2023年4月24日月曜日

日本武道館で100回目の公演を果たしたクラプトン(追記あり)







 
<来日アーティスト初、武道館公演100回目の快挙>

2019年春以来4年ぶりとなるエリック・クラプトンが来日した。
(コロナで3年間ライヴ活動が制限されてた)
2023年4月15日から24日まで6回の日本武道館公演を行っている。


クラプトン昨年はコロナ感染したものの重症化せずに済んだようだ。
彼はワクチンの副作用に苦しんだため接種反対の立場を表明している。

2016年には末梢神経の障害でギターを弾くのが困難と告白した。
2017年には重度の気管支炎のためLA公演を延期し、空港で車椅子に乗
せられたクラプトンを捉えた写真が公開され驚いた。


クラプトンはこれまでのような大規模なワールドツアーはやらないが、
日本には行くと明言していた。
ロイヤル・アルバート・ホールと日本武道館には思い入れがあるらしい。

4回目の来日(1979年)でやっと分かった日本の観客の質の良さ、日本
のファッションや食、カルチャーへの傾倒、ウドー音楽事務所や多くの
友人を通して日本ファンになったのも日本びいきの理由だ。



 ↑ヘッドポーターなどをプロデュースする藤原ヒロシ氏と。
  クラプトンの映像作品も手がけている。



 ↑ヴィズヴィム(VISVIM)デザイナー、中村ヒロキ氏と。



 ↑クラプトンがOne of the most delicious restaurants in the whole 
 worldと絶賛する原宿の福よしへは来日の度に行くという。
 ジャケットと靴はヴィズヴィム(VISVIM)、バッグはヘッドポーター。



今回は1974年の初来日以来、23回の来日公演(ジョージ・ハリソンと
の来日を含む)となる。
そして4月21日の公演をもって、洋楽アーティストとして初の通算100回目
の日本武道館公演を達成。当日はステージで花束贈呈が行われた。

(日本人アーティストでは矢沢永吉、松田聖子が日本武道館公演を
100回以上行っている)



僕は1979年、1985年、1987年、1990年、1991年(ジョージ・ハリソン
と共演)、1993年(アンプラグド)、1995年(ブルース)、2003年と
日本では8回見に行っており、そのうち6回が武道館だった。

やはりクラプトン=日本武道館という思いがある。
2003年に横浜アリーナーで見たのを最後にそれ以降は行っていない。
今回も行く予定はないが、クラプトンが来る度に気になる。
どんなファッションか?ギターは?メンバーは?どういう曲をやるのか?



初日4月15日の写真と大友博氏によるレポートがUdiscovermusic.jpに
公開された。




 (写真:Masanori Doi)



<恒例の服装チェック!>

うーん、あいかわらずカッコいい。これで78歳でですよ。反則でしょ。
こんな爺さんになれたら、と思ってしまう。

まず目を引いたのはクラプトンが着ているデニム・ジャケット
ワークジャケットのテイストながらテイラードになっている。
肩が落ちているが袖は短い、身幅が広い、シンメトリーなアウトポケ
ットなど今風の解釈で遊び心がある。

エンジニア・ガーメンツかヴィズヴィムかなーと探したら。。。
ピンポーン!ヴィズヴィム(VISVIM)でしたよ。
SS HAMMONS CHORE JKT DMGD ¥121,000 (既に完売)
色はBLACK、GREY、INDIGOの3色。クラプトンのはBLACK?




インナーもブラックのワークシャツに見える。
ボトムスはあいかわらずヴィンテージのリーバイス501のようだ。

4月18日の公演ではインディゴに白のレイルロード・ストライプの
エンジニア・ジャケットを着ている。
靴は黒地に白紐、サイドに白ラインの入ったスニーカー。
(今まで靴はすべてヴィズヴィムなのでこれもそうか?)

