2024年4月29日月曜日

ベーシストについて語ろう(3)最も偉大なベーシスト51〜100位。

Consequence「最も偉大なベーシスト100人」3回目。
今回は51〜100位と、知ってる人について知ってること。


51位 Robert Trujillo
52位 Bob Moore
53位 Trevor Dunn
54位 Charlie Haden
55位 Meshell Ndegeocello
56位 Tony Levin
57位 Rex Brown
58位 Robbie Shakespeare
59位 Chuck Rainey
60位 Matt Freeman




54位のチャーリー・ヘイデンはジャズのベース奏者。
キース・ジャレット・トリオのライヴ盤「Somewhere Before」(1969年)
でこの人の演奏を初めて聴いた。




1曲目の「My Back Pages」はディランのカヴァー。
ディランは苦手だけどキース・ジャレットのこの演奏は心打たれたという人
、キース・ジャレットは苦手だけどこの曲は好きという人も多いはず。
チャーリー・ヘイデンの重いベース・ラインから美しいピアノの音が入る
瞬間は感動的である。


https://youtu.be/sOgwNUY_QCs?si=XYxfGVxpxwt9nThM





余談だが昔、渋谷の公園通りを登り切った路地にMy Back Pagesという
カフェがあって、そこで過ごす時間が好きだった。
大きな窓から見下ろせる北谷公園もまだコンクリート敷じゃなく土。
店名の由来を訊くと、やはり「Somewhere Before」とのことだった。



もう一枚、愛聴盤になってるのはパット・メセニーとの共作名義アルバム
Beyond the Missouri Sky」(1998年)である。
ギターとダブルベースの静かなデュオだが、濃密な演奏で綴られた感動作。
このアルバムはグラミー賞最優秀ジャズ・インスト部門賞を受賞している。




また余談だが昔、愛犬が雷に怯えるとこのCDをかけた思い出がある。
チャーリー・ヘイデンの重厚なベース音で雷鳴を紛らわせるためだった。



https://youtu.be/gcNeA1yZhAs?si=rdVqLqQ5jCIAYzc7







56位のトニー・レヴィンはフュージョンからロック、プログレ、メタル
と活動範囲の広いベーシスト。
ピーター・ガブリエル、キングクリムゾン、ジョン・レノンの「Double
Fantasy」でレヴィンの演奏を聴くことができる。
ミュージックマン・スティングレイ・ベース、スタインバーガー・NS
アップライト・ベース、多様なエフェクターを使用する。




59位のチャック・レイニーはセッション・ベーシスト。
ベーシストが選ぶベーシストとも言われる。
アレサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ、ロバータ・フラック、
ジョー・コッカーなどソウル・R&B系、デイヴ・グルーシン、クインシー
・ジョーンズ、クルセイダーズなどクロスオーバー系(まだフュージョン
と呼ばれなかった頃)、スティーリー・ダンのレコーディングに参加。



↑左はアレサ・フランクリン、テキ屋みたいな人はコーネル・デュプリー。


1957年製プレシジョンベース、アンペグのベースアンプB-15を使用。
人差し指の1フィンガー奏法でフロント側で弦を弾く。
温かいトーンでスウィング感のある弾むような軽快なサウンドが持ち味。






61位 Sting
62位 Tal Wilkenfeld
63位 Paul Chambers
64位 Noel Redding
65位 Gail Ann Dorsey
66位 Paul Jackson
67位 Pino Palladino
68位 Esperanza Spalding
69位 Rick Danko
70位 Eric Avery



61位スティングは英国のベーシスト、ギタリスト、ボーカル、作曲家。
ポリスの中核メンバーであり、解散後はソロ活動を行なっている。
ベース演奏とボーカルを同時にこなす。




スティングのベースラインはオフビートが特徴的である。
休符(弾かない音符)の入れ方が巧みで、音数を抑え「間」を活かしている。
休符は時にはゴーストノートとして微かに聴こえる場合もある。
このような奏法はレゲエのベースに影響を受けていると思われる。
(ポリスの音楽はホワイト・レゲエと呼ばれていた)
ポリス以前はジャズを演奏していたため、ダブルベースも演奏できる。




62位のタル・ウィルケンフェルドジェフ・ベックに天才と言わしめた
女性ベーシスト。




ジャコ・パストリアスやアンソニー・ジャクソンに影響を受けたという。
フュージョン、ジャズ、ファンク系のベーシストのようだ。
容姿からは想像出来ないベースギターの腕前で、チック・コリア、ハービ
ー・ハンコックにも起用されている。
身長166cmとベーシストとしては小柄。よく指が届くなと感心する。

フェンダー・ジャズベースを模倣したサドウスキーのシグネイチャー・
モデル、フェンダー・プレシジョンベースなどを愛用。
ベースアンプはEBSを使用している。






63位のポール・チェンバースはモダン・ジャズ本流のベーシスト。
1950年〜1960年代に活躍した。
ジョージ・ウォーリントン、マイルス・デイヴィス、ウィントン・ケリー
のバンドに在籍。




