12. Day Tripper
ギター(ダブルトラキング)が左右から鳴るのは同じだがややセンター寄りに
改められパワー感が増した。
間奏の後、1:42辺りで左のリフが落ちるのが以前から不思議だったのだが、
今回のミックスでジョージがミスって4拍の裏を弾いていないのが確認できた。
ユニゾンで同じラインを弾くポールのベースが左からセンターへ。
これによってこの曲の売りであるリフがしっかり前に出て来る。
また左のベースが移動したことで同じく左のジョンのリズムギターが鮮明に。
ああ、Eを弾きながら時々7thの音を入れてるんだなあ、と分かった。
左のドラムは少しセンターに移動しビートが強くなった。
タンバリンが右なのは変わらないが歪みがなくなり硬質で抜ける音に。
従来は右だったボーカルがセンターに移動して聴きやすくなった。
同じく右のコーラスがセンターから右へと広がる。いい感じだ。
13. We Can Work It Out
以前は左にほとんどの楽器、右にボーカルとハーモニウムという極端な左右泣き
別れだった(Rubber Soulのミックスの特徴)。
今回は左にアコースティックギター、ベース、ドラム、タンバリンという定位は
踏襲しながらややセンターに寄せられ、右はハーモニウム、ボーカルはセンター
で聴きやすくなった。
それだけではない。
ポールのボーカルのダブルトラッキングの片方が右に定位し、センターと右から
聴こえるピーター・コビン方式が取られステレオ感が楽しめてうれしい。
ジョンが弾くハーモニウムは伸びやかな音で拡がり二音なのが分かるようになった。
余談だが一音ずつ別なトラック(一つはフェイドイン)に録音されたらしい。
14. Paperback Writer
これも劇的に変わったと思う。カッコイイ!
従来は左にギター、ドラム、タンバリン、右にベースとコーラス(歌い出しのみ
右と左)の分離が効きすぎで、せっかくのリフが遠くから聴こえ不満だった。
今回は歌い出しからハーモニーが左右に拡がり美しく響き渡る。
ポールのダブルトラックのボーカルはセンター寄りの左と右でステレオ感が出た。
ギター、ドラム、タンバリンはセンターに移動(おそらく同じトラックに一緒に
録音されたのだろう)。
そのせいで迫力が出た。リンゴのドラムは重くギターは力強い。
15. Yellow Submarine
まず従来。
アコースティックギター、ドラム、ベースが左でボーカル、コーラスは右の泣き別れ。
終盤のYellow Submarineのリフレインは左からも声が聴こえセンターに動く。
ティンパニーはセンター。
管楽器がセンター、波などの効果音がセンター〜やや左に配されていた。
1999年のYellow Submarine Songtrack版は別物と思うくらい大胆に変えられている。
それと比較するのもナンなのでパスして2015年版のレビューに移りたい。
アコースティックギターは左。
リンゴのボーカル、ドラム、ベースはどっしりセンターへ。
We all live in a yellow submarineのコーラスが両側からリンゴを囲む。
波の音は右、他の効果音も右と左に振り分けられる。
管楽器は左から右へマーチングバンドが動いてるのが想像できるようだ。
この曲も今回のミックスの勝ち〜♫
尚DVDの5.1だと波や声が後ろに回っておもしろいらしいが、残念ながら我が家は
サラウンドが楽しめる環境にない。
16. Eleanor Rigby
これも劇的に変わった。本当に(笑)
まず従来。Ah look at all the lonely people〜のボーカルは左右。
Eleanor Rigby〜で右のみになるが最初のEleaだけ左に残っている。
これは単純にミックス時にフェイダーを下げるのが遅れたためだろう。
All The Lonely People〜はセンターに聴こえるが左右でユニゾンで歌っている。
この頃ADTが導入されたので1つのトラックをずらしてるのだと思う。
最後に小さく聴こえるAh look at all the lonely people〜は左。
ストリングスはまとめてセンターに定位されていた。
で、今回。
Ah look at all the lonely people〜が左右なのは同じだがセンター寄りに。
Eleanor Rigby〜からセンターでしっかり歌う。
左chのEleaの取り残しもなし(笑)
All The Lonely People〜はセンター寄りだが左右のステレオ感も充分だ。
ストリングスの配置も大きく変わった。
左に第一バイオリン、第二バイオリン、センター右よりにビオラ、右にチェロ
とまるで弦楽四重奏がポールを囲むように伸びやかな音色を奏でている。
17. Penny Lane
従来はほとんどの楽器とボーカルがセンターに寄せられ、クラリネットとピッ
コロとオルガンが右、鐘は左、サビのand in my eyesで入るトランペットは
左右に振り分けられてた。
有名なピッコロ・トランペットの間奏は左だが終盤のオブリは左に移動。
2015年盤ではポールのピアノが左に定位されはっきり聴こえる。