4月21日の公演ではネイビーにピンストライプのベスト、ネイビー
のシャツ、ジーンズという組み合わせだ。
インディアン・ジュエリーはすべて原宿ゴローズ。
ギターのストラップはクロコダイル。これはちょっとイヤだな




<恒例のギター・チェック!>

写真を見る限り、薄いくすんだピンクのような、肌色?のような、
これまで登場したことのない珍しいストラトキャスターを弾いてる。
うっすら木目も見えるのでかなり薄い塗装ではないか。

大友博氏はオリンピック・ホワイト(薄いクリーム色)と記している
薄いクリーム色は近いと思うが、オリンピック・ホワイトではない。
アイボリーと表してる人もいた。
観客がスマホで撮影した動画を見ると、薄いクリーム色(何か名前
あるのだろう)に見える。




クラプトンのストラトキャスターはこの10年はネイビー(衣装も紺、
デニムで統一、マーティン000-42もネイビー)、ガンメタが多かった。
2009年からはダフネ・ブルー、2019年にはメタリック・グリーンも
使用している。





この薄いクリーム色のストラトはまだ1枚しか写真がないが、今後
もっと写真が公開されれば、詳細も分かってくるだろう。(調査継続)

アコースティック・ギターは通常のマーティン000-28EC。
クロサワ楽器店が用意したようだ。
L.R.BaggsのAnthem(ピエゾ・ピックアップと内臓マイクの音をミッ
クスするシステム)が付いていると思われる。







追記:クラプトンが2023年の日本公演で使用したストラトキャスター。

ギター・マガジンに詳細が載ってました。
2016年フェンダー・カスタムショップが贈呈した2本のうちの1本だ。

追い柾目に木取られたVシェイプの1ピースのメイプル・ネック。
アッシュの杢目が透けるほど極薄のブロンド・フィニッシュ&ニトロ
セルロース・ラッカーが施されたボディ。
3ビンテージ・ノイズレス・ピックアップ、アクティブのミッド・ブー
スト回路、TBXコントロールなどが特徴。
ちなみにモデル名のジャニーマン・レリックとは、弾き込まれてはいる
が良好な状態のビンテージ・ギターを再現した加工のこと。


クラプトンは足元のクライベイビー(GCB-95F)とレスリー・スピーカ
ーのスイッチのみで、アンプを組み合わせて太く艶やかなクランチ・
トーンを生み出していた。

ストラップは、奥様のメリア・マッケナリーからクリスマスにプレゼン
トされたというエルメス製の特注品。
赤いバラとEPC(Eric Patrick Clapton)LXXの刺繍が施されている。

このブロンド(オフホワイト)のストラトを今回使用したのはジェフ・
ベックへの哀悼の意を表してのことだと思われる。




<ステージ・機材>

上に大型LEDスポットでステージ全体を照らしていて、曲ごとに照明
を変えるなどの演出はない。
ステージもフラットでどこからでも見渡せる。




観客にセッションを見てるような感じで楽しんでもらう計らいだろう。
中央にラグマットが置いてある。音質効果より雰囲気作りではないか。
セッションズ・フォー・ロバート・Jでも置いてあった。
足元にはダンロップのクライベイビー・ワウと、レズリースピーカー
フットスイッチ。




アンプは2010年にクラプトンがフェンダーに特注したEC Twinolux
ツイード '57 Twin-Amp をリメイクしたコンボアンプ
温かみのある倍音・繊細かつ豊潤なトーン・レスポンスを継承し、
クリーントーンからクランチまでクラプトン・サウンドを出せる。
出力40Wの真空管アンプで12"スピーカーが2基搭載されている。

ノイマンともう1本ダイナミック・マイク?がかなりキャビネットに
近づけてセットしてある。後ろに見えるのはスペアだろう。




ピアノのクリス・ステイントンはヤマハのCP1。
ポール・キャラックはハモンドオルガンB3+レスリー回転スピーカー。
ドラムのソニー・エモリーはヤマハのセット+ジルジャンのシンバル。
ネイザン・イーストはヤマハのベースBB-NEIIとヤマハ5弦アコベース。

ボーカルマイクはオーディオテクニカAT4054が使用されたようだ。
メインコンソールはDiGiCoのSD7。音出しはラインアレースピーカー。
ステージ上に返しのモニターがかなりの量セットしてある。






<バンド編成>

ネイザン・イースト(b, vo)
ソニー・エモリー (dr) 新メンバー
ドイル・ブラムホール II 世(g, vo)
クリス・ステイントン(key)
ポール・キャラック (org, vo)
ケイティ・キッスーン (vo)
シャロン・ホワイト (vo) 新メンバー?

