2017年2月5日日曜日

ジョン・ウェットンの隠れた名作。

ジョン・ウェットンが亡くなった。
「結腸癌の治療に専念するため北米で開催するエイジアのツアーに参加できない。
残念だが年内にはステージに戻るつもりだ」と復帰を誓っていたばかりだった。



ウェットンの名前はプログレ・ファン以外にはあまり馴染みがないかもしれない。

第3期キング・クリムゾン(1973〜1974年「太陽と戦慄」〜「レッド」)でヴォ
ーカルとベースを担当し、解散後ユーライア・ヒープに移籍(1975〜1976年)。
1978年にはU.K.を結成。

1980年代にはスティーヴ・ハウ(元イエス)、カール・パーマー(元ELP)、ジェ
フ・ダウンズ(元イエス)と共にプログレ界のスーパーグループ、エイジアを結成。
「プログレッシヴ・ロックのエッセンスをポップスとして鏤めた3分半の楽曲」とい
うスタイルを確立し成功を収めている。





ウェットンは第6期ロキシー・ミュージックに参加していた時期もある。(1976年)
その間はロキシーの新作が制作されていないので、彼の演奏が聴けるのはライヴ盤
「Viva! 」のみであるが。

このロキシー在籍時に一緒だったギタリストのフィル・マンザネラとの連名で一枚
だけ「ウェットン・マンザネラ(Wetton Manzanera)」(1987年)というアル
バムを発表していたのをご存知だろうか。


エイジアのバンド内に軋轢が生まれスティーヴ・ハウが脱退。
3作目の「アストラ」(1985年)が期待したほど売れずエイジアは活動を凍結。
ウェットン・マンザネラはその直後の単発プロジェクトであった。




エイジアのようなプログレ感、ドラマ性や重厚さはなく、メロディアスでノリがよ
く程よくライト。
AORに通じるような聴きやすさ。円熟した大人ロックなのだがそこは英国流。
全編を通して微かな翳りと憂いが感じられ、独特の雰囲気を漂わせている。

連名ではあるがすべてウェットンの作品でミディアム〜スローな曲が続く。
「It's Just Love」「Round In Circles」はキレのいいリズムに乗せた哀感漂う
メロディと仕立てのいい服のような上質なサウンドが魅力で癖になりそう。
「Suzanne」はバラードの名曲中の名曲と言っても過言ではない。
この3曲はカセットのコンピレーションに入れて車でもよく聴いた。




↑クリックするとウェットン・マンザネラの「It's Just Love」が聴けます。



エイジアのプレッシャーから解放されたかのようなリラックスしたウェットンの
のびのびした(良い意味でまったりした)ヴォーカルとメリハリの効いたベースが
堪能できる。

全編にまぶされたフィル・マンザネラのギターは煌びやかで浮遊感があり、さり気
ないが小粋な味付けになっている。
ロキシーの「アヴァロン」のサウンドは大好きだけど、ブライン・フェリーの変態
っぽい歌い方が苦手、という人にも聴きやすいと思う。






アラン・ホワイト(イエス)がドラムで、ケヴィン・ゴドレイ(10CC、ゴドレイ
&クリーム)がコーラスで参加している点も見逃せない。
そのせいか「It's Just Love」は10CCのアルバムに入っていてもおかしくないよ
うな気がする。

キング・クリムゾンはデビユー作の「クリムゾン・キングの宮殿」だけ、エイジア
もほとんど聴かなかった、という僕だがなぜかこの地味なアルバムは思い出深い。



ジョン・ウェットンの訃報を受けフィル・マンザネラが追悼コメントを発表した。


Very sad to hear about the death of my good friend and fellow musical 
explorer John Wetton. 
We had so many fun times together 
its difficult to comprehend that he wont be around to share our experiences. 
His extraordinary talent as bass player, singer and composer was a wonder 
to behold .
it was a joy and privilege to know him. We will all miss him. RIP.
Phil Manzanera


良き友であり音楽を探求してきた仲間であるジョン・ウェットンの死を知りとても
悲しんでいます。
私たちは一緒にすばらい時間を過ごしました。
もうそばにいていろいろなことを共にできないのがうまく受け入れられません。
彼のベーシスト、シンガー、作曲家としての並外れた才能は本当にみごとでした。
ジョンと知り合えたことは大きな喜びであり特権もあります。
彼がいなくなってとても寂しくなりますね。ご冥福をお祈りします。

注)「RIP.」は「rest in peace」の略語で「安らかに眠れ」の意味。


<参考資料:BARKS、amass、Wikipedia他>

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