ソニー・ロリンズ、バド・パウエル、キャノンボール・アダレイ、レッド
・ガーランド、ドナルド・バード、フレディ・ハバードなど多くのレコー
ディングに参加。ロン・カーターと並びサイドマンとして名高い。
4ビートのウォーキングベースピチカート奏法を得意としていた。




69位のリック・ダンコはザ・バンドのベース、ボーカル担当。
力強いベースと渋みのあるボーカルで存在感を示した。

アンペグのホリゾンタル・ベース、ギブソンのリッパーベースを使用。
リヴォン・ヘルムのリズムの裏に絡みつくように、ピック弾きでサステイン
を抑えたポンボン、ボコポコという音を出していた。
この人も「間」の取り方、休符の入れ方が上手い。




ローリングストン誌の「史上最高のベーシスト50選」では20位。
しかし、そんな「偉大なベーシスト」だったのか?というと疑問である。
あの時代のザ・バンドは何か特別な音を出していたことは事実だ。
ザ・バンドの実力は理解できても好みではなかった僕でさえそう思う。
そのザ・バンドという集団の演奏力が、リック・ダンコのベーシストとし
ての評価を押し上げているのかもしれない。




71位 David Hood
72位 John Deacon
73位 Joe Lally
74位 Michael Anthony
75位 Paz Lenchantin
76位 Doug Wimbish
77位 Brian Ritchie
78位 Roger Glover
79位 Laura Lee Ochoa
80位 Justin Chancellor




72位のジョン・ディーコンはクイーンのベーシスト。
派手なプレイで主張するわけではないが、シンプルながら印象に残るベース
ラインを作るセンスに長けていた。
曲のボトムを支える役割、ロックベーシストの責任を果たしていた。
ベースの腕前もさることながら、ディーコンが温厚かつ謙虚な人柄だった
ことはメンバー同士の関係を保つために重要な意味を持っていた。




1980年代はジョン・ディーコンの作曲力がクイーンを新境地へと導く。
全米1位の「Another One Bites the Dust」はシック「Good Times」
からインスピレーションを得たディスコソングだった。

クイーン初期はリッケンバッカー4001、ムスタングベース、以降1955年製
フェンダー・プレシジョン・ベースがメイン器となる。
プレシジョン・フレットレスベース、ミュージックマンのスティングレイ・
ベースも使用している。



↑白黒コンビのロンドンブーツはリッケンバッカー4001の色に合わせた?


ピック弾きも指弾きもする。アンプはAcoustic、Sunn、Peavy。
スタジオではアンプを介さず、DIでコンソールに音を入れていた。

電子工学科の学位を取得しているだけに機械いじりが得意だった。
ブライアン・メイがレコーディングで多用したアンプはディーコンがスクラ
ップをリサイクルして製作したもの。




78位のロジャー・グローヴァーは第2期ディープパープルのベーシスト。
ギター、キーボードとベースが一体化し同じラインを奏でる、パープル黄金
期のヘヴィーなサウンドの屋台骨として活躍した。




パープルではリッケンバッカー4001、フェンダー・プレジションベース、
ムスタング・ベースを使用してた。アンプはマーシャル、TC Electronic。
ピック弾きのゴリゴリした音が特徴的。
難しいフレーズを弾かないので、耳コピしやすかった、



81位 Phil Lesh
82位 David Ellefson
83位 Scott LaFaro
84位 Martin Mendez
85位 Phil Lynott
86位 Yves Tumor
87位 Suzi Quatro
88位 Steve DiGiorgo
89位 Mike Dirnt
90位 Doug Pinnick




87位はスージー・クアトロ。え?この人、ベース弾いてたの?
その程度の認識。曲も「Devil Gate Drive」しか知らない。
甲高いダミ声、女ろけんろーらー的ファッションが嫌いだった。




91位 Krist Novoselic
92位 Alex Webster
93位 Nik West
94位 Nick Harmer
95位 Melissa Auf Der Mar
96位 George Porter Jr.
97位 Tom Petersson
98位 Leland Sklar
99位 Jenny Lee Lindberg
100位 Troy Sanders




98位はやっと登場!ルーランド・スクラー(リーランド・スカラー)。

ローリングストーン誌の「史上最高のベーシスト50選」では47位
98位は過小評価すぎ! 僕だったら2位に選んでる。

ルーランド・スクラーは1971年から1980年代末まで20年近く、ジェイムス
・テイラーのバックを務めた名ベーシスト
本人も「私のキャリアはジェイムス テイラーのおかげ」と言っている。




売れっ子ベーシストとなったスクラーは、ジャクソン・ブラウン、リンダ・
ロンシュタットのレコーディングやツアーでも常連となる。
1970年代ウエストコースト・ロックのサウンド作りに貢献した。

1970年代初期はセッション・ワークのあり方が大きく変わった時期である。
1960年代のLAはレッキング・クルーが活躍した時期。
事前に入念にアレンジされた楽曲をとことん演奏するのが常だった。

しかし1970年代初期、スクラーが仕事をし出した頃は、シンガー&ソング
ライターが弾き語りの原型を持ってスタジオに入り、アレンジ作業はミュー
ジシャンが担うことが多くなる。
演奏力だけではなく、曲を形にするセンスも要求されるようになった。




ジェイムス・テイラーのバックを共に務めていたラス・カンケル、ダニー・
コーチマー、クレイグ・ダーギもまたその創造力に長けていた。
スクラーは彼らと共にザ・セクションを結成。(1974年)
その演奏力と時代を先取りした音楽性(クロスオーバーの先駆け)が評判
となる。(玄人受けするミュージシャン集団だった)

ザ・セクションのメンバーは4人ともレコーディングやツアーに起用される
ことが多く、特にドラムスのラス・カンケルとルーランド・スクラーは強力
なリズム隊として2人セットでオファーされた。

リタ・クーリッジ、キャロル・キング、カーリー・サイモン、 カーラ・ボノ
フ、ロジャー・マッギン、 アート・ガーファンクル、ホール&オーツ、CS&N、
キャロル・ベイヤー・セイガー、ドリー・パートン、フィル・コリンズ、
ロッド・スチュワートなど数多くのアーティストに起用されている。

松任谷由実、竹内まりや、五輪真弓、吉田拓郎、浜田省吾のレコーディング
にも参加している。
「中央フリーウェイ」のブーンと唸るベースはルーランド・スクラーだ。
細野晴臣もスクラーのベースを参考にしたという。




スクラーは短時間のセッションで最適解の演奏をすることで知られる。
彼のベースはエゴを出さず、曲のアンサンブルを支えることに徹している。
それでいてスクラーらしさ(サウンド、ダイナミックス、イントネーション、
多彩なフレーズ、フィルの入れ方)も味わえる。
彼の参加曲を聴くと「これはスクラーがベースを弾いてるな」とすぐ分る。

スクラーはマッカートニーのメロディックなベースの影響が大きいという。
ティム・ボガード、ジェマーソン、ジャック・ブルース、ディー・マレー(
エルトン・ジョンのベース)からも影響を受けたそうだ。

1970〜1974年の間、1962年製フェンダー・ジャズ・ベースを使用していた。
(ジェイムス テイラーの「Mud Slide Slim」「One Man Dog」の頃)

1973〜1985年はシャーベル(フェンダーのパーツでカスタマイズするメー
カー)のボディー、プレシジョン・ベースのネックを1962年製ジャズベース
のようにリシェイプしたもの、EMGのプレシジョン用ピックアップを組み
合わせた通称「フランケンシュタイン」と呼ばれるベースを使用。
(ボディー塗装が剥がされ落書きしてあり、一見プレシジョンに見える)




その他、ディグウォール、ワーウィック・スターベースII、アレンビック、
ヤマハ、ヘフナーを所有。
ギブソンとヴァレイアーツ・ギターにシグネチャー・モデルがある。
弦はGHSスーパースティール・ミディアムライト。

アンプはユーフォニック・オーディオ。
スタジオ用と大会場用で2種類のアンプを使い分けている。
チューブ・ワークスのDIを通した音をブレンドすることもあるようだ。
近年はジェームス・ディメター真空管プリアンプを使用している。

ドイツ製のコーディアル・ケーブルを使用。
BOSSのオクターブディヴァイダー(1オクターブ下の音を作り出し厚みを
加える)を使うこともあるらしい。

大好きなベーシストなのでつい長くなってしまった(笑






Consequenceの「偉大なベーシスト100人」に名前がなかったが、セッシ
ョン・ベーシストのウィル・リーウィリー・ウィークスデヴィッド
ハンゲイト(TOTO)も優れたベーシストである。

個人的には、ヴァン・マッコイ&ザ・ソウルシティ・シンフォニーやスタ
ッフでグルーヴ感たっぷりのベースを弾いてたゴードン・エドワーズ、
地味すぎるくらいのクラウス・フォアマンもお気に入りベーシストだ。

ドゥービー・ブラザーズでピック弾きのゴリゴリ・ベースを聴かせてくれ
タイラン・ポーター「Hotel Calif.」「One Of These Nights」で曲

の中核をなすベースを弾いたランディー・マイズナー、ヴァニラ・ファッジ
、BB&Aで前に出過ぎるくらいのリード・ベースを披露したティム・ボガ
ートも偉大ではないか
デュラン・デュラン〜パワーステーションのジョン・テイラーのベースも
も過小評価されてると思う。



↑BB&A時代のティム・ボガート、ジェフ・ベック、カーマイン・アピス


<参考資料:Consequence、ABCベース教室、Wikipedia、Amazon、
ベースマガジン、BOOGIEなイーブニング!note リック・ダンコ追悼、
音楽武装、Rolling Stone Japan、Kz Guitar Works、HIGHWAY、amass
、ベースプレイヤーマガジン、YouTube、他>

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