2024年4月20日土曜日

ベーシストについて語ろう(2)最も偉大なベーシスト21〜50位。

Consequence「最も偉大なベーシスト100人」の2回目。
今回は21〜50位と、その中で知ってる人について述べようと思う。



21位 Geezer Butler
22位 Victor Wooten
23位 Jack Bruce
24位 Donald “Duck” Dunn
25位 Kim Gordon
26位 Chris Squire
27位 Cachao
28位 Paul Simonon
29位 Ron Carter
30位 Lemmy Kilmister



23位のジャック・ブルースはエリック・クラプトン、ジンジャー・ベイカーと
共にパワー・トリオ、クリームを結成。
ジャック・ブルースはベース、ボーカル、ブルースハープ、作曲を担当した。
クリームはジャズの即興性を加えた新しいブルース・ロックで人気を博す。




クリームの特徴はインプロヴィゼイション(即興奏)を中核に据えていた点だ。
多くの楽曲で、3人がお互いに触発しながら即興的に演奏をしていくインター
プレイが繰り広げられ、1曲の演奏時間が15分を超えることも少なくない。

ジャック・ブルースの演奏リズム楽器としての役割を逸脱し、自在にアドリブ
でフレーズを構築していく
アグレッシヴな演奏はリードベースとでも言うべきスタイルであった。
ティム・ボガードやジョン・エントウィッスル(ザ・フー)との違いは、ジャ
ック・ブルースのフレージングにジャズやクラシックの要素が感じられる点だ。
チェロを学び、ジャズバンドに在籍していた彼のバックグラウンド所以だろう。


インプロヴィゼイションはキーとなるコードだけが定められ、ブルーノート・
スケールとペンタトニック・スケールの組み合わせで自在に展開する。
多くの場合コード進行は無視され、演奏は延々と続いた。
ヴァースやコーラスに戻る時は、アイコンタクトやサインが交わされていた。
そのためスタジオ録音よりも、ライヴ演奏でクリームの真骨頂が発揮される




ジャック・ブルースといえばギブソンEB-3、いわゆるSGベースだ。
ソリッドボディでフロントにハムバッカー、リアにはミニ・ハムバッカーと
2基ピックアップを搭載。中低音域に強い特徴がある。
30.5インチというショートスケール(フェンダーは34インチ)で、テンション
がゆるいため、サステインのある温かみのあるサウンドが得られた。
アンプはマーシャルを使用。

アタックが強くほぼ人差し指のワンフィンガー奏法が大きな特徴となっている。
ピッキングの位置もネック寄りが多く、独特の太いサウンドの秘密のようだ。
クラプトンは「ジャックには圧倒されっぱなしだった」と語っている。

ローリングストーン誌の「史上最高のベーシスト50選」では第6位である。
そっちの方が正当な評価だと僕は思うが。




24位のドナルド・ダック・ダンはジェームス・ジェマーソンと並びソウル、
R&Bの伝説的ベースプレイヤーとして有名。
ベースプレイヤー誌の「史上最も偉大な100人のベーシスト」において40位、
ローリングストーン誌の「史上最高のベーシスト50選」で15位に選ばれている。




1960年代はスタックス・レコードの専属プレイヤーとして、オーティス・レデ
ィング、サム&デイブ、ウィルソン・ピケット、アイザック・ヘイズ、アルバー
ト・キングなどのレコーディングやツアーをサポート。
またブッカー・T&ザ・MG'sの一員として活躍した。
ギターのスティーヴ・クロッパーとはメンフィスで小学生の時の旧友である。

1970年代にはロッド・スチュワートやリヴォン・ヘルム、レオン・ラッセルら
のセッション、ブルース・ブラザーズ・バンドに参加。
1980年の映画「ブルース・ブラザース」ではダンの演奏してる姿が見れる