ネイザン・イーストは1986年からクラプトンのベースを担当。
ソニー・エモリーは元アース・ウィンド&ファイアーのドラマー。
ドイル・ブラムホールは長くクラプトンの相棒を務めるギタリスト。

クリス・ステイントンはジョー・コッカーのバックに在籍したキー
ボード奏者で、1970年代からクラプトン・バンドの常連。
ポール・キャラックはキーボード奏者でソウルフルな歌も得意だ。

ケイティ・キッスーンは1980年代からクラプトンのコーラスに参加。
シャロン・ホワイトはリッキー・スキャッグスの妻としか分らない。



 ↑ソニー・エモリーのドラムは実際にどうだったのか?
 スティーヴ・ガットの調整がつかず代役だったのか?



<セット・リスト>

1. Blue Rainbow(未発表インストゥルメンタル)
2. Pretending (1989 Journeymanより)
3. Key To The Highway (ブルース)
4. Hoochie Coochie Man (ブルース)
5. I Shot The Sheriff
(アコースティック・セット)
6. Kind Hearted Woman (ロバート・ジョンソン)
7. Nobody Knows You When You’re Down and Out
8. Call Me The Breeze  (J.J.ケイル)
9. Sam Hall (トラッド・フォーク)
10. Tears In Heaven (レゲエ・リズム)
11. Kerry  (インストゥルメンタル)
(エレクトリック・セット)
12. Badge
13. Wonderful Tonight
14. Crossroads (ロバート・ジョンソン)
15. Little Queen Of Spades (ロバート・ジョンソン)
16. Layla
(アンコール)
17. High Time We Went (ジョー・コッカー)
※この曲はポール・キャラックがボーカルをとるらしい。



僕自身は行ってないので、実際のパフォーマンスについて語れない。
投稿された画像や動画から分かることを述べただけである。
大友博氏のレビューを引用させてもらうので参考にしてください。

「シンプルながらも予想をはるかに上回るパフォーマンス。」
「完成度の高さと、とてつもない音圧、表現力の豊かさから、あら
ためてエリック・クラプトンという音楽家の凄さを実感させられた。
また、美しいギターを抱えてステージ中央に立つその姿は、先月末
に78回目の誕生日を迎えているというその年齢を疑わせるほどの
ものだった。」
「メンバーを大切にしながら、一人のメンバーとしてステージに立
つ時間を楽しむ姿が、印象に残った。」





2023年4月17日月曜日

チェット・アトキンスの流れを汲むギタリストたち。



                             (写真: Gettyimages)

チェット・アトキンス特集7回目。とりあえずこれで一旦終了。
今回はチェットのスタイルを受け継ぐフィンガーピッカーたち、いわゆる
チェット・フォロワーたちについて。




<C.G.P.(Certified Guitar Player)>

チェットは1996年に自らが使っていた「C.G.P.(Certified Guitar Player)」
の称号をトミー・エマニュエル、ジョン・ノウルズ、ジェリー・リード、
スティーヴ・ウォリナー、マルセル・ダディの5人ギタリストに認めた。

(チェット没後10年の2011年、長年チェットの脇役を務めたポール・ヤン
デルが他界した際、チェットの娘マールがC.G.P.の称号を認めた)

C.G.Pのうちマルセル・ダディは1996年にTWA機墜落事故により他界。
ジェリー・リードはチェット・フォロワーというより、多くの曲をチェット
に提供し共演した盟友というか戦友。2008年に肺気腫のため亡くなった。

存命のC.G.P.は3人だが、ジョン・ノウルズは現在81歳と高齢。
チェットの横でギタリスト、ベーシスト、シンガーとして活躍したスティー
ヴ・ウォリナーは現在68歳。
チェットの演奏を譜面に残し、フィンガーピッカーとの共演で最も積極的に
活躍してるトミー・エマニュエルも67歳。
C.G.P.にも高齢化の波が押し寄せているのだ。




<チェット・アトキンス・トリビュートのイベントや作品>

チェットが亡くなった2001年、チェットの影響を受けたギタリストが一同
に会し追悼コンサートを大々的にやる、ということはなかった。
トリビュート・アルバムも制作されなかった。


グレッチとチェットの協力関係60周年記念として、1時間半のドキュメン
リー番組「A Tribute to Chet Atkins」が制作された。
スティーヴ・ウォリナーが進行役で、ジョン・ノウルズ、ドイル・ダイクス
、デュアン・エディ、パット・バージソン、リチャード・スミスらがRCAの
スタジオBに集まり、チェットの思い出を語り、共演している。
(ウォリナーは他のチェット・トリビュート番組にも出演していた)



