2015年5月25日月曜日

女王陛下の007。


前回007の話が少し出たので今日はそのことについて書きたい。

007と言えば絶対ショーン・コネリーだ。僕らの世代なら誰もがそう答える。
毒蜘蛛が体を這う時のギョッとした顔、爆弾の止め方が分らず焦る顔、美女
をたらし込む時の目つき、気障な台詞も身のこなしもカッコイイ。

しかし原作者のイアン・フレミングは当初コネリー起用に反対だったらしい。
コネリーはスコットランド訛りの野性味溢れる男で、監督のテレンス・ヤング
がスーツの着こなしや上流階級の話し方を指導したと言われる。
コネリー自身は付けまつげやカツラでハンサムになるのを嫌がってたそうだ。


さて、ジェームズ・ボンド=ショーン・コネリーなのだが、僕が初めて見た
007はあろうことか「女王陛下の007 」(1969)なのである。
僕が見たのは中学三年の終わりで、高校受験も終わって開放感からみんなで
映画でも見ようかと名画座で2年遅れで上映していたこの作品を見た。

見終わって、何で女王陛下が出て来ないのに「女王陛下の」なんだろう?
と不思議に思ったものである(笑)





初007が「女王陛下の007 」というのは思いっきりハズしてしまった。
なぜかと言うとボンド役がショーン・コネリーではなかったのだ。
コネリーの降板の後、ボンド役に起用されたのはオーストラリア人でモデル
出身のジョージ・レーゼンビーだった。
コネリーに比べると線が細くいまいちインパクトがない。

さらに「女王陛下の007 」という作品自体がシリーズでは異色だった。
ボンドは追い詰められ衰弱していた。
そしてボンドは助けてくれた女性に本気で恋をして結婚してしまうのだ。
結婚した相手は最後に殺される。
任務を終えて美女とよろしくやる、というそれまでのお約束ではなかった。


オープニングタイトルも女性のシルエットというパターンは踏襲しているが、
過去の作品のシークエンスが出て来たり、あまり美しい出来ではない。
テーマ曲も印象に残らない。

ボンドを探す銃口〜逆にボンドに撃たれて画面に血が流れるというお馴染みの
ガン・バレル(銃口)のオープニングでも音楽が間延びして緊張感がない。
アストンマーチンもほとんで出て来ない。

しかし僕にとっては(初007ということもあるのか)忘れ難い映画である。
何年に一回か無性に見たくなる。

アルプスの山頂の閉鎖的研究所、そこから脱出してスキーで逃走するシーン
とかボブスレーのシーンとか見所もあってなかなか楽しめる映画である。


↓挿入歌はルイアームストロングの「We Have All The Time in The World」



「女王陛下の007 」のボンド・ガール、ダイアナ・リグも僕の好みである。
シリーズ中、最も色気のないボンド・ガールかもしれないけど(笑)

余談であるが、ボンド・ガールでは「ドクター・ノオ」 (1965)のウルスラ・
アンドレスと「サンダーボール作戦 (1965)」のクローディーヌ・オージェも
好きだ。
人気投票では「ゴールドフィンガー」 (1964)のオナー・ブラックマンや
「ロシアより愛をこめて」 (1963)のダニエラ・ビアンキが上位らしい。
この2作品は映画を見たな〜という満足感が味わえる007の王道ですね。


↓左上)ウルスラ・アンドレス、右上)ダニエラ・ビアンキ、左下)クロー
ディーヌ・オージェ、右下)ダイアナ・リグ



6 件のコメント:

provia さんのコメント...

こんばんは。

この作品は私も忘れがたいです。
確かに出来という点で言うと今ひとつなんですが、
何よりもボンドが結婚する、しかもその後に新妻が
殺されるという悲劇的な結末が印象深くしてるのかもしれません。
雪山の景色も綺麗ですし。

ダイアナ・リグは良いですねぇ、私も好きですが、やっぱりいちばんは
ダニエラ・ビアンキかな。
あの唇のアップがたまりません(笑)

私が劇場で初めて見たのは「ロシアより愛をこめて」でした。
当時は変な邦題が付いてましたが....
見終わってとてもコーフンしたのを今も覚えてます。


タイトルロールで特に好きなのはサンダーボール作戦、私を愛したスパイかな...
サンダーボール作戦は歌も好きで、個人的には007史上いちばん好きな
曲です。
YouTubeで比較的近年になってトム・ジョーンズがこの歌を歌った映像が
ありますが、これは私のお気に入りになってます。

007の記念イベントでのライブなので客席には映画の出演者なども
いて、何だか感激する映像です。

無駄話をひとつ....
007のタイトル部分は65mmで撮影されてますが(面積が大きいので
合成に有利という事で)、本編は35mm。
つまりタイトルと本編ではアスペクト比が違うんです。

だけどタイトルデザイナーのモーリス・ビンダーはトリミングを許さなかった
そうで、タイトル部分に関しては左右に黒いマスクがあります。
気付いてましたか?