peasure to know〜でセンター(と右からややずれて鳴る)他のピアノが聴
こえ、二台で弾いている(一台はジョンらしい)ことが初めて確認できた。
右からのオルガンは前よりはっきり弾聴こえる。
クラリネットとピッコロが右、鐘が左、サビのand in my eyesで入るトラン
ペットが左右なのは同じ。
間奏のピッコロ・トランペットはセンターで誇らし気に鳴り響く。
終盤もセンターだがエンディングのみ左へ。
センターはポールのボーカルとベース、ドラムと王道。
ベースは伸びやかに重く響く。
リンゴのハイハットの刻み方、スネアの入れ方は抜群のセンスだ。
ポールのボーカルはセンターで変わらず。
There beneath the blue suburban skiesのコーラスは左右に広がるよう
になった。
18. All You Need Is Love
ラ・マルセイユのイントロは右にトランペット、左にピアノの単音、セン
ターでドラムロール。
次に左からハプシコードとLove love loveのコーラス。右からチェロ。
ジョンのボーカルとベース、ドラムがセンター入るのがオリジナルのミックス。
流れるようなストリングスとAll You Need Is Love〜で入る管楽器は右〜
やや右に配されていた。
ジョージのギターソロはセンター。
All You Need Is Love〜でジョンのダブルトラックの片方のボーカルが左に
振られる。
ジョージとポールのコーラスは左。
終盤のポールのAll together nowはセンター。
1999年のYellow Submarine Songtrack版では劇的に変わる。
ラ・マルセイユのトランペットが左右中央に広がり響く。音量も大きくなる。
ピアノの単音は聴こえなくなった。
Love love loveのコーラスもセンターから左右に広がり音量も上がった。
ハプシコードの左、チェロの右は同じ。
ストリングスは左〜やや左へ。All You Need Is Loveの管楽器はやや右寄り。
All You Need Is Love〜でジョンのダブルトラックの片方のボーカルが左
からややずれて聴こえるのが顕著になり広がりが出た。
ジョージのギターソロ、終盤のポールのAll together nowはセンタで同じ。
そして2015年版「1」である。
ラ・マルセイユのトランペットが右、ピアノが左という定位はオリジナルと
同じだが、両方ともよりクリアーに聴こえる(特にピアノの単音)。
左からハプシコード、右からチェロという入り方もオリジナル準じているが、
Love love loveのコーラスは左右に広がるようになった。
ジョンのボーカルとベース、ドラム、間奏のギター、終盤のポールの掛け声
がセンターという定位もストリングスとAll You Need Is Love〜で入る
管楽器が右〜やや右に配されているのもオリジナルのミックスに忠実。
つまりオリジナルのミックスに敬意を表しあまり変えなかったということか。
個人的には1999年のピーター・コビンの激変ミックスが好みであるが。
◆全体的な音の傾向
オリジナルのミックスで極端に左右にふられていた楽器やボーカルの定位がセンター寄り
に改められ、不自然さがなくなり聴きやすくなったと思う。
ポールのベースとリンゴのドラムがどっしりセンターでかまえる王道の定位が多い。
ボーカルも基本的にはセンター。(他の定位とのバランスで右寄りの曲もある)
ダブルトラックの声を左右どちらかのチャンネルで小さめに鳴らすピーター・コビン方式
も復活した(個人的には好み)。
ギターは左右、センターと分けられ今までより何をやってるか鮮明に分かる。
ストリングスなどは左右から背後に広がるミックスで奥行き感も出た。
ポールのリッケンバッカー・ベースが太くずっしりと量感が増し伸びやかになり、ブン
ブンうねるベースラインの躍動感が出るようになった。
エレキギターの音は引き締まり音の輪郭が明確に、アコースティックギターの音はかなり
鮮明に生々しく響く。
リンゴのドラムはタムの音がしっかりし、シンバルの金属音が抜けるようになった。
時にうるさすぎたタンバリンなども音量、定位で調整されている。
ボーカルはクリアーでパワーアップしている。
左右どちらかかセンターで重なるように聴こえていたコーラスが、ボーカルを囲むよう
に左右に広がり歪み感が消えてますます美しく響くようになった。
以下、前半1〜11曲目の聴きどころ(個人的な所感)をまとめてみた。
1. Love Me Do
2. From Me To You
3. She Loves You
以上3曲はモノラル。
モノラルミックスしか残っていない(残念なことに元テープは誤って破棄してしまった)
She Loves Youはともかく、他2曲はステレオミックスも可能なはずだが2トラックの音源
ではバランスのいい定位が無理と判断したのだろう。
Love Me DoとFrom Me To Youはポールのベースがはっきり聴こえるようになった。
それにしても「1」なのにPleas Please Meが入ってないのは解せないなあ。
英国で初のNo.1ヒットだったんだよね?