1983〜1985年にはエリック・クラプトンのバンドでレコーディング、ツアー
に参加する。
1992年にボブ・ディラン30周年記念コンサートでは、ブッカー・T&ザ・
MG'sとしてハウスバンドを務めた。




ドナルド・ダック・ダンのベースはどっしりとした力強さが特徴だ。
ペンタトニックを多用したシンプルな演奏であり、耳に残るフレーズが多い。
シンコペーションをうまく活かし、独特なドライブ感を生み出している。
指弾きによる低域での演奏が多いが、音の粒立ちがよい。

1958年製と1966年製プレシジョンベースを愛用。アンプはアンペグを使用。




29位のロン・カーターはあまりにも有名なジャズ・ベース奏者。
音楽学校卒でコントラバス奏者を目指していたが、白人オーケストラへの入団
は拒否され、ジャズ・ベーシストとして活動するようになる。
1960年代モード・ジャズを模索していたマイルス・デイヴィスに抜擢される。
1970年代にはV.S.O.P.クインテット、グレイト・ジャズ・トリオに参加。
(1978年のライヴ・アンダー・ザ・スカイでロン・カーターを生で見た)




トミー・フラナガン、ローランド・ハナ、、ハンク・ジョーンズ、ジム・ホール
、ハービー・ハンコック、ヒューバート・ロウズ、アントニオ・カルロス・ジョ
ビンなど数多くの名手たちと共演する。

ピッコロ・ベースを開発し、ソロ楽器としてのベースの可能性を追求した功績
も大きい。



31位 Mike Watt
32位 Thundercat
33位 Billy Sheehan
34位 Ray Brown
35位 Rhonda Smith
36位 John McVie
37位 Mike Mills
38位 Louis Johnson
39位 John Cale
40位 John Myung



34位のレイ・ブラウンはロン・カーターより一世代前、スウィング期、ビバ
ップ期のジャズ・ベース奏者。的確な演奏で知られる。
ディジー・ガレスピー・バンド、モダン・ジャズ・カルテット、オスカー・
ピーターソン・トリオで活躍。
ソニー・ロリンズ、デューク・エリントン、エルヴィン・ジョーンズと共演。
1970年年代にローリンド・アルメイダらとL.A.フォアを結成している。




38位のルイス・ジョンソンは兄ジョージと共にブラザーズ・ジョンソンとして
活躍した。(ジョージはギター、ルイスはベース担当)




クインシー・ジョーンズの秘蔵っ子と言われ、彼がプロデュースする数々のヒ
ット・アルバムのレコーディングに参加しベースを弾いた。
マイケル・ジャクソンの「Off The Wall」「Thriller」はその代表例である。

ルイス・ジョンソンのベースの特徴は、その驚異的なテクニックを駆使したダイ
なミックなスラップベース(日本ではチョッパーベースと言われた)にある。
超高速で親指や手のひらを叩きつけるように弦を弾いたりミュートさせる独特
の奏法は、バリバリと雷鳴のようなサウンドであることから、サンダー・サム
(雷の親指)とあだ名がついた。


↓ブラザーズ・ジョンソンの「Stomp!」2'20"〜ベース・ソロが聴きどころ。
https://youtu.be/tPBDMihPRJA?si=iE9ZloqpTtT2HfLT






レオ・フェンダーがルイス・ジョンソンのために制作したミュージックマン・
スティングレー・ベースは中高域が強化され、スラップ奏法によるアタック音の
強いパーカッシブなサウンドを可能にしている。


↓アール・クルーの「Dance With Me」1'00"〜でもルイスのフィルインが聴ける。
https://youtu.be/ZZ3ZHkOrTVI?si=uO3czkMSMXqO8Y_M



尚、パトリース・ラッシェンの「Forget Me Nots」のスラップベースもルイス・
ジョンソンと思われがちだが、奏者はフレディ・ワシントンである。

後藤次利はルイス・ジョンソンを耳コピしてスラップ奏法を覚えたそうだ。
日本では初めてで「チョッパーベース」と呼ばれるようになった。
ロンドンっ子がサディスティック・ミカ・バンド公演で驚いたのは、曲ではなく、
後藤次利のスラップベース(英国では馴染みがなかった)だったという。





