2022年12月7日水曜日

「リボルバー」2022リミックスを深掘りしてみる(4)




 <ジョージがリボルバーで使用したギター>

ジョージはこのアルバムで初めて1964年製ギブソンSGを使用している。(1)
ファズを併用しトレブリーでディストーションのかかった音を出している。
Paperback Writer、 Rain、Taxman、She Said She Saidの切れ味鋭い音は、
このSGではないかと思われる。




1962年製フェンダー・ストラトキャスターはI Want To Tell Youで使用
ポールの薦めでジョンとお揃いで購入したエピフォン・カジノ(2)どの曲で
使用したのか不明。

また前年のTcket To Rideのプロモ・ビデオでギブソンES-345を弾いてるのが
確認できるが、リボルバーのレコーディングでは使用してないと思われる。




グレッチのカントリージェントルマン、テネシアン、リッケンバッカー360/12
など初期ビートル・サウンドの要であったギターは使わなくなった

ジョージは「グレッチとヴォックスだけじゃないとやっと気づいた」「グレ
ッチとヴォックスの組み合わせはちゃちだ」とインタビューで答えている。




リボルバー・セッションでジョージはベースも担当した。(3)
(Good Day Sunshine、She Said She Saidがそうだと思われる)

BURNSというロンドンのメーカーが1964年に発売したNU-SONICベース
バスウッドのボディーで軽量。30インチのショートスケールでナロウネック。
ギタリストのジョージでも難なく弾きやすかったと思われる。






<ジョンがリボルバーで使用したギター>

ラバーソウルではアコースティックギターを使用した曲が多く、ジョンと
ジョージはギブソンJ-160Eとフラマスの12弦ギター、クラシカルギター。
ポールはエピフォン・テキサンを弾いていた。

しかしリボルバーではアコースティックは鳴りを潜め、I'm Only Sleeping、
Yellow Submarineの2曲でジョンがJ-160Eを弾いただけである。




ジョンは1965年製エピフォン・カジノ(2)を使用
カジノはジョンのメイン・ギターとして長く愛用され、後に塗装を剥がされ
ゲット・バック、アビイロードでも弾いている。

Paperback Writerではグレッチ6120を弾いている
オレンジ色が目を引くこのギターはチェット・アトキンスのシグネチャー・
モデルであるが、コードが美しく響くためボーカル主体のロカビリー・ギタ
リストにも愛用された。




ジョンが好きだったエディ・コクランもその一人で、6120を手に入れたのは
そのせいかもしれない。
しかしエディ・コクランの6120はフロントPUをP-90に交換してあった。
だからジョンの望む音は得られなかったのでは?その後は使用していない。(4)




<ポールがリボルバーで使用したベースとギター>

ラバーソウルに引き続きリッケンバッカー4001Sを使用
リボルバーではベースアンプの集音マイクの代わりにウーファーを代用し、
ポールが望んでいた迫力のある重低音を得ている。

前アルバムのMichelleでルート外しのベースラインを弾いたポールは「初めて
ベースの面白さに開眼した」と言っているが、リボルバー・セッションでは
それに音圧も加わり、Taxman、Paperback Writer、Rainで聴けるようなブン
ブン唸るベースラインを披露している。




また前年にエピフォン・カジノ(2)を手に入れたポールはリード・ギターも
弾くようになり、ヘルプ!セッションの頃からジョージの演奏が気に入らない
時は消して自分がやり直すこともあった。(5)

リボルバーではTaxmanの間奏で苦労したジョージがふてくされてスタジオを
出て行った間に、ポールがみごとなリードギターをキメてしまった。
戻って来たジョージも、インド音楽風のポールのギターを気に入った。

(エピフォン・カジノの音を加工したと思われるが、ポールは翌年フェンダーの
エスクワイヤーを弾いてる写真があり、この時既に使用してたかもしれない)




And Your Bird Can Singではジョージとポールがイントロ、間奏、オブリ、サビ
のバックで鳴るカウンターメロディーをずっと3度でハモリながら演奏している。
これは音を揃えるため、2人でエピフォン・カジノを弾いたのだろう。


リボルバーではギターをコンソールに直接つなぎ録音するダイレクトボックス
が開発され使用されている。
ギターの音はコンプレッサー(フェアチャイルド660/670またはアルテック
436をEMIがアップグレードしたRS124)で圧縮され、EMIが開発したイコライ
ザーRS56で音を強調している。






<VOXのハイブリッド・アンプとフェンダーのアンプが使用された>

リボルバーでは従来のVOXの真空管アンプAC-30やAC-50ではなく、新製品の
7120(ベースアンプは430)が初めて使用された

(リボルバーのレコーディングで初めて使用され、1966年のドイツ公演、日本
公演の後半(6)、サージェント・ペパーズの前半のレコーディングで使用された)





7120と430はソリッドステート(トランジスタ)のプリアンプ部とチューブ
(真空管)パワーアンプ部を組み合わせたハイブリッド型
チューブアンプは温かみのある太い音が特徴だが、ソリッドステートはジャキ
ッとした硬質でシャープな音が出る。

