2019年2月4日月曜日

リッチー・ブラックモア道を突き詰めたい人へ。

<リッチー・ブラックモアの演奏の特徴>

1970年代のブルース・ロック全盛期。
ギタリストはブルーノート・スケールかペンタトニック・スケール一辺倒だった。


リッチーはロックにクラシック音楽の要素クロマチック・スケールハーモニック
マイナー・スケールを取り入れた大胆かつ独特なフレーズを弾いた。

しかも速弾きを生かしたギターソロで他のギタリストを圧倒していた。
ジミー・ペイジも「ソロではリッチーに敵わない」と言っていたほどだ。
リッチー自身も速弾きにこだわっていたことを認めている。



↑クリックするとリッチーとイアン・ギランの掛け合いが観られます。


<リッチーのルーツ>

リッチーは11歳の誕生日にに父親からスパニッシュギターを買ってもらったことが
きっかけでギターを弾くようになる。
1年間クラックギターのレッスンを受けていたそうだ。
左手の運指で小指が使えるのはそのレッスンのおかげだ、とリッチーは語っている。

14歳の時、カール・ヘフナーのクラブ50を手に入れ人前で演奏を披露する。
エレクトリック・ギターの魅力に取り憑かれたリッチーは、近所に住むビッグ・ジム
・サリヴァン(1)に師事しギターの腕前を上げていった。
その後ギブソンのES-335を購入し、プロとして活動するようになる。





<クラプトン、ジミヘンから受けた影響>

ディープパープル結成後はクラプトンに影響を受け、ブルースロック的なテクニック、
ベンディング(チョーキング)や振れの大きいヴィヴラートを取り入れた。
左指でのヴィヴラートはクラプトン本人から習ったが、習得するのに時間がかかった
とリッチーは言っている。

ジミ・ヘンドリックスの影響を強く受けていることもリッチーは公言している。
パープルのデビュー・アルバムではジミの「ヘイ・ジョー」をカヴァーしている。

ブラック・ナイトのリフはリッキー・ネルソンのサマータイムが元ネタと前回書いた
が、ジミもヘイ・ジョーでサマータイムのリフの上のラインをイントロにしている、
とリッチーは言っている。



イン・ロック以降、リッチーのトレードマークともなる1968年製ラージヘッド、
メイプルネックのブラック・ストラトキャスターもジミの影響らしい。(2)

実際にリッチーは1968年12月のニューヨーク公演の際、ジミがストラトを入手した
マーニーズという店で、ストラトを購入した可能性が高いと言われている。

他にテレキャスターのネックを装着したホワイト・ストラトキャスター、左利き用
ストラトキャスターの使用、ステージでの ギター破壊などのパフォーマンスなど、
ジミへの傾倒ぶりは半端ない。



<ES-335からストラトへ、VOXからマーシャルへ>

初めて動いてるディープ・パープルを見たのはNHKのヤング・ミュージックショー
というかなり恥ずかしい名前の番組(3)だった。
1970年BBCトップ・オブ・ザ・ポップス出演時の映像だと後で知る。

この時リッチーはチェリーレッドのギブソンES-335を使用していた。
ドット・ポジション、ボディーの形状から見て1958〜1959年と思われる。
ビグズビーのトレモロ・アームを搭載してあった。

だから僕の先入観はリッチー・ブラックモア=ES-335だった。
ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラとの共演でもリッチーはES-335
を弾いている。



↑ES-335を弾くリッチーが観られます。



次のイン・ロックからストラトも併用するようになったと思われる。
ストラトに慣れる(改造する)のに時間を要した、とリッチーは言っている。

ES-335とストラトではネックのグリップ感も違うし、スケールも違う。
それにつるつるしたメイプル指板は苦手という人も多い。(だから削った?)


マシンヘッドの頃は完全にリッチー仕様のストラト使いになっていた。
ストラトといえば線が細く鈴鳴り、鋭角的なシリッドでトレブリーな音が特徴。
ファットでウォームなギブソンとは対照的だ。

しかしストラトであれだけワイルドな音を出すジミに感化されて、リッチーは
ストラトが欲しくなった。(クラプトンもジミの影響でストラト派になった)


確かギターマガジンの記事だったと記憶しているが、リッチー=マーシャルの
イメージが強いが、マーシャルはライブで大音量を得るため、レコーディング
ではVOX AC-30(初期のビートルズが使用)を使っている、と書いてあった。
マーシャルでは温かみのある音が得られないらしい。


ES-335→ストラトに伴いVOX AC-30→マーシャル200に変更されたわけではない。
スモーク・オン・ザ・ウォーターのレコーディングはストラトをVOX AC-30につ
ないで鳴らした、と本人が語っている。



<リッチー先生の改造癖とユニークな演奏スタイル>

リッチー・ファンの間では周知の話だが、彼の愛器ラージヘッドのストラトは
指板が削られスキャロップド・フィンガーボードと呼ばれる加工がされている。
それに伴いジャンボフレットに打ち直しされている。

最初の1968年製ストラトはリッチー先生自らギコギコヤスリで削ったとか。
よい子のみんなは真似しないでね。リペアマンに任せましょう。




スキャロップ加工により、指の腹が完全に指板につかなくても弦に触れるだけで
フレットを押さえられるようになる。
その結果、軽いタッチで粒立ちの良いブライトな音が出せる。