41位 Marcus Miller
42位 Roger Waters
43位 Anthony Jackson
44位 Simon Gallup
45位 Kim Deal
46位 Greg Lake
47位 Bobby Valentin
48位 Tim Commerford
49位 Bill Wyman
50位 Dee Dee Ramone



41位のマーカス・ミラーは1980年代に売れっ子スタジオ・ミュージシャンと
して活躍したベーシスト、ソングライター、プロデューサーである。
ジェームス・ジェマーソン、ラリー・グラハム、ジャコ・パストリアス、スタン
リー・クラークら先人ベーシストの演奏をコピーしながら技術を磨く。




グローヴァー・ワシントンJr.、ドナルド・フェイゲン、ブレッカー・ブラザーズ
、渡辺香津美、 渡辺貞夫などのレコーディングに参加。
マイルス・デイヴィスの復帰にもベーシスト、プロデュースとして貢献。
プロデューサーとしての実力も認められる傍ら、マイケル・ジャクソン、マラ
イア・キャリー、ビヨンセのレコーディングにベーシストとして参加している。

1977年製フェンダー・ジャズベースにアクティブ回路が搭載されている。
ミュージックマンのフレットレス、サドウスキーの5弦ベースも使用している。
ベースアンプのカスタマイズ、マルチ・エフェクター、シグネチュア仕様の弦
、など機材へのこだわりが強い。
レコーディングではアンプを使用せず、ベースをDI経由でミキシングコンソール
にインプットすることが多いという。




42位のロジャー・ウォーターズはピンクフロイドのベーシストであり、作詞・
作曲など創作面の中心的存在、ピンクフロイドの頭脳とも言われる。
非常に気難しい性格(ピンクフロイドはほぼ全員)で知られており、音楽に
関しては偏執的なまでのこだわりを見せる完璧主義者だった。





極めて重要な役割を果たしているにも関わらず、ウォーターズのベーシスト、
シンガーとしてのイメージ、バンドの演奏における存在感は希薄である。
アルバム制作でウォーターズがイニシアチブを取りコンセプトを作っていても、
ライブにおいてサウンド面の「フロイドらしさ」を一手に掌握しているのは
デヴィッド・ギルモアであった。

ロジャー・ウォーターズはフェンダー・ジャズベース、プレシジョンベースを
使用し、ピック弾きを主体としたオーソドックスな演奏を行う。
アンプはハイワットやWEM。

ルート、5度、オクターブを上下するベースラインで、分かりやすいっちゃー
分かりやすい(笑) 1小節に白玉1個みたいな入れ方もよくする。
しかしブート盤を聴くと、意外と自由闊達に弾く曲者ベーシストだったりする。

思うに、完璧主義のウォーターズは作品として残すスタジオ盤ではプレイヤー
として主張せずプロデューサーとしてアンサンブルを創ることに専念する。
一方ライブ演奏では、ベーシストとして遊んでみるという方針なのだろう。




ウォーターズ脱退後のピンクフロイドはギルモア・バンドになってしまった。
独特の翳が無くなり、フラットな光に見えてしまうのはなぜか?
創り出す世界観もそうだが、技巧派ではないけど曲者の(病みつきになる)
ロジャー・ウォーターズのベースがないピンクフロイドは面白くない




43位のアンソニー・ジャクソンは売れっ子セッション・ベーシスト。
一流アーティストたちから絶大なる支持を受け、ファーストコール・ミュージ
シャン(レコーディングやライブの人選で最初に声がかかる)として知られる。
ジェームス・ジェマーソンの影響でベースを演奏するようになったそうだ。

