2022年12月7日水曜日

「リボルバー」2022リミックスを深掘りしてみる(4)




 <ジョージがリボルバーで使用したギター>

ジョージはこのアルバムで初めて1964年製ギブソンSGを使用している。(1)
ファズを併用しトレブリーでディストーションのかかった音を出している。
Paperback Writer、 Rain、Taxman、She Said She Saidの切れ味鋭い音は、
このSGではないかと思われる。




1962年製フェンダー・ストラトキャスターはI Want To Tell Youで使用
ポールの薦めでジョンとお揃いで購入したエピフォン・カジノ(2)どの曲で
使用したのか不明。

また前年のTcket To Rideのプロモ・ビデオでギブソンES-345を弾いてるのが
確認できるが、リボルバーのレコーディングでは使用してないと思われる。




グレッチのカントリージェントルマン、テネシアン、リッケンバッカー360/12
など初期ビートル・サウンドの要であったギターは使わなくなった

ジョージは「グレッチとヴォックスだけじゃないとやっと気づいた」「グレ
ッチとヴォックスの組み合わせはちゃちだ」とインタビューで答えている。




リボルバー・セッションでジョージはベースも担当した。(3)
(Good Day Sunshine、She Said She Saidがそうだと思われる)

BURNSというロンドンのメーカーが1964年に発売したNU-SONICベース
バスウッドのボディーで軽量。30インチのショートスケールでナロウネック。
ギタリストのジョージでも難なく弾きやすかったと思われる。






<ジョンがリボルバーで使用したギター>

ラバーソウルではアコースティックギターを使用した曲が多く、ジョンと
ジョージはギブソンJ-160Eとフラマスの12弦ギター、クラシカルギター。
ポールはエピフォン・テキサンを弾いていた。

しかしリボルバーではアコースティックは鳴りを潜め、I'm Only Sleeping、
Yellow Submarineの2曲でジョンがJ-160Eを弾いただけである。




ジョンは1965年製エピフォン・カジノ(2)を使用
カジノはジョンのメイン・ギターとして長く愛用され、後に塗装を剥がされ
ゲット・バック、アビイロードでも弾いている。

Paperback Writerではグレッチ6120を弾いている
オレンジ色が目を引くこのギターはチェット・アトキンスのシグネチャー・
モデルであるが、コードが美しく響くためボーカル主体のロカビリー・ギタ
リストにも愛用された。




ジョンが好きだったエディ・コクランもその一人で、6120を手に入れたのは
そのせいかもしれない。
しかしエディ・コクランの6120はフロントPUをP-90に交換してあった。
だからジョンの望む音は得られなかったのでは?その後は使用していない。(4)




<ポールがリボルバーで使用したベースとギター>

ラバーソウルに引き続きリッケンバッカー4001Sを使用
リボルバーではベースアンプの集音マイクの代わりにウーファーを代用し、
ポールが望んでいた迫力のある重低音を得ている。

前アルバムのMichelleでルート外しのベースラインを弾いたポールは「初めて
ベースの面白さに開眼した」と言っているが、リボルバー・セッションでは
それに音圧も加わり、Taxman、Paperback Writer、Rainで聴けるようなブン
ブン唸るベースラインを披露している。




また前年にエピフォン・カジノ(2)を手に入れたポールはリード・ギターも
弾くようになり、ヘルプ!セッションの頃からジョージの演奏が気に入らない
時は消して自分がやり直すこともあった。(5)

リボルバーではTaxmanの間奏で苦労したジョージがふてくされてスタジオを
出て行った間に、ポールがみごとなリードギターをキメてしまった。
戻って来たジョージも、インド音楽風のポールのギターを気に入った。

(エピフォン・カジノの音を加工したと思われるが、ポールは翌年フェンダーの
エスクワイヤーを弾いてる写真があり、この時既に使用してたかもしれない)




And Your Bird Can Singではジョージとポールがイントロ、間奏、オブリ、サビ
のバックで鳴るカウンターメロディーをずっと3度でハモリながら演奏している。
これは音を揃えるため、2人でエピフォン・カジノを弾いたのだろう。


リボルバーではギターをコンソールに直接つなぎ録音するダイレクトボックス
が開発され使用されている。
ギターの音はコンプレッサー(フェアチャイルド660/670またはアルテック
436をEMIがアップグレードしたRS124)で圧縮され、EMIが開発したイコライ
ザーRS56で音を強調している。






<VOXのハイブリッド・アンプとフェンダーのアンプが使用された>

リボルバーでは従来のVOXの真空管アンプAC-30やAC-50ではなく、新製品の
7120(ベースアンプは430)が初めて使用された

(リボルバーのレコーディングで初めて使用され、1966年のドイツ公演、日本
公演の後半(6)、サージェント・ペパーズの前半のレコーディングで使用された)





7120と430はソリッドステート(トランジスタ)のプリアンプ部とチューブ
(真空管)パワーアンプ部を組み合わせたハイブリッド型
チューブアンプは温かみのある太い音が特徴だが、ソリッドステートはジャキ
ッとした硬質でシャープな音が出る。

7120は出力120Wで2チャンネルの入力が可能(1つはビブラート用)。
ベース用の430は出力120W、4個の30cm口径アルニコスピーカーと43cm口径
のスピーカーを2個搭載している。




