2023年4月1日土曜日

アメリカで発売されなかったチェット・アトキンスのライヴ盤。


↑1972-1980年に製造されたグレッチ 7690 Super Chet。
ブラックのフィルタートロン・ピックアップが2基。パーツはゴールド。
ヘッドストック、テールピース、指板にアバロンのインレイと豪華仕様。
ピックガード脇にコントロール・ノブを搭載し操作性を高めている。
(ピックガードを外せば回路のメンテナンスができるという利点もある)



<1980年にアメリカで発売されたチェット・アトキンスのライヴ盤>

初めて自分で買ったチェットのアルバムはライヴ盤だった。
渋谷にタワーレコードができる(1)前で輸入盤専門店シスコで見つけた。
アメリカ盤だったが、国内盤も発売されたらしい。


Chet Atkins – The Best Of Chet On The Road...Live (1980)





SIDE 1
This String
Dance With Me
Blind Willie
Stars And Stripes Forever
Medley: Freight Train / Chattanooga Train  *

SIDE 2
Wheels  *
Blue Angel  *
Recuerdos De La Alhambra  *
Medley: Something/Lady Madonna  *(edited)
When You Wish Upon A Star  *
Bill Cheatham  *

*印は1977年パリのオランピア劇場での録音。


↓「The Best Of Chet On The Road...Live」が全曲聴けます。
https://youtu.be/RmXkhXdpRyU





A面の1〜4まではナッシュビルで録音されたらしい。

This String
サイ・コーベンの楽しい曲。チェットは歌い間違えて客席の笑い声を
誘っており、和やかな雰囲気が伝わる。

Dance With Me
ジョン&ジョアンナ・ホールがオーリアンズ用に作った曲。
フュージョン・ブームの中、アール・クルーのカヴァーが大ヒット。
チェットのヴァージョンは他メンバーにソロを回すバンドならではの
醍醐味が味わえる。が、これはアール・クルーの勝ち。


この2曲は1977にグレッチが発売した7680アトキンス・スーパー・アッ
クス(2)が使用されたのではないかと思う。
大型のマホガニー・ソリッドボディーにギブソンっぽいハムバッカー
を2基搭載、トレモロユニットはなし。
コンプレッサーとフェイザー内蔵というグレッチでは異例ずくめの仕様。




This StringとDance With Meではアームならではのビブラートが聴か
れないのと、ソロではもろにコンプとフェイザーをかけた音になる。
フュージョンで流行ってたサウンドを意識したのだと思う。
(YouTubeにチェットがオレンジ色のスーパー・アックスでThis String
を演奏してる映像もアップされていた)


Blind Willie
盲目のブルースシンガー、ブラインド・ウィリー・マクテルのこと。
ブルースシンガーの傍らセッションギタリストとしても活動していた
ダニー・カルブ(3)の作品。
この曲だけスタジオで演奏に歓声を被せた擬似ライヴだと思われる。




Stars And Stripes Forever(星条旗よ永遠なれ)
And now, ladies and gentleman, the godfather of the guitar,  
Chet Atkinsという司会者で曲がスタート。(1曲目だったようだ)
チェットのナイロン弦ギターによる超絶テクニックが聴ける。
ガイ・ヴァンデューサー(4)がギター用に編曲したものにほぼ忠実。

いったいどう弾いてるのか?挑戦してみたが、まったく歯が立たない。
何度聴いても1台のギターで弾いてると思えない箇所があるのだ。
特に主メロを低音弦で弾きながら高音弦でカウンターメロディーを弾い
ている箇所は???だった。


↓Stars And Stripes Foreverが視聴できます。(他のライヴ映像)
https://youtu.be/V8BDYETDM5c


(動画を見て何をやってるか判明。ほぼ完コピできた。
じゃあ、チェットみたいに弾けるかというと話は別だ。しくしく)


Medley: Freight Train / Chattanooga Train
1977年パリのオランピア劇場(5)で行われたコンサートの音源。
フランスのチェットと呼ばれるマルセル・ダディ(6)との共演である。
(チェットのコンサートにダディがゲスト出演している)


(写真は1990年頃チェットがフランスでダディと共演した時のもの)


チェットがグレッチでイントロを弾き、マルセル・ダディがオベーシ
ョンのアダマス(7)で自作曲Chattanooga Trainを、2人でお馴染み、
エリザベス・コットン(8)のFreight Trainと息の合った演奏が聴ける。
最後の貨物列車の警笛音はチェットで、ハイポジションで3弦と2弦を
ベンディングしながらアームでビブラートをかける高度な技。