↑ジョン・ノウルズ(この人はナイロン弦ギター専門だが珍しくグレッチ
6120ナッシュビルを持っている)


2012年にカントリー・ミュージック・ホール・オブ・フェイムのメンバー
が集まり、チェットの功績を讃えるトリビュート・コンサートを行った。
ホスト役のジョン・ノウルズ、ミュリエル・アンダーソン、トム・ブレッ
シュ(マール・トラヴィスの息子)、ガイ・ヴァン・デューサーらが演奏。
約1時間半の特別番組として放送された。

また2012年にはスティーヴ・ウォリナー、トミー・エマニュエル、トム・
ブレッシュがそれぞれチェットのトリビュート・コンサートを行った。
毎年7月にナッシュビルではThe CAAS Conventionも開催されている。



↑左からリチャード・スミス、トミー・エマニュエル、ガイ・ヴァン・デュ
ーサー、パット・バージソン、ポール・ヤンデル。



つまり個々バラバラにやってる感じだ。トリビュート・アルバムも同じ。

ポール・ヤンデルが2003年に自主制作盤的なアルバム「One More Song」
を出したが、あまり面白味がない作品だった。
リック・フォスターが2005年に全曲ナイロン弦ギターで演奏したアルバム
「Remembrance of Chet Atkins and His Guitars」も地味だった。


トミー・エマニュエルの2004年のアルバム「Endless Road」では、チェッ
トと共作したChet's Rambleが聴ける。



↓トミー・エマニュエルのChet's Rambleが聴けます。
https://youtu.be/hClexU4bygE


このアルバムではチェット作 I Still Can't Say Goodbyeの弾き語りを始め
、チェットの十八番のWindy & Warm、Somewhere Over The Rainbow、
Struttin'をカヴァー。チェット愛あふれるアルバムになっている。


パット・バージソンがCountry Gentleman: A Tribute To Chet Atkins
を2007年に発表。上手いと思うが、本家チェットを聴いてた方がいい。



スティーヴ・ウォリナーは2009年に「My Tribute to Chet Atkins」を発表。
これは、なかなか良かった。(限定盤ジャケット)


↓スティーヴ・ウォリナーのJohn Henryが聴けます。
https://youtu.be/-XVBWUfJvoY





<チェット・アトキンスを次世代に伝える実力派のフォロワーズ>


トミー・エマニュエル
オーストラリアのギタリスト。1955年生まれで現在67歳。
サムピックを用いたチェット・アトキンス奏法などのフィンガーピッキング、
フラットピックと指を併用したハイブリッド・ピッキング奏法を多用する。
ギターのボディをタッピングする擬似パーカッション奏法、 速弾きやハーモ
ニクスなどの高度なテクニックの使い手である。

テレキャスターなどエレキギターも使用するが、メインはアコースティック
・ギターで、オーストラリアのギターメーカー、メイトンのEBG808TEを
愛用している。


↑ボディーを叩く奏法のためトップをが削られている。


晩年のチェットと親交が深く「間違いなく地球上で最高のギタリストの1人
と評され、チェット本人からCertified Guitar Player(C.G.P)の称号を
った数少ないギタリストの一人。
1997年にはアルバム「The Day Finger Pickers Took Over The World 」
チェットとの共演を果たす。(チェット最後の作品となってしまった)



チェット没後はチェット・アトキンス奏法を伝えるべく教則本・DVDを出版
する傍ら、ネットでチェットの演奏のTAB譜を公開。
チェット・フォロワーの第一人者と言っていいだろう。
スティーヴ・ウォリナー以外のチェット・フォロワーズたちとの交流にも
積極的で共演もしている




↑同じC.G.P.のジョン・ノウルズと。


ユーモアの溢れる性格で人気が高い。
2005年より頻繁に来日しコンサートやワークショップを開催しており、押尾
コータローらがゲスト出演している。

個人的にはこの人のボーカルやパシッという弦のアタック感が好きではない。
が、チェット・フォロワーのトップランナーであるのは事実。本当に上手い。


前述の「Endless Road」(2004)も名盤だが、フュージョン色が強い「The 
Journey」(1993)や「Can't Get Enough」(1996)も良かった。



「The Journey」はVilla Anitaでチェットが間奏を弾いている。
この共演がきっかけで「The Day Finger Pickers Took Over The World 」
を作ることになったのかもしれない。

