チェット・アトキンスの名前だけは中学生の頃から知っていた。
All My Lovingのギター・ソロでジョージ・ハリソンはチェット・
アトキンス奏法をやっている(1)と音楽誌かLPのライナーノーツに
書いてあったからだ。
高校の頃か、音楽誌に「ジェフ・ベックの演奏はチェット・アト
キンスの足元にも及ばない」という批評(2)が載っていた。
(これは音楽評論家の傲慢な偏見であり的外れである)
初めてチェットを聴いたのは、友人が貸してくれたマール・トラヴ
ィスとの共演盤「The Atkins-Travis Traveling Show」(1974)
だった。
全曲アコースティックギターのデュオである。
カントリーギターのレジェンド2人の共演だが、丁々発止とか、
せめぎ合いはなく、余裕の演奏でどちらかというと牧歌的。
演奏しながらの2人の掛け合い、テキトーな歌も楽しそうだ。
とは言っても、どっしりしたマールのスタイル、御大に敬意を表
しつつ凄テクで合わせてくるチェットのギターはさすがである。
マール・トラヴィスはチェット・アトキンス奏法の元となった
ギャロッピング・スタイルの元祖(3)である。
↑マールのギターはマーティンD-28のボディーにビグズビー製ネック
をくっつけたもの。 (写真:Gettyimages)
マールは2フィンガーで常に6弦を豪快に弾く。
(たとえばコードがCでもベース音は、6弦のGにガツンとサムピ
ックを当て、5弦のCはゴースト音として鳴らす)
残りの4〜1弦も人差し指だけで同じく豪快に弾く。
ズンチャッ!ズンチャッ!のギャロッピング(馬の駆け足)感が
強調され、その跳ね感がグルーヴになる。
2フィンガーは3フィンガーのような小技ができないが力強い。(4)
そのためマール・トラヴィスは男性的、正確に弦に当てて音を2フィンガーは3フィンガーのような小技ができないが力強い。(4)
出すチェット・アトキンスは女性的と評する人もいる。
それは間違いである。チェットのピッキングもかなり強い。
このアルバムを聴いても、2人が同じ音圧であることが分かる。
(マールが全盛期を過ぎていたとはいえ)
まあ、そんな理屈は置いといてリラックスして聴いてほしい。
嬉しそうなチェットの様子が伝わるだろうか。
マールの大ファンなのだ。
なにしろ娘にマールと命名しちゃうくらいだから。
チェットは珍しくマーティンのD-45を弾いている。。。
↓と思いきや。縦ロゴMARTINではない?何と書いてあるんだろう?
↓と思いきや。縦ロゴMARTINではない?何と書いてあるんだろう?
ヘッドストックの角も欠けたような形だ。カスタムメイドか?
https://youtu.be/ubJdFC6Fq6k
チェットとマールの「Dance Of The Goldenrod」が聴けます。
マール作曲のカントリー・ワルツで、チェットはかつてマールがや
ってたようにハーモニクスを活かしたリードプレイをしている。
チェットとマールの「Dance Of The Goldenrod」が聴けます。
マール作曲のカントリー・ワルツで、チェットはかつてマールがや
ってたようにハーモニクスを活かしたリードプレイをしている。
チェットは彼にとってもう一人のギター・ヒーロー、レス・ポール
とも「Chester & Lester」(1976)で共演を果たす。
カントリーを洗練されたポピュラー音楽に昇華させたチェットと、
彼が敬愛して止まないエレクトリック・ギターの父、名プレーヤー
にして発明家であるレス・ポールによる珠玉のコラボレーションだ。
ジャケットの写真が表しているように、どの曲も音が温かく相手へ
の尊敬の念を感じさせてくれる素敵な作品である。
マール・トラヴィスとの共演と同じく、2人の会話や笑い声が混じり、
聴いてる方もにんまりしてしまう。
スタジオでのライヴ演奏だったらしいが、さぞかし和やかでスムーズ
なセッションだったのだろう。
https://youtu.be/GtCFTmgroK8
↑チェット&レス・ポールの「Avalon」が聴けます。
左がチェット、右がレス・ポール。
一旦終了してから再開する演奏がまた白眉もの。
この時チェットは50代に差し掛かり、レス・ポールは60代。
レス・ポールが「Two dirty old men」と言って大笑いしてるのと逆で
