2022年2月1日火曜日

レット・イット・ビー2021リミックス Disc-5 EP盤レビュー。

 <Disc-5 レット・イット・ビー EPについて>


4曲のみ収録という中途半端さとこの4曲の選択理由に疑問符がつく。

アクロス・ザ・ユニバースとアイ・ミー・マインはグリン・ジョンズ2nd.ミックス
の「ゲット・バック」に収録予定だった曲である。

グリン・ジョンズは5月に却下された1st.ミックスからテディー・ボーイを外して、
この2曲を加えただけの2nd.ミックスを1月やっつけで仕上げ再び却下された。


ジョンズはどこが悪いのか、どうすれば4人が納得するのか全く考えていなかった。
勘が悪く、プロデューサーとしての技量も二流である。
後年イーグルスを担当したエピソードからも、頑固で持論を押し付ける人らしい。

もちろん明確な指示を出さずに丸投げしただけのビートルズにも非がある。
この段階で4人が意思を明確にしジョージ・マーティンに委ねてたら、いいアルバム
ができてた可能性がある、フィル・スペクター登板もなかった、と思うと残念だ。





ドント・レット・ミー・ダウンはシングル盤ゲット・バックのB面。
であれば、なぜA面のゲット・バックのリミックスがないのか理解できない。
2015年の「1」でリミックスしたから今回はもういいでしょ、ということか?

同じ「1」にリミックスが収録されたシングル盤A面のレット・イット・ビーの方は
今回また最新リミックスがこのEPに収録されている。
何で?何でレット・イット・ビーはありでゲット・バックはなしなのか?

レット・イット・ビーのB面だったユー・ノウ・マイ・ネイム(1967年の録音)は
無視か?リミックスを行うまでもない、ということか。。。





EPならシングル盤ゲット・バック、レット・イット・ビーの両面まとめて4曲収録
すべきだろう。
それに追加で、アクロス・ザ・ユニバースとアイ・ミー・マインなら分かる。

いや、それ以前にその6曲はアウトテイク集に入れてしまえば済むはずだ。
サージェント・ペパーズ、ホワイト・アルバム、アビイロードのリミックスでもそう
いう扱いだったではないか。
この4曲だけのEPでまるまる1枚というのはもったいない。
ルーフトップ・コンサート完全収録の方がずっとよかったと誰もが思うだろう。
(完全とはいかないまでも5曲1テイクずつ収録で、後にシングル盤リミックスとグリ
ン・ジョンズ2nd.ミックスの追加2曲でもよかった)


出し惜しみはやめようよ、と言いたくなるEPではあるが、とりあえずレビューを。


<追記>
ルーフトップ・コンサート完全版音源は1月28日から全世界でストリーミング
を開始した。ジャイルズ・マーティンとサム・オケルによりドルビーアトモス
でリミックスされた臨場感あふれる音を体感できる。
(Apple Music、Sportify、YouTubeMusic、deezer)
2021リミックス・スーパー・デラックスにルーフトップ完全版を入れなかった
のはこういう画策をしてたってわけね。あこぎだなー。
サブスクじゃなくダウンロードかCDで出して欲しい。



<Disc-5 レット・イット・ビー EP収録曲レビュー>

1.アクロス・ザ・ユニバース(グリン・ジョンズ 1970ミックス)
アクロス・ザ・ユニバースは1年前、1968年2月に録音された音源を流用している。
レディ・マドンナのB面になるはずだったが、ジョンが出来に納得が行かず見送った。
ジョンは「何か足りない」と言っていたが、その何かが分からないままだった。
WWFのチャリティ・アルバムにジョージ・マーティンが半音回転を上げ鳥の羽ばた
きのSEを加えたヴァージョンが収録される。





