2020年1月5日日曜日

クリーム解散直前の全米ツアー、ロンドン公演が発売!

年末に友人が教えてくれた。

2020年代のスタートを飾る貴重な発掘音源が2月に発売されるらしい。
1968年クリームが解散宣言後に行った10月の全米ツアーから3公演
11月26日のロンドン公演を全曲収録した4CDセットである。



Disc1~3に収録される全米ツアー3公演はオリジナル・テープより新たにリマ
スターされた最高音質で収録、とのことだ。

全35曲中、最後のアルバム「Goodbye Cream(1969)」に収録された3曲、
後にリリースされた「Live Cream Volume II(1972)」に収録された3曲、
クラプトンの自伝映画「Life In 12 Bars(2018)」OST盤収録の1曲以外は
すべて初登場の音源だ。

Disc4ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールでの最終公演をオリジナル
・マスターよりトランスファーされた初音源。
BBCテレビで放送され後に映像作品化ものより格段に高音質だろう。





↑Sunshine Of Your Love (Live At Oakland Coliseum)が公開されている。

音はかなりいい。ボーカルは二人ともセンター。
クラプトンのギターは右寄り、ジャック・ブルースのベースは左寄り
ベースもリードのような唸る演奏をしてるのでこの定位は聴きやすい
ジンジャー・ベイカーの4タム、2バスドラ、スネア、ハイハット〜ライド〜
クラッシュ・シンバルの強烈なアタック音が左右に広がり迫力満点だ。



以下が収録曲である。

DISC 1 – 1968/10/4 オークランド・コロシアム (USツアー初日)
White Room
Politician
Crossroads 
Sunshine Of Your Love 
Spoonful 
Deserted Cities Of The Heart
Passing The Time 
I'm So Glad 

*は「Live Cream Volume II(1972)」に収録。


DISC 2 – 1968/10/19 LAフォーラム
White Room 
Politician
I'm So Glad
Sitting On Top Of The World
Crossroads 
Sunshine Of Your Love 
Traintime 
Toad 
Spoonful**

*は「Goodbye Cream(1969)」に収録。
**は「Life In 12 Bars(2018)」OST盤収録。


DISC 3 – 1968/10/20 サンディエゴ・スポーツ・アリーナ(全曲未発表)

White Room 
Politician 
I'm So Glad 
Sitting On Top Of The World 
Sunshine Of Your Love 
Crossroads 
Traintime 
Toad 
Spoonful 


DISC 4 – 1968/11/26 ロンドン ロイヤル・アルバート・ホール(初CD化)

White Room 
Politician 
I'm So Glad 
Sitting On Top Of The World 
Crossroads 
Toad 
Spoonful 
Sunshine Of Your Love 
Steppin' Out 



↑このツアーでクラプトンはギブソンのファイアバードとES-335を使用。
ジャック・ブルースはギブソンEB-3、アンプは二人ともマーシャル。
ジンジャー・ベイカーはラディックのシルバースパークル2バス・セット。
(シンバルはジルジャン)



多少の違いこそあるものの、Disc1~4のソングリストはほぼ同じ。
長尺の曲の演奏の出来を聴き比べるのは、けっこう根気が要りそうだ。

それとこのツアーがクリームのインタープレイ(1)の頂点か?と問われると、
うーん、どうなんでしょうねー。



個人的には以下2枚のライヴ盤がクリームの真骨頂ではないかと思う。
いずれも1968/3/10 サンフランシスコ・ウィンターランドでの録音。
クラプトンによる解散宣言が7月10日だから、その4ヶ月前のライヴだ。





Wheels of Fire(1968 クリームの素晴らしき世界)
2枚目(2)に収録のLive at the Fillmoreからの4曲。

Crossroads 
Spoonful 
Traintime 
Toad 


Live Cream(1970)

N.S.U. 
Sleepy Time Time 
Sweet Wine 
Rollin' and Tumblin' 
Lawdy Mama *1967年のスタジオ録音。Strange Blueと演奏は同じ。(3)




Live Creamの方はデビュー・アルバムのFresh Cream収録曲でのみで、
後のヒット曲は入ってないものの、緊張感がありながらよく制御された
4人のインタープレイが堪能できる

僕はヤマハの輸入盤セールでこのLive Creamを買って聴き込んだ。
ジャケットもいい。(ジャケ写は10月の全米ツアー時のものと思われる)
N.S.U.が特に好きでバンドでもやった。(僕はベース担当だった)


Live Creamの好評でLive Cream Volume II(1972)も発売された。

Deserted Cities of the Heart 
White Room 
Politician 
Tales of Brave Ulysses** 
Sunshine of Your Love 
Steppin' Out**

*は1968/3/9 サンフランシスコ・ウィンターランドで収録。
**1968/3/10 サンフランシスコ・ウィンターランドで収録。




前半の3曲は1968/10/4日 オークランド・コロシアム・アリーナで収録。
(つまり今回のDISC 1収録と同じテイクということになる)