4. I Want To Hold Your Hand
変わった!と最初思ったのだが、定位はあまりいじってないようだ。
変わったという印象はジョン、ジョージのギターが鮮明になったからかもしれない。
イントロ後にセンターから聴こえるボーカルが以前は唐突な感じだったが、音量配分の
せいか自然になった。
5. Can’t Buy Me Love
これは劇的に変わった。
今まで左だったベース、ドラム、アコギのリズムセクションがセンターで安定。
ジョージが刻むコードカッティングは右。
ポールのダブルトラックのボーカルが従来はセンターでモノラルで聴こえていたのが、
やや左寄りと右になった。
間奏前のギャーッ!というシャウトは左寄りと右で違うことが判明。
間奏のジョージのギターはセンターで左右に揺れ感がいい感じになった。
6. A Hard Day's Night
定位はあまり変えていない。
左からベース、リズムギター、ドラム。右にアコギ、間奏のピアノ(早回転)。
センターにボーカル。
しかし左のリズムギターと右からシャンシャン鳴るアコギの迫力が増した。
全開のハイハットは歪みなくシャープに、以前はうるさすぎたボンゴが抑えられた。
7. I Feel Fine
楽器の定位は基本的に同じ。
左のボーンというベースに押し出されるように右からジョンが弾くイントロが入る。
ちなみにこれはJ-160EのP-90ピックアップを通しての音である。
その間左から聴こえるスタジオ・ノイズが目立つようになった(こういうの好き)。
ジョージの間奏がセンターなのは同じだが左右に揺れすごくいい感じだ。
最後にジョンと同じリフを弾いて右からまたジョンだけに。ここがいいんだよね。
サビでのリンゴのリムショットがシャープになった。
ジョンのダブルトラックのボーカルはセンターと右に振り分けられ、ジョージと
ポールのコーラスはやや左。ハーモニーのほ拡がりを感じる。
8. Eight Days A Week
左にアコギ、リズムギター、ベース、ドラムが固まり右は手拍子とイントロのギター
のトレモロといういささか偏ったミックスは同じだが、以前よりセンターよりに定位
されたことで聴きやすくなった。
そのせいもあって各楽器の音がとても鮮明で聴き分けられる。
それからフェイドインの頭からわりと演奏がはっきり聴こえるようになった
ボーカルはセンターだがHold me love me….からセンターと右に。
Eight Days A Weekで左右に広がるミックスに変わった。
9. Ticket To Ride
これも楽器の定位は基本的に同じ。ボーカルはセンターのまま不動。
My baby don’t care….では右チャンネルのギターが何を弾いてるかも聴き取れる。
真ん中だったタンバリンがやや右に逃げ鈴やかに鳴るようになった。
10. Help!
左にベース、ドラム。右からジョンの12弦アコギ、ジョージがきざむエレキ。
ボーカルとコーラスはセンターという定位は変わらなかった。
が、歌い出しのHelp!のみコーラス(特にポールの声)は左から聴こえる。
どうせだったら掛け合いのコーラスも左右で拡がりを出して欲しかったと思う。
ジョンが弾くフラマスの12弦ギターの音が今までで一番よく聴こえる。
Won’t you please….でのジョージの下降オブリのステレオ感も気持ちいい。
ポールのベースの音像が明確。
リンゴのリムショット〜スネアは鋭角的でちょっと強すぎ?という印象。
11. Yesterday
この曲は今回のハイライトの一つと言っていいだろう。
ポールの声が実に美しく生々しい。ベルベットボイスと言われる所以が分かる。
サビのsomething wrong〜yesterdayの部分でダブルトラックがわずかに違うのまで
