2022年7月16日土曜日

何度も聴きたくなるデュエット曲10選(1)

あくまでも個人的な好みです。一般受けしないからお薦めはしません(笑)
それから1-10.は好きな順位ではなく、ざっくり年代順に並べただけです。




1. フランク・シナトラ&ナンシー・シナトラ「Somethin' Stupid」
 (邦題:恋のひとこと)


フランクとナンシーのシナトラ父娘の仲睦まじいデュエットが聴ける。
作者のカーソン・パークスはヴァン・ダイク・パークスの兄。

編曲はレッキング・クルーのセッション・ギタリスト、ビリー・ストレンジ
ナンシーのヒット曲「バン・バン」のトレモロを効かせたギターもこの人だ。
ベンチャーズの代役から12弦アコースティックまでこなす。
本作のようなマリアッチ(メキシコ民謡)風の演奏も得意とする。




1967年2月に録音。和気藹々で歌われたのだろう。
シングル盤で発売されると、4月には4週連続でビルボード1位を獲得した。
ビルボードのイージーリスニング・チャート、全英シングルチャートでも1位。



↑フランク&ナンシー・シナトラの「Somethin' Stupid」が視聴できます。
ゆるーいダンスもいいですな(笑)




                             
↑同年、弟のフランク・シナトラ Jr.(写真右)とTV出演し同曲をデュエット。
声の相性はいい。写真をクリックすると視聴できます。(写真:gettyimages)




↑2001年にはニコール・キッドマンと英国のポップシンガー、ロビー・ウィ
リアムズがデュエットしてヒットさせている。




大滝詠一は娘が歌手になったら、この曲をデュエットするつもりだったらしい。
しかし娘が歌手にならなかったため断念。
2003年に竹内まりやをデュエットの相手に選び録音した。

竹内まりやが自身のルーツ、1960年代の米・英・伊・仏の曲をカバーした
アルバム「Longtime Favorites」に収録されている。
大滝詠一が生前最後に参加した公式の楽曲となった。
ストリングスの編曲は井上鑑と思いきや、服部克久が手がけている。



↑竹内まりや&大滝詠一「恋のひとこと」(2003年)が聴けます。


二人ともうまいなあ。声の相性も最高。
この曲は3小節ぶっ通しで16分音符の歌メロが続きブレスが難しい。
英語に長けていないと歌詞を追うのもきつい。

ナンシーもニコール・キッドマンも竹内まりやと大滝詠一もさらっと歌ってる
けど、それだけ歌唱力があるってことです。

※細野晴臣もカヴァーしてるけど圧倒的に竹内まりや&大滝詠一の勝ち〜。




2. バート・ヤンシュ&メリー・ホプキン
「The First Time Ever I Saw Your Face(邦題:愛は面影の中に) 」


1973年に発表されたバート・ヤンシュの8作目となるアルバム「Moonshine」
に収録されている。
ヤンシュはスコットランド出身のトラッドフォークのシンガー、ギタリストで
ジミー・ペイジ、ニール・ヤング、ポール・サイモンに多大な影響を与えた。





アルバムはダブルベース奏者のダニー・トンプソンがプロデュースしている。
アレンジを担当したトニー・ヴィスコンティは当時メリーと結婚していたため、
引退して主婦業に専念してたメリーに声をかけたのだろう。

鈴鳴りの美しい高音は衰えていなかった。
もともとフォークシンガー志向のメリーはこの曲に向いている。声の相性もいい。
ヤンシュの歌にハモるというより、タイミングをややずらしカウンターメロディ
のように絡むメリーのパートは難易度が高いはず。さすがの歌唱力だ。



↑バート・ヤンシュ&メリー・ホプキンの「The First Time〜 」が聴けます。
(写真:gettyimages   右はトニー・ヴィスコンティ)



「The First Time Ever I Saw Your Face」は英国伝統音楽の復興活動の中心
人物でもあったイワン・マッコールの作品。

ヤンシュは1966年のアルバム「Jack Orion」でこの曲をインストゥルメンタル
として取り上げている(ライヴでもよく披露している)
歌付きヴァージョンは2回目のカヴァーで、インストとは違った魅力がある。





この曲はロバータ・フラックによるカヴァー(1969年)が一番ヒットした。
(この人は白人フォークシンガーの曲も好んで取り上げている。
ロリ・リーバーマンのKilling Me Softly with His Song(邦題:やさしく
歌って 1973年)も大ヒットとなった)


「The First Time〜 」はPP&Mもカヴァーしている。
ふつうに3声ハーモニーであまり面白みがない。(ファンには申し訳ないが)




3. エリック・クラプトン&ボブ・ディラン「Sign Language」

クラプトンのレイドバック3部作最後のアルバム「No Reason to Cry」
(1976年)に収録されている。





このアルバムはザ・バンド所有のシャングリ・ラ・スタジオで録音された。
ザ・バンドのメンバー全員の他、ディラン、ロン・ウッド、ビリー・プレストン
、など多くのミュージシャンが参加
ザ・バンドの影響で前2作よりもスワンプロック色が強くなっている

この「Sign Language」はディランによる提供曲。
ディラン自身とクラプトンと2人で歌っている。



↑クラプトン&ディランの「Sign Language」が聴けます。



10小節の歌メロを繰り返すだけで何の展開もない
いかにもディランらしい曲。
歌詞の意味もよく分からない。でもディランのこういう曲は絶品である。


ディランとクラプトンの歌もハモってるんだかハモってないんだか、歌の
タイミングもきっちり合っていない。それぞれ自由に歌っているというか。
なんだかリハーサル・テイクをそのままいただきましたみたいなラフさだ。
このゆるーい感じがたまらない。




しかし演奏はザ・バンドがどっしり構えている。抜群の安定感と余裕だ。
間奏の枯れたしぶーいギターはロビー・ロバートソン
スライド・ギターはロン・ウッド




4. ケニー・ロギンス&スティーヴィー・ニックス
「Whenever I Call You "Friend"(邦題:二人の誓い)」

1978年に発表されたケニー・ロギンスのソロ名義2作目となるアルバム、
「Nightwatch」のB面1曲目に収録されていた。




曲はケニー・ロギンスとメリサ・マンチェスターとの共作。
本来はメリサ・マンチェスターとのデュエット曲として作られたが、契約上
の問題によりスティーヴィー・ニックスが相方を務めることになった。
(メリサ・マンチェスターも後年セルフ・カヴァーしている)



↑ケニー・ロギンス&スティーヴィー・ニックスの「Whenever I Call 
You "Friend"」が聴けます。




僕はスティーヴィー・ニックスの声も容姿も好きではない。
しかし、このデュエットは大好きだ。

ケニー・ロギンスの張りのあるボーカルとスティーヴィー・ニックスのやや
ハスキーで鼻にかかった声、そして気だるい歌い方のマッチングがいい。
この曲はシングルカットされ全米5位のヒットとなった。




アルバムもソロ名義になってから初のトップ10入りを果たしている。
マイケル・マクドナルドとの共作「What a Fool Believes」も収録されて
いるが、シングルカットはされなかった。
曲の原型を作っていたマクドナルドの家を訪れたロギンスのアイディアでブリ
ッジ部が完成したらしい。

半年後に発表されたドゥービー・ブラザーズのアルバム「Minute by Minute」
がビルボード・アルバムチャート1位を獲得。
収録されていた「What a Fool Believes」はシングルカットされ、こちらも
ビルボードのポップ・シングルチャートの1位に輝き、グラミー賞最優秀
レコード賞、最優秀楽曲賞を受賞した。

この曲がケニー・ロギンスとの共作と知らない人の方が多いかもしれない。
(ロギンスにもがっぽり印税が入ったから御の字だろうが)




5. ジェイムス・テイラー&J.D.サウザー「Her Town Too」
(邦題:憶い出の町)




ジェームス・テイラー10枚目のアルバム「Dad Loves His Work」(1981年)
の2曲目に収録された曲である。
シングルカットされビルボード・チャート11位のヒットを記録した。