使用ギターが変わったことに加え、アンプが新調されたことも、リボルバーの
サウンドがソリッドでブライトになったことに影響してるはずだ。


リボルバーではフェンダーのアンプも導入された
「ヘルプ!」のレコーディングでストラトキャスターと併せて使用されたツイン
リバーブ(1965年製と思われる)が置いてあるのが写真で確認できる。(7)




プリ+パワーアンプ部とスピーカー・キャビネットからなるスタック型の真空管
アンプで出力は85W。ブラック・キャビネットでサランネットはシルバー。
ジョンは「ツインリバーブの音が好きだ」と発言している。


フェンダーの小型真空管アンプ、カスタム・ビブロ・リバーブも使用している。
一体型のコンボタイプで出力は30Wか50Wと思われる。
キャビネットはあまり出回っていない限定色のクリーム・トーレックス。







<リンゴのドラムを力強い音で録る工夫>

リンゴは前年に購入したラディックのオイスターブラック・パールのセット
バスドラム、フロアタム、タムタム、スネアは初期のものより一回り大きい。(8)
スネアの底面にはテープが貼られ、リボルバーではバスドラムの中にセーター
を詰め込んで、デッドな音にする(鳴りを抑えて音を重くする)工夫がされた。

リボルバーではトップ、キック用、フロアタム用、タムとスネアとハイハット用
4本、オンマイク(収音する楽器に近づけて)でセットされた。
その結果、今までより迫力があり臨場感のあるリンゴのドラミングが聴ける。





<4人編成のバンドの域を超えたレコーディング>

ビートルズは4人編成のギター・バンドという枠に収まらなくなっていた。
前述のようにポールがリードギターを弾いたり、ジョージがベースを弾くなど、
役割交換も行われた
曲によってはメンバー全員が揃ってないレコーディングもある

Eleanor Rigbyはストリングスをバックにポールが一人でボーカルを録音。
他の3人は関わっていない。Yesterdayの時と同じく実質ポールのソロである。

Love You Toはインドのミュージシャンが演奏したオケでジョージが歌った。
(ポールが上にハモったテイクも録られたが、ジョージ単独がベストとされた)


                              

For No Oneはポールの当時の恋人ジェーン・アッシャーが好んで聴いていた
バロック音楽の影響を受けた曲だ。
ポールが弾くピアノ、クラヴィコード、リンゴのドラムだけでベーシック・ト
ラックが録音され、ポールがベースとボーカルをオーバーダブ。
フィルハーモニア管弦楽団の主席ホルン奏者アラン・シヴィルに間奏を頼んだ。
ジョンとジョージは参加していない。





Here There And Everywhereはポールがジェーン・アッシャーへの想いを歌う
美しいバラード。
ポールがバッキングのギターを弾き、リンゴのドラム、ジョージがサビとエンデ
ィングで短いリフを入れた。
ベースはポールのオーヴァーダブ。ジョンは演奏に加わっていないようだ。

しかしエンディングの絶妙なタイミングで入るフィンガーナッピング(指パッ
チン)はジョン。そういうセンスがジョンならではだ。
美しい3声コーラスはジョン、ジョージ、ポールで2回歌って厚くしている。
ジョンのお気に入りの曲となった。(9)




Good Day Sunshineはラヴィン・スプーンフルの曲に着想を得たポールが、
トラッドジャズの感覚を加えて作った曲。ジョンはコーラスだけの参加。
(ジョージはベースを弾きジョンと一緒にGood Day Sunshine〜を歌ってる)

Got To Get You Into My Lifeはコーラスも試されたが破棄されたため、結果
にジョンの出番はなかった。(ジョージはギターのみ聴こえる)

She Said She Saidはバンド編成でリハーサルを重ねていたが、ジョンと口論
になったポールがぶち切れてスタジオを出て行ったため、レコーディングには
参加していない。
ジョージがベースとコーラスを担当した。

スタジオでの試行錯誤の時間が増え、その分リンゴは待ち時間が増えた。







<作曲力、演奏力ともに最強となり存在感が増したポール>

リボルバーではポールの存在感が大きくなった。
もちろんボスはジョンであることに変わりはないが、舞台作品から前衛音楽、
クラシック、アメリカの新しい音楽のムーヴメントまで吸収していたポールは、
バンドの目利き役として強い影響力を持つようになっていた。

作曲力とアレンジ力でも力を付け、ジョンを圧倒するまでになっていた。
一方ジョンはリボルバーの頃から実験的な音楽を志向するようになる。
それは時として難解で大衆受けしにくい音楽で、分かりやすい曲を作るポール
にシングルA面を譲ることになった。




ジョンとポールはソングライティング・チームであるが分業ではなく、どちら
かが作った原案を2人で練って発展させる、というスタイルだった。
しかしラバーソウルを最後に共作は少なくなる。

ジョンとポールの関係はパートナーからライバルに変化して行った。
実際に2人はどちらがシングルA面を獲るか競っていた。
2人とも譲らない時もあり、EMIは妥協策として両A面としていた時期もある。


以前はシングルA面、映画のタイトル曲など、ここぞという時はジョンの曲
(あるいはジョンが主体で作られた曲)が勝ち取っていた。




ハード・デイズ・ナイトは13曲中10曲がジョン。(10)
しかも捨て曲なしの名曲ぞろい、という怒涛の勢いである。
ジョンのソングライターとしてのピークはハード・デイズ・ナイトだったの
ではないか、と言っている音楽評論家がいたが同感である。