↓チェットとダディのFreight Train / Chattanooga Trainrが聴けます。
https://youtu.be/q4KQDsBBSPE




B面はすべて1977年パリのオランピア劇場での録音。
(マルセル・ダディがゲストを招聘して開催したカントリー・ショー
(9)の第2回目の特別ゲストとして、チェットの部があったようだ)




Wheels  *
1963年の「Travellin'」に収録された曲でライヴでも度々演奏される。
6弦と5弦をドロップするDGDGBEチューニング。

Blue Angel  *
1968年の「Hometown Guitar」収録曲。
ロス・インディオス・タバハラスのナト・リマの曲をチェットがアレ
ンジし、超絶的な速弾きを披露している。

Recuerdos De La Alhambra(アルハンブラの思い出)
タレガの有名な曲。目黒エンペラーのCM(10)を思い出す人もいる(笑)
最後のヴァースで1箇所チェットは6弦の経過音を加えている。

Medley: Something  * / Lady Madonna  *
ビートルズのメドレーだが本当は If I Fell / For No One/ Something 
/ Lady Madonna で演奏されている(後述)のを2曲だけに編集。
(後年 All My Loving / Here, There, and Everywhere / Something
 / Lady Madonna で演奏するようになった)




↓チェットのビートルズ・メドレーが視聴できます。(別なライヴ映像)
https://youtu.be/xa5nTUII0BQ


When You Wish Upon A Star(星に願いを)*
1940年のディズニー映画「ピノキオ」の主題歌。
1968年の「Solo Flights」1971年の「Pickin' My Way」に収録された。

Bill Cheatham  *
フォスターの曲。フィドルで演奏されるがチェットがギター用に編曲。
1975年の「The Night Atlanta Burned」に収録されている。

以上、B面6曲はナイロン弦ギターで演奏されている。




<1979年にフランス限定で発売されたチェットのライヴ盤>

実はこの前年、フランスでは2枚組のライヴ盤が発売されていた。


Chet Atkins – And Then Came Chet Atkins (1979)

1977年12月10日・11日にパリのオランピア劇場で録音された音源だ。
アメリカ盤のB面はここからの抜粋(*印)ということになる。




SIDE A
Wheels  *
Vincent
All Thumbs
Copper Kettle
Bill Cheatham  *

SIDE B
Cascade
You'd Be So Nice To Come Home To
Snowbird
Dizzy Fingers
Yakety Axe
The Peanut Vendor

SIDE C
Autumn Leaves
When You Wish Upon A Star  *
Blue Angel  *
Recuerdos De La Alhambra  *
A Beatle Medley
(If I Tell / For No One / Something  */ Lady Madonna  *)

SIDE D
Charade
Black Mountain Rag
Drown In My Own Tears
Drive In
Medley (Trambone / Hello My Baby / I'll See You In My Dreams
/ Poor People Of Paris / Mister Sandman / Wildwood Flower / 
Freight Train)

*印はアメリカ盤「The Best Of Chet On The Road...Live」にも収録。


↓「And Then Came Chet Atkins」が全曲聴けます。
https://youtu.be/yxfsaXhx9G8






ざっくり言うと、SIDE Aはナイロン弦ギター、SIDE Bはエレキギター、
SIDE CとDの2曲目までが再びナイロン弦ギター、最後3曲はエレキギ
ター、と非常に聴きやすい。

(編集されてるとしても、実際のコンサートの曲順に近いと思える。
ナイロン弦ギターとエレキギターを頻繁に持ち替えるのは面倒だし、
変則チューニングの曲はまとめてやった方が無駄がない)



Wheels  *  
1963年の「Travellin'」に収録。DGDGBEチューニング。

Vincent
1972年の「Picks On The Hits」収録曲。ドン・マクリーン作曲。
前曲と同じDGDGBEチューニング。後半のハーモニクスが美しい。

All Thumbs
1977年の「Me And My Guitar」に収録された。
マーク・カステベンズのギター曲。全部親指=手先が不器用の意味。 
5弦をGからAに上げてDADGBEチューニングになった。

Copper Kettle
1962年「Guitar Country」に収録。Copper Kettleは銅製やかんのこと。
ジョーン・バエズやジョニ・ミッチェルもカヴァーしたフォークソング。
この曲からスタンダード・チューニングで演奏される。