速弾きがしやすくなり、ヴィブラートやベンディング(チョーキング)も軽い
タッチで行え、サステインもコントロールしやすいので、リッチーのようなキレの
いいのソロには有利だ。
ヴィブラートの振幅も大きく早い点もリッチーならではのサウンドに貢献している。


リッチー奏法では、ハンド・ヴィブラートとトレモロアームによるより振幅の大きい
ヴィブラートのコンビネーションも大きな特徴になっている。


が、トレモロユニットに関しては意外にノーマルだ。
ストラトのトレモロユニットは5本のスプリングが装着されていて、好みで本数を
調整できる。
リッチー先生は左から2番目のスプリングのみ外し、4本になっている。

ストラトのトレモロユニットはアーミングを行うと音が狂いやすいのが欠点だが、
リッチーは頑なにシンクロナイズド・トレモロを使い続けている。
しかも、あれだけアームを駆使しているのに驚異的に音が狂わないことで有名だ。





リッチー先生いわく「俺のトレモロは最高のチューニングをしてもらっているから
狂わない」とのこと。はたして、どんなセッティングなのか?
一説によると、スプリングのハンガーが少し斜めにセットされているとか。


ピックアップも1978年まで(パープル〜レインボー第4期)はフェンダーのをその
まま使用していたそうだ。(その後シェクターやダンカンを搭載)
もっともリッチーはセンター・ピックアップはまったく使わないため、演奏の邪魔に
ならないよう目いっぱい下げられ、結線もされていない。

コントロール、セレクトスイッチについては諸説あり。
深入りしないよにしよーっと(笑)



<リッチー道を極めるためのアクセサリー、エフェクター>

弦は英国製のピカートの特注。010、011、014、026、038、048という仕様。
2〜3弦が細くベンディングしやすい。6弦は太めで迫力ある低音が出せる。

リッチー先生愛用ピックはベッコウ製の五角形ピック





エフェクターはイギリス製ホーンビー・スキューズ(Hornby Skewes) のトレブル・
ブースターを使用していた。(5)
またパープルの初期、ダラス・アービターというファズ・フェイスも使用したらしい。

リバーブはプレートリバーブ(鉄板を振動させる旧式の装置)の他、ソロではルボック
スのテープレコーダーをエコーマシンとし使用していた。(ステージでもお目見えする)
1973年頃からはアイワのオープンリール・デッキを改造しエコーマシンにしていた。





<唯一無比のリフ、リッチー・サウンド>

ラージヘッドのストラトとマーシャル200。トレブル・ブースター。
これである程度リッチー気分に浸れるかもしれない。

でもリッチー・ブラックモアへの道は長く、奥深い。
たとえばスモーク・オン・ザ・ウォーター


ブライアン・メイはこう言っている。
「簡単だから誰もが弾きたがる。でも誰もリッチーみたいには弾けないんだ」と。

多くのギタリストは指を寝かせてGmのバレーコード、ダウンピッキングで弾いている。
しかしリッチーはサードポジションで完全4度の和音をアップピッキングで、しかも
ピックでなく指で弾いている、と本人が語っている。



↑スモーク・オン・ザ・ウォーター。指でアップで弾いてるのが確認できます。


最後にスティーヴ・ルカサーが言ってたこと。
「何で自分が思いつけなかったのかと思うようなシンプルで忘れられないリフ。
それがリッチー・ブラックモアのすごさなのだ。」


<脚注>


(1)ビッグ・ジム・サリヴァン
英国のセッション・ギタリストとして幅広いキャリアを有するミュージシャン。
エディ・コクランやトム・ジョーンズの伴奏を務めた事もある。
少年時代のリッチーが近所に住んでいて、様々な奏法を教えたという。
またジミー・ペイジの師でもあった。
ビッグ・ジム・サリヴァンに対して、ペイジはリトル・ジムと呼ばれていた。


(2)ジミ・ヘンドリックスの影響とストラトキャスター
クラプトンもクリーム時代はES-335、レスポール、SG、ファイアバードなど
ギブソン一辺倒だったが、ジミの影響でストラトを使うようになったそうだ。
クラプトンもストラトを使うようになったのはジミの影響だと言っている。


(3)「ヤング・ミュージック・ショー」
1971年10月から1986年12月までNHK総合テレビで不定期放送された音楽番組。
BBCが制作したコンサートやスタジオ・ライブの他、来日アーティストの公演をNHK
が収録したものも放送された。
クリーム、CCR、EL&P、ローリングストーンズ、ディープパープル、ピンクロイド
、スリー・ドッグ・ナイト、エルトン・ジョン、シカゴ、キッスなどが紹介された。


(4)センター・ピックアップは使わない
ちなみに2009年にフェンダーから発売されたリッチーのシグネチャー・モデルは
センターPUはダミーになっていた。
フロント、リアはダンカンのクォーターパウンド(シングルコイルなのにズ太い音)
ボディーは白でローズ指板、適度なスキャロップ(笑)ヴィンテージ系フレット。




(5)ホーンビー・スキューズのトレブル・ブースター
このメーカーは既にないが一時ピジョンというメーカーがレプリカを製造していた。
現在はBSMというメーカーが、リーッチー・サウンドを再現するトレブル・ブースター
を製造しているので、簡単に入手できる。


<参考資料:ザ・リッチー・ブラックモア・ストーリー、イケベ楽器「リッチー主義」、
エレキギター博士、デジマート・マガジン、ミュージックライフ別冊「ブラックモア読本」、リッチー・ブラックモアへの道、BARKS、Wikipedia、他>

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