リボルバーはジョンとポールのパワーバランスの変わり目だったとも言える。


She Said She Said録音中にジョンと口論になったポールが出て行くなんて、
以前は考えられなかったのではないか。
それでもホワイト・アルバム録音中の険悪な雰囲気と比べたら、まだ他愛ない
喧嘩のレベルだったのだろう。





<アルバム・タイトル>



アルバム・タイトルの候補の一つがリンゴの造語、After Geographyだった。
発売されたばかりのストーンズのアルバム、Aftermath(災害などの余波)
もじったものである。

他にもAbracadabra、Beatles On Safari、Pendulums、Magic Circle、Four 
Sides Of the Circle、Four Sides Of the Eternal Triangleが候補に挙がった。

結局、レコードがプレイヤー上で回ることからRevolver(回転するもの)
いうタイトルに決まった。





<斬新なカヴァーアート>

回転のイメージが伝わるようロバート・フリーマンの写真をコラージュした
デザインが作られたが、採用されなかった。




ジョンはハンブルク時代からの友人、クラウス・フォアマンに電話で依頼。
フォアマンはEMIスタジオに赴き、Tomorrow Never Knowsを聴かせてもらう。

曲のイメージを元にフォアマンは4人のスケッチを描き、ロバート・フリーマ
ンが撮影した4人の写真をコラージュして斬新なポップアートを作り上げた


      


髪の毛の間や耳の中に自分たちがいるというアイディアを4人は気に入った。
白黒にしたのはカラフルなジャケットが多い中、目立つと思ったから。
裏ジャケットにはロバート・ウィタカーが撮影した写真が使われた。








<リボルバーのレコーディングを終えて>

最後の曲She Said She Saidの録音を終えたのが6月22日。
4月6日にTomorrow Never Knowsで始まったセッションは2ヶ月半で終了。
翌6月23日にはミックスダウン。

その日のうちに4人はドイツに旅立ち、24日ミュンヘンのサーカスクローネ、
25日エッセン、26日ハンブルクでそれぞれ2公演を行う。




そして27日ハンブルクを出発し東京へと向かった。
台風のためアンカレッジで足止めを食い、29日未明に羽田空港へ到着。
6月30日~7月2日、日本武道館で昼夜5回の公演を行う。
7月3日には次の公演のためマニラに向かった。


4人は新しい音作り、スタジオで毎日行われる実験に夢中だった。
ツアーの準備はまったくやっていなかった。そんな時間もなかった。
誰かが「曲数が足りない」と言うと、他の誰かが「デイトリッパーを2回
やればいい」と答える適当さ。ライブへの興味はとっくに失せていた。




リボルバー収録曲は武道館でもその後の北米ツアーでも演奏していない。
ステージで披露された新曲はシングルカットされたPaperback Writerのみ
で、それも手抜き感が否めなかった。
(重厚なコーラスの掛け合いは当時のステージでは再現できなかった)

来日中は東京ヒルトンホテルの最上階プレジデンシャルスイート1005号室で
4人はリボルバーのラフミックスのアセテート盤をかけながら、曲の順番を
どうするか話し合っていた。
ツアー中も心はリボルバーにあったのだろう。







<リボルバーこそがロックの革命だと思う>

ビートルズの音楽はロックンロール、ポップミュージックという枠に収まら
ない自由で広大なものになり、もはや当時の技術ではライブで再現できなく
なっていた。


世間的にはサージェント・ペパーズがロックの歴史を変えた一枚と言われる。
しかし既にリボルバーで実験的な試みをしロックをアートに昇華させている
サージェント・ペパーズへの布石となる過渡期のアルバムという見方が多い
が、リボルバーこそビートルズの潮目を変えた一枚ではないかと思う。




サージェント・ペパーズがロックの完成度の高い大作であることは事実だ。
が、個人的には盛りすぎのサージェント・ペパーズより野心的なロック色が
感じられるリボルバーの方が好きだ。


ラバーソウルに触発されてペット・サウンズを作ったブライアン・ウィルソン
はサージェント・ペパーズを聴いてショックを受けたと言われるが、彼はリ
ボルバーについてはどう感じたのだろうか?聴いてなかったのか?
どうもロックの歴史においてリボルバーは軽視されてる気がしてならない。


2022リミックスによって隅々まで見渡せるのに野太い音にパワーアップした
リボルバーを聴き直して再評価して欲しいと思う。


<脚注>

2022年11月26日土曜日

「リボルバー」2022リミックスを深掘りしてみる(3)



 <ラバーソウルから音楽性の変化が始まっていた>

ジョージが生前インタビューで「ラバーソウルとリボルバーは兄弟みたいな
アルバムで、どっちにどの曲が入ってるかよく憶えていない」と言っていた。
時系列ではラバーソウル→リボルバーだから記憶が曖昧なのだろう。

確かにラバーソウルでは、内省的で陰影のある歌詞と美しいメロディー
ンションやクリシェを活かしたコード進行、ルート外しのベース、複雑で美
しいコーラスワーク、アコースティックギターの多用(フォークロックへの
傾倒)など、ビートルズが新しい次元に入ったことを示す要素が多い。

Norwegian Wood、Nowhere Manはディランの影響と思われる。
If I Needed Someoneはバーズのサウンドを取り入れたものだ。



↑5フレットにカポをしている。たぶんGirlのレコーディングだろう。
J-160Eのピックアップはブリッジ側に付け変えられている。
ロセット(サウンドホールのリング)が一本であることから、ジョンの2台目
の1964年製ではなくジョージ所有の1962年製を借用していると判明。