JTの艶やかなゴールデンボイスと、ソフトなウィスパーボイスで切ない高音
部を歌うJ.D.サウザーが対照的この2人の声が重なるとマジックが起きる

JTが歌う同じメロに対してJ.D.サウザーは下にハモる時もあれば上にハモる時
もあり、その使い分けが絶妙。サビの掛け合いも素晴らしい。




↑ジェイムス・テイラー&J.D.サウザーの「Her Town Too」が視聴できます。


※YouTubeには当時のプロモーションビデオしか公開されていない。
2人の歌い方がオフィシャル音源とは少し違う。
ドン・グロルニック(kb)ワディ・ワクテル(g)ダン・ダグモア(g)ルーランド・
スクラー(b)リック・マロッタ(ds)とレコーディング時と同じミュージシャン。
が、演奏はオケを流用してると思われる。音声はモノラルで音質もよくない。




作曲はジェームス・テイラー、J.D.サウザー、ワディ・ワクテル(ギターでも
参加している)3人の名前がクレジットされている。


以前は彼女の街だった」と恋に破れ街の噂話に傷つく女性を気遣う歌だ。
最後のリフレインでは「君の街だったのに。僕の街でもあった」とも。



↑カーリー・サイモンとジェイムス・テイラー、2人の子供、ベンとサリー


JTは当時の妻、カーリー・サイモンとの間に問題を抱えていた。
妻と2人の子供を残したまま年中ツアーで不在のJTにカーリーは不満を抱き、
もっと家族に時間を割くように要求していた。

アルバム・タイトル「Dad Loves His Work」はJTから妻へのメッセージ。
カーリー・サイモンは長年JTのバックを務めてきたドラマー、ラス・カンケル
と恋仲になり、このアルバム発売前に11年間の結婚生活に終止符を打った。



↑ウエストコースト・ロックの売れっ子ドラマー、ラス・カンケル。

                      (写真:gettyimages)


その後ジェームス・テイラーは再びドラッグに浸かり長い期間スランプに陥る。
4年後にアルバム「That's Why I'm Here」で復帰したJTは、フュージョン系
のミュージシャンでバックを固め、曲調もラテン系中心の大人の音楽に変貌。
ロックではなくなったJTは「成熟した退屈な音楽」になって行く。


「Dad Loves His Work」は日本の音楽誌で選ぶAORの名盤に必ず挙げられる。
だが僕はこのアルバムが好きではない。
まだロック色は残しているものの、それまで大好きだったJTと明らかに違う。






大きな要因はミュージシャンの入れ替えによるサウンドの変化だと思う。
プロデューサーは以前と同じピーター・アッシャーだが、前作から参加するよ
うになり以降JTサウンドの要となるドン・グロルニック(kb)色が強い。

そしてダニー・コーチマーの代わりにディ・ワクテル(g)ダン・ダグモア(g)
が参加。この2人はリンダ・ロンシュタット黄金期のバックも務めている。
ワクテルはヘビーな音からアコースティックまでこなし、ダグモアはペダル・
スティールもこなし器用。いいコンビネーションである。
2人がJTと組んだのはこの時期だけなのが残念。



↑左からワディ・ワクテル(g)ルーランド・スクラー(b)ダン・ダグモア(g)
JTがセサミ・ストリートに出演した時のショット


ドラムがラス・カンケルからリック・マロッタに替わったのは、上述のカーリー
・サイモンとの三角関係のせいかもしれない。

デビュー以来JTを支えて来たザ・セクションのメンバーはルーランド・スクラー
(b)だけになってしまった。
どちらかというとリンダ・ロンシュタットの黄金期のバンドの顔ぶれに近い。



↑JTの右がJ.D.サウザー、隣がワディ・ワクテル(g)ルーランド・スクラー(b)。



そして致命傷はコーラス隊が変わったことだ。
グラハム・ナッシュ、デヴィッド・クロスビー、ヴァレリー・カーターによる
素晴らしいハーモニーが肝だったのに。



↑デヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュ。この2人がハモると最高。


たかがコーラスくらい誰がやっても、という人も多いだろう。
しかし、ガラッと印象が変わってしまうのだ。
新しく加わったデヴィッド・ラズリーの甲高い声とアーノルド・マカラーの
黒人特有の歌い回しはどうしても受け入れ難かった。
(差別ではなく好みの問題です)

その好きではないアルバムにおいて、J.D.サウザーとのデュエット曲である
「Her Town Too」は唯一大好きな曲であり、何度も繰り返し聴いている。




※次回は6-10、1980年以降のAOR、ブラコン寄りの曲を取り上げます。


<参考資料:Wikipedia(英語版)、YouTube、gettyimages、他>

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