分かり興奮してしまう。
右から聴こえるアコギの音もすぐそこで弾いてるかのような臨場感がある。
エピフォンのテキサンを1音緩めるとこんな音なんだなあと感動した。
そして弦楽四重奏も生まれ変わったように美しく響く。
左に第一&第二バイオリン、ビオラ、右にチェロとという定位は変わっていない。
◆ビートルズのリマスターの歴史
初めにビートルズのこれまでのリマスターの経緯をさらっと説明したいと思う。
リマスターはその時代のテクノロジー、音のトレンドを反映してるからである。
そしてビートルズのリマスターは常にその時代のリマスターの先駆けだからだ。
まず1985〜1986年に全作品が初CD化された。
マスタリングはジョージ・マーティンによって行われている。
サンプリング周波数は44.1kHz、サンプリングレートは16bitのCD音質。
初期の4枚はモノラル、Help!以降はステレオ・ミックスであった。
A Hard Day’s Nightのみ音質の問題から若干ピッチが高くなっている。
左右泣き別れが激しいRubber Soulはややセンターよりに定位し直された。
(つまりRubber Soulに限ってはリミックスも行われたということだ)
1993年にはデジタル・リマスタリングされた青盤・赤盤とLive At BBCが発売。
1995〜1996年のAnthologyはリマスターではなく、できるだけ古い音源に遡っ
ての新たなミックスだがジョージ・マーティンが当時のアナログ機材で編集。
1999年のYellow Submarine Songtrackはピーター・コビンの手により大胆
なリミックス作業が行われ聴きなれた曲の印象ががらっと変わった。
(この後コビンはジョンのアルバムのリマスターも手がけている)
サンプリングレートは20bitだったと思う。
↑左右泣き別れのNowhere Manも生まれ変わった。
センター定位のボーカルをややずらして片チャンネルからも鳴らすのがコビン流。
(写真をクリックするとYouTubeで視聴できます)
2000年にベスト盤の「1」を発売。(今回の「1」と収録曲は同じ)
この後しばらく続く大音圧で音の強弱があまりない(ずっと強のままの)リマスタ
ーの先駆けとなった。
確かここから24bit/96kHzで取り込んでCDに落とし込むようになったと思う。
(音がよりきめ細かくなって表現力が増した、ということだ)
2003年にはLet It Be…Nakedが発売。
ポールが不満を抱いていたフィル・スペクターによる厚化粧のLet It Beを選曲〜
テイクの選択からやり直し、編集前のマルチトラックから当初のコンセプト「音
を重ねない」素の音でリミックスされた。
素顔とはいえ複数テイクのいいとこ取りの切貼り編集であることからノーメイク
の整形美人という評価もある。
2006年にシルク・ドゥ・ソレイユのサウンドトラック「Love」を発表。
ジャイルズ・マーティンの手により楽曲は分解され再構築され生まれ変わった。
↑地味目のThe Word、What You're Doing もカッコよくなって嬉しかった。
(写真をクリックするとYouTubeで視聴できます)
2009年には待望の全作品リマスター化。
初期4枚も含めすべてステレオミックスで別にモノラルミックスのボックスも出た。
(ホワイトアルバムまでのモノラルミックスが作られたアルバムとシングル曲)
2000年の「1」とは逆に音圧は抑えられ、艶やかで温かみのある音になった。
そして今回の「1」は「Love」を手がけたジャイルズ・マーティンによってオリジ
ナルとは大きく異なる大胆なリミックスが行われている。
◆2015年版「1」のリマスターは何が違うか?
まずオリジナルのミックスをリマスタリングしたのではなく、編集前のトラック
まで遡ってリミックスしてある、というのが大きなポイントだ。
その際、オリジナルとは違う新しい解釈でリミックスが行われている。
その点は1999年のYellow Submarine Songtrackと似てるもしれないがYellow…
ほどアヴァンギャルドではなく、オリジナルを長年聴き込んだ人も違和感ない
はずだ。
一言で言うと「1」は曲ごとに何が主体なのか、何を聴かせたいかが伝わって来る
ミックスだと思う。
そして聴きやすい。言葉を変えると今の時代でも現役と思える定位になっている。
それはビートルズの楽曲や演奏自体はいつまでも新鮮だが、オーディオマテリアル
としては古さを禁じ得ないからだ。
ビートルズの音源はほとんど4トラックのレコーダーで録音され限りがあった。
録音済みの複数トラックを1つのにまとめて録音し空きトラックを作ったとしても
(リダクション、バウンス、ピンポンと言われる方法)1つのトラックにギターと
ベースとドラムが入ってて分離できない、ということも多い。
マルチトラックでドラムだけで5本もマイクを立てるのが当たり前の今とは違う。
その制約下でボーカル、楽器を定位させるのは一苦労だったはずだ。
聴き手のオーディオ環境の問題もある。
当時はまだステレオシステムが普及していなくレコードプレーヤーが一般的だった。
またステレオとはいえ一体型が主流であまりステレオ感が味わえない。
そういう人たちにステレオミックスのレコードを聴いてもらうことが前提なのだ。
同じ理由からEMIではモノラルミックスがメインと考えられていた。
モノラルミックスには時間をかけビートルズのメンバーも立ち会っているが、ステ
レオミックスは後回しでビートルズも関与していない。
(ステレオミックスのみになったのはAbbey Road、Let It Beで、シングル盤は
Get Back以降である)
↑アビーロード第2スタジオのコントロールルームとTG12345 コンソール
さらに1年にアルバム2枚、シングル5〜7枚という過密スケジュールである。
(1966年まではライブもこなしていた)
編集にじっくり時間をかけられず雑になってしまった面も多々あったはずだ。
(特にステレオミックスにおいては)
あの時代はあれでよかったけど、改めてビートルズを「今の音」で聴きたい。
そんなニーズに応えるのが「1」ではないかと思う。
◆2015年版「1」のリマスターの音
音質については、とにかくめちゃくちゃクリアーですよ、と言いたい。
2003年のLet It Be…Nakedも2009年の全作品リマスターも音はすばらしかった。
Nakedはすぐ側で演奏しているような臨場感があったし、あれ?ジョンのギター
ってモコモコかと思ってたけどこんなにブライトだったの?と印象が変わった。
2009年リマスターも今まで引っ込んでた音までしっかり聴こえて驚いたし、
ボーカルは艶やかでギター(特にエレキ)の音が力強く生々しかった。
ではどこが違うか?というと「1」はクリアーすぎるくらいクリアーだ。
特にボーカルはパワーアップした印象。
エフェクトをかけたのか?と思うくらいきりっと締まっている。
スピーカーで流すとボーカルが強すぎなきらいがあるけど、ヘッドホンで聴くと
ちょうどいい。
(これは再生装置にもよるので何とも言えないが)
エレキの音は芯が太く音像がはっきりして、12弦やアコギのギターが生々しく
ベースはどっしり伸びやか、ストリングスはふくよかで広がりを感じる。
これは各楽器の定位のさせ方を変えたことも大きい。
↑2015年版のPenny laneはパワーアップしている。
(写真はCD+DVD Audioのセット。クリックするとYouTubeで視聴できます)
2009年のリマスターはあくまでも1963〜1970年のオリジナルのミックスを使っ
て当時アナログの最高の機材でレコードを聴いていた音に近づける、というのが
使命だったが、今回のは新時代のリミックスであり音創りである。
個人的には今回の「1」はメリハリが効きすぎてずっと聴いてると疲れるかも?
2009年リマスターの方が安心して聴けるような気もする。
でも新しいリミックスは大歓迎だ。生きててよかった〜とつくづく思う(笑)
さあ、こうなると欲が出てきてしまう。
ぜひ全アルバム、リミックスしてもらいたい。
左右泣き別れのRubber Soulを聴きやすくしてくれないかな。
Abbey Roadはどう料理するんだろう?
「リマスターするたびに、バンドの演奏力が上がって聞こえるっていうのがすごい
ですよね。粗が目立つんじゃなく」と友人が言ってたが、まったく同感だ。
次回は<リマスターCDのハイライト>を書く予定です。
To be continued….