「Can't Get Enough」はタイトル曲でラリー・カールトンと共演してる他、
ロベン・フォード、ネーザン・イーストなども参加してる。


↓アルバム「Can't Get Enough」収録曲のDrivetimeが聴けます。
https://youtu.be/sb2VwqLC8IY





スティーヴ・ウォリナー
1970年代終わり〜1980年代にかけてチェットのバック・バンドに在籍
ベース、ギターを担当。一番近くでチェットを支え続けた。
カントリーのギタリストだが、チェット・アトキンス奏法からフュージョン
系ギターまで弾ける、器用なプレイヤーである。1954年生まれで現在68歳。
チェットがCertified Guitar Player(C.G.P)と認めた一人である。
シンガー&ソングライターであり作曲力がある。声もいいし歌も上手い。




ウォリナーもチェット・アトキンス奏法の教則本・DVDを出版。
前述のようにトリビュート・アルバムを発表し、チェットを讃える特別番組
ではホスト役を務めたり、チェットの功績を伝える役割を果たしている
ジョン・ノウルズ、ドイル・ダイクス、パット・バージソンなど他のフィンガ
ーピッカーともパイプがある。

一つ残念なのはトミー・エマニュエルと違って、ウォリナーの活動がナッシ
ュビルに留まっている点だ。
これだけ多才でチェット直伝のテクニックを持つ人なのに惜しい気がする。
それとトミー・エマニュエルとスティーヴ・ウォリナーが一緒に何かをやる
ことが今まで一度もないのが不思議であり残念である。



↓1993年のアルバム「Drive」よりSailsが聴けます。後半、歌も披露。
(ジョン&ジョアンナ・ホールの曲。チェットもカヴァーした)





↓1996年のアルバム「No more Mr. Nice Guy」収録曲のBig Hero, Little 
Heroが聴けます。チェットが参加している。
https://youtu.be/3AuLgOAo-40

↓同アルバムからThe Theme。カントリーというよりフュージョン。
ギターは真ん中がスティーヴ・ウォリナー、右がラリー・カールトン。
https://youtu.be/avXE_Wz7JJg




↓2009年のアルバム「My Tribute to Chet Atkins」(初回生産のジャケット
)より「Producer's Medley」が聴けます。
チェットがプロデュースした他シンガーの曲のメドレーで、チェットはよく
コンサートで演奏していた。ウォリナーの演奏も温かみがあって味わい深い。
https://youtu.be/K3VPzEuxGJM





マルセル・ダディ
C.G.P.の一人、マルセル・ダディは既に他界している。
しかしダディは生前、チェット、ジェリー・リード、マール・トラヴィス
奏法を分かりやすく解説した教則ビデオを出版している。
ビデオ時代は日本語字幕が付いていたが、DVDは輸入盤だけになった。
ダディの英語はゆっくり喋ってくれるのでだいたい分かる。
選曲もいい。TAB譜も付いていた。
ギャロッピング奏法の教則映像作品としてはピカイチだと思う。
オベーションのアダマスを弾く優雅なダディを見るだけでも価値がある。
僕も昔、このビデオで何曲か覚えた。



マルセル・ダディはフランスのTV番組でも演奏しており、その映像が今
はYouTubeで見ることができる。
それも参考になるし、彼のテクニックは呆れるくらいすごい。
さすが、チェットが認めたC.G.P.だ。

↓マルセル・ダディのSaturday night Shuffleが視聴できます。
カントリー音楽番組「Nashville Now」の公開放送。
本場のナッシュビルで観客にこれだけ受けるのはすごいことだ。





ダディはフランスでカントリーを広めた立役者でもある。
アルバムを何枚か出しているが、大人数でのカントリー・フュージョン
みたいな感じで正直言って飽きる。

1989年に発売されたGuitar Legend Volume 1&2はダディがギター1本で
演奏しており、この方がギター弾きにとってはうれしい。
曲のほとんどがダディによるオリジナルである。
チェットやジェリー・リード、マール・トラヴィスをフランス流に解釈
すると、また一味違ってユニークだからおもしろい。
単なるコピー・ギタリストよりもいいと思う。惜しい人を亡くした。



フランスにはマルセル・ダディの後継者でジャン・フェリックス・ララー
というフィンガーピッキング・ギタリストがいる。
ナイロン弦のエレアコを使用し、もう少しジャズよりの演奏をする。
ダディと親しくコンサートやTV番組でも共演している。
また同じくチェットの流れを汲むミュリエル・アンダーソンとも共演盤
を発表している。