、この巨匠たちはギター少年のように心から楽しんでいるようだ。
2人とも極限まで磨き上げた確かなテクニックを持ってるからこそ
できる余裕の演奏である。展開力というか、音の会話というか。
そう来たか、じゃあ、これでどう?みたいな球の投げ合いが続く。
2人とも極限まで磨き上げた確かなテクニックを持ってるからこそ
できる余裕の演奏である。展開力というか、音の会話というか。
そう来たか、じゃあ、これでどう?みたいな球の投げ合いが続く。
マールの時と違い、レス・ポールとチェットは演奏スタイルが違う。
レス・ポールのクリーントーンで次々繰り出されるトリッキーなフレ
ーズ、それに応えるチェットの心地よいリズムと驚異的な指捌き。
その際立ちがこの作品を特別な一枚にしている。
タル部門で最優秀賞を獲得した。
ギターを嗜む人なら一度聴いて損はないと思う。
ギターを嗜む人なら一度聴いて損はないと思う。
(写真:Gettyimages)
何回かCD化されているが、2007年にRCAが発売したリイシュー盤
は、ボーナストラック(ボツにした曲、アウトテイク)を収録。
(Amazonでまだ入手できるようなので欲しい方はお早めに)
https://youtu.be/1_1z6_rlP2U
↑ボーナストラック「The World Is Waiting for the Sunrise」が
聴けます。こんな音源があったなんてびっくり。
尚、2人は1978年に再共演し「Guitar Monsters」を発表している。
https://youtu.be/0UKG_SCzrEE
↑「Guitar Monsters」プロモーションのためNBC「Today Show」に
2人で出演。It Don't Mean A Thing、Limehouse Bluesを演奏。
共演回数でいえば、盟友ジェリー・リードとは腐れ縁だろうか。
「Chet Atkins And Jerry Reed – Me And Jerry」(1970)
「Jerry Reed And Chet Atkins – Me And Chet」(1972)
と1970年代に共演アルバムを2枚出している。
さらに共演ではないが、チェットは全曲ジェリー・リード作品を
カヴァーした「Picks On Jerry Reed」(1974)も発表している。
共演回数でいえば、盟友ジェリー・リードとは腐れ縁だろうか。
「Chet Atkins And Jerry Reed – Me And Jerry」(1970)
「Jerry Reed And Chet Atkins – Me And Chet」(1972)
と1970年代に共演アルバムを2枚出している。
さらに共演ではないが、チェットは全曲ジェリー・リード作品を
カヴァーした「Picks On Jerry Reed」(1974)も発表している。
得意とするギタリストだ。
作曲家としても優れ、チェットを筆頭に多くのフィンガーピッカー
がジェリーの曲を取り上げている。
「Me And Jerry」(1970)ではマール・トラヴィスの「Cannonball
Rag」の他、「Bridge Over Troubled Water」「Something」など
当時のヒット曲をカヴァーしている。
https://youtu.be/IKwVSoM5ups
↑チェットとジェリー・リードのWreck Of the John Bが聴けます。
バハマ民謡。ビーチボーイズはSloop John Bという曲名でカヴァー。
他にもI Want to Go Homeなど複数の呼び方がある。
右がチェット。左がジェリー。ゆるーい歌と口笛がいい。
続編の「Me and Chet」(1972)は2人の速弾きが聴ける「Jerry’s
Breakdown」、エルヴィスのヒット曲「Mystery Train」、レス・
ポールとも演奏した「Limehouse Blues」などを収録。
グラミー賞にノミネートされたが受賞は逃した。
作曲家としても優れ、チェットを筆頭に多くのフィンガーピッカー
がジェリーの曲を取り上げている。
「Me And Jerry」(1970)ではマール・トラヴィスの「Cannonball
Rag」の他、「Bridge Over Troubled Water」「Something」など