クリームの代表曲が網羅された美味しい内容にもかかわらず、なんかバラ
け感があるし、ボーカルもインプロビゼーションもイマイチと感じた。


Goodbye Cream(1969)収録の3曲(今回のDISC 2と同じ)は好きだ。







DISC 1~3の全米ツアー3公演をリマスターされた音で通して聴くと、
今まで抱いていた解散前のライヴの印象が変わるかもしれない。







ロイヤル・アルバート・ホール最終公演は、映像とセットでHi-Fiとは言い難い
(会場の残響音のせいか?)というマイナスイメージが残っていた。

映像自体も暗く、カメラワークが落ち着きがなかった。
当時の演出なのかズームイン・アウトを繰り返し揺らしたり、カット割りが早
すぎて演奏してる姿が楽しめない。見ていて消化不良気味になる。



↑クラプトンは1964年製チェリーレッドのギブソンES-335を使用。
それに合わせたのか?赤いウエスタンシャツがカッコよかった。
ジーンズは映像から推測すると、リーバイス517ではないかと思う。


とはいえ当時、動いてるクリームは初めてなので見入ってしまった。
解散から数年後、NHKのヤング・ミュージックショー(4)という恥ずかしい
名前の番組で放送したのだ。


合間にクラプトンのインタビューとデモ演奏が入っているのも貴重だった。
サイケデリック・ペイントを施したギブソンSGを弾いてみせながら、
音色の作り方、フレーズの使い方、ビブラートのかけ方を説明している。

高校生だった僕はそれを見て、ベンディング(チョーキング)+ビブラート
を練習したものだ。



↑クリームの1968解散コンサートの映像が観られます。

17’00”からクラプトンのインタビュー&デモ演奏(字幕入り)が入る。
服装、髪型と髭、サイケSGを弾いてることから、このインタビューだけは
解散コンサート以前に撮られたものと思われる。



今回のDISC 4のロイヤル・アルバート・ホールでの最終公演はおそらく
残響音も処理され、DISC 1~3同様クリアーな音に一新されてるはずだ。



クリームは1966年にデビューして、わずか2年で解散してしまった。
しかし卓越したテクニックを持つ3人によるミニマムなユニットで、ブルース
ロックにジャズのインタープレイを取り入れた新しいスタイルを確立

解散から50年以上経った今でもスーパーバンドとして語り草になっているし、
彼らの鬼気迫るせめぎ合いの演奏は時代を超えてすごい!と思わせる。


そういう点で、この4CDセットはクリーム最後の貴重な音源である。
クリームのコアなファンだけでなく、次世代にも聴いてもらいたいと思う。





ジンジャー・ベイカーが昨年10月6日、80歳で他界した。
この数年、肺疾患、心臓疾患など健康面で様々な問題を抱えていたそうだ。

この4CDセット発売前に亡くなったのは残念である。
聴いたら「俺たちはやっぱり凄かった!」と誇らしげに言っだろう。



クラプトンは2020年2月17日ロンドンのハマースミス・アポロで盟友ジンジャー
・ベイカーの功績を讃える一夜限りのトリビュート・コンサートを行うことを
発表した。出演するゲストは今後発表される予定だ。

収益はベイカー家と近しいレナード・チェシャー(世界中の障害者が自立した
生活を送れるように支援する健康と福祉の慈善団体)に寄付される。


せっかくなので、次回もクリーム。
クリーム結成の経緯、3人の奏法、楽器、機材、再結成について掘り下げます。
乞うご期待!


<脚注>


(1)インタープレイ
優れたプレイヤーたちが共演し、互いに触発し合いながら素晴らしいインプロビ
ゼーション (アドリブ)・ソロを生み出すこと。ジャズの専門用語である。


(2) Wheels of Fire(1968 クリームの素晴らしき世界)
クリームの3枚目の2枚組アルバム。(1968年8月発売)
Wheels of Fire (In the Studio)、Wheels of Fire (Live at the Fillmore) の2LP
としてリリースされ、2枚はよく似たカバーアートだった。
イギリス盤のスタジオ・アルバムはアルミホイル地に黒のプリント、ライブ・
アルバムはその反転であった。
日本盤のスタジオ・アルバムは金ホイル地に黒のプリント、ライブ・アルバム
はアルミホイル地に黒のプリントであった。


(3)Lawdy MamaとStrange Blue
デビュー・アルバムのFresh Cream用にLawdy Mamaが収録された。
その後フェリックス・パパラルディが曲を書き換え、Strange Blueとして
ボーカルだけ録り直した。
演奏は同じトラックを流用。両方ともクラプトンが歌っている。


(4)「ヤング・ミュージック・ショー」
1971年10月から1986年12月までNHK総合テレビで不定期放送された音楽番組。
BBCが制作したコンサートやスタジオ・ライブの他、来日アーティストの公演をNHK
が収録したものも放送された。
クリーム、CCR、EL&P、ローリングストーンズ、ディープパープル、ピンクロイド
、スリー・ドッグ・ナイト、エルトン・ジョン、シカゴ、キッスなどが紹介された。


<参考資料:discovermusic.lp、小倉泰治ファンサイト、amazon、BARKS、
ユニバーサルミュージック、Wikipedia、YouTube、K.T Dogear、他>

0 件のコメント: