2016年12月13日火曜日

アップル城を去った歌姫メリー・ホプキンのその後。

◎機会があったらぜひ聴くべし  △悪くはない  △コアなファン向け
(すべて独断と偏見によるお薦め度です)


<アップル在籍時に残したレアな音源 1969-1971>

1969年にメリーはコカコーラのCMソングを歌っている。

コカコーラ社は全米で1964年に「Things Go Better with Coke」というスロ
ガンで広告キャンペーンを始め、1969年までいろいろなメディアで展開された。



モデルとコカコーラの配置、赤をうまくあしらった色使い、タイポグラフィ、写真
のトリミング、ホワイトスペースの取り方、レイアウト、すべてが完璧な広告だ。


1965から1969年にかけてこのCMソングをいろいろなアーティストに歌わせる
いうユニークなラジオCMを放送。
その顔ぶれがよだれが出そうなくらい豪華なのだ!

マーヴィン・ゲイ、シュープリームス、マーヴィン・ゲイ、アレサ・フランクリン、
フィフス・ディメンション、シュレルズ、ロイ・オーヴィソン、ナンシー・シナトラ、
ジャン&ディーン、レスリー・ゴーア、エヴァリー・ブラザーズ、B・J・トーマス、
サンディー・ポジー、といった全米チャートを賑わす一流シンガーばかり。

さらにビージーズ、ムーディー・ブルース、ジェフ・ベック・グループ、トレメロー
ズ、ヴァニラ・ファッジ、ペトゥラ・クラーク、ルル、トム・ジョーンズなど英国の
バンドやシンガーも起用している。

各アーティストならではの解釈でカヴァーされた「Things Go Better with Coke」
はどれも絶品で聴いてるとにんまりしてしまう。



↑クリックするとジャン&ディーンが歌うコカコーラのCMソングが聴けます。
途中「The Little Old Lady from Pasadena」のフレーズが出てくるのが楽しい♪




↑クリックするとシュープリームスが歌うコカコーラのCMソングが聴けます。
「Baby Love」から「Things Go Better with Coke」に入るアレンジがうまい!



そんな中でメリー・ホプキンも参加しているが彼女だけなぜか違う曲を歌っている。
「Things Go Better with Coke」が彼女のイメージにそぐわないとアップル社が
判断したのだろうか?

尺は1分のおそらくCM用の曲だと思うが、ラジオCMだったのかテレビCMだったの
、英国のみで放送されたのか不明である。



↑クリックするとメリー・ホプキンが歌うコカコーラのCMソングが聴けます。




1971年公開の映画「Kindnapped(邦題:スコットランドは死なず/戦場をかけ
ぬけた男たち)」(1)のエンドタイトル曲「For All My Days」は隠れた名作。
これは「大地の歌(Earth Song/Ocean song)」の頃だと思う。

とても美しい曲だ。透明感のある小刻みなヴィブラートがたまらない。
サウンドトラック盤はCD化もされたが現在は入手困難である。



クリックするとメリー・ホプキンの「For All My Days」が聴けます。



<アップル以降の活動 1972-1979>

アップルとの契約終了、結婚後は表舞台から姿を消したメリー・ホプキンであるが、
その後も断続的に活動していた。
が、フォークの道まっしぐらというわけでもなく、いろいろ迷走していたみたいだ。


1972年に夫トニー・ヴィスコンティと共にホビー・ホース名義で1枚だけシングル
Summertime, Summertime/ Sweet And Low」をリリース。
1958年にジャミーズとがヒットさせた曲のカヴァー。
ハーモニーがさわやかなソフトロックだ。フォークではない。


↑クリックするとホビー・ホースの「Summertime, Summertime」が聴けます。




1973年シングル盤「Mary Had A Baby/Cherry Tree Carol」を発表。これも単発。
トニー・ヴィスコンティのプロデュースでEMI傘下のRegal Zonophoneレーベルから
発売された。(日本ではアップル時代と同じ東芝音楽工業から発売された)

「Mary Had A Baby」はトラディショナルでメリーが敬愛するジョーン・バエズも
1966年にカヴァーしている。
聖母マリアの受胎を祝う歌だが、実際にメリーにもこの頃子供が生まれたようだ。
メリーの声質によく合うとても素敵な曲だ。


↑クリックするとメリーの「Mary Had A Baby」(1973)が聴けます。




スコティッシュ・フォークのシンガー&ギタリスト、バート・ヤンシュの8枚目の
ルバム「Moonshine」(1973年2月発売)に夫トニー・ヴィスコンティと参加。
The First Time Ever I Saw Your Face」では対位法によるかけ合いでヤンシュ
絶妙なデュエットを聴かせてくれた。


↑クリックするとバート・ヤンシュ&メリーのデュエットが聴けます。




1974〜1976年にメリーはトニー・ヴィスコンティのプロデュースで「Goodbye」
「Those Were The Days」の2曲を再録している(何で?)が発表に至らず。×

1976年にはトニー・ヴィスコンティのレーベル、Good Earth(RCA傘下)から
If You Love Me (Really LoveMe)/ Tell Me Now」のシングル盤をリリース。
結婚式でよく歌われる「愛の賛歌」で全英チャートにランクインした。



同レーベルから翌1977年「Wrap Me In Your Arms/Just A Dreamer」を発売。
妙な癖のある歌い方をするようになってきた。


同1977年、ウェールズが舞台の寓話をもとに作られたアルバム「The King of 
Elfland's Daughter」に姫君リラゼル役で参加。
Lirazel」「Beyond The Fields We Know」の2曲歌う。
アルバムとシングル盤に収録されているらしい。(僕は持っていない)


↑クリックするとメリーが歌う「Beyond The Fields We Know」が聴けます。



1977年にはケンブリッジ・フォーク・フェスティヴァルに参加。
バート・ヤンシュ、ダニー・トンプソン(ダブルベース)、マーチン・ ジェン
キンズ(フィドル)と共に「Ask Your Daddy」「If I Had a Love」を歌う。

このパフォーマンスはBBCが収録しラジオで「FOLKWEAVE-10」として放送。
放送音源用のレコードが存在する。聴いたことがないので?





この年デヴィッド・ボウイのアルバム「Low」にも参加。
「Sound And Vision」では3小節だけだが、メリーのスキャットが聴ける。




<1980年代のメリー・ホプキン 1980-1999>

1981年に元スプリングフィールズのマイク・ハースト、元ELOのマイケル・デ・
アルバカーキーと共にサンダンスを結成しアルバム「Sundance」を発表。×
シングル盤「What's Love/A Song 」「Walk Right In/Jealousy」も発売。×

ELOとABBAを足したみたいな感じ?中途半端さは否めない。
あれ?ポップソングは嫌なんじゃなかったっけ?と突っ込みを入れたくなる。


↑クリックするとサンダンスの「Cottonfields」が視聴できます。



このセッションで「Those Were The Days」も録音しているがトホホな出来。×

サンダンスの音楽性や活動(ツアーなど)への見解の相違、トニー・ヴィスコン
ティとの離婚、体調不良によりメリーはすぐにこのバンドを脱退している。



1982年公開の映画「ブレードランナー」はヴァンゲリスの音楽(2)が高く評価さ
れたが、「Rachel's Song」ではメリーが美しいスキャットを披露している。


↑クリックすると「ブレードランナー」挿入曲「Rachel's Song」が聴けます。


1984年にはオアシスというバンドを結成し、アルバム「Oasis」を発表。×
ピアノのピーター・スケルマンとメリーをヴォーカルに据え、チェロとマリンバを
フューチャーした大人の雰囲気のソフトロック。

アルバムからタイトル曲「Hold Me/Oasis」がシングル盤で発売された。×
同年ツアーも行ったが、またしてもメリーが健康を害したため中止。バンドも消滅。


↑クリックするとオアシスの「If this be the last time」が視聴できます。





1989年、賛美歌・鎮魂歌集のアルバム「Spirit」を発表。
Ave Maia / Intermezzo」がシングル化された。



ベルリンの壁崩壊(1989年)後、ルーマニア孤児救済のチャリティのために英国
で制作されたPRビデオに出演。
「Those Were The Days」をダンスミュージック調にリメイクした「No More 
War」を他のアーティストたちと共に歌った。
翌1990年シングル化されている。(B面はインストゥルメンタル)×

↑クリックするメリーが参加した「No More War」が視聴できます。



この後また鳴りをひそめてしまったメリーだが、1999年に英国のロック・バンド、
ストローブス出身のギタリスト、ブライアン・ウィロビーのフォーク・アルバム
「Black&White」に参加。
ウィロビーとメリーの共作「Love Belongs Right Here」を歌っている。


ひさしぶりでフォーク・シンガーとしてのメリーが聴ける。
残りの曲はすべてキャサリン・クレイグのヴォーカルで、これがとても退屈。×
CDは現在は入手困難。メリーの1曲のためにわざわざ買うほどでもないだろう。

この曲はメリーのお気に入りらしく、2013年に再録している。
この際もベニー・ギャラガーとブライアン・ウィロビーがギターで参加した。

この再録も含め、次回は2000年以降リリースされた作品を紹介します。

<脚注>


(1)「Kindnapped(邦題:スコットランドは死なず/戦場をかけぬけた男たち)」
1971年公開。イギリス映画。
監督:デルバート・マン、音楽:ロイ・バッド、出演:マイケル・ケイン他。
18世紀末のスコットランドが舞台の映画。
日本では劇場未公開。後にVHSビデオで発売された。


(2)映画「ブレードランナー」のヴァンゲリスの音楽
音楽が果たした役割の重要さについては、監督リドリー・スコット自身が「作品に
気品を与えてくれた」とヴァンゲリスの才能を称えている。
ヴァンゲリスはシンセサイザーをベースにヴォーカルやサックスも効果的に使用。
クラシック、ジャズ、インド音楽、中東音楽など多彩な音楽様式、さらに近未来的
な機械音、レトロなSPレコード音まで使用している。


<参考資料:Mary Hopkin Music、Mary Hopkin Unofficial japanese Site、
Wikipedia、Amazon.com、他>

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