サウンドも変化し始めた。

ポールはレコーディングにリッケンバッカー4001Sを使用するようになった。
(ステージでは軽くて動きやすいホフナー500/1を使っている)
Think For Yourselfではベースをファズ(VOX社の試作品)に通して弾いた。

リンゴはラディックのオイスターブラック・パールのセットを2台購入。
バスドラムは22×14インチに、フロアタム、タムタムも大きくなった。
スネアは14×5.5インチのジャズ・フェスティバル。
シンバルはジルジャン製かパイステ製。スタンド類はラディック製。
スネアの底面にはテープが貼られ鳴りを抑えて重くする工夫がされた。


ラバーソウルではパーカッションも多用された。

ジョージは映画「ヘルプ!」撮影中にシタールに興味を持ち、バーズのデヴ
ィッド・クロスビーの紹介でインド音楽とシタールにのめり込んで行く。
そしてNorwegian Woodで初めてシタールを弾いた

Nowhere Manのキャッチーな間奏・オブリはヘルプ!でも使用したストラト
キャスターだが、後処理のイコライジングで高音を強調している。
ラバーソウルではコンプレッサーやイコライザーでギターやピアノの音を変
える技術が用いられた。




10月12日から11月15日の約1ヶ月間でレコーディング行われている。
ヒット曲量産のレノン=マッカトニーもさすがに曲が足りなかったらしい。
前アルバム「ヘルプ!」セッション時に録音したWaitを引っ張り出して、オ
ーバーダブを施して体裁を整え加えている。


急場で制作されたにもかかわらず、美しい粒揃いの曲が並び、全体を通して
統一感がある(ブライアン・ウィルソン談)ため、ビートルズ初のコンセプト
・アルバムと評価されることが多い。

ラバーソウルというアルバム・タイトル(本場のブルースマンがストーンズ
を揶揄したプラスティック(まがい物の)ソウルという言葉をもじった)
4人の歪んだ写真が使われたジャケット・カヴァー(ロバート・フリーマン
がジョンの家で撮影した写真をボール紙へ写したところ歪んで見え、メンバ
ーたちは面白がりそのまま採用した)もその評価に一役買っている。



↑ラバーソウルのジャケットに使用された写真(本来の歪みのない状態)




<Tomorrow Never Knowsから始まった革新的なロック>

1965年12月にラバー・ソウルをリリースした後、1966年1月から3ヶ月4人
休暇をとり(1)それぞれ自由に新しい音楽の探求をしていた。


ポールは前衛芸術と前衛音楽に刺激を受け、創作意欲を掻き立てる。
ジョージはシタールの弾き方を学び、インドの神秘主義を学び出す。

ジョンとジョージはLSD服用による幻覚症状を体験。(2)
リボルバーの制作に大きく影響している。
ジョンは「ラバーソウルはマリファナをやりながら作った。リボルバーはLSD
体験が大きい」とインタビューで答えている。


スタジオに入る数週間前に「一つ言えるのは次のアルバムが今までとかなり
違ったものになるということ」とジョンは語っていた。
世界中に、そして彼ら自身にも影響を与え次の大作、サージェント・ペパーズ
への布石となる革命的なアルバムを生む確信を持っていたのだろう。





ビートルズのアルバム・セッション(アルバムに入れずシングで発売する
2曲も含む)はジョンの曲からスタートするのが慣例だった。(3)
アルバムの景色はそこから見えてくる。


セッションの初日、ビートルズはTomorrow Never Knowsに取り組んだ。
ジョンが8世紀の仏教と幻覚剤についての書(4)に影響を受け書いた曲だ。

曲のタイトルはリンゴが何気なく呟いた一言に由来している。(5)
(レコーディング時は「Mark I」と記されていた)
「リンゴの言い回しを拝借し、重い哲学的な詩を書いた」とジョンは言う。

チベット仏教の儀式の雰囲気を取り入れたいと考えたジョンは、マーティンに
数千人もの僧侶がヒマラヤ山の頂上で経典と唱えているような感じにしたい
」と伝えている。
ジョンは「天井から自分を吊し周りながら歌う」ことも提案。
それは不可能だったが、代わりにジェフ・エメリックの妙案でジョンが望む効
果は得られた。(後述)



↑クリックするとTomorrow Never Knows テイク1のPVが視聴できます。
ジョンは逆さになってを歌っている。
音響的効果があったかは疑問だが、本人は高揚感が得られたのかも(笑)



テイク1で「今までのビートルズではない」ことがよく分かる。
Cのコードを鳴らした音を逆回転させたループを延々と繰り返す
それに合わせ同じ音を繰り返すベース、単純なビートを刻む重いバスドラム
とシンバルインド音階の単調なメロディーの反復(メロトロンか?)。
そしてお経を読むようなジョンのヴォーカルが乗る。

逆回転という発想はジョンのメカ音痴の産物である。
オープンリール・テープが終わったことに気づかず、そのまま逆回転で再生
したことで、ジョンは思いがけない効果を発見したのだ。

この時点で既にライブ演奏で再現することを全く考慮していない。
当然だがヒットチャートを狙うことも意識していない。
スタジオで様々な実験を行うことで、誰もなし得なかった、想像もつかない
新しい音楽を探求していたことが伝わる。




テンポを早くしたテイク3が採用された。
イントロから全編にわたりタンブーラが響きドローン効果が続く
コードはずっとCだがSEのオーケストラでB♭も入る。(ベースはCを維持)
轟くようなドラム(コンプレッサーで圧縮した)とベースはミニマムな演奏