Bill Cheatham  *
1975年「The Night Atlanta Burned」収録。フォスター作曲。
この曲までナイロン弦ギターの前半部。




Cascade
1977年の「Me And My Guitar」に収録。ここからエレキギターの部。
作曲者のジーン・スローンの演奏に忠実にチェットは弾いている。

You'd Be So Nice To Come Home To
1977年「Me And My Guitar」収録曲。ヘレン・メリルの歌がヒット。
チェットはギャロッピング・スタイルのギター曲にアレンジしてる。

Snowbird
1971年の「For The Good Times And Other Country に収録曲。
リン・アンダーソン、エルヴィスの歌唱が有名。
チェットはたっぷりリバーブをかけ単音メロディーを弾いている。

Dizzy Fingers
1920年代ゼズ・コンフリーが作曲したピアノ曲。邦題:めまいする指。
チェットはギターで速弾きを披露。ライヴでよく演奏される曲だ。

Yakety Axe
「More Of That Guitar Country」(1965)「Finger Pickin' Good」
(1972)に収録され、ライヴでもお馴染みのカントリーナンバー。
直訳すると「やかましい斧」。テナーサックス奏者ブーツ・ランドルフ
の曲Yakety Sax (やかましいサックス)のパロディーである。

The Peanut Vendor
1960年の「The Other Chet Atkin」に収録されている。
アフロ・キューバンのスタンダードナンバー。
南京豆売り露天商の掛け声から着想を得て、1927年に作曲された。
スタン・ケントン楽団が1940年代にヒットさせている。
チェットと他のメンバーはあえて調子外れの掛け声で雰囲気を出す。




Autumn Leaves
邦題「枯葉」。シャンソンのスタンダードでジャズのカヴァーも多い。
1968年の「Solo Flights」収録ヴァージョンはグレッチでキーはE♭m。
エド・サリヴァン・ショーではナイロン弦ギターで2カポでAm。
このライヴではカポなしのAm。
前半アダージョ、途中からギャロッピング・スタイルのアレンジ。
この曲からナイロン弦ギターの曲が続く。

When You Wish Upon A Star  *
1940年のディズニー映画「ピノキオ」の主題歌。
1968年の「Solo Flights」1971年の「Pickin' My Way」に収録。
チェットお得意の美しいハーモニクス奏法が聴ける。

Blue Angel  *
ロス・インディオス・タバハラスのナト・リマの曲をチェットがアレ
ンジした。1968年の「Hometown Guitar」収録曲。

Recuerdos De La Alhambra  *
1969年の「Lover's Guitar」に収録された。 
タレガの有名な曲でチェットはスコアに忠実に弾いているが、最後の
ヴァースで1箇所だけ原曲にない6弦の経過音が加えられている。

A Beatle Medley
(If I Fell / For No One / Something  */ Lady Madonna  *)
アメリカ盤は前半2曲がカットされているが、ここでは通して聴ける。

Charade
1976年の「Chet Atkins Goes To THe Movies」収録。
オードリー・ヘップバーン主演映画「シャレード」(1963)のテーマ。
ヘンリー・マンシー作曲。チェットは素敵なギャロッピング奏法にアレ
ンジしている。(この曲もかなり難しい)

Black Mountain Rag
1953年のデビュー・アルバム「Gallopin' Guitar」以来の定番曲。
カントリーのトラディショナル・ソングで、ドク・ワトソン、ニッティ
ー・グリッティー・ダート・バンドなどの演奏が有名。
1971年の「Pickin' My Way」でナイロン弦ギター用にアレンジされた。
オープンG(DGDGBD)チューニング。ここまでナイロン弦ギター。



                            (写真:Gettyimages)

Drown In My Own Tears
1963年の「Our Man In Nashville」に収録。
レイ・チャールズのゴスペル・ソング。
チェットのギターもR&B感たっぷり。この曲からグレッチを使用。

Drive In
1968年の「Solo Flights」収録。ジェリー・リードによる曲。
これをちゃんと弾けるとカッコいい。




(Medley) 7曲
Trambone

1962年の「Down Home」収録。作曲はチェット。
タイトルはトロンボーン(trombon)の南部訛りが由来らしい。
ちなみにレコードではブーツ・ランドルフがサックスを弾いている。

Hello My Baby
女性4人のコーラス・グループ、コーデッツが1950年にアカペラで歌い
ヒットさせた。
「Stringin' Along with Chet Atkins」(1953年に10"LP(11)、1956年に
12曲入り12"LPで発売)に収録。

