2018年1月20日土曜日

ロックな青春映画10選(4)ロックの授業で燃やせ!ロック魂。

「スクール・オブ・ロック」は2003年公開のアメリカ映画。
原題も「School of Rock」。ま、和製英語の変な邦題よりはいっか。





<映画のあらすじ>

売れないロックンローラー、デューイ(ジャック・ブラック)はロックをこよ
なく愛する熱〜いギタリスト。
その情熱あふれる過剰なパフォーマンスが空回りでバンドを解雇されてしまう。

家では同居人ネッドとそのガールフレンドから家賃を催促され困り果てる。
そんな中ネッドに名門私立ホレス・グリーン学院の臨時教師の話が舞い込む。
仕事が欲しかったデューイはネッドになりすまして学校へ赴く。


最初は教職に乗り気じゃないデューイだったが、厳格な規律に縛られた生徒た
ちが無気力で元気がないことに気づく。
みんなロックとは縁のないおとなしい生活を送っていた。


どんな音楽を聴いてきた?というデューイの問いかけに、生徒たちはクリステ
ィーナ・アギレラ(1)、パフ・ダディ(2)、ライザ・ミネリを挙げる。


どれもロックじゃない!レッド・ツェッペリンを知らないのか?
ブラック・サバスは?AC/DCは?モーターヘッドは?


デューイは授業と称して子供たちにロックの歴史、いろいろなロックがあること
、ロックのカッコよさを熱心に説き始めた。





担任したクラスの子供たちには音楽の才能があった。
デューイは子供たちとバンドを結成し、バンドバトルに出場することを思いつく。
ロックの名盤を聴かせ、楽器と歌のレッスンを始めた。

暴走する珍教師に最初はついていけなかった子供たちも、しだいにデューイの能
天気なキャラ、一切ブレのないロック道、自分たちの隠れた才能を引き出し認め
てくれる彼に惹かれるようになっていく。
ロックの開放感に目覚めた生徒たちはバンドバトルを目指して猛練習を始めた。



<楽器担当を決めてさっそく練習>

デューイはさっそく生徒の楽器担当を決めバンドの練習を始める。

クラシックギターを習ってる男子にはフライングVを持たせ、ブラックサバスの
「アイアン・マン」、ディープパープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」、
AC/DCの「ハイウェイ・トゥ・ヘル」のイントロを弾かせ、ギターのアクション
を真似させる。

左右に体をふりながらギブソンSGを弾くデューイはまさにAC/DCのアンガス・
ヤングそのものでノリノリ。「そう、それだ!」とは大はしゃぎ。



↑写真をクリックすると楽器の指導シーンが観られます。



ピアノを弾ける男子はドアーズの「タッチ・ミー」のイントロに挑戦。

チェロをやってるという女子はベーシストに任命された。
デューイはポッシュ・スパイス(スパイスガールズのビクトリア・ベッカム)と
彼女を呼び、ベースの指弾きや弾く時の顔つき(笑)を指導。





ドラム担当の子にタムとシンバルの刻み方を指示。
まず「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のセッションが始まった。



コーラス隊の候補を募るが、女の子たちが歌えるのはミュージカル「アニー」
挿入歌の「トゥモロウ」、聖歌「アメイジング・グレイス」、ミュージカル「キ
ャッツ」の「メモリー」などロック色のない歌ばかり。

唯一、黒人の大柄な少女がアレサ・フランクリンの「チェイン・オブ・フールズ」
をアカペラで歌い、デューイを喜ばせる。
彼女は肥満が理由で自信喪失気味だったが、デューイは「アレサ・フランクリン
だってでかい女だ」と励ます。



<ロックの教材>

デューイは「宿題」と称して子供たちにロックの名盤CDを聴かせる。

ギター担当の子にはジミ・ヘンドリックスの「アクシス:ボールド・アズ・
ラヴ」を、キーボード担当にはイエスの「こわれもの」を(特に「ラウンド
・アバウト」のキーボード・ソロを聴くようにと)渡す。
ドラムの子にはラッシュの「西暦2112年」のドラム・ソロを聴けと言う。

バックコーラス志望の子にはブロンディの「妖女ブロンディ」を渡す。
歌唱力のある大柄の少女にはピンクフロイドの「狂気」が渡され、特に「虚空の
スキャット」のヴォーカル・ソロを聴くようにと言われた。



↑写真をクリックするとセッション〜宿題のシーンが観られます。


ビデオ講座では、ザ・クラッシュ、ラモーンズ、キース・リチャーズ、ジミ・
ヘンドリックス、アンガス・ヤング、ザ・フーなどが登場。
破壊的かつ暴力的な故キース・ムーンのドラミング、ピート・タンゼントが
腕をぶん回すウィンドミル奏法は子供たちも真剣に見入っていた。



<「移民の歌」が使われた!>

劇中ではザ・クラッシュ、クリーム、ザ・フー、ラモーンズ、ザ・ダークネス、
AC/DC、スティーヴィー・ニックス、メタリカ、キッスなどが流れる。

中でもレッド・ツェッペリンの「移民の歌」が流れるシーンは格別だ。
車を運転するデューイ(ジャック・ブラック)がロバート・プラントの雄叫び
「アアア〜ア〜」の度にすごい形相で振り返るのが何度見ても笑える。



