負けないような完成度の高い傑作アルバムを作ろうと決意。
ビーチボーイズのツアーに参加せず、スタジオワークに専念する。(1)
半年後に「ペットサウンズ」を完成させた。
ビーチボーイズ名義ではあるが、他のメンバーはボーカルとコーラス、一部の
作詞だけ(2)という、実質ブライアンのソロに近い作品である。
他のメンバーがツアーで飛び回ってる間(3)ブライアンは作曲からアレンジまで
一人でこなし、レッキングクルー(腕利きのスタジオ・ミュージシャン集団)(4)
を集め、敬愛するフィル・スペクター方式(5)でオケ(伴奏)をレコーディング。
ツアーから戻ったメンバーたちはオケとブライアンのガイドボーカルを聴く。(6)
デニス、カール、ブルース・ジョンストンは好意的だったが、マイク・ラヴと
アル・ジャーディンは批判的だった。(7)
海も太陽もサーフィンも女の子もホットロッド(車)も描かれていない。
ビーチボーイズの世界観とかけ離れていた。キャピトルも難色を示す。
ファンたちも戸惑った。セールスは50万枚で全米チャート10位に留まった。(8)
しかしイギリスでは評価が高く絶賛され、全英チャートで2位を獲得。(9)
ポール・マッカートニーは衝撃を受け、他のビートルズ3人にも聴かせた。
God Only Knowsはポールにとって特別な曲だそうで、 この曲に触発され
てHere There And Everywhereを書いたと言っている。
またポールは「ペットサウンズ」を超える作品をと意欲を燃やし「サージェ
ント・ペパーズ」の制作に入った。(10)
またポールは「ペットサウンズ」を超える作品をと意欲を燃やし「サージェ
ント・ペパーズ」の制作に入った。(10)
ブライアンが「ラバーソウル」を聴かなければ、「ペットサウンズ」も「サー
ジェント・ペパーズ」も生まれなかったもしれない。
ブライアンは「ラバーソウル」について「アルバムとして統一感があり、
すべての曲が美しく仕上がっていて心奪われた」と言っている。
後に自伝でも「史上最高のアルバム」と大絶賛。
特にYou Won't See Me、I'm Looking Through You、Girl の3曲に打ち
のめされたそうだ。
(写真:gettyimages)
さて、もしあなたがビートルズ・ファンかつビーチボーイズ・ファンなら、
一つの疑問が生じるのではないだろうか。
ブライアンが聴いたラバーソウルはUK盤?それともUS盤だったのか?
https://b-side-medley.blogspot.com/2015/06/blog-post_11.html
ふつーの人にとっては何が違うのか分からない。どうでもいいことだ。
でも違う。極端に言うなら、似て非なるモノである。
英国パーラフォン・レーベルから発売されたオリジナルのラバーソウルと
アメリカで発売されたキャピトル「編集盤」では収録曲が違うのだ。
では、比較してみよう。
↓まず、UK盤のジャケット。右下に赤でパーラフォン・ロゴが入ってます。
↓次にUS盤のジャケット。
ラバーソウルのロゴが赤ではなくゴールド。これはこれでいい感じ。
キャピトルのロゴは右上。
↓本来の歪みのない状態。撮影されたのはジョンの家の庭。
(この頃4人はスエードやコーデュロイに凝ってたらしい)
撮影したロバート・フリーマンがボール紙へ写したところ歪んで見え、4人
はそれを面白がりそのまま採用。ビートルズは偶然の産物を好んだ。
↓UK盤のジャケット裏面。下にパーラフォンとEMIのロゴ。
↓US盤のジャケット裏面。UK盤のレイアウトを踏襲している。
キャピトルのロゴと注意書き、ビートルズ(違う書体)で大きく上に出し
たことで重くなってしまった。UK盤の方がすっきりして美しい。
↓UK盤の収録曲。14曲、縦に配してる。ホワイトスペースの取り方が絶妙。
↓US盤の収録曲。何かおかしい。気づきましたか?12曲なんです。
1曲目のDrive My Car、名曲Nowhere Man、リンゴのWhat Goes On、
ジョージのIf I Needed Someoneの4曲がごっそりカット。
代わりに前作ヘルプ!収録曲のI've Just Seen A Face、It's Only Love
がそれぞれA面とB面の1曲目に置き換わっている。(★印)
I've Just Seen A Faceで始まるラバーソウル?違和感がありませんか?
Drive My Carで始まりガツーンとやられるのがラバーソウルでしょ!