「Play Guitar With Chet Atkins Vol.6」(1967)でも取り上げている。



I'll See You In My Dreams
ジプシー・ジャズのギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの曲。
1974年「The Atkins-Travis Traveling Show」でマール・トラヴィスと
共演している。

Poor People Of Paris
1956年にレス・バクスター楽団がヒットさせた。
チェットは1955年にシングル盤で発売。メドレーの定番曲である。
他にレス・ポール、ビング・クロスビー&ローズマリー・クルーニー、
ディーン・マーティンもカヴァーしている。

Mister Sandman
1954年にヴォーン・モンロー楽団が発表。
同年コーデッツの美しい4声コーラス・アレンジがヒット。
チェットもシングル盤で発売。(コーデッツの歌を参考にしている)
"Mr. Sandman, bring me a dream" の部分だけチェットが口ずさむ。
"Sandman, bring me some"と歌詞を変えている。

Wildwood Flower
カーター・ファミリーの演奏で知られるアメリカのフォークソング。
チェットもカーター・ファミリー・ピッキングを発展させている。
ライヴではメドレーで演奏される定番曲だが、公式録音は1966年
ボストン・ポップスとの「The "Pops" Goes Country」、1970年ナッ
シュビル・ストリング・バンド名義の「Down Home」のみ。

Freight Train
メドレー最後はエリザベス・コットン作曲のフォークソング。
ディラン、ジョーン・バエズ、PPMも歌い広く愛されてる曲だ。
チェットは原曲の良さを活かしながら複雑だが見事なフィンガーピ
ッキングの曲にアレンジした。
1963年の「Guitar Country」に収録されている。


内ジャケットに「私にとって初のライヴ・アルバムであり誇らしく
思う」とチェットの言葉が記されている。自信作だったのだ。



米国盤「The Best Of Chet On The Road...Live」(1980)はアメリカ
カントリーファンを中心とした幅広い層への受けを狙った編集だ。




フランス限定盤「And Then Came Chet Atkins」 (1979)は、1970
年代にチェットがアルバムで取り上げた曲が多い(個人的に好き)
前述のように、ナイロン弦のパート、エレキのパート、ナイロン弦の
パート、エレキのパートという曲構成もとても聴きやすい
実際の公演の曲順どおりでだったのではないか、と思える。

どちらのアルバムもCD化されることはなかった。
チェット存命中に発表された公式ライヴアルバムなのに。(12)




<マルセル・ダディとの共演ライヴ音源>

1977年12月10日・11日パリのオランピア劇場で開催されたカントリー
ショーではチェットとマルセル・ダディの共演も録音されている。




マルセル・ダディのライヴ盤「Marcel Dadi And Friends Volume 
- Olympia 77」にはチェットとの共演が収録された。

Windy And Warm
Medley: Winter Walkin' / Baby's Coming Home
Medley: Swedish Rapsody / Country Gentleman





アメリカ盤「The Best Of Chet On The Road...Live」A面最後に入って
いたMedley: Freight Train / Chattanooga Trainは収録されなかった。



このライヴ盤からMedley: Winter Walkin' / Baby's Coming Home
がマルセル・ダディ追悼アルバム「Hommage」(1997)に収録された。





Windy And Warmも何かで聴いたことがあるような気がするのだが、
たぶんマルセル・ダディとジャン・フェリックス・ララーン(13)との
共演(ライヴ)音源だろう。


「Marcel Dadi And Friends Volume 2 - Olympia 77」も未CD化。
と諦めていたのだが、なんと2016年にEMIフランスからVol.1&2から
抜粋した「Marcel Dadi And FriendsがCD化されていた!




LPに入ってたチェットとのデュエット3曲も収録されている。(14)
(それ以外は大人数でのカントリー・フュージョンとか、あまり聴き
くない歌ものも入っている。アルバムとしては散漫かもしれない)
既に廃盤のため、プレミアムが付いている。





<脚注>

(1)渋谷にタワーレコードができる。
1981年渋谷の渋谷・宇田川町に第2号店としてオープンした。
(1号店は札幌店。テストマーケティングだったのだろう)
東急ハンズの斜向かいで、今の丸井の並びにある店とは違う。


(2)チェット・アトキンス・スーパーアックス
メイプルネック、カッタウェイのマホガニーボディ、エボニー指板、
ウォルナット・ステインカラー(またはオレンジステインカラー)、
ラップオーバーブリッジ。指板のポジションマークは四角。
ビルドインのコンプレッサーとフェイザーをオンボードに搭載。