今度見る機会があったらチェックしてみて下さい。

どうも007の事になると長くなってしまいます(笑)
失礼しました。

イエロードッグ さんのコメント...

>proviaさん

さすが、proviaさん!お詳しいですね。

そうなんです。
それまでの娯楽作品とは少し路線が違って地味で沈んだトーンですよね。
悲劇的なエンディングは数多いけどそれが007というのが異例です。
ほぼ全編雪山のシーンという点やレーゼンビーということもあるのかな。
それだけに何か心に残る作品でした。

脱線しますが、東宝映画は明るく貧乏くさくないのがお約束でそれはゴジラ
にも踏襲されていて、血が流れない、怪獣は絶対人を食べないのが常でした。
でもフランケンシュタイン2作品だけは東宝とは思えない暗い影があり、タブ
ーも破られトラウマになりそうなくらいインパクトがありました。
その分忘れられない作品です。

proviaさんの初007は「ロシアより愛をこめて」。。。王道ですね。
うらやましいです(笑)小学生の頃でしょうか。
当時は「007 危機一発」という邦題だったんですよね。
水野晴郎氏の考案だったとか。
宣伝用ポスターのショーン・コネリーの写真も、ワルサーのエアガンを
持った自分の手を別撮りして合成してるんですよね。
すごいです。

「ロシアより愛をこめて」はシリーズ中最も出来がいい作品だと思います。
列車のコンパートメントでの格闘シーンは緊迫感がありましたよね。
Mが渡したアタッシェケースがここで伏線になっていました。
この作品から毎回、秘密兵器が登場するようになったのかな。
ヘリコプターで追跡されるシーンもよかったです。
ダニエラ・ビアンキは色っぽいだけじゃなくチャーミングさも兼ね備えた
魅力的な女優でしたね。

もう一つ好きなのが「ゴールドフィンガー」です。
スーツからゴルフウェアまでボンドの着こなしがカッコよかったです。
アストンマーチンもこの作品からでしたよね。
プラモデル、作りましたよ!
ハロルド坂田との格闘シーンも緊迫感がありました。
ハロルド坂田って来日した時にクラブで喧嘩した相手の力道山をプロレス
にスカウトしたんですってね。

テーマ曲はマット・モンローの「ロシアより愛をこめて」が一番好きです。
あとはナンシーの「You Only Live Twice」かな。
「ダイアモンドは永遠に」も「ゴールドフィンガー」もいい曲ですけど。
シャーリー・バッシーの声と歌い方が好きじゃないです。

「サンダーボール」のトム・ジョーンズはずいぶん高い声で歌っているため
彼本来のドスの利いたハスキーボイスじゃないですね。
実はシャーリー・バッシーが別な曲を録音済みだったのに曲の内容と映画と
合わないということになり、直前で作られた新しい主題歌のオケがトム・ジョ
ーンズのキーよりも高かったんだそうです。

トム・ジョーンズが歌ってるYouTube、見ましたよ。
この人もサーの称号をもらってるんですね。
若い頃のテレビ出演で「サンダーボール」を歌っている動画もありました。

35mmと70mmがあるのは知ってましたが65mmは知りませんでした。
多少なりともフィルムに関わる仕事をしていたのにお恥ずかしい限りです。
70mmは65mmにサウンドトラックの分5mmを付けたものなんですね。
昔は大作は70mmでそれが売りでしたが、上映できる映画館が限られていた
ような記憶があります。

70mm/65mmの方が35mmに比べるとワイドなんでしたっけ?
それをシネスコ・サイズにするなら左右じゃなく上下をマスキングすること
になりませんか?
よく分りませんが間違って解釈してそうですね。

僕も長くなってしまいました(笑)

provia さんのコメント...