無数に乱舞する摩訶不思議な音は30本のテープループをコラージュしたSE(6)
ほとんどはポールが自宅で作った(前衛音楽の影響)もの。
現在は当たり前のサンプリングを手作業でやっていたのだから驚きだ。


間奏には逆回転させたジョージのギター・ソロが入る。(7)
ジョージのシタールジョンのレズリー・スピーカーを通したボーカル(後述
をオーバーダブして完成した。



↑ポールは完成したTomorrow Never Knowsを周囲に聴かせ反応を見た。
ストーンズは興味を示したが、ディランは「やめてくれ」と言ったらしい。
写真をクリックするとTomorrow Never Knows 2022 Mixが聴けます。



こうした異次元的な音楽を発表したということ自体、挑戦である。
Tomorrow Never Knows、そしてリボルバーというアルバムはアシッド・
ロック(サイケデリック・ロック)の先駆けと言っていいと思う。(8)




<ジェフ・エメリックがスタジオで起こした奇跡の数々>

リボルバーが革新的なアルバムになったのは、このセッションからチーフ・
・エンジニアに就任したジェフ・エメリックの貢献度が大きい。

エメリックはEMIのアシスタント・エンジニアとして働いていた。
ポールが気軽に声をかけてくれ、いろいろな話をする仲になったという。
そのエメリックに思いがけないチャンスが巡ってきた。




それまでビートルズのレコーディングにおいて、ジョージ・マーティンの下で
チーフ・エンジニアを担当していたノーマン・スミスがプロデューサーに昇格。
別なアーティストを任せられることになった。
それはビートルズのレコーディング作業から外れるということを意味する。

後任のミキシング・エンジニアを選ぶにあたって、ポールはマーティンにジェ
フ・エメリックが適任だと進言した。
エメリックとの会話から、彼の可能性を見出していたのだろう。


エメリックはノーマン・スミスの助手としてレコーディング・テクニックの
基本を徹底的を学びマーティンとの相性もよかった
ポールの意向どおり、エメリックはビートルズのチーフ・エンジニアとして、
ジョージ・マーティンの下で働くことになる。

この時エメリックは弱冠19歳。プレッシャーは相当大きかったはずだ。



↑左からブライアン・エプスタイン、ジョージ・マーティン、ジェフ・エメリック。


リボルバー・セッションの初日スタジオにエメリックが入ると、ジョージは
わざと聞こえるように「ノーマンはどこ?」と言った。
ジョンとリンゴもエメリックを無視した。もちろんポールは歓迎してくれたが。

ビートルズのレコーディングはクローズドであり、気心知れた信頼できるスタ
ッフしかスタジオに入れない主義である。
ポール以外の3人のエメリックへの態度は拒絶からすぐ称賛と信頼に変わった



前述のTomorrow Never Knowsにおけるジョンの「数千人もの僧侶がヒマラヤ
山の頂上で経典と唱えているような感じ」という抽象的な要求に対し、エメリ
ックは画期的な方法を発案しジョンを喜ばせた

ハモンドオルガン用のレズリー回転スピーカーからジョンのボーカルを流し、
それをマイクで拾う、という方法だ。
レズリーを通すとエフェクターのコーラス、フランジャーのようなドップラー
効果(当時はそんなエフェクターはなかった)が得られる。(9)




Tomorrow Never Knowsではボーカル以外のバッキング・トラックもレスリー
・スピーカーへ送り、ワン・コードでミニマム・ノートの曲に対して斬新な
アプローチを試みている。


さらにエンジニアのケン・スコットのと共に、テイクを2度重ねしなくてもダブ
トラッキング(2重録音)効果を作り出すADT(Artificial Double Tracking)
という方法を考案。(10)
ボーカルを2度重ねするのが苦手だったジョンはこれにも喜んだ




        ↑エンジニアのケン・スコット


モータウンレコードみたいな迫力のある太いベース音にしたい」というポ
ールの要求に対しては、アンプ集音マイクの代わりにウーファーを代用
Taxman、Paperback Writer、Rainのブンブン唸るベースがその成果だ。

ギターをコンソールに直接つなぎ録音するダイレクトボックスの開発もエメ
リックとケン・スコットの功績の一つ。
ギターはコンプレッサーで圧縮されイコライジングもされてる。



↑クリックするとTaxman 2022 MixのPVが視聴できます。



リンゴのドラムの音もこのアルバムからクリアーでラウドな音になった。
マイクはドラムセット全体の収音用のオーバーヘッドの他に、ハイハット&
スネア用、フロアタム用、バスドラム用、と4本のマイクを使用したと思わ
れる。(2022リミックスを聴くとそれぞれ別に定位されている)
初期はトップのみ、ラバーソウルでやっとトップとキックの2本だった。(11)


バスドラムには音を重くするためのセーター(12)が詰め込まれ、収音用マイク
オンマイクで(録りたい音にできるだけ近づけ)セット。
フェアチャイルド660コンプレッサー/リミッターで処理した。
Taxmanではアタック成分を強調したドラムが聴ける。




Got To Get You Into My Lifeでもブラス・セクションをオン・マイクで収録
し、迫力のあるサウンドに仕立てた。


エメリックはテープ速度を落とすと特定の楽器のニュアンスが良くなり、音
の深みも増すこと、ドローン効果が得られることに気づいた

Rainは速度を上げて録音。マスタリング時にノーマルに戻している。



↑写真をクリックするとRain Take 5 速度を落とす前の音が聴けます。



I'm Only Sleeping、She Said She Saidはバッキング・トラックをテープ
速度を上げて録音したものを再生時にノーマルに戻す
結果テンポがゆっくりでキーが下がる。ボーカルやコーラスをオーバーダブ。
ジョンが望んだレイドバック感、トリップ感を表現した。