↓マルセル・ダディ&ジャン・フェリックス・ララーンのCannonball'sRag
が視聴できます。お見事!
https://youtu.be/7pG50Rp-x_4





ドイル・ダイクス
1954年生まれのフィンガーピッキング・ギタリスト。現在68歳。
チェット・アトキンス、マール・トラヴィスのスタイルを基本としながら、
ケルティック、カントリー、ブルース、ゴスペル、ジャズの影響も受け、
独自のスタイルを創りあげた。
1995年のデビュー・アルバム「Fingerstyle Guitar」は世界中のアコース
ィックギター・ファンを驚かせた。
チェットは「ドイル・ダイクスはフィンガー・ピッキング・ギタリストと
して今考えられる中でベストの1人だ。ミュージシャンとして、また人間
としての彼を心から愛して止まない」と最高の賛辞を送っている。




ドキュメンタリー番組「A Tribute to Chet Atkins」にも出演し、チェット
アトキンス、マール・トラヴィス奏法について解説をしていた。

ドイル・ダイクスはテイラーとエンドースメント契約をしているようで、
同社のギターをメインで使用している。
ジャンボサイズのカッタウェイが好みのようだ。
またギルド、ゴダンからもシグネチャーモデルが出ている。



↑ジェイムス・オルスンのカッタウェイも使用している。


2000年にメジャーレーベルBMGから「Gitarre 2000」を発表。
圧倒的なテクニックと音楽としての美しさ、聴きやすさ、心地よさを両立
させているところがすごいと思う。


↓「Gitarre 2000」収録曲、Girlが聴けます。
https://youtu.be/8zZ6Da4ho6k


ドイル・ダイクスは現在はナッシュヴィル在住でツアーやテイラー主催の
ギター・クリニックなど精力的な活動を行なっている。
ステージでの選曲や運びの巧さやユーモアのあるトークで観客を魅了。
2001年に来日しモリダイラ楽器主催フィンガーピッキング・デイに出演。
アコースティックギター・マガジンのインタビュー、押尾コータローの
ラジオ番組への出演で、日本での知名度・人気も上がっている。




ミュリエル・アンダーソン
クラシックのギタリストだが、チェットに師事しギャロッピング・スタ
イルも習得している。
小柄な女性だが、押弦の際は驚くくらいは指が伸び早退きを披露する。
全米フィンガーピッキングギター選手権で優勝した最初の女性である。


↓すごく美人に見える?愛嬌のある人です。
チェットも愛用したポール・マクギルのナイロン弦ギターを使用。




活動範囲は幅広く、異ジャンルの演奏家とも共演している。
25枚程度のCD/DVDを発表している。チェット奏法の教則本も出版。
ワークショップやコンサートにも出演。
10年以上前だが横浜の赤煉瓦倉庫で開催されたイベントに参加した。




↓ミュリエル・アンダーソンが弾くNola。この曲で優勝した。
https://youtu.be/jETsDdX3S2c



↓ミュリエル・アンダーソン&トミー・エマニュエルでEleanor Rigby。
彼女はハープギターの奏者でもある。小柄で子供みたいだがテクは一流。
https://youtu.be/8jTlaToBXcM






<その他のチェット・フォロワーズ>


ジョン・ノウルズ



チェットの「The First Nashville Guitar Quartet」(1979)に参加。
C.G.P.(Certified Guitar Player)の一人だが、現在81歳と最高齢。
ソロ・アルバムは1979年、2002年に出しただけと実にマイペース。
トミー・エマニュエルとの共演「Heart Strings」(2019)が最新作。
エマニュエルのレーベル、CGP Soundsから発売された。
これはなかなかいい。2人のC.G.P.のデュエットは安心して聴ける。




↓トミー・エマニュエル&ジョン・ノウルズによるCold, Cold Heart
(ハンク・ウィリアムズの名曲)が観れます。
トミー・エマニュエルが目立つ。ジョン・ノウルズって謙虚な人だ。
https://youtu.be/nGH4hp6CFog




ガイ・ヴァン・デューサー
ラグタイム・ジャズ、カントリーの技巧派ギタリスト。現在75歳。
ピアノのストライド奏法をギターの低音弦で行い、同時に高音弦で
メロディーとコードを弾くのを得意とする。
チェットの十八番の「Stars And Stripes Forever」はガイ・ヴァン・
デューサーの編曲に手を加えたもの。