再びこんばんは。

東宝の話が出たのでまた来ちゃいました(笑)

私は怪獣モノや、ヒーロー、アイドル関係にはまったく
興味が無く、東宝では植木等(クレージー)の、無責任、
日本一シリーズ、また社長シリーズ、駅前シリーズなどに
夢中でした。

なので若大将シリーズにもそんなに執着心がありません。

イエロードッグさんが仰るように東宝の映画はノー天気に
明るくて好きでした。

私が好きな各シリーズの映画の中では雨のシーンは
殆ど見られません。
いつも陽光降り注ぐ明るい場所で撮影していたように思います。

この時の映画体験が今の私の写真に影響を与えてます。
私が自分のブログで「青空~、青空~」と呟いている原点は
東宝の映画なんです。

なので今も可能な限り青空の下で撮りたいと思ってしまうんです。



話変わって.......007のタイトルですが、
当時のこのシリーズはパナビジョン社のカメラとレンズを使って
撮影されていて、その時のシネマスコープは1:2.4の比率です。

一方、70mmの比率は1:2.06なので、35mmシネマスコープの方が
横長画面です。
なのでタイトル部分では左右にマスクをかけたんでしょう。

私はドイツで開催された写真用品展示会でパナビジョン社の
35mmカメラのファインダーを覗いた事がありますが、
その時の感激は忘れられません。

このカメラで映画を作りたいと真剣に思ったものです。


またまた長くなって失礼致しました。
でもこういう話、好きなんです。
自分のブログではなかなか出来ないので.......

イエロードッグ さんのコメント...

>proviaさん

いらっしゃいませ(笑)

小学生で社長シリーズ、駅前シリーズとはシブいですね〜。
あのシリーズもよくゴジラと抱き合わせで上映していた記憶があります。
僕は一度も見たことがありませんでした。
父は植木等は好きだったけど子供に見せる内容じゃないと思ってたようで。
ゴジラだけ見てさっさと帰っちゃうんです。

でも若大将シリーズは見たかったですね。
学校で話題になりますから。
若大将カッコいいなと子供心に思ったし曲も好きでした。
家は厳格で歌番組も禁止だったくらいですから、若大将みたいなナンパな
若者たちの映画なんてとんでもなかったでしょう。
一度だけ「フランケンシュタイン対バラゴン」を見に行ったらちょうど
終わりの方で、次の回の前に「海の若大将」が上映されます。
父が笑いながら「しょうがないから見るか」と言ってくれた時は小躍りし
て喜びました。
子供の頃の父との一番いい思い出です。
そんな家庭環境ですから007なんて絶対無理でした(笑)

東宝のお坊ちゃん体質はトップが下から成蹊だから、と以前馬場康夫氏が
書いていました。
その真偽はさておき、若大将はもちろん、無責任も(大人になってから
見ました)ゴジラものまで一貫して明るく能天気でブルジョワ趣味が貫か
れています。
黒澤映画で庶民を描く時でさえ貧乏くささを感じさせないですよね。

今思えば子供の頃の東宝映画とディズニー映画と月刊「少年」と岩波の絵本
と児童文学で僕の世界観はできてしまったような気がします。
松竹や日活や東映や大映の作品はどうも体質的に苦手なんです。
高校の頃ブームになった和製フォークのジメジメした感じも苦手でした。

70mmと35mmのアスペクト比はそういうことだったんですね。
完全に逆だと思い込んでいました。70mmの方がワイドなんだと。
007のタイトルが左右マスキングされているというのもそれで納得です。
すっきりしました。ありがとうございます。

昔はよく上映前にニュース映画やCMをやりましたよね。
あれが終わるとサーッとカーテンがもっと開けて画面が広くなって、
いよいよ本編上映かとわくわくしたものです。
あの時のニュース・フィルムは1.66:1のビスタサイズだったんですかね?
CMは1.33:1のスタンダードサイズで作られていました。

CMは35mmで撮影され別に録った音声と編集(MAV)され完パケを作るの
ですが、その際VTRにしてから編集する場合もあります。
VTRの完パケから劇場用の素材を作ると著しく画質が劣化するそうです。
だから出稿計画の中に劇場CMが入ってる場合は必ずV編集ではなくフィルム
編集というのが鉄則でした。

劇場CMをやると媒体担当は映画のタダ券がもらえる特権がありました。
僕が製作担当から媒体担当に変わった頃は劇場CMは衰退していて、必ず
入っていたのは大手では資生堂くらいだったように憶えています。

広告の制作の現場で実績のある人の多くが「映画を撮ってみたい」という
野望があるようです。
何人かからそういう話を聞きました。
映画ってそういう特別な魔力があるのかもしれませんね。

provia さんのコメント...

