームズ・バートンも参加している。
ヒットしたYou Turn Me On, I'm a Radio(恋するラジオ)収録。


Court and Spark(1974年)
クルセイダーズのラリー・カールトン、ウィルトン・フェルダー、ジョー
・サンプル、トム・スコット率いるL. A. エクスプレスなどが参加。
ジャズ色が強いジョニの新境地の作品で評価も高い



↑ジョニ(Gibson J-200)とジャコ・パストリアス(Fender Jazz Bss)。


The Hissing of Summer Lawns(1975年)
ジョニの声がファルセットのメゾソプラノからアルトへ変化。
前作のミュージシャンに加え、ロベン・フォード、ジェフ・バクスター、
ヴィクター・フェルドマンが参加。
フォークロック色は消えジャズをさらに前衛的にした作品。


Hejira(1976年)
ジャコ・パストリアスの参加で彼の才能、ベースラインが色濃く出た。
ウェザー・リポートから流れでジョニを聴いた人も多かっただろう。
聴きやすい作品ではある。

ジョニはギターをIbanezに変えRoland Jazz Chorusで鳴らしている。
ジャケットの写真はノーマン・シーフが撮影。




Don Juan's Reckless Daughter(1977年)X
当時2枚組で発売されたジャズ・フュージョン寄りのアルバム。
良く言えば多彩だけど捉えどころがない。アフリカン・ビートも苦手。
もう鬼才に付いていけない。ジャコ・パストリアスのベースはいいけど。


Mingus(1979年)X
チャールス・ミンガスと共演の予定が路線変更でトリビュート作品へ。
ジャズ・フュージョン界オールスター的顔ぶれで制作し直された。
ジャコ・パストリアス色が強い。聴いてていいとは思わない。
最後のGoodbye Pork Pie Hat(ミンガス作)だけは好き。




<ジョニの1963-1967年の記録、アーカイヴ・シリーズ>

ジョニのレコード・デビュー前のアーカイヴ・シリーズのリリースが決定。
その第1弾が10月30日に発売された。

Joni Mitchell Archives Vol. 1 : The Early Years(1963-1967)



 
5枚組CDボックスセットには1963-1967年に収録した6時間に及ぶ自宅録音、
ライヴ音源、ラジオ・レコーディングが年代順に収められている

提供曲でジョニ本人のヴォーカルでは未発表の29曲が含まれている。
若き日のジョニを深掘りしたい方には興味深いセットだろう。


<続く> 次回はジョニ・ミッチェルの楽器遍歴とユニークな奏法について。


<参考資料:jonimitchell.com、BBC、Wikipedia、MUSIC LIFE CLUB、
amass.jp、Amazon、YouTube、他>

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