映画「ゲット・バック」ではそのレコードをかけ、リメイクを検討している4人が
見られるが、ラフなリハーサルのみでその後は演奏することはなかった。

グリン・ジョンズは元のテンポでジョンのアコースティック・ギターと歌、ジョージ
のタンブーラ、女の子2人のコーラス(EMIの前にいたファン2人をポールが連れて来
て歌わせた)という編成でミックス。
(ジョージのワウペダルを使ったエレキギターは外された)
冒頭でジョンがYou're alright, Ritchieとリンゴに言ってるのが聴ける。

※WWF収録のテンポを上げたヴァージョンはパスト・マスターズに収録された。
フィル・スペクターは前述のようにテンポを下げストリングスとコーラスを追加。
またネイキッドにはタンブーラが左右に拡がるヴァージョンが収録。
とこの曲はいろいろなミックスが存在するのでややこしい。




2. アイ・ミー・マイン(グリン・ジョンズ 1970ミックス)
この曲はリハーサルだけで録音されていなかったため、ジョンが脱退を表明後の
1970年1月3日にジョージ、ポール、リンゴの3人でレコーディングが行われた。
サビは1回だけで2分に満たない短い演奏である。
(後にフィル・スペクターがサビと最後のヴァースをコピペして尺を伸ばした)



↑グリン・ジョンズ2nd.ミックスのアイ・ミー・マインが聴けます。


冒頭でAlright, you're ready, Ringo?、Ready Georgeというやり取りの後、
ジョージがカウントをとって始まる。
アクロス・ザ・ユニバースでの冒頭のジョンの声を受けて、スタジオ・ライヴ感
を演出するための図らいだろう。



3.ドント・レット・ミー・ダウン(シングル・ヴァージョン リミックス)
シングル盤B面に収録された1月28日スタジオでのベスト・テイクのリミックス。
楽器の定位は変わっていないが、聴こえてくる印象がだいぶ違う。
全体的にリッチな音で、声や楽器に艶があり、生々しいというか臨場感があるのだ。
ジョンとポールのボーカルは力強く、生き生きしてて真に迫っている
(レコーディング時はDon't let me downの部分はジョージが下を歌う3声だった
が、4月にジョンとポールがボーカルを録り直した。そのためジョージの声はなし)

左のジョン、右のジョージのギターの音色も違いがよく分かる
(ジョージはレスポールを弾いてる説があったがテレキャスターであることは明白)
ポールの唸るベースは後退。ビリー・プレストンのエレピは変わっていない。
左右に振り分けられていたリンゴのドラムはバランスよくステレオ感が出ている
クラッシュ、ハイハット、ライドシンバルの巧みな使い方がよく分かる。





4.レット・イット・ビー(シングル・ヴァージョン リミックス)
これもシングル盤としてリリースされたヴァージョン。
1月31日セッション最終日に録音されベストとされたテイク27である。
グリン・ジョンズがアルバム「ゲット・バック」用にミックスしたものと同じだが、
シングル盤で発表する際、ジョージ・マーティンの判断によりジョンの6弦ベースを
消してポールがベースを、ジョージがディストーションを付けたギターを、リンゴ
はタムを、さらにリンダが高音部を歌ったコーラスとブラスをオーヴァーダブした。
今回新たにリミックスし直されたこのヴァージョンは、全体を包み込むようなサウンド
の広がりが新鮮である。




ポールのピアノは左からセンターに移動。ブリュートナーの豊かな響きが味わえる。
オリジナルは最初のLet it be〜のコーラスが左から右へパンして不自然であった。
リミックスではコーラスはやや右後方から広がり、奥行き感が出た
ビリー・プレストンのオルガンもこのタイミングで入り厳かに響くようになった。
2回目のヴァースから入るポールのベース音が小さかったのが今回は少し大きい。
(フィル・スペクター版ほど大き過ぎない)
ドラムは低域が増しリンゴ特有のハネ感もよく分かる
リフレインで薄く入ってたブラスは大きくなったが耳障りではない。
ギター・ソロ前のオルガンによるブリッジがすばらしい
最後のLet it be〜のリフレインではディストーションのギターが後退し、レズリーの
回転スピーカーを通したギターが聴こえるようになった。


<続く>

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