イエローサブマリンも同じ手法で録音され、波間を漂うようなゆったりと
リラックスした味わいを醸し出している。







<EMIをぶっとばせ!>

4人は「アメリカの(特にモータウンの)レコードはどうしてこんなサウンド
が出せるんだろう、低音、音量、音圧がすごい」と憧れていたという。
それはジェフ・エメリックも同じだった。



↑1964年に初渡米後、ロンドンのヒースロー空港に到着。
ポールはアメリカで購入したと思われるLP(R&Bだろうか)を抱えている。


EMIのスタジオでは厳格なルールがあり、機材の保護のためオフマイク(収音
するアンプや楽器から離してマイクをセットする)(13)、コンソールへの入力
音量の制限など、厳しい規定があった。
機材もEMI製、あるいはEMIがテストし承認したものしか使えない(14)



↑エメリックによるとEMIの技術者は丈の長い白衣を着用するよう求められた。
レコーディングも1日5時間以内と規定があった。
もちろんビートルズは例外で、いつでも好きなだけ優先的にスタジオを使えた。


EMIはビートルズのレコーディングでは通常より2〜2.5dB音量を下げていた
クラシックの名門EMIはそれまで大量にレコードをプレスするような経験がなく
、音飛びを防ぐためにそうせざるを得なかったらしい。
またシングル盤は50Hz以下の低音はカットするよう指示されていた。
(アメリカのレコードに比べて迫力不足なのは当然。4人は不満を抱いていた)


当時のEMIは上層部がロックのレコード作りに対する認識が薄く、旧態然と
した制約が多すぎ、設備的にも技術的にも限界があったのだ。
そのためビートルズが出すサウンドを拾い切れていなかった。

裏返せば、既にビートルズはスタジオのレコーディング・テクニックを上回る
サウンドを出していた、ということになる。
ヴェートーベンだけでなくEMIのスタジオまでぶっ飛ばしていたわけだ(笑)




ジェフ・エメリックは既成概念にとらわれなかった。
EMIの厳格ルールを次々と破ることで、ビートルズの貪欲なまでのサウンド
へのこだわり4人の突拍子もないアイディアを現実化する。

それによりビートルズは実験的でより野心的な音楽を創り出した。
ビートルズ、マーティン、エメリックの飽くなき探究心が、革新的な(しかも
時代を超越して愛される)傑作を誕生させたのである。

ピンクフロイドがデビュー・アルバムのレコーディングのためアビイロード
・スタジオを訪れた時、今まで聴いたことがない洗練された音が第2スタジオ
から流れてきたという。
ちょうどビートルズがリボルバーをレコーディングしていたのだ。



さて、今回も長くなってしまいました m(_ _)m

続きは次回。



<脚注>もたっぷりありますよー↓

2022年11月16日水曜日

「リボルバー」2022リミックスを深掘りしてみる(2)




 <1CD、2CD、5CD、アナログLP、どれを買うのが正解?>


一連のリミックス同様、今回も以下のエディションが発売された。



1CD(オリジナル・アルバムのリミックスのみ)


2CD(Disc2はアウトテイクのハイライト、ブックレット付)
 ※今回は見開きジャケットとブックレットが箱に収まっている。





5CDスーパー・デラックス(豪華ブックレット付、箱入り
 Disc2&3はアウトテイク集、Disc4はモノラル・ミックス、
 Disc5はシングル2曲それぞれのステレオ/モノ計4トラックのみ
 ※今回はボックスの形状がLPサイズ





1LP(オリジナル・アルバム、ハーフスピード・マスタリング)


4LP+7inchシングル・スーパー・デラックス
豪華ブックレット付、箱入り





Amazonのレビューでこんなことを書いてる人がいた。

  今回もボックスを買ったが、毎回大きさも形状も違う
  場所を取るので困る。

  年に1回。いつまで続くのだろう。生きてるうちに終わるのか。
  そう思うと憂鬱になる。


同感だ。
ボックスをありがたがる人もいる(神棚にでも置いて祀るのかな?)
場所を取って邪魔なだけだ。箱を開けるのが面倒で聴かなくなる。(1)



今回のリボルバー2022リミックスは2CDを買った
アウトテイクはハイライトで充分じゃないかと判断したので。

5CDのDisc2&3は4/6〜6/22のリボルバー・セッションを時系列で追って
いるので、レコーディングの流れが分かる。そこがいい点だ。





5CD収録のアウトテイク(Disc2&3)と2CDのアウトテイク(Disc2)の
比較どのテイクがダブっているかをしてみた。

聴きたい音源かどうか、どれを買うか、の参考になれば幸いだ。
(もちろんアウトテイクは不要、オリジナル・アルバムの1CDで充分という
選択肢もアリだ)