来ましたよー!ビートルズの「1+」!
全世界同時発売日の6日にちゃんと届きました (^_^)
僕が買ったのは2DVD+1CDのデラックス版。輸入盤で¥5,175と値段も◎。
ビートルズの歴代No.1ヒット曲を収めたCDの最新リマスターとビデオクリップ集
をセットにしたものである。
ビデオクリップ集は1995年のAnthologyプロジェクトの際、ジョージ・マーティン
がいずれ何らかの形で出したいと言っていたが、20年も待たされたことになる。
しかし、こうして日の目を見ることになってとてもうれしい。
さっそくその日にさらっと2枚のDVDを見てみた。
35mmのフィルムからスキャンした映像を一枚一枚レストア(褪せた色を復元して
ノイズを消すという作業)したそうで、画像の鮮明さは想像の域を超えていた。
特にカラー・フィルムで撮影されたクリップは細部までくっきり。
4人の顔の吹き出物まで分かって、みんなけっこう肌が荒れてたんだなあ、忙し
すぎたんだろうなあと妙に感心してしまった(笑)
白人特有の肌が部分的にピンクに染まってるのまで分かる。
特にPaperback Writerの庭園ロケ篇は、赤い薔薇と深い緑が美しく印象的。
ポールの前歯が欠けているのもしっかり見える。
(バイクでこけたためらしい。ヒゲはそれを隠すため生やし始めたそうだ)
I Feel Fine、We Can Work It Out、Paperback Writer、Hello Goodbye、
Hey Jude は複数あるヴァージョン違いもめでたく収録。
Hello GoodbyeはSgt.Peppersのジャケットで着てるカラフルなミリタリースーツ
で演奏しているもの、普段着で演奏しているもの、演奏シーンがあまりなくてジョン
がノリノリで踊っているもの、の3ヴァージョン全てが見られる。
Hey Judeはデヴィッド・フロスト・ショー出演時のもの(ボーカルのみ生)だが、
本編にテイク1、ボーナス・ディスクにテイク2が収められている。
紹介された後ジョンがエルヴィスのIt’s Now Or Neverを歌い出し、フロストがう
んざりした顔をしているのが笑える。
Don’t Let Me Downは映画「Let It Be」の屋上での演奏シーン。
Let It Be…Nakedに収録されたテイクでシングル盤のテイクとは異なる。
ジョージとポールが笑ってるシーンがあるが、ジョンが歌詞を忘れてごまかして
いいかげんなことを歌ってるため。
音声はこの部分だけ他のテイクに差し替えられてるのでなぜ笑ってるか?だ。
Long And Winding Roadも映画のシーンでNakedに収録されたテイク。
Let It Beは映画のシーンにシングル盤ヴァージョンの音をシンクロせたもの。
最後のヴァースでのポールのピアノのミスタッチもそのまま。
Get Backも屋上シーンにシングル盤ヴァージョンの音を合体。
Let It BeとGet Backは映像と音声が違うテイクなのにほとんど違和感を感じない。
曲が完成に近づくとテンポや歌い回しも固まってくるんだなあと改めて感心した。
後から製作されたWords Of Loveも楽しいし、Loveでジャイルズ・マーティンが
大胆なミックスを施したWithin Without You/Tomorrow Never Knowsの合体曲
もトリップ感が出ててカッコよかった。
が、ゲームのアニメかよ?と言いたくなるCome Togetherはいただけない。
Abbey Roadのレコーディング風景やジャケット写真の撮影風景、最後のフォト・
セッションでスライドショーにした方がよっぽどよかったのに。
さて、音だがジャイルズ・マーティンによって新たなミックスが施されているので、
聴いていて今までとはだいぶ印象が変わる。
さらにDVDとCDは違うミックスのようだ。
DVDはステレオ・ミックス、5.1chドルビー・デジタル/DTS-HDサラウンド・
ミックスを選ぶことができる。
AQUASの32inchの貧弱なスピーカーで聴いてたのであまり分からなかったが、
あれ?違うぞ、と思った箇所もけっこうあった。
顕著な所ではEight Day’s A Weekのイントロがフェイドインではなく最初から
しっかりギターとドラムの音が聴こえる。
Hey, Bull Dogの間奏はエフェクトが弱くなって単音がはっきり聴こえる。
Real Loveではイントロ、曲間でエレキでもコードを刻んでるのが聴こえ、さらに
ジョージのオブリも少し変えられているようだ。
尚、テレビ局のスタジオ・ライブの映像はその時の音源がそのまま使われている。
A Hard Day’s Nightは1965年パリのオランピア劇場でのライブである。
Revolutionはちゃんとビデオクリップ用の音源(ボーカルのみ別テイク、シュビ
ドゥバ♫の掛け合いコーラス、途中ポールがハモる)がちゃんと収録された。
今回はビデオクリップ集、特にボーナス・ディスクがお目当てでCDの方は2000年
リリースの音質向上でしょ?別になくてもいいや、と思っていたのだが。。。。
CDを聴いてみて考えを改めた。
2000年の「1」とは曲構成は同じなれど音はまったく別物なのだ。
そして2009年の全作品リマスターとも。これはうれしい誤算である。
CDの方のレポートはまた改めて書きたいと思う。
To be continued….