おはようございます。

何度もスミマセン。

いやぁ、私と似てるなぁと思ったものですから。

私も邦画では東宝以外は殆ど見た記憶が無くて、
唯一(これは時代的には少し後ですが)石原プロ
の作品だけは欠かさず見ました。

コメディでも東宝以外は何となく湿っぽい感じがして楽しめませんでしたし、
やくざモノは論外でした。

同じように和製フォークも好きでは無かったです。
面白い一致ですね。


映画館で映画を見る時に私はCMもとても楽しみにしてました。
あのサイズはスタンダードだったのではないですか。
ビスタではなかったような気がします。

スタンダードサイズという事が理由なのか分かりませんが、
シネスコで拡大された画像に比べてCMの映像がやけに
綺麗に見えたんです。

資生堂のCMは特に綺麗だったような記憶もあります。
まぁ化粧品のCMだから当たり前かもしれませんが。

あの当時ローカルな映画館では地元商店のCMをスライドフィルムで
作って上映してました。

それがシネスコサイズで、普通のスライドをどうやってシネスコサイズにしたのか、どんなスライド映写機を使っていたのか、今も疑問です。

映写室は憧れの聖地でした(笑)

イエロードッグ さんのコメント...

>proviaさん

お互い東宝育ちなんですね(笑)

東宝の怪獣映画はお子ちゃま作品にしてないからよかったんです。
出演者はオシャレで若大将シリーズに通じるブルジョワ趣味が至る所に
出ていました。
俳優も重なってましたね。
若大将に出演してる俳優がゴジラにも出たり(笑)
特に東宝は女優さんたちが魅力的でした。

大人になってから「日本一のゴマすり男」を見ましたが、ヤナセと思われる
ディーラーでビュイックやカルマンギアを扱ってましたよね。
怪獣映画でも研究者たちがオシャレでフェアレディーのオープンカーを乗り
回して、パレスホテルやオークラに泊まっててなぜかリッチなんです(笑)

東宝作品は出て来る街並みも港区、世田谷区、中央区ばかりですよね。
あまり新宿や池袋は出て来ないです。

貧乏くさくて惨めったらしくジメジメした(時には屈折した)日本映画って
個人的にはどうも苦手なんです。
そういう映画を得意としている配給会社が娯楽作品を撮っても、なんか
皮膚感覚で「違う」と感じちゃうんですよね。

同じ怪獣映画でも大映の「ガメラ対ギャオス」は違和感がありました。
「大魔神」くらい暗く重いとそれはそれでいいんですけどね。
テレビでウルトラ・シリーズを放送していた頃「キャプテン・ウルトラ」と
いう番組だけはぜんぜんいいと思えませんでした。
後で分ったのですが、東宝+円谷プロが制作が追いつかなくてそのクールだけ
東映が作っていたそうです。

昔は映画会社がそれぞれ専属の制作スタッフと俳優を抱えてたんですよね。
だから東宝は東宝、大映は大映と撮り方や美学がはっきりしていた、個性が
あったのではないかと思います。
広告の世界でも昔は黒澤組のライティングディレクターに頼むとか、黒澤映画
のタイトル文字を書いてる人に頼むということがありましたよ。
石川賢治さんが「ほとんどライティングで決まっちゃう」と言ってましたよ。

資生堂のCMは特別と言っていいくらい丁寧に奇麗に撮ってますよね。
印刷物でも資生堂は常に特色を使った5色分解でした。
CMも本当に時間をかけて丁寧に撮られています。
1960年代〜1970年代の資生堂のCMの多くは杉山登志さんというディレクター
が撮っていました。
映像のギミックやアイディア、見せ方が素晴らしかったです。
1970年代後半は歌とタイアップしたキャンペーンの仕掛けとキャッチコピー
、タレントが重視され、昔ながらの素敵なCMは見られなくなりました。
1960年代の資生堂のCMは東宝の俳優が出演してるものもありますよ。

地元商店のスライドCM、懐かしいですねー!
35mmのネガまたはポジからデュープを取る時にトリミングしてシネスコサイズ
にしてたんですかね?
あまり鮮明な写真ではなかったような記憶がありますが。。。。