7120は出力120Wで2チャンネルの入力が可能(1つはビブラート用)。
ベース用の430は出力120W、4個の30cm口径アルニコスピーカーと43cm口径
のスピーカーを2個搭載している。




使用ギターが変わったことに加え、アンプが新調されたことも、リボルバーの
サウンドがソリッドでブライトになったことに影響してるはずだ。


リボルバーではフェンダーのアンプも導入された
「ヘルプ!」のレコーディングでストラトキャスターと併せて使用されたツイン
リバーブ(1965年製と思われる)が置いてあるのが写真で確認できる。(7)




プリ+パワーアンプ部とスピーカー・キャビネットからなるスタック型の真空管
アンプで出力は85W。ブラック・キャビネットでサランネットはシルバー。
ジョンは「ツインリバーブの音が好きだ」と発言している。


フェンダーの小型真空管アンプ、カスタム・ビブロ・リバーブも使用している。
一体型のコンボタイプで出力は30Wか50Wと思われる。
キャビネットはあまり出回っていない限定色のクリーム・トーレックス。







<リンゴのドラムを力強い音で録る工夫>

リンゴは前年に購入したラディックのオイスターブラック・パールのセット
バスドラム、フロアタム、タムタム、スネアは初期のものより一回り大きい。(8)
スネアの底面にはテープが貼られ、リボルバーではバスドラムの中にセーター
を詰め込んで、デッドな音にする(鳴りを抑えて音を重くする)工夫がされた。

リボルバーではトップ、キック用、フロアタム用、タムとスネアとハイハット用
4本、オンマイク(収音する楽器に近づけて)でセットされた。
その結果、今までより迫力があり臨場感のあるリンゴのドラミングが聴ける。





<4人編成のバンドの域を超えたレコーディング>

ビートルズは4人編成のギター・バンドという枠に収まらなくなっていた。
前述のようにポールがリードギターを弾いたり、ジョージがベースを弾くなど、
役割交換も行われた
曲によってはメンバー全員が揃ってないレコーディングもある

Eleanor Rigbyはストリングスをバックにポールが一人でボーカルを録音。
他の3人は関わっていない。Yesterdayの時と同じく実質ポールのソロである。

Love You Toはインドのミュージシャンが演奏したオケでジョージが歌った。
(ポールが上にハモったテイクも録られたが、ジョージ単独がベストとされた)


                              

For No Oneはポールの当時の恋人ジェーン・アッシャーが好んで聴いていた
バロック音楽の影響を受けた曲だ。
ポールが弾くピアノ、クラヴィコード、リンゴのドラムだけでベーシック・ト
ラックが録音され、ポールがベースとボーカルをオーバーダブ。
フィルハーモニア管弦楽団の主席ホルン奏者アラン・シヴィルに間奏を頼んだ。
ジョンとジョージは参加していない。





Here There And Everywhereはポールがジェーン・アッシャーへの想いを歌う
美しいバラード。
ポールがバッキングのギターを弾き、リンゴのドラム、ジョージがサビとエンデ
ィングで短いリフを入れた。
ベースはポールのオーヴァーダブ。ジョンは演奏に加わっていないようだ。

しかしエンディングの絶妙なタイミングで入るフィンガーナッピング(指パッ
チン)はジョン。そういうセンスがジョンならではだ。
美しい3声コーラスはジョン、ジョージ、ポールで2回歌って厚くしている。
ジョンのお気に入りの曲となった。(9)




Good Day Sunshineはラヴィン・スプーンフルの曲に着想を得たポールが、
トラッドジャズの感覚を加えて作った曲。ジョンはコーラスだけの参加。
(ジョージはベースを弾きジョンと一緒にGood Day Sunshine〜を歌ってる)

Got To Get You Into My Lifeはコーラスも試されたが破棄されたため、結果
にジョンの出番はなかった。(ジョージはギターのみ聴こえる)

She Said She Saidはバンド編成でリハーサルを重ねていたが、ジョンと口論
になったポールがぶち切れてスタジオを出て行ったため、レコーディングには
参加していない。
ジョージがベースとコーラスを担当した。

スタジオでの試行錯誤の時間が増え、その分リンゴは待ち時間が増えた。







<作曲力、演奏力ともに最強となり存在感が増したポール>

リボルバーではポールの存在感が大きくなった。
もちろんボスはジョンであることに変わりはないが、舞台作品から前衛音楽、
クラシック、アメリカの新しい音楽のムーヴメントまで吸収していたポールは、
バンドの目利き役として強い影響力を持つようになっていた。

作曲力とアレンジ力でも力を付け、ジョンを圧倒するまでになっていた。
一方ジョンはリボルバーの頃から実験的な音楽を志向するようになる。
それは時として難解で大衆受けしにくい音楽で、分かりやすい曲を作るポール
にシングルA面を譲ることになった。




ジョンとポールはソングライティング・チームであるが分業ではなく、どちら
かが作った原案を2人で練って発展させる、というスタイルだった。
しかしラバーソウルを最後に共作は少なくなる。

