2016年1月18日月曜日

愛なき世界にいるつもりはない。

「A World Without Love(邦題:愛なき世界)」は1964年に英国の男性デュオ、
ピーター&ゴードン(1)のデビュー・シングルとして発売された曲である。
クレジットはレノン=マッカートニーだがポールが10代の頃単独で書いた曲だ。






ピーター・アッシャーの妹、ジェーン・アッシャーは当時ポール・マッカートニー
の恋人であり、ポールはアッシャー家に一緒に住んでいた。
その深〜い関係からポールが曲を提供することになったのだ。
持つべきものは妹。妹の七光りってか?(笑)


ジョンはこの曲をビートルズでやることを拒否した。
「僕を閉じ込めて(Please lock me away)という歌詞は笑える」と言っている。
「Please lock me away, Yes, okay!」と茶化しては喜んでいたようだ。

後のインタビューでは「あれはポールが昔書いた曲だ。ピーター・アンド・ガー
ファンクルとかいうグループ(いかにも軽く見てる)にあげたんじゃないかな」
と答えている。


ポールはビリー・J.クレーマー(2)にこの曲の提供を持ちかけるが断られる。
そこでピーター・アッシャーに相談されたポールはこの曲を聴かせた。
ピーターは歌わせて欲しいと言い、ブリッジ(サビ)を加えるようポールに頼む。
この時点ではこの曲はヴァース(Aメロ)しかなかったのだ。

当時ピーター・アッシャーがポールからもらったデモ音源が2013年に発見された。
確かにまだヴァース(Aメロ)だけでブリッジ(サビ)がない。





「A World Without Love」は全英シングルチャートでビートルズの「Can’t Buy  
Me Love」を1位から蹴落としそのまま2週連続で1位。
アメリカのBillboard Hot 100でも1位を獲得するという大ヒットになった。

ビートルズ以外の英国勢アーティスト(3)がシングルで全米1位を獲得したのも
これが初めてであった。
断ったビリー・J.クレーマーはさぞ悔しがったことであろう。


たとえジョンが嫌っていてもこの曲が極上のポップソングであるのは事実だ。
メロディの美しさもさることながらコード進行もこの曲の魅力である。

ではご一緒に♫


E                     G#            C#m
Please lock me away And don't allow the day
        E                    Am               E
Here inside, where I hide with my loneliness 
          F#m                                 B7                                 E       C  B7
I don't care what they say, I won't stay In a world without love

E                       G#           C#m
Birds sing out of tune And rain clouds hide the moon
      E              Am              E
I'm OK, here I stay with my loneliness 
          F#m                                  B7                                E       E7
I don't care what they say, I won't stay In a world without love

Am                                 E
So I wait, and in a while I will see my true love smile
Am                                  
She may come, I know not when 
F#                        C            B7           E
When she does, I'll lose So baby until then

             G#            C#m
Lock me away And don't allow the day
          E                   Am              E
Here inside, where I hide with my loneliness 
           F#m                                B7                                 E       C#7
I don't care what they say, I won't stay In a world without love
           F#m                                B7                                 E       C#7
I don't care what they say, I won't stay In a world without love

F#m            B7            E

                                        (World Without Love  Lennon-McCartney)



ヴァースの2小節目、awayでEからG# に入る所。
6小節目のhideのAm、ヴァースの終わりのE→C→B7が美しい。
care what they say, I won'tが2拍3連なのも効いている。

そしてブリッジ(サビ)のWhen she does, I'll loseのF#→C→B7→Eでヴァー
スに戻る所、エンディングのC#7も心憎い。


※検索するとコード譜がいくつか出てくるけどどれも間違ってます。
これが正しいですよ〜(きっぱり) (^_^)


(1)ピーター&ゴードン
ロンドンのウェストミンスター・スクールで出会ったピーター・アッシャーと
ゴードン・ウォーラーによって結成されたデュオ。
日本でのバンド名は「ピーターとゴードン」だった。
エヴァリー・ブラザース風のコーラスを取り入れ、本国イギリスだけでなく
アメリカでも多大な人気を得た。
「A World Without Love」以外にも「Nobody I Know」「Woman」とポール
曲をカバーしてヒットさせている。
「Woman」はバーナード・ウェッブ作となっているがポールの変名。
レノン=マッカートニーの評判なしでもヒットするか試すためにポールが故意に
名前を隠して発表したためである。

解散後ピーター・アッシャーはアップル・レコードのA&Rに就任したが閑職に
追いやられ(ポールが妹ジェーン・アッシャーと別れた後)、海を渡ってLAで
リンダ・ロンシュタット、ジェームス・テイラーのプロデューサーとして成功。


(2)ビリー・J.クレーマー
バックバンドのザ・ダコタスと共にブリティッシュ・インヴェイジョン期に活躍。
ビートルズのマネージャー、ブライアン・エプスタインに見出されビートルズと
同じEMI傘下パーロフォン・レーベルでジョージ・マーティンのプロデュースに
より1963年にデビュー。
「Do You Want To Know A Secret」「I’ll Be On My Way」「Bad To Me」
「I Call Your Name」「I’ll Keep You Satisfied」と立て続けにレノン=マッカー
トニー作品でヒットを飛ばす。
ビリー・J・クレイマーという芸名はジョン・レノンから命名された。


(3)英国勢アーティスト
ビートルズ以降、1960年代にイギリスのアーティストがアメリカをはじめ世界中
でヒットを放ってブームを巻き起こした現象をブリティッシュ・インヴェイジョン
(British Invasion、イギリスの侵略)と呼ぶ。
1960年代中盤はビートルズ、ローリングストーンズ、キンクス、ザ・フー、
ハーマンズハーミッツ、デイブ・クラーク・ファイブ、アニマルズなどイギリス
のロック・バンドがアメリカのヒットチャートで旋風を巻き起こした。
その背景として、徴兵後のエルヴィスが映画契約に拘束されツアーも行えず映画の
サウンドトラック用のレコードばかりで冴えず、ビーチボーイズが孤軍奮闘していた
いう状況がある。
1950年代のアメリカのR&Bやロックンロールに強い影響を受けたイギリスのバンド
のヒットがアメリカで死にかけていたロックンロールを生き返らせたのだ。
1966年以降にモンキーズ、サイモン&ガーファンクル、ドアーズなどが登場する
までアメリカ音楽市場は英国勢にやられっぱなしだった。


<参考資料:ローリングストーン誌、Wikipedia他>

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

ポールが10代の頃の曲ですか!
PP&Mのようには聴いていませんから、まったくの感性で感じたことですが、
すでにビートルズのルーツを思わせるような音の使い方だと思いました。
アレンジにもよるのでしょうが、コーラスの作り方にも、特徴を感じます。
文面で表現するとどうなるのでしょうか?

イエロードッグさんがアップされる曲の多くがやってみたくなるような曲が
多いのは、最近、アルト音域が歌えるようになったためかもしれませんね。
早速、コード譜もコピーさせていただきました(笑)

イエロードッグ さんのコメント...

>Mary Ppmさん

ジョンとポールが10代の頃書いた曲はビートルズでもやってるんですよ。
ポールは納得の行く仕上がりにならない時は寝かせておいて、何年も
経ってから引っ張り出して来て別なアレンジを試みるそうです。

ジョンとポールは二人でハモりながらどっちが主メロか分からないよう
な歌い方をするのが特徴でした。
もともとはエヴァリーブラザーズの唱法のようです。
ピーター&ゴードンもそれに倣ったのでしょう。
女性デュオのデイヴィス・シスターズがやはりそんな歌い方でした。

コード譜のコピー?
スクリーンショット→JPEGかPDFかな?
この曲もヴォンダ・シェパードがカバーしてます。
https://youtu.be/GPhyqotpPzU
あまり好きな歌い方じゃないけど女性が歌うとこんな感じ?というのが
イメージしやすいかも。
Mary Ppmさんには歌いにくいキーかもしれませんが。