当時のヒット曲をカヴァーしている。
https://youtu.be/IKwVSoM5ups
↑チェットとジェリー・リードのWreck Of the John Bが聴けます。
バハマ民謡。ビーチボーイズはSloop John Bという曲名でカヴァー。
他にもI Want to Go Homeなど複数の呼び方がある。
右がチェット。左がジェリー。ゆるーい歌と口笛がいい。
続編の「Me and Chet」(1972)は2人の速弾きが聴ける「Jerry’s
Breakdown」、エルヴィスのヒット曲「Mystery Train」、レス・
ポールとも演奏した「Limehouse Blues」などを収録。
グラミー賞にノミネートされたが受賞は逃した。
https://youtu.be/Ni8KBhnebwE
↑1975年Pop! Goes the Country出演時のチェットとジェリーに
よるJerry’s Breakdown演奏が観れます。
右のやんちゃなオッサンみたいな人がジェリー・リード。
「Picks On Jerry Reed」(1974)ではジェリーは参加していない
が、「I'll Say She Does」「East Wind」「Remembering」
「Down Home」「Baby's Coming Home」「The Early Dawn」
「Steeplechase Lane」などチェットが好んで演奏してきた曲が
収録されている。
↑2009年にRavenレーベルから発売された「Me And Jerry」「
Me adn Chet」2in1CDは、ボーナストラックに「Picks On
Jerry Reed」から6曲、さらにチェットがカヴァーしたジェリー
作品を2曲をプラスしたお買い得盤。(TVショッピングみたい?)
https://youtu.be/LOgJvpQdcKQ
↑チェットとジェリーのBaby's Coming Homeが観れます。
Me adn Chet」2in1CDは、ボーナストラックに「Picks On
Jerry Reed」から6曲、さらにチェットがカヴァーしたジェリー
作品を2曲をプラスしたお買い得盤。(TVショッピングみたい?)
https://youtu.be/LOgJvpQdcKQ
↑チェットとジェリーのBaby's Coming Homeが観れます。
https://youtu.be/KD4XjAU28F0
↑チェットとジェリーのI´ll Say She Doesが観れます。
この2人は20年後の1991年に「Sneakin' Around」でまた共演。
どんだけ仲良しなんでしょう?(笑)
グラミー賞カントリー・インストゥルメンタル部門で最優秀賞
を受賞している。(長年の功労賞ってことかな?)
↑チェットとジェリーのI´ll Say She Doesが観れます。
この2人は20年後の1991年に「Sneakin' Around」でまた共演。
どんだけ仲良しなんでしょう?(笑)
グラミー賞カントリー・インストゥルメンタル部門で最優秀賞
を受賞している。(長年の功労賞ってことかな?)
ドク・ワトソンとの共演「Reflections」(1980)、マーク・ノ
ップラーとの共演「Neck And Neck」(1990)。
最後のアルバムとなったトミー・エマニュエルとの共演作、
「 The Day Finger Pickers Took Over The World」(1997)
ギタリスト以外にもフロイド・クレイマー、ダニー・デイヴィス、
ブーツ・ランドルフ、ボストン・ポップス・オーケストラ、ジム
・リーヴス、スージー・ボガス、ドリー・パートンなどなど。
最後に地味だけどとても気に入ってるアルバムを紹介したい。
チェットの影響を強く受けた理論派にして技巧派ジャズ・ギタリ
スト、レニー・ブローとの共演作「Standard Brands」(1981)。
全曲2人ともクラシックギターを弾いている。隠れた名盤だ。
https://youtu.be/ffOkzDuHwzA
↑「This Can't Be Love」が聴けます。
左がレニー・ブロー、右がチェット。
レニー・ブローは薬物中毒の問題を抱え43歳で他界している。
この共演もレニーを復帰させたいチェットの計らいだった。
<脚注>