突然ですがクイズです。
ベッツィ&クリスってどっちがベッツイでどっちがクリスなの?
クリスじゃない方がベッツィでベッツィじゃない方がクリス。
そーゆーガキみたいな答えはやめましょう(笑)
僕はいまだに分らない。知ってる方、教えてください。
最初はかわいい方がクリスで、大柄でややおばちゃんっぽくてギターを弾いて
いたのがベッツィだと思い込んでたけど、逆のような気がする。。。。違う?
ついでに言うと水戸黄門の助さん角さんも僕にはどっちがどっちか分らない。
シモンズだったら分るんだけどなあ。
ま、いっか。二人の区別がつかないまま話を進めます(笑)
ベッツィ&クリスはデビュー曲「白い色は恋人の色」(1969)を大ヒットさせた
ハワイ州出身のベッツィとアイダホ州出身のクリスによるフォークデュオ。
透明感のある柔らかく美しいハーモニーと外国人の女性がていねいに歌う日本語
が健気で印象的だった。
むしろ外国人だからこそ言葉を一つずつ発音していたのかもしれない。
かつて加藤和彦が「日本語の歌詞を英語みたいに崩して歌うのは大嫌い」と
言っていたことがある。
せっかく美しい言葉なんだからしっかり美しく歌ってほしい。同感だ。
北山修の素直な詩と加藤和彦の美しいメロディーを外国人女性がていねいな発音
で歌うのは、もしかしたらその辺の意図もあったのかもしれない。
それはともかくベッツィ&クリスの成功は加藤和彦あってこそだと思う。
↑ジャケット写真をクリックするとYouTubeで聴けます。
余談ではあるが、昔FM東京で放送していた「小室等の音楽夜話」という月〜金夜
の帯番組に関わったことがある。
番組何回目だったかの記念で今までのゲストを呼んでライブをやることになった。
場所は三軒茶屋にある昭和女子大の人見記念講堂。
クラシックのホールでポッピュラー音楽での使用許可は初めてだったらしい。
そのオープニングが加藤和彦だった。
ハンチングを小粋に被り加藤和彦はスタスタと現れて、ボサノヴァ・アレンジの
「白い色は恋人の色」をD-45一本で弾き語りで披露した。
PUではなくマイクで拾ったD-45の生鳴りの凄さと加藤和彦のよく通るきれいな声、
アレンジの上手さに圧倒され、その後の出演者のことは全く憶えていない。
加藤和彦の手元を見ていたが、Cmaj7→Dm7で「恋人の色〜♪」の所はDm7(♭5)
→G7でCmaj7に戻るというコード進行だった。
これを聴いて改めてこの曲の素晴らしさに感動したものである。
その後も加藤和彦がセルフカバーしているのをテレビで何度か見たが、ボサノヴァ
・アレンジの「白い色は恋人の色」はあの時が最初で最後だった。
「白い色は恋人の色」は名曲中の名曲である。
同じく北山修・加藤和彦コンビによる2枚目のシングル曲「花のように」も地味
ながらとても素敵な曲だと僕は思う。
より繊細で、儚げな感じで。そこに惹かれるのかもしれない。
↑ジャケット写真をクリックするとYouTubeで聴けます。