2015年8月9日日曜日

ハジレコはモンキーズの「灰色の影」だった。

僕のハジレコ(初めて買ったレコード)はモンキーズの「灰色の影」のEP盤だ。
中学一年の時だった。
テレビの「ザ・モンキーズ」で聴いてこの曲が好きになった。




放課後に学校の近くの小さなレコード店でモンキーズのコーナーを探したが、
当然のことながらヒット曲じゃない「灰色の影」は置いてなかった。

店番のお姉さんに訊いたら「取り寄せましょうか」と言われ僕は「はい」と答えた。
さっさとヤマハにでも行けばよかったのだろうが、中学一年生の僕はまだそういう
事情に疎かったのだ。


昼前に入ると言われた土曜日、僕は授業が終わってからその店に行ってみたが、
レコードはまだ届いていなかった。
近所の本屋でCOM(「火の鳥」が目当てだった)を立ち読みして時間をつぶす。
冬の寒い日だった。

午後2時頃もう一度行くと、店番の子は申し訳なさそうにまだ届いてないと言った。
僕は店内でもう少し待つことにした。


意味もなくムードミュージックのちょっと色っぽいジャケットを眺めながらボーッ
していると、「何かかけましょうか」と言われた。
彼女は取っ替え引っ替えレコードをかけていたがその時何を聴いたか覚えていない。

4時頃やっと問屋らしき営業の男の人がレコードを持って来て何度も詫びていた。
僕はワクワクしながら「灰色の影」を持って家路についた。



「灰色の影」(Shades Of Gray)は地味ながら美しい作品であった。
モンキーズの3枚目のアルバム「Headquarters」(1967年)  に収録されてたが、
アメリカ本国ではシングルカットもされていない。

ベスト盤の選曲からも漏れることが多いが、なぜか日本では受けが良かったらしく
アルバム「Headquarters」の邦題も「ヘッドクォーターズ~灰色の影」になっている。




「Headquarters」はモンキーズが作られたアイドルであることから脱却しようと
自主的に創作に関わった初のアルバムであった。

プロジェクトの中心でありレーベルの社長でもあったドン・カーシュナーの独裁に異を
唱え自治権を得るべく主張し続け、ついにカーシュナーを更迭したモンキーズは新たに
チップ・ダグラスをプロデューサーに迎え入れた。


これまで自作曲を提供していたのはマイケル・ネスミスだけだったが、本作ではマイク
の3曲に加え、ピーター・トーク、ミッキー・ドレンツも1曲ずつ提供。
演奏もセッション・ミュージシャンに委ねるのではなく極力自分たちで演奏し、ホーン
やストリングスのアレンジも自分たちで行っている。


そのため前2作と比べるとポップスとしての完成度が低い点は否めない。
が、逆にガレージ・バンド的な雑な雰囲気が楽しめるアルバムとも言える。

今までヒット作をモンキーズに提供していたトミー・ボイス&ボビー・ハート、バリー
・マン&シンシア・ウェイルの作品も網羅しているので楽曲の質も維持できている。


「灰色の影」(Shades Of Gray)はそのマン&ウェイルの楽曲の一つ。
(イーディ・ゴーメの「恋はボサノヴァ(Blame It On The Boss Nova)」、
ドリフターズの「On Broadway」、ロネッツの「Walking In The Rain」など
ヒット曲を送り出してきたソングライティング・チームだ)

美しいメロディーと対局を成すように社会の不明確さ、不明瞭さを訴えている。
善悪、真実と嘘、強さと弱さ。。。。
ベトナム戦争が長期化しアメリカの価値観が混迷して行く中で、公平であろうとする
ことはとても難しい

「今は昼も夜もない、暗いも明るいもない、黒も白もない、灰色の影があるだけ」


曲をより壮麗にしているチェロとフレンチ・ホルンのアレンジはマイケル・ネスミスが
考え、ピーター・トークが譜面にしている。
哀愁のあるペダルスチールはマイクならではのカントリー趣味が活きている。


このアルバムを録音してる頃のモンキーズはきっと充実してて楽しかったんだろうな。

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