It's Only Loveは好きだけど、B面は陽気なリンゴのWhat Goes Onの次
だからこそ、ジョンのGirlが切ないんじゃないかな。
なぜヘルプ!のI've Just Seen A Face、It's Only Loveが入ってるのか?(11)
↓US盤のヘルプ!。映画のサントラ盤と記載。ジャケットはカッコいい。
ビートルズの曲は劇中で歌った7曲(UK盤のA面)だけ収録。
残りは映画内で使われたインストゥルメンタルが散りばめてある。
UK盤B面の7曲はここでは使わず、別な編集盤に流用するセコさ。
本来ヘルプ!に収録されるべきI've Just Seen A Face、It's Only Loveは
ラバーソウルに入れ、浮いた4曲を(アメリカではLPは12曲が標準だった)
別のLPをでっちあげてそっちに回してるのだ。
ラバーソウルから抜かれた4曲は、イエスタデイ&トゥデイという米国独自
編集盤に収録された。
↑有名なブッチャー・カバー。
発売直前にレコード会社や販売店からの苦情により、トランクと4人が写っ
ている写真に変更された。
(最初のロットのブッチャー・カバーは回収後、トランクの写真を上から
貼って再出荷された)
ブッチャー・カバーは希少ということでコレクターズ・アイテムになる。
↓ジョージの右腕にへばり付いた赤ん坊の手が何気に怖い。
写真家ロバート・ウィテカーとビートルズによるブラックユーモアだった。
ビートルズの意図を無視した編集で売るキャピトルへの反抗と取られたが、
4人はベトナム戦争への反対声明だと主張している。
(写真:gettyimages)
↓イエスタデイ&トゥデイの代替の「トランクと4人」のジャケット。
↓室内で撮った写真から4人を切り抜き白バックに合成したことが分かる。
カラーポジを裏焼きしたためジャケットでは左右が逆になっている。
よほど慌てて作業したのだろう(笑)
↓イエスタデイ&トゥデイの裏ジャケット。
Drive My Car、Nowhere Man、What Goes On、If I Needed Someone
の4曲はラバーソウルから外されてここに放り込まれていた。
ジェント・ペパーズ」も生まれなかったもしれない。
ブライアンは「ラバーソウル」について「アルバムとして統一感があり、
すべての曲が美しく仕上がっていて心奪われた」と言っている。
後に自伝でも「史上最高のアルバム」と大絶賛。
特にYou Won't See Me、I'm Looking Through You、Girl の3曲に打ち
のめされたそうだ。
さて、もしあなたがビートルズ・ファンかつビーチボーイズ・ファンなら、
一つの疑問が生じるのではないだろうか。
ブライアンが聴いたラバーソウルはUK盤?それともUS盤だったのか?
https://b-side-medley.blogspot.com/2015/06/blog-post_11.html
ふつーの人にとっては何が違うのか分からない。どうでもいいことだ。
でも違う。極端に言うなら、似て非なるモノである。
英国パーラフォン・レーベルから発売されたオリジナルのラバーソウルと
アメリカで発売されたキャピトル「編集盤」では収録曲が違うのだ。
では、比較してみよう。
↓まず、UK盤のジャケット。右下に赤でパーラフォン・ロゴが入ってます。
↓次にUS盤のジャケット。
ラバーソウルのロゴが赤ではなくゴールド。これはこれでいい感じ。
キャピトルのロゴは右上。
↓本来の歪みのない状態。撮影されたのはジョンの家の庭。
(この頃4人はスエードやコーデュロイに凝ってたらしい)
撮影したロバート・フリーマンがボール紙へ写したところ歪んで見え、4人
はそれを面白がりそのまま採用。ビートルズは偶然の産物を好んだ。
↓UK盤のジャケット裏面。下にパーラフォンとEMIのロゴ。
↓US盤のジャケット裏面。UK盤のレイアウトを踏襲している。
キャピトルのロゴと注意書き、ビートルズ(違う書体)で大きく上に出し
たことで重くなってしまった。UK盤の方がすっきりして美しい。
↓UK盤の収録曲。14曲、縦に配してる。ホワイトスペースの取り方が絶妙。
↓US盤の収録曲。何かおかしい。気づきましたか?12曲なんです。
1曲目のDrive My Car、名曲Nowhere Man、リンゴのWhat Goes On、
ジョージのIf I Needed Someoneの4曲がごっそりカット。
代わりに前作ヘルプ!収録曲のI've Just Seen A Face、It's Only Love
がそれぞれA面とB面の1曲目に置き換わっている。(★印)
I've Just Seen A Faceで始まるラバーソウル?違和感がありませんか?
Drive My Carで始まりガツーンとやられるのがラバーソウルでしょ!