<2CDか、5CDかはアウトテイクを吟味してから選んだ方がいい>

以下、5CDのDisc2&3収録トラック中、2CDのハイライトでも聴けるテイク
には
マークを付けてある。

聴く価値大と思うテイクにはを付けた。あくまでも私見だが。




Disc 2 CD Sessions

01. Tomorrow Never Knows (Take 1)  
  →アンソロジーと同テイク、収録時間が長い
02. Tomorrow Never Knows (Mono Mix RM 11)
  →モノ・ミックス、SEの入り方が違う(ステレオよりいい)
03. Got To Get You Into My Life (First Version / Take 5) 
  →アンソロジーと同テイク、収録時間が長い
04. Got To Get You Into My Life (2nd Ver./Unnumbered Mix) ◉ 
  →ホーンの箇所でジョージがファズギター、コーラス掛け合い



↑Got To Get You Into My Life (2nd. Ver./Unnumbered Mix)が聴けます。



05. Got To Get You Into My Life (2nd Version / Take8)
  →トランペットとサックスが入る。演奏のみ
06. Love You To (Take 1)
  →ジョージのアコギ弾き語り、ポールのハモり
07. Love You To (Unnumbered Rehearsal)
  →シタールとタンブーラだけ(聴いてて退屈)
08. Love You To (Take 7) 
  →公式と同テイクだが演奏時間が長い、ポールのハモりが入る
09. Paperback Writer (Takes 1 & 2 / Backing Track)
  →テイク1はすぐ中断、テイク2は公式で採用した演奏のみ
10. Rain (Take 5)
  →速いテンポでの演奏のみ(歌入れで回転を落とすため)
11. Rain (Take 5 / Slowed Down)
  →回転を落としたもの、ハモり・コーラスなし、演奏が長い
12. Doctor Robert (Take 7) 
  →ジョンの声はADTなし、演奏が長い、公式テイクとほぼ同じ
13. And Your Bird Can Sing (First Version / Take 2)  
  →アンソロジー 収録テイクと同じ、笑い声なし、ギターが違う
14. And Your Bird Can Sing (First Version / Take 2 / Giggling)
  →アンソロジー収録、2人が笑いながら歌う、間奏ギターが1人分






Disc 3 CD Sessions

01. And Your Bird Can Sing (2nd Version / Take 5) 
  →少しテンポが遅いラフなテイク。間奏でAh....のコーラスが入る。
02. Taxman (Take 11)  
  →公式テイクと同じ。最後はギターソロ(間奏をコピペした)がない
   ジョンとポールの早口コーラスanybody got a bit of moneyが入る
03. I'm Only Sleeping (Rehearsal Fragment)
  →ヴィブラフォンの入る演奏、アンソロジー収録と同じだが長い
04. I'm Only Sleeping (Take 2)  
  →アンソロジー収録と別テイク、ハモリ付き、ジョンが間違えて中断



↑写真をクリックするとI’m Only Sleeping (Take 2)が聴けます。



05. I'm Only Sleeping (Take 5)
  →後で回転を落として歌を入れているため、テンポを早めて演奏
06. I'm Only Sleeping (Mono Mix RM11)
  →モノ・ミックス、逆回転のギターの入り方が違う
07. Eleanor Rigby (Speech Before Take 2)
  →弦楽器のリハーサル、ヴィブラートを入れるか相談してる
08. Eleanor Rigby (Take 2) 
  →ストリングスのオケ(ヴォーカルなし、聴いてて退屈)
09. For No One (Take 10 / Backing Track) 
  →ポールのクラヴィコードとピアノ、リンゴのドラムだけの演奏




10. Yellow Submarine (Songwriting Work Tape / Part 1) 
  初登場音源!ジョンが自宅で録音したデモ(元はジョンが作った曲
11. Yellow Submarine (Songwriting Work Tape / Part 2) 
  初登場音源!ポールが完成させた曲をジョンが歌ってみる
12. Yellow Submarine (Take 4 Before Sound Effects) 
  →回転を落とし歌を録音している、元のピッチだと歌まで半音高い
13. Yellow Submarine (Highlighted Sound Effects)
  →SEを強調したミックス、FOでない終わり方
14. I Want To Tell You (Speech & Take 4) 
  →タイトルについて意見交換、演奏のみ、中断する ※
15. Here, There And Everywhere (Take 6)  
  →アンソロジー収録と同じだが、最後までポールのデモが聴ける
16. She Said She Said (John's Demo)
  →ジョンが自宅で録音したアコギ弾き語りデモ、歌詞が異なる
17. She Said She Said (Take 15 / Backing Track)  
  →演奏のみ、完成形に近い 





Want To Tell You は曲名がまだ決まっていない。(2)
ジョンが言ってるGrany Smith part friggin' two!(Grany Smithは林檎
の品種)はLove You Toの仮タイトルがGrany Smithだったから。
リンゴはTell Youを提案し、いいだろ?と言う。
ジェフ・エメリックがLaxton's Superb(これも林檎の品種)と呼応。


※ She Said She Saidはジョンと口論になってスタジオを飛び出した
ため録音に参加してない」とポール自身が告白している。
公式テイクのベースはジョージが弾いている。コーラスもジョージ1人。
しかしテイク15ではポールがカウントを取りベースを弾いている
公式テイクとほぼ同じ完成度。ジョンは「最後の曲だ!」と言っている。
この後、何で口論になったのだろう?