対応ジャンルも幅広く、ポップス、ロック、フュージョン、ジャズまでこなす。
どのジャンルにおいてもトップレベルのクオリティの演奏を提供できる。

リー・リトナー&ジェントル・ソウツ、アル・ディ・メオラ、アール・クルー、
渡辺貞夫、渡辺香津美、チャカ・カーン、ロバータ・フラック、クインシー・
ジョーンズ、スティーリーダン、ドナルド・フェイゲンなどの作品で名演を
聴くことができる。




なぜこれほどまでに信頼されているのだろうか。
第一に挙げられるのは抜群の「安定感」
他のプレイヤーが安心してプレイできる、という点がやはり大きいだろう。

彼がいるだけで、そのセッションに重厚な独特のグルーヴが生まれる。
それは踊りたくなるファンキーな黒人のグルーヴとは全く違う。
どっしりとした音圧でうねる、味わい深いベースラインだ。

スラップやハーモニクスなど、派手なテクニックやギミックは使わない。
本当の意味でのベースならではの、ベースらしいプレイを聴かせてくれる。

スラップ全盛期にも関わらず、時代の流れに迎合せず自分流を押し通した。
素晴らしいベースマンである。だからこそ孤高なスタイルが築かれたのだ。

「安定感」だけではない。一転して「緊張感」に転じることもある。
ここぞというタイミングでスリリングなフィルが入るのもまた魅力だ。


↓アール・クルー&の「Good Time Charlie's Got The Blues」
左から聴こえるギターはチェット・アトキンス。
アンソニー・ジャクソンのベースを聴いてください。特に2'37"のフィル。
https://youtu.be/BV2VoQ8PQ08?si=uUsqaRYLdz7JB_SQ





演奏スタイルは親指、人差し指と中指のツーフィンガー。薬指も使う。
必ず座って演奏するのが特徴。
音色は低音でもブライトで輪郭がはっきりしている。
それでいて「ずっしり」感がある。

フェンダー・ジャズベースを使用していたが、フォデラ特注6弦ベース(コン
トラバスギター)を使用するようになる。弦もフォデラ製で頻繁に交換。
アンプ、エフェクター、シールド、DIボックスの開発など、常により良い音
を出すための努力をしている。
本来ならもっと上位にランクインされるべきベーシストである。




46位のグレッグ・レイクはキング・クリムゾン、ELPのベーシスト。
キーボード、ベース、ドラムスのトリオ編成のELPにおいては、ベースが
ギターの役割を務めることもあった。
しかもグレッグ・レイクは歌いながらベースを弾くことができた。




ロック的な奏法とジャズ風のベース・ランニングとを使い分けている。
ピック弾きでオルタネイト・ピッキングの名手であり、ベンベンベケベケ
とエッジの効いたブライトな音を出していた。
フェンダー・ジャズベースを使用。アンプはハイワット。




49位のビル・ワイマンはストーンズの寡黙なベーシスト。
ベースソロや派手なフレーズとは無縁だったが、チャーリーと共に堅実な
リズムセクションの役を担っていた。




グループの主導権がミックとキースに握られると、ビル・ワイマンの立場は
軽んじられる。
Sympathy for the Devil、Jumpin' Jack Flashのベースはキースが弾いた。
ビルはコンサートでは難なくそれを再現している。

フラマス5-150スター・ベース(ホロウボディー)、フェンダー・ムスタング
・ベース、ダン・アームストロング・プロトタイプ・ベースを使用していた。
ネックを垂直に近い角度まで立てて構える姿が印象的である。

でも、偉大なベーシストなのかなー。。。


<続く>


<参考資料:ベース博士、零細社長のブログレッシブ日記、ベースマガジン、
ベーススレまとめwiki、ギタコン(ギターコンシェルジュ)、Wikipedia、
ギターベース機材情報まとめ、ミュージックライフ・クラブ、YouTube、
Rolingstone Japan、amass、他>

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