It's Only Loveは好きだけど、B面は陽気なリンゴのWhat Goes Onの次
だからこそ、ジョンのGirlが切ないんじゃないかな。
なぜヘルプ!のI've Just Seen A Face、It's Only Loveが入ってるのか?(11)
↓US盤のヘルプ!。映画のサントラ盤と記載。ジャケットはカッコいい。
ビートルズの曲は劇中で歌った7曲(UK盤のA面)だけ収録。
残りは映画内で使われたインストゥルメンタルが散りばめてある。
UK盤B面の7曲はここでは使わず、別な編集盤に流用するセコさ。
本来ヘルプ!に収録されるべきI've Just Seen A Face、It's Only Loveは
ラバーソウルに入れ、浮いた4曲を(アメリカではLPは12曲が標準だった)
別のLPをでっちあげてそっちに回してるのだ。
ラバーソウルから抜かれた4曲は、イエスタデイ&トゥデイという米国独自
編集盤に収録された。
↑有名なブッチャー・カバー。
発売直前にレコード会社や販売店からの苦情により、トランクと4人が写っ
ている写真に変更された。
(最初のロットのブッチャー・カバーは回収後、トランクの写真を上から
貼って再出荷された)
ブッチャー・カバーは希少ということでコレクターズ・アイテムになる。
↓ジョージの右腕にへばり付いた赤ん坊の手が何気に怖い。
写真家ロバート・ウィテカーとビートルズによるブラックユーモアだった。
ビートルズの意図を無視した編集で売るキャピトルへの反抗と取られたが、
4人はベトナム戦争への反対声明だと主張している。
↓イエスタデイ&トゥデイの代替の「トランクと4人」のジャケット。
↓室内で撮った写真から4人を切り抜き白バックに合成したことが分かる。
カラーポジを裏焼きしたためジャケットでは左右が逆になっている。
よほど慌てて作業したのだろう(笑)
↓イエスタデイ&トゥデイの裏ジャケット。
Drive My Car、Nowhere Man、What Goes On、If I Needed Someone
の4曲はラバーソウルから外されてここに放り込まれていた。
さらに次アルバム、リボルバーに入るI'm Only Sleeping、Dr. Robert、
And Your Bird Can Singの3曲もここに入れてある。
(つまりリボルバーはこの3曲を抜いた11曲ということ)
本来ヘルプ!収録のYesterdayとAct Naturallyもやっと日の目を見た。
We Can Work It Out、Day Tripperはシングル盤のA/B面。
統一感もコンセプトもあったもんじゃない。タイトルもやっつけ。
名曲Yesterdayが目玉だから”Yesterday”...and Todayは苦肉の策?
・・・という事情が分かったところでもう一度問いたい。
ずいぶん前の話だが、レコードコレクターズのQ&Aにこの質問が寄せられ
、編集部が来日中のブライアンに取材したそうだ。
ブライアンの答えは「おおっ、それはいい質問だ。でも実は憶えていない
んだ。自分のではなく友人に借りて聴いたから」だった。
当時アメリカ国内ではあまりUK盤が流通していなかったことを鑑みると、
ブライアンが聴いた「ラバーソウル」はUS盤の可能性が大きい、と編集
部は結論付けていた。
ブライアンだけではない。
アメリカ人のほとんどが A面は I've Just Seen A Face で始まり、B面は
It's Only Love で始まる「ラバーソウル」を聴いていたのだ。
ブライアンは「美しい粒揃いの曲が並び、全体を通して統一感がある」
と評していた。
キャピトル編集盤はDrive My Carを外し、A面B面をアコースティック色
の強いI've Just Seen A Face、It's Only Loveから始めることでフォーク
ロックのアルバムと位置付けたかった?
という(かなり強引だが)好意的な解釈もできる。
であれば、ディランの影響が伺えるジョンのNowhere Manを外すか?
当時アメリカで流行ったバーズのMr.Tumbling Manのサウンドを取り入れ
ビートルズ流にアレンジしたIf I Needed Someoneを外したのも解せない。
結局のところ、キャピトルはフォークロック云々とか、アルバムの統一性
とかコンセプトとか、深いところまで考えてはいなかった。
彼らはティーンエイジャーから金を巻き上げられればそれでいいのだから。
さて、そんな中、表題の件で有力な情報が飛び込んできた。
ビートルズ研究家/ライターの野良さんがツイートしてるのだが。
デレク・テイラー(ビートルズの広報担当)が1965年の感謝祭の後にラバー
・ソウルのUK盤(キャピトル盤ではなくオリジナルのパーロフォン盤)の
アセテートをブライアン・ウィルスンに渡し、ブライアンがそれを聴いて
大いに感銘を受け・・・という話が、マーク・ルイスンの「ビートルズ史」
第2巻で明かされるらしい。(12)