こうして見直すと、あえてアウトテイク2枚分も必要ないように思う。
2CDのDisc2ハイライトも半分は要らないと思えるくらいだ。



そんな中で白眉のレアテイクがあった。
ジョンがアコギ弾き語りで歌うYellow Submarineの原型である。
こんな音源、ブートでもお目にかかったこともない。驚いた。



↑Yellow Submarineの原型。ジョンによるデモが聴けます。



「僕が生まれた街は誰も人のことなど気にしない」という寂しげな歌詞
Nowhere Manや後のソロ作品にも通じる内省的なもの。
これが楽しいマーチのYellow Submarineになるとは想像できない。


In the place where I was born, no one cared, no one cared
And the name that I was born, no one cared, no one cared
In the town where I was born, no one cared, no one cared
If you're right, then you're wrong, no one cared, no one cared
In the town where I came from, no one cared, no one cared



この曲はポールがリンゴのために書いたというのが通説だった。
しかし、元ネタはジョン。
これ以上発展させられなかったのか、ポールが書き変え完成させたようだ。
Yellow Submarineとなった曲をジョンが歌いポールが意見を言い一緒に歌う
デモ音源も聴ける。
We all live in a Yellow Submarine♫の合間にLook out”、Get downの
合いの手?が入る。


↑Yellow Submarineとなった曲をジョンとポールが歌うデモが聴けます。



この2つのデモは貴重。
だけど、このためだけに5CDを買うのも。。。

2CDのDisc2ハイライトにもこの2つを入れてくれればよかったのに。
Yellow SubmarineのSEなしのテイク4は不要だった。
(早いテンポで演奏し、回転を落とし歌を録音している。
 歌入のまま演奏時のテンポに上げているから子供の声のようで不自然)




<5CDのDisc4 2022モノ・マスターについて>

1966年のモノラル・ミックスから起こしたマスター・テープを2022年の最新
デジタル技術で蘇らせた一枚。
つまりリミックスしたわけではない。
当時のモノラル・ミックスからマスタリングし直した、ということだ。


ジョージ・マーティンもジェフ・エメリックもリボルバーとサージェント・
ペパーズはモノラルで聴いてほしい、と言っていた。
音の万華鏡のようなサージェント・ペパーズまでモノ推しという。

ビートルズの作品はホワイト・アルバムまではモノラルを重視してた。
英国ではアメリカや日本に比べるとステレオの普及が遅く、多くの家庭でポ
ータブル・レコードプレーヤーで聴かれていたためである。
(ステレオ盤とモノラル盤の2種類が発売された)(3)




このためミックスダウンはモノラルに時間をかける
4人もモノラルのミックスダウンには立ち会っていたが、ステレオはモノラル
に準じるということでマーティンたちにお任せだった。
当時は手作業のミックスダウンでエンジニアはテープを回しながらフェーダー
を細かく調整し、かなり大変な作業になる。

結果としてステレオとモノラルではSEの入り方が違う、タンバリンが入るタ
イミングが違う、ギターの入り方や音量が違う、ヴォーカルがダブルトラック
か否か、フェイドアウトのタイミングが違う、時にはテイクが違う(4)という
こともあった。

時間がない中、ステレオ・ミックスは妥協、やっつけ仕事になりがちなので、
エンジニア、プロデューサーとしては納得してない面もあるのだろう。



1986〜1987年にビートルズが初CD化された際は初期4枚はモノラルのみ、
ルプ以降はステレオのみ。(ジョージ・マーティンによる判断)

2009年、全作品がリマスターされる。
この時すべてステレオになるが、限定でモノ・ボックスも発売された。

モノラルに関してはこの2009年リマスターで充分だと思う。
(2022モノ・マスターと比較したわけではないが)





初期のビートルズは中域で塊になってガツンと前に出る音が魅力だった。
Please Please Meなんかは確かにモノの方がすごい。パンチがある。
2009年リマスターのモノラル盤は、英国盤1st.プレスを上質なオーディオ装置
でかけたのと同等の音質、と評論家たちも絶賛していた。


2009年リマスターはその良さ(野太い中域の迫力とふくよかさ)が味わえる。
ステレオ・リミックスなら分かるが、当時のモノ・マスターから最新技術でデジ
タルトランスファーしたのでよりクリアーです、と言われても触手が動かない。
なんか違うんじゃないか?と思うのだが。
当然、定位は今までと同じわけだ。やる必要があったのか?疑問。



<5CDのDisc5 EP盤について>

出ましたよ。またやっちゃいましたね。枚数稼ぎのあこぎ商法。
(Let It Beもこの手口でした)

80分入るディスクにPaperback Writer/Rainの2曲だけ。
それぞれステレオ(リミックス)とモノラルで計4トラック。10分程度。
もったいなーい。
ステレオだけDisc2か3の頭に入れておけばいいんじゃないの?
こんなんでCD5枚組ですって、胸張って言えるのか?



↑Rainのプロモビデオ撮影。


とはいえ、今回のPaperback Writer/Rainは聴きごたえがある
2CDのDisc2ハイライトの頭に収録されてるのでそっちで聴く方がお得。




<LPについて>

まず、デジタルでリミックスした音をLPで聴くことに疑問がある。
昔のプレス盤の方が音の親和性が高いような気がする。
(いわゆるアナログならではの温かみとか、ふくよかさとか)
それに高級なオーディオ機器じゃないとLPはいい音で聴けない。

LPを所有・収集する趣味もない。再生機もない。よって除外。




<結論(個人的見解)>

2CDと1CDとの価格差は400〜500円。
Paperback Writer/Rainも聴きたいなら(聴いた方がいいと思う)
2CDを買うべし
アウトテイクもそこそこ楽しめます。

完全制覇を狙いたいコレクターさんは5CDのボックスやLPをどうぞ。
そもそもリミックスに抵抗がある人は買わない方がいいです。




<続く>


<脚注>