(3)ダニー・カルブ
グリニッジヴィレッジ・フォークのシンガー&ソングライター。
デイブ・ヴァン・ロンクの弟子でもある。
セッション・ギタリストとして、ジュディ・コリンズ、ピート・シ
ーガー、ボブ・ディランなどのフォーク・シンガーと共演してる。
ブルース・プロジェクトのメンバーとしても活動。
ステファン・グロスマンと共演アルバムも発表している。


(4)ガイ・ヴァン・デューサー
ラグタイム、ジャズ、カントリー、フォークを得意とする技巧
派ギタリストで、その実力はチェットをも唸らせたという。
一貫してナイロン弦ギターを使用している。
ビリー・ノヴィックというクラリネット奏者との共演も多い。
バークリー音楽大学で非常勤講師も勤める。採譜は得意だろう。


(5)マルセル・ダディ
フランスのフィンガースタイル・ギタリスト。
チェット・アトキンス、マール・トラヴィス、ジェリー・リード
のフォロワーの一人。ギター教則ビデオ、教則本を出している。




チェットは「遠く離れた国に同じ音楽感を持っている人がいるなん
て驚いた」と言っている。
チェットは1980年以降、自らを「C.G.P.(Certified Guitar Player)」
(公認ギタリスト)と名乗った。
チェットがその称号を授けた他のギタリストは、ジョン・ノウルズ、
ジェリー・リード、スティーヴ・ウォリナー、マルセル・ダディ、
トミー・エマニュエルの5人だけ。
(チェット没後、娘のマールが長年チェットの伴奏を務めたポール
・ヤンデルにもC.G.P.を認めている)

ダディは1996年にアメリカから戻るTWAの墜落事故で他界した。




(6)オベーションのアダマス
オベーションの最高峰。グラスファイバーのラウンド・バックに
トップ(表板)もグラスファイバーと木材の複合素材を採用。
大小のサウンドホール(リーフホール)と枯葉をモチーフとした板
(エポレット)は剛性を高めハウリングを抑制する効果がある。
デザイン性が高く、均一でバランスの取れた音響特性が得られる。
カッタウェイ・モデルは24フレットまで使用できる。
オベーションはエレアコのサウンドをどれだけアコギの生音に近づ
けるか、という既成概念とは対極に位置する、際立った個性のある
サウンドであり、好みが別れる所だ。

マルセル・ダディ愛用のアダマスは特注でネック幅が広く、フィン
ガーピッキングに適している。
スロッテッド・ヘッドは弦のテンションを上げ音量を稼げる。
ダディはブルーとアイボリーの2色を所有している。
この他にレジェンド、ナイロン弦ギターも使用している。




(7)エリザベス・コットン
コットンはたまたまシーガー家で家政婦として働く。
そこはフォークシンガー、ピート・シーガーがいる音楽一家。
刺激を受けたコットンは、11歳の時作った歌を思い出す。
子供の頃、家の前を通る電車に着想を得た作った曲だった。
コットンは63歳のおばあちゃんだが、独学でギターを練習し始める。
彼女は左利きだが右利きのギターの弦を張り替えず、逆さまにギター
を持って演奏した。親指でメロディー、他の指でベースラインを弾く。
独特の奏法とほのぼのと家庭的な空気を感じさせるコットンの声。
こうして彼女の代表作となる「Freight Train」が発表された。
カーター・ファミリー、ジョーン・バエズ、ボブ・ディラン、PPM、
ジェリー・ガルシアがカヴァーし多くの人たちに愛される。


(8)パリ・オランピア劇場
パリの老舗ミュージックホール。約2000席を収容する劇場。
カプシーヌ大通りに面し、近隣にはオペラ座がある。
シルヴィ・ヴァルタン、ビートルズ、ストーンズ、デヴィッド・ボウイ
、マドンナのコンサートもここで行われた。


(9)マルセル・ダディがゲストを招聘し開催するカントリー・ショー
Dadi And Friends Country Showとしてパリのオランピア劇場で、
第1回目は1975年、第2回目は1977年に開催された。
チェットは1977年に特別ゲストとして招かれ、12月10日・11日に
コンサートを行った
ダディの部、チェットの部があったのではないかと思う。
チェットがダディを呼び一緒にFreight Train / Chattanooga Train 
を演奏してるのが聴ける。その後、数曲やったのではないか。