↑長年コンビを組んでるクラリネット奏者のビリー・ノヴィックと。


↓ガイ・ヴァン・デューサーのStars And Stripes Forever。
チェットとは押弦のポジションが違う箇所が多い。
https://youtu.be/u3eBmcwl9h8




トミー・ジョーンズ
天賦の才能に恵まれたギタリストの一人。
10歳からTVに出演しチェット・アトキンス奏法を披露している。
その実力はチェットも認め、自らがプロデュースしCGP Recordsから
「Chet Atkins presents Tommy Jones」を発売したくらいだ。
「Tide Pool 」(1998)ではチェット、ラリー・カールトンと共演。
2002年にアルコール中毒のため惜しくも47歳の若さで亡くなった。




↓トミー・ジョーンズのOnly My Heartが観れます。
演奏の巧さはもちろん、作曲・編曲の才能もすばらしい。
アルバム「Tide Pool 」収録ヴァージョンではチェットが参加してる。
https://youtu.be/oSWWnVDcf1E




レニー・ブロー
フィンガーピッキング・スタイルのジャズ・ギタリスト。
理論派にして技巧派で超絶テクニックを駆使する。
若い頃は完全にチェット・スタイルだが、難解なジャズに傾倒。
チェットのハーモニクス奏法、ギャロッピング奏法を多用する。
「Standard Brands」(1981)でチェットと共演。
その3年後レニー・ブローは薬物中毒のため43歳で他界している。




↓レニー・ブロー&チェットの名演、You Needed Meが聴けます。
左がレニー・ブロー、右がチェット。最後のギャロッピングが最高。
この曲は「Lenny Breau Trio」(1980)に収録された。
https://youtu.be/lBaihLZHyqo





マーティン・テイラー
1956年生まれの英国人ジャズ・ギタリスト。現在66歳。
フィンガーピッキング・スタイルだが難解なコードやパッセージを
好んで使う。ジョー・パスが好きな人向き。MBEを受賞してる。
チェット・アトキンス奏法ではないが、影響を受けているという。
アルバム「Portraits」(1996)では3曲チェットと共演。
(他の曲は難解で聴いてて楽しくない)



↓マーティン・テイラーとチェットのHere, There and Everywhere
が聴けます。左がマーティン・テイラー、右がチェット。
https://youtu.be/ljAVVJj3ftY


↓超絶テクや速弾きを好む人はトミー・エマニュエル&マーティン・
テイラーの「The Colonel & The Governor」がいいかもしれない。
1曲目のI Won't Last a Day Without Youが聴けます。(僕は苦手)
https://youtu.be/s9TqiyfiBm4






トム・ブレッシュはマール・トラヴィスの息子。
トラヴィス・ピッキングの直系の継承者。2022年に74歳で他界。

ポール・ヤンデルは長年チェットの横で伴奏をした良き相棒である。
チェットの奏法もお手の物だが華がない。2011年76歳で他界。
Peavey T-60のボディーにストラトのネックを付けたPeaverはチェット
のお気に入りとなり、ギブソンに作らせたCGP Phasorの原型となる。
TVジョーンズのデュオ・トロン・ピックアップもヤンデルのアイディア。



↑チェットの横にはいつもポール・ヤンデルがいた。


パット・バージソンはナッシュビルを拠点に地道な活動をしている。
1961生まれで現在62歳。

英国のリチャード・スミスは少年時代にチェット本人の前でチェット
の曲を弾くなど、才能を見せていた。
チェットのコピーは完璧。オリジナリティーに欠ける。現在51歳。

上手なフィンガーピッカーは数多くいる。なかなか厳しい。
バスター・B・ジョーンズは本業だけでは生活できず、トラックの運転
手をやっている、と言っていた。(2009年に49歳で死亡)



こうしてチェット・フォロワーズを挙げてみると亡くなっている人が
多く、存命のギタリストのほとんどが還暦を過ぎている。
チェット・アトキンスという偉大なギタリストの演奏、演奏スタイル
は次世代に受け継がれていくんだろうか、と憂慮してしまう。

サブスクが主流になりつつある今日、こうした音楽はマイノリティー
となりますます聴かれなくなってしまうのかもしれない。



                       (写真: Gettyimages)