ジョンとポールの関係はパートナーからライバルに変化して行った。
実際に2人はどちらがシングルA面を獲るか競っていた。
2人とも譲らない時もあり、EMIは妥協策として両A面としていた時期もある。


以前はシングルA面、映画のタイトル曲など、ここぞという時はジョンの曲
(あるいはジョンが主体で作られた曲)が勝ち取っていた。




ハード・デイズ・ナイトは13曲中10曲がジョン。(10)
しかも捨て曲なしの名曲ぞろい、という怒涛の勢いである。
ジョンのソングライターとしてのピークはハード・デイズ・ナイトだったの
ではないか、と言っている音楽評論家がいたが同感である。


リボルバーはジョンとポールのパワーバランスの変わり目だったとも言える。


She Said She Said録音中にジョンと口論になったポールが出て行くなんて、
以前は考えられなかったのではないか。
それでもホワイト・アルバム録音中の険悪な雰囲気と比べたら、まだ他愛ない
喧嘩のレベルだったのだろう。





<アルバム・タイトル>



アルバム・タイトルの候補の一つがリンゴの造語、After Geographyだった。
発売されたばかりのストーンズのアルバム、Aftermath(災害などの余波)
もじったものである。

他にもAbracadabra、Beatles On Safari、Pendulums、Magic Circle、Four 
Sides Of the Circle、Four Sides Of the Eternal Triangleが候補に挙がった。

結局、レコードがプレイヤー上で回ることからRevolver(回転するもの)
いうタイトルに決まった。





<斬新なカヴァーアート>

回転のイメージが伝わるようロバート・フリーマンの写真をコラージュした
デザインが作られたが、採用されなかった。




ジョンはハンブルク時代からの友人、クラウス・フォアマンに電話で依頼。
フォアマンはEMIスタジオに赴き、Tomorrow Never Knowsを聴かせてもらう。

曲のイメージを元にフォアマンは4人のスケッチを描き、ロバート・フリーマ
ンが撮影した4人の写真をコラージュして斬新なポップアートを作り上げた


      


髪の毛の間や耳の中に自分たちがいるというアイディアを4人は気に入った。
白黒にしたのはカラフルなジャケットが多い中、目立つと思ったから。
裏ジャケットにはロバート・ウィタカーが撮影した写真が使われた。








<リボルバーのレコーディングを終えて>

最後の曲She Said She Saidの録音を終えたのが6月22日。
4月6日にTomorrow Never Knowsで始まったセッションは2ヶ月半で終了。
翌6月23日にはミックスダウン。

その日のうちに4人はドイツに旅立ち、24日ミュンヘンのサーカスクローネ、
25日エッセン、26日ハンブルクでそれぞれ2公演を行う。




そして27日ハンブルクを出発し東京へと向かった。
台風のためアンカレッジで足止めを食い、29日未明に羽田空港へ到着。
6月30日~7月2日、日本武道館で昼夜5回の公演を行う。
7月3日には次の公演のためマニラに向かった。


4人は新しい音作り、スタジオで毎日行われる実験に夢中だった。
ツアーの準備はまったくやっていなかった。そんな時間もなかった。
誰かが「曲数が足りない」と言うと、他の誰かが「デイトリッパーを2回
やればいい」と答える適当さ。ライブへの興味はとっくに失せていた。




リボルバー収録曲は武道館でもその後の北米ツアーでも演奏していない。
ステージで披露された新曲はシングルカットされたPaperback Writerのみ
で、それも手抜き感が否めなかった。
(重厚なコーラスの掛け合いは当時のステージでは再現できなかった)

来日中は東京ヒルトンホテルの最上階プレジデンシャルスイート1005号室で
4人はリボルバーのラフミックスのアセテート盤をかけながら、曲の順番を
どうするか話し合っていた。
ツアー中も心はリボルバーにあったのだろう。







<リボルバーこそがロックの革命だと思う>

ビートルズの音楽はロックンロール、ポップミュージックという枠に収まら
ない自由で広大なものになり、もはや当時の技術ではライブで再現できなく
なっていた。


世間的にはサージェント・ペパーズがロックの歴史を変えた一枚と言われる。
しかし既にリボルバーで実験的な試みをしロックをアートに昇華させている
サージェント・ペパーズへの布石となる過渡期のアルバムという見方が多い
が、リボルバーこそビートルズの潮目を変えた一枚ではないかと思う。




サージェント・ペパーズがロックの完成度の高い大作であることは事実だ。
が、個人的には盛りすぎのサージェント・ペパーズより野心的なロック色が
感じられるリボルバーの方が好きだ。


ラバーソウルに触発されてペット・サウンズを作ったブライアン・ウィルソン
はサージェント・ペパーズを聴いてショックを受けたと言われるが、彼はリ
ボルバーについてはどう感じたのだろうか?聴いてなかったのか?
どうもロックの歴史においてリボルバーは軽視されてる気がしてならない。


2022リミックスによって隅々まで見渡せるのに野太い音にパワーアップした
リボルバーを聴き直して再評価して欲しいと思う。


<脚注>