(10)目黒エンペラーのCM
目黒エンペラーは1970年代のラブホテルの代名詞のような存在。
権之助坂を下ると突然、周囲に馴染まない西洋のお城風の建物が
出現する。アメ横にシンデレラ城が立ってるような感じだ。
目黒エンペラーのラジオCMは「アルハンブラの思い出」が流れ、
「エンペラー、エンペラー、目黒エンペラー」と連呼される。
夜中にこれをを聴くと、あ〜また無駄に深夜までグダグタしてしま
った、と妙な背徳感を味わうことになる。


(11)10"LP
LP黎明期、RCAビクターは33回転の12"(30cm)LP、10"(25cm)LP盤、
45回転の17cmEP盤、と3種類を出していた。
米コロムビアが世界初の12"(30cm)LP盤を発表したのは1948年。
(LPはLong Playの略)
後塵を拝したRCAビクターは翌1949年に45回転7"(17cm)のEP盤を発表。
(45回転の方が音質的に優位、78回転SPと収録時間が同等で従来の
音楽ファンが違和感なく移行できる、コロムビア規格を踏襲すること
への抵抗があった、が理由らしい)
1950年にはRCAビクターも33回転の12"(30cm)/10"(25cm)LP盤を
発売し、コロムビア規格に合流。LP対EP戦争は収束へと向かう。
1960年代初めまでクラシックなど10"(25cm)LP盤も発売されていた。
日本ではその後も33回転7"(17cm)のコンパクト盤が発売されていた。
(英米の45回転EP盤とは別種である)


(12)公式ライヴアルバム
1987年のTV番組「A Session With Chet Atkins」の音源が2010年
に「Certified Guitar Player」というタイトルでCD化、映像も
DVD化された。




2011年にはジェリー・リード、スージー・ボガスとの共演ライヴ、
Chet Atkins, Jerry Reed & Suzy Bogguss - Live In 
NashvilleがCD、DVDで発売された。




2007年ベアファミリー・レコードより4CD+DVDボックスセット
Nashville Stars On Tour, 1964」が発売されている。
アニタ・カー・シンガーズ、エディー・アーノルド、ハンク・ス
ノウ、ドン・ギブソン、ジム・リーヴス、ボビー・ベアと同行し
た1964年のヨーロッパ・ツアーが収められている。
(ストックホルム公演2CD、ドイツ公演2CD、オスロ公演DVD)



<チェット演奏曲>CD
Alabama Jubilee、Windy And Warm、Drown In My Own Tears、
Wildwood Flower、Yes Ma'am、My Town、Greensleeves / 
Streets Of Laredo、Show Me The Way To Go Home、Yankee 
Doodle Dixie、Peanut Vendor、Tiger Rag、Gravy Waltz、Java
<チェット演奏曲>DVD
Alabama Jubilee、Windy And Warm、Wildwood Flower、Yes 
Ma'am、Malaguena、Greensleeves/The Streets Of Laredo、
Peanut Vendor、Tiger Rag




この他オムニバス・コンサートでSouth African Tour Hits(1964)
、Nashville Stars On Tour、 In Concert(1975)がLPで発売され
たが、CD化はされていない。


(13)ジャン・フェリックス・ララーン
フランスのフィンガー・ピッキング・ギタリスト。
チェットの流れを汲む一人。
マルセル・ダディと親しく、しばしば共演していた。


    ↑左がジャン・フェリックス・ララーン、右がマルセル・ダディ。


(14)チェットとマルセル・ダディとの共演音源。
1993年に発売されたマール・トラヴィス追悼盤「Saturday Night  
Shuffle (A Celebration Of Merle Travis:The Man&His Music)
にチェットとダディ名義のCannonball RagNine Pound 
Hammerが収録されている。
これは1990年か1991年に再度チェットが渡仏した時のスタジオ
録音はないかと思われる。(CDに記載はない)


↓チェットとマルセル・ダディのCannonball Ragが聴けます。
(左がチェット、右がダディ)

https://youtu.be/nObTpImVrko


↓また2人がRocky Topを弾いてる音源があるが、スタジオ録音
ではなく部屋でのリハーサルのようである。(たぶん1977年)

https://youtu.be/Pe6sGH_dfaw




<参考資料:初心者から始めるアコギ塾、島村楽器、プー横丁、
コギ博士、目黒で考えたこと、Discogs、YouTube、他>

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