↑写真をクリックすると「移民の歌」が流れる映画のトレーラーが観られます。


ツェッペリンは音源使用の権利にかなり厳しく許諾は困難と思われていた。

2000年の「あの頃ペニー・レインと」で初めて5曲が使用されたのは前にも書
いたが、あれはキャメロン・クロウ監督がローリングストーン誌のライターだっ
た頃からのジミー・ペイジとの関係が大きいと思う。
しかも「移民の歌」は大ヒットした彼らの代表的な曲の一つである。


ジャック・ブラックは秘策に出た。
「ロックの神よ、重要なシーンなので是非使わせて欲しい」と終盤のホールの
エキストラ全員とビデオレターで懇願したところ、ペイジ、プラントから許諾
が降りたのだ。

ブラックは「どんな事でも真剣にお願いすれば叶う」と語っている。



<ロック好きは見逃せないネタ>

テストについて他の先生から意見を求められたデューイは、ホイットニー・ヒ
ューストンの全米No.1ヒット「「グレイテスト・ラブ・オブ・オール」の歌詞
「Believe that children are our future. Teach them well and let them 
lead way」をそのまま口にする。


ジョーン・キューザックが演じる堅物の女校長が実はスティーヴィー・ニック
スの大ファンであることを知ったデューイ。
校長をバーに誘い「Edge of Seventeen」をかけ、「この曲、大好き!」とほろ
酔いで一緒に歌う彼女に課外授業名目のコンサート参加を認めさせてしまう。





バンドバトルのステージに立ったデューイの衣装(半ズボン、ネクタイ、ジャ
ケット)はまさにアンガス・ヤング(AC/DC)そのもの。
ギターはもちろんギブソンSGだ。
デューイは念願のステージから客席へのダイブをキメる。


デューイがロックの衰退の要因の一つとMTVを激しく非難する(3)シーンがある。
配給元のパラマウントとMTVは共にバイアコム傘下にあり、このシーンはまずい
とカットされると思っていたがそのまま通ってしまった、とジャック・ブラック
は語っている。



<お子さまバンドの実力>

黒板のロック相関図は監督のリチャード・リンクレイターが描いたそうだ。





脚本は同居人ネッド役のマイク・ホワイトで、ジャック・ブラックに主演させ
るためにこの物語を書いた。
ジャック・ブラックは俳優業の傍、テネシャスDというバンドで活躍している。


オルタナティヴ・ロックのソニック・ユースやガスター・デル・ソルに在籍し、
親日家でも知られるジム・オルークが子供たちの演奏を指導した。
子供たちはオーディションやスカウトで集められ、数ヶ月のミュージック・キャ
プでロックの演奏技術を習得したらしい。

主演のジャック・ブラックは「子役たちはあっという間に上達して、僕より
うまくなってしまった」と語っている。


バンドバトルで披露されるオリジナル曲「スクール・オブ・ロック」も、クロ
ージングクレジットで流れるAC/DC「イッツ・ア・ロングウエィ・トゥ・ザ・
トップ」のカヴァーも実際に子供たちが演奏している。

「スクール・オブ・ロック」でのジャック・ブラックと太めの女の子とのヴォ
ーカルの掛け合いがすごくいい。



↑写真をクリックすると「スクール・オブ・ロック」演奏シーンが観られます。


Oh,Yea!  I’m Alive 
やあ、俺は生きてるぜ

Rock got no reason, Rock got no rhyme 
ロックには理由なんて要らないし、決まった形も要らない
You better get me to school on time 
俺を学校に連れてってくれ 間に合うようにね



<脚注>

(1)クリスティーナ・アギレラ
アメリカの女性ポップ・シンガー。
パワフルなR&B、ヒップポップなどを得意とする一方、バラードでも歌唱力を
発揮し評価は高い。社会的弱者からの支持も多い。
1999年デビュー時の清純イメージから露出度の高い派手な服装とメイクへ。
ブリトニー・スピアーズ同様、批判されることがあった。


(2)パフ・ダディ
ハーレム地区出身の音楽プロデューサー、作詞家、アレンジャー、ファッション
デザイナー、俳優、MCで成功したショーン・コムズの変名。
ディディ、ショーン・パフィ・コムズなど頻繁にMCネームを変えている。


(3)ロックの衰退の要因はMTV
MTVは1981年にアメリカで設立されたケーブルTV向け音楽専門チャンネル。
80年代半ばMTVで流れるプロモーション・ビデオが多くのヒットを作り出した。
背景には家庭用ビデオ・レコーダーの普及、大型TVモニターの発売、カフェバー
などでこうしたプロモーション・ビデオが流れる機会が増えたこともある。
新曲は映像とセットで評価されるようになり、カッコよさがヒットの法則になる。
ミュージシャンにとってプロモーション・ビデオ制作は必須となり、斬新かつ
創造性に富んだ映像を生み出すきっかけにもなった。

一方では「ビデオがラジオ・スターを殺した」などMTVによって音楽シーンが一
変したことを嘆く声も挙がった。
また新曲ごとに莫大な映像制作費がかかるのもミュージシャンには負担になる。
近年はYouTubeで新曲のプロモーション・ビデオを視聴する人が増え、その映像
もかつてほど大掛かりではなくシンプルな内容が主流になっている。


<参考資料: Ultimate Classic Rock、IMDb The School of Rock Trivia、
映画.com、TAP the POP、スクール・オブ・ロックDVD特